目黒駅にあるフレンチの名店、「アルカション」に初めて訪れた。
かねてから評判の店であり、2年ほど前には「美味しんぼ」でも大きく取り上げられた(コミックス90巻「感動の多い料理店」)。一度行ってみたいと思っていたが、なかなか機会がなかったのだ。
営業時間は23時までだが、ラストオーダーは20時30分と早い。ゆっくりと時間をかけて料理を楽しんでもらおう、という姿勢なのだろう。閉店してしまったパトリス・ジュリアンの店「サントル・フランセ・デ・ザール」もそうだった。
予約の時間から少し遅れ、ラストオーダー時間ぎりぎりにとびこむと、決して広くはない店内は明るくやわらかい空気に満たされている。いやがおうにも期待が高まるというものだ。
ここのディナーコースは「充実2皿コース」(4800円)「アルカションおまかせコース」(6500円)「スペシャルコース」(10000円)となっている。今回は「アルカションおまかせコース」を注文した。
前菜1皿目
マスを焼いたシンプルな一皿。最小限の味付けで魚本来の味を引き出している、なんとなく懐かしい一品だ。
前菜2皿目。
スミイカのオリーブオイル焼きをサラダ仕立てにしたもの。イカはやわらかく食べごたえがあり、また添えられた野菜がどれもこれも見事にうまい。
前菜3皿目。
芋セロリをすりおろしてブランマンジェにし、さらにオマール海老を添えてスープにしている。セロリの鮮烈さを保ちながら、その刺激をまろやかな味わいに閉じこめている。このブランマンジェを作るのにいったいどれほどの手間がかかっているのか、想像もできない。
魚料理。
魚料理はアイナメだ。その身の淡泊なうまさと、パリっと焼いた皮の香ばしさが絶妙のバランスである。つけあわせのキノコはジロール茸というフランスのきのこだそうだ。
肉料理。
鴨のソテーは火の通し方が職人芸である。さわやかな味わいのソース、にんじんのパテ、温野菜にはちょっとだけトリュフが。
デザートの前の小さなデザート。
ほんのりリキュールの聞いたシャーベットだ。
デザート。
5~6種類のデザートから1つを選ぶことができる。そのうち3種類を撮影。
味も量も、大満足のコースだ。野菜がおいしい、というのがこの店の売りだが、アルカションというのはフランスの海を臨むリゾート地の名前だそうで、魚介類の取り回しも実に手慣れたものである。
決してぜいたくな素材を使っているわけではないが、それに丁寧に手を加えてうまい料理にしてくれる店、という評判は全くもってその通りだった。その手のかけ方も、だいぶユニークというかオリジナリティーの感じられるものだが、それでいて決してマニアックに走っているわけではない。あくまで真正面から素材に向き合い、常識にとらわれず、純粋に、真摯にそのうまさを追求した結果が、結果としてユニークなものになっているという印象だ。
素材や、その料理法を自慢げにひけらかすのもそれはそれで面白いが、この店はそういう店ではない。謙虚といえば謙虚だが、確かなものを提供しているという自信の現れでもあるのだろう。そのスタンスは料理だけでなく、住宅地にひっそりとたたずんでいる店構えにも、その内装にも、そしてそのサービスにも共通している。決して強い自己主張はしないが、絶大な信頼感を漂わせている。ぜんぶひっくるめて、実に気持ちのいい店だ。
なんだかちょっとだけ健康を取り戻したような気がした。
「アルカション」の情報(グルなび)
http://r.gnavi.co.jp/g235500/
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