東宝「パイレート・クィーン」山口祐一郎が青年?海賊
| グレイス・オマリー | 保坂知寿 |
| グレイスの恋人・ティアナン | 山口祐一郎 |
| 女王エリザベス一世 | 涼風真世 |
| グレイスの父・族長ドゥブダラ | 今井清隆 |
| エリザベスの側近・ビンガム卿 | 石川 禅 |
| グレイスの夫・ドーナル | 宮川 浩 |
保坂知寿、山口祐一郎、今井清隆、石川 禅。この4人がそろい踏みと聞けば劇場に自然と足が向く。そんなわけで、28日に開幕した「パイレート・クィーン」の2日目の公演を観るために久しぶりの帝劇へ。
保坂・山口コンビの共演って、一体何年ぶりなんだろう。ひょっとしたら自分もその昔「ジーザス・クライスト=スーパースター」あたりで見ているのかもしれないが、たぶん初めてだ。
劇場に入ると、イングランドと独立前のアイルランド旗がプロジェクターで投影されている。プロジェクターが古いのかピントが合っておらず、どうもシャビーな雰囲気だ。いやあな予感がしたが、幕が上がり、海賊船の出航前のシーンが始まると、帝劇の盆をうまく使った船の表現、シンプルだが奥行きを感じさせる照明、そして明快なメロディーとで、船出の高揚感をかもし出し劇場を満たす。ぐっと引き込まれるオープニングだ。
16世紀のアイルランドを舞台に、イギリス女王エリザベス一世と対峙し自治を獲得した実在の女性、グレイス・オマリーをモデルにした、恋あり冒険ありのエンターテインメント性の強いミュージカルである。ストーリーは分かりやすく、ややあっさりしているが、その分娯楽要素を盛り込もうとしているのだろう。
ただ、そのわりにはシビレるほどのエンターテインメント性があるわけでもなく、全体的に薄味ではある。そこを全編にわたってふんだんに取り入れられているアイリッシュダンスと、役者の個性で埋めている印象だ。テンポよく展開するし、眠くなるシーンもないので、気軽に舞台を楽しみたいときにはうってつけの作品だ。
さて、保坂知寿はいきなり娘役として登場。設定は10代か。しかしこれが驚くほど違和感がない。これぞ女優だ。復帰第一作の「デュエット」もまずまずだったが、やはり彼女にはグランド・ミュージカルの舞台が似合う。大掛かりなセットと大勢のアンサンブルに囲まれて、実にのびのびと、いきいきと演じ、歌っている。それがさらに年齢を超越させるのだ。
そしてグレイスは母になり、「海賊の女王」としてリーダーシップを発揮するようになり、と成長を遂げていくが、その成長につれて演技を少しずつ変えていく。改めて保坂の実力を目の当たりにした気分だ。
一方の山口祐一郎。これが何と「青年」海賊という役どころである。長髪の若作りしたメイクで登場し、若さを表現しようとしているのか、変にカン高い声で歌い始める。この時点で、笑いをかみ殺している観客多数(推定)。そして保坂と異なり、冒頭で見せた若作り演技を最後まで貫く。途中から演技を変えるようなこざかしいマネはしないのだ。いよっ、男だね、山口祐一郎!だから、最後まで観客は半笑い状態で見守らなくてはいけない。しかも、途中いらぬ小芝居をして笑いを取りに来る。観客だけでなく、共演者も笑いをこらえるのに必死だ。
しかし、ソロナンバーになるとさすが山口。全身から感じられる違和感をものともせず、観客を引き込む歌声は圧巻だ。そして保坂とのデュエットも息はぴったり。これを待ち望んでいたのだ。
笑いといえば、石川禅も持ち味である巧まざるユーモアセンスを発揮し、本来憎まれ役であるべきビンガム卿を実にチャーミングに演じている。この人の実力は本当に日本のミュージカル界の宝だ。
今井清隆も、貫禄ある海賊の長でありながら娘への愛情を隠せないいい人ぶりをアピールするし、涼風真世もどちらかというと女王の威厳よりかわいらしさが前に出てしまう。最大の悪役である宮川浩も、どこか情けなくて憎めない。
こういう面々が、作品の印象を実にやわらかく、あたたかなものにしている。ポスターには「スペクタクル・ミュージカル・アドベンチャー」というふるったキャッチコピーが踊るが、そういうイメージで気合を入れて観劇に臨むと肩透かしをくらってしまうかもしれない。軽い口あたりの作品の中で、個性ある俳優たちがのびのびとその実力を発揮している。そういう舞台だと思って、ふらっと劇場を訪れるのがおススメだ。

ロビーに展示されていた船のセットの模型。
「パイレート・クィーン」ホームページ
http://www.tohostage.com/piratequeen/index.html
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