2009年11月14日 (土)

四季「キャッツ」横浜公演 脱線トリオ、そろり発進

グリザベラ 早水小夜子
ジェリーロラム=グリドルボーン 秋 夢子
ジェニエニドッツ 礒津ひろみ
ランペルティーザ 愛沢えりや
ディミータ 団 こと葉
ボンバルリーナ 西村麗子
シラバブ 谷口あかり
タントミール 高倉恵美
ジェミマ 金平真弥
ヴィクトリア 千堂百慧
カッサンドラ 蒼井 蘭
オールドデュトロノミー 種井静夫
アスパラガス=グロールタイガー/バストファージョーンズ 村 俊英
マンカストラップ 芝 清道
ラム・タム・タガー 阿久津陽一郎
ミストフェリーズ 松島勇気
マンゴジェリー 川東優希
スキンブルシャンクス 岸 佳宏
コリコパット 入江航平
ランパスキャット 桧山 憲
カーバケッティ 松永隆志
ギルバート 龍澤虎太郎
マキャヴィティ 金久 烈
タンブルブルータス 川野 翔

新しいキャッツシアターは、なんとなく五反田キャッツシアターの2階部分を取り外したような構造だ。東京公演ではロングランの中で2階に空席が目立つことも少なくなかったのでナイス判断なのではないか。また、2階席があると1階席の後方は天井が低くて圧迫感があったが、それがなくなって全体的に開放感がでた。これはいい。

まあ基本的には五反田シアターの雰囲気そのままで、椅子なども再利用されているようなので新鮮な感じはないが、コンパクトにまとまっていてどこからも舞台が近く、オール1階席のこの空間は大いに気に入った。ロビーも広々としている。

客席を取り囲むゴミの数々は五反田からもってきたものもあり、新しいものもある。開演前にはぐるりと回ってチェックしたいものだ。

演出も、細かい変更はいくつかあるようだが、特に「横浜」を感じさせる大きな仕掛けが2箇所ある。詳しくは言わないが、一幕にひとつ、二幕にひとつ。個人的には一幕のアレ、好きだなあ。

さてこの日は、開幕ということでなかなかの豪華キャストである。キャッツの進行役はマンカストラップ、ラム・タム・タガー、ミストフェリーズの3人だが、そこに芝、阿久津、松島と、顔面濃度200%の野郎共がずらりとそろった。3人とも、猫の濃いメイクがほとんど意味がないほど素顔がよく分かる。しかしこの3人の能力と存在感は折り紙つきだ。

もっとも、この3人はそれぞれ、いらんことをするキャストでもある。芝はリーダーたるマンカストラップなのに、ところどころで笑いを取りに走るし、阿久津は登場とともに何語かよくわからない奇声を発するし、松島はグリドルボーンに怪しい視線を投げかける。

だがこの日は、3人とも不審な動きをぐっと封印していた。マンカストラップは真面目だし、タガーはおとなしく出てくるし、松島も持ち前のバレエの技術で観客を魅了する。いったいみんなどうしたというのだ。別にもっとふざけろというつもりはないが、ヤツらが神妙にしていると、なんだか薄気味悪い。きっといずれ何かやらかそうと企んでいるに違いない。近所の悪ガキかよ。

この3人に、早水小夜子のグリザベラ、村俊英のアスパラガスという職人たちも加わり、見ていて実に安定感がある舞台となった。決して開幕当初にありがちなガチガチの固い雰囲気ではなく、みなどこか余裕を持って役を演じていたように見えた。別に緊張感がないというわけではなく、実力のある者たちだからこそなせる業だ。もともと、キャッツはもっと自由さがあっていい作品だと思う。ロンドンの猫たちはまさに野良猫だった。完成度の高さが日本の、というか四季のキャッツの魅力であることに異論はないが、このあたりで少し新しい方向性を模索するのもよいのではないか。

さて、開幕当初はシラバブに五所真理子の名前があった。夏の「エルコスの祈り」全国公演でたいそう気に入った女優さんなので、楽しみにしていたが劇場のキャストボードでは谷口あかりに変わっていた。ちょっと残念だ。まあ谷口あかりもこれはこれで好きなわけで、ルックス最強なシラバブは見ていて顔がにやけてくる。ルックスといえば金平真弥のジェミマのキレイなこと!思わず見とれてしまう。とはいえ、これならさぞやアムネリス王女様も美しいだろうなあ、と想像したくなるのはいたしかたのないところだ。

横浜でどのくらいの公演をするつもりか分からないが、キャパシティを考えればそれなりの期間は続けないと採算は取れないだろう。中華でも食いながら通うことにしよう。

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「キャッツ」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/cats/index.html

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2009年10月24日 (土)

四季「アイーダ」金田ラダメス颯爽と登場

アイーダ 濱田めぐみ
アムネリス 五東由衣
ラダメス 金田俊秀
メレブ 中嶋 徹
ゾーザー 飯野 おさみ
アモナスロ 川原 洋一郎
ファラオ 前田 貞一郎
ネヘブカ 松本 昌子

開幕から3週間、早くもキャストが動き出した東京アイーダ。待望の新ラダメス登場だ。

金田俊秀といえば、韓国出身の若手成長株。「キャッツ」のラム・タム・タガーや「エビータ」のチェなど、重要な役を次々こなし、「ジーザス・クライスト=スーパースター」ではジーザス役に。自分はこのジーザス役をひたちなかで見ており、カッコよく、伸びのある歌声には大いに好感を持った記憶がある。

その金田ラダメス、冒頭から大いに存在感を発揮する。鼻筋の通った濃い目の顔は、エジプトの青年将校という役どころにぴったりだ。「勝利ほほえむ」をはつらつと歌うその姿には若さと、未来への希望が満ち溢れている。「♪心躍る 我らの夢~」という歌詞がばっちり似合っている。大国を支える誇りに満ちた若き提督。銀河英雄伝説で言うならばウォルフガング・ミッターマイヤーかナイトハルト・ミュラーか、といったところだ。これはいい。

だが、そうした男性的な歌い方が、アイーダへの思いを込めたロマンチックな歌では、ぐっと甘い声になる。このため、アイーダとのデュエットになると、力強い濱田めぐみの歌声に負けてしまう。だからだろうか、どうも全体的にはやや印象が薄いという感じも残る。たとえ悪目立ちでも、自分のカラーを出している渡辺正のほうが、少なくとも印象には残る。

そして「この父親にしてこの息子あり」では、再び若さを爆発させる魅力的なラダメスに戻る。この親子ゲンカは、実に見ごたえがあった。野心と、自由への渇望とが、お互いにむき出しでぶつかり合う。これは今までに観たゾーザー・ラダメスの組み合わせの中では最高である。

こう考えると、金田俊秀という役者は、すでに実績のあるジーザス・クライスト=スーパースターや、「ウェストサイド物語」のような、男くさい作品に合っているのかもしれない。想像だけど、いいリフやトニーになりそうだ。彼のチェは未見だが、大いに見たくなってきた。

またラダメスは、これまで彼が演じてきた役に比べセリフ部分が多い。そうなると、日本語の発音が心配されるが、問題になるレベルではなかった。彼が海外出身だということを知らなければ、話し方がちょっと変わっているな、と感じるぐらいだと思う。若いころの田村正和のような、どこかスカした感じの喋り方だ。これが青年将校のはつらつとした雰囲気とまるでミスマッチで、ちょっと面白い。

ただ、やはりセリフに気持ちが乗りきってない、という場面も散見された。日本語のセリフを話すのに頭脳のメモリ容量を相当食われているのだろう。たとえ発音が不自然でも、気持ちが乗っていれば観客には伝わる。「ウィキッド」のフィエロを演じた李涛がそうだったように。だから金田も多少の発音など気にせず、堂々と演技をしてほしいと思う。

金田ラダメスの第一印象はこんなところだ。ぜひ「勝利ほほえむ」「この父親にしてこの息子あり」で見せた、男っぽさと若さを前面に出した青年提督の顔を全体に貫いてほしいところだが、観る人によっては、甘い歌声のほうに軸足を置くことを望むかもしれない。どっちに動くのか、あるいはまた別の方向に行くのか。楽しみに見守りたいと思う。

さて3週足らずでお役御免になってしまった渡辺正はどうなるのだろう。初日に出すのはどうかとは思うが、ある意味面白いラダメスで、個人的には時々出てほしいものだ。それに周りのアイーダ観劇者の声を聞いたところ、渡辺ラダメスは男性にはおおむね好評のようである。うーん、しかし出てくるとまた叩かれるだろうしなあ。ここはひとつ、渡辺正にはゾーザーを演じてもらってはどうだろう。金田ラダメスとのコンビなら、なかなかいい親子ゲンカが見られそうである。

次はいよいよ、新アムネリス誕生か?こちらも大いに期待したいところだ。

四季「アイーダ」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/aida/index.html

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2009年10月10日 (土)

四季「ドリーミング」秋のパンまつり

チルチル 大徳朋子
ミチル 岸本美香
犬のチロー 田中彰孝
猫のチレット 林 香純
パン 白瀬英典
本城裕二
柏谷巴絵
牛乳 市村涼子
砂糖 塩地 仁
光/隣の娘 沼尾みゆき
ベリリューヌ/ベランゴー 光川 愛
母親チル/夜の女王/母の愛 白木美貴子
父親チル 田代隆秀
祖母 斉藤昭子
祖父/カシの大王/時の老人 田島亨祐

メーテルリンクの「青い鳥」をベースにした劇団四季のオリジナルミュージカル「ドリーミング」が開幕した。1969年にファミリーミュージカル「青い鳥」として誕生し、その後「ドリーミング」と改称。しかし2003年にはまた「青い鳥」として東京・大阪ほかで上演されている。どうも「青い鳥」という場合にはファミリーミュージカルとして、「ドリーミング」という場合には一般作品という位置づけになるらしい。演出も違うのだろう。

いずれにしても、自分は未見だ。98年に大阪MBS劇場で上演したとき、なんとなく観に行こうかな、と思った記憶はうっすらとある。下村尊則の「夜の女王」がすごいらしい、と聞いたからだった。なぜ実現しなかったのかは思い出せないが、すでにこの段階で俺はひょいひょい遠征するようなダメ人間になっていたということだ。

今回も、当初はまあ観たことないから一度ぐらいは、という軽い気持ちだったが、開幕の数日前に公開された舞台稽古写真には、ほとんど誰が誰だか分からない写真ばかりの中、沼尾みゆきだけがハッキリと写っていた。キャスティングには気合が入っている、というメッセージだ。もとより四季は輸入の大型作品より、オリジナル作品に一線級を投入する傾向があるのはご存知の通りだ。がぜん、正常ではない観劇姿勢のモチベーションが上がってきた。

そして迎えた初日、秋劇場のキャスティングボードには上記のような配役が表示された。

果たせるかな、面白いキャスティングだ。

チルチルとミチルに、大徳朋子と岸本美香。どっちも小柄さが売りの、ファミリー系作品に欠かせない2人だ。特に岸本は、長く「美女と野獣」のチップとして食器棚に縛られていたが、近年はさまざまな役でその芸達者ぶりを披露している。「春のめざめ」ではテーアや舞台上の隠れアンサンブルで大活躍しており、個人的にますます注目している女優さんのひとりだ。もうこのコンビだけで、劇場に来たかいがあったというものだ。

わくわくしながら席につき、やがて開幕。もともとがファミリーミュージカルなので、正直だるい場面もある。だがそもそもメーテルリンクの「青い鳥」は、童話劇の体裁を取りながらも当時の社会風潮への痛烈な批判と、人として生きることへの哲学的な考察を含んだ重厚な内容だ。この舞台は十分に大人の鑑賞に堪えうるものになっている。まして自分のようにファミリーミュージカル出身の「夢から醒めた夢」や、「魔法を捨てたマジョリン」「エルコスの祈り」といった現役ファミリーミュージカルが大好きな人間にとっては全く抵抗がない。

ダイヤモンドをあしらった帽子を身に着けることで、普段は見えない、気付かない「本質」に目を向ける能力を得たチルチルとミチル。2人の冒険は、そのまま人生のダイジェストとなり、観客の心を打つ。

が、自分の目はチルチルとミチルどころか、平均的な成人男性の持つ瞳のレベルと比較しても数十倍曇っている。曇っているというより、濁っている。いや、腐っているといってもいい。

だから、ここでその作品の「本質」についてあれこれ言うのはやめておく。

ダメ人間はダメ人間らしく、正常ではない観劇姿勢で、印象に残った点を書き留めておこう。

まず目につくのが、白瀬英典の登場である。そう、「春のめざめ」で、張りのある最高に美しい声で「どうしても揉みたいあのオッパイを~♪」と歌い上げ、主役を食うほどの存在感を発揮し一躍四季の若手注目株に躍り出た(か?)あのゲオルグである。彼が演じるのはパンの精。たいそうらしく演説するが、言うことがころころ変わる、政治家タイプの妖精だ。その声は相変わらず舞台の空気を変えてしまうほどの影響力を維持しており、聞いていて実に心地いい。彼はまたここでキャリアを積み重ねることに成功した。次はどんな役を狙うのだろう?今から楽しみだ。

そして、林香純のチレット。言わずとしれた、「春のめざめ」のベンドラである。正直、自分は彼女のベンドラが苦手だった。しかし、このチレットは、いい。すごくいい。歌は春のめざめでもその実力を発揮していたが、ダンスも演技も、登場人物の多いこの舞台で常に観客の目を引きつける魅力がある。明らかにそれキャッツだろう、という猫メイクもばっちり決まっており、今すぐにゴミ捨て場に直行しても違和感がなさそうだ。見た目も、キャラクターも、どことなくボンバルリーナをほうふつとさせる。いや、ボンバルリーナの女子高生時代を見ているようだ。キャッツでボンバルリーナについては詳しく描かれていないが、チレットを見ていると、きっと若いころはあんなヤツだったんだぜ、と思えてくる。ちょっとはすっぱな物腰で、意地悪もするが、根っからの悪党というわけでもなく、どことなく憎めない。勝手にボンバルリーナのキャラ設定を考え、まるでキャッツのスピンオフ作品だな、とか痛い妄想を広げているうちに、11月のキャッツ開幕が待ち遠しくなってきた。

また何といっても、(自分にとって)この公演最大の目玉は、沼尾みゆきの「光の精」だ。グリンダ様といい、姫様キャラが完全に定着した沼尾みゆきの真骨頂である。光は、妖精たちのカシラとして、テキパキと指示を出す。まるで「追跡者」で部下を指図するトミー・リー・ジョーンズみたいにだ。それが実にカッコいい。俺も指図されてええ!「おだまりなさい」とか言われてみてえええ!きっとグリンダ様が良い魔女としてオズの実権を握ったあと、数年もするとこういう感じになるんだろうなあ。今度はウィキッドのスピンオフを見ているような錯覚に……。そして二役の「隣りの娘」の装いがまたいい。ぱっと見、アラサーのイタいコスプレイヤーのようだ。だがそれがいい。とてつもなく萌える。稽古場写真でないプログラムをもし作るなら、絶対にあの衣装の沼尾の写真を掲載してほしい。あるいは携帯サイトで待ち受け画像として提供してくれ。しかし稽古着姿も、重ね着のために体操服みたいに見えて、これがまた何とも。正直、たまりません。

他にも見所は盛りだくさん。主に東宝で活躍し、今年の「夢から醒めた夢」東京公演から四季に参加し、マコの母を演じた白木美貴子が圧倒的な存在感の夜の女王を熱演。こういういい人材が外部から来てくれるのは四季の未来を語るうえで実に重要なことだ。もうちっと退団者もと仲良くしてくれりゃあ、いろいろ面白いキャスティングが実現するのに。そして韓国出身の歌姫、光川愛の演じるベアトリーチェ、じゃなかったベリリューヌがどえらく美人である。声も素晴らしく、彼女のラフィキをぜひ体験したくなってきた。田島亨祐は老け役に挑戦だが、実に堂々と、重厚感ある歌声で魅了していた。田中彰孝は持ち前の、というかそれしかない(のかもしれない)元気ハツラツさと、ちょっとお馬鹿な演技で、舞台全体のムードをうまく作っていた。さらに、女性アンサンブルがわんさか出てくるのもこの舞台の魅力(個人的にだが)。中でも「マジョリン」でおなじみ、背はちっちゃいけれど実はとっても美人さんの関根麻帆にゃんが「健康の幸福」を好演しているので、ここもぜひ注目してほしい。

てなわけで、俺は完全に作品ではなく役者を観ていたわけだが、それで十分お腹いっぱいになることうけあいの舞台だ。

Dream

「ドリーミング」のホームページ
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2009年10月 3日 (土)

四季「アイーダ」もうめぐ様しか見えない

アイーダ 濱田めぐみ
アムネリス 五東由衣
ラダメス 渡辺 正
メレブ 中嶋 徹
ゾーザー 飯野 おさみ
アモナスロ 川原 洋一郎
ファラオ 前田 貞一郎
ネヘブカ 松本 昌子

ついに東京にやってきた、アイーダ。オペラ版の「凱旋行進曲」でも奏でて盛大にその初日を祝いたいところだ。

この作品は、派手で明るくて楽しいミュージカルが好きな(馬鹿だから)自分にとって、必ずしもお気に入りというわけではないかもしれない。最初観たときは、ちょっと眠くなった。しかし、エルトン・ジョンの音楽の威力だろうか、CDを聞いているうちにだんだんまた観たくなり、劇場に行くとその魅力に気づかされ、また観たいと思うようになった。そうして何度も観ているうちに、すっかりその魅力に絡め取られてしまった感じである。

だから、この東京公演は実に楽しみだった。それに海劇場は、ちょっと大人なムードのこの作品にとってぴったりの雰囲気だと思う。ウィキッドの終了は寂しかったが、次に来るのがアイーダとなれば、寂しさも中くらいなりおらが秋といったところだ。

そして、記念すべきこの公演の開幕キャスト。アイーダには濱田めぐみが来てくれた。いろんなアイーダも見たいが、やはりまずはめぐ様アイーダの素晴らしさを、東京のファンの目の前にたたきつけてほしい。そう考えていたから、これは嬉しい。

そして観劇後の感想。

出てくる言葉は「濱田めぐみ」。

その一言だけだ。

良かったとか素晴らしいとか、そんな言葉ではとうてい表現できない。彼女がこの役を演じるその空間に立ち会えたことが、途方もない幸せに感じられた。

自分がめぐ信者であることは否定しない。少なくとも、「美女と野獣」のときからずっとファンだった。しかし、それを差し引いて考えても、この濱田アイーダの完成度は世界に誇る出来だと言っていいのではないか。

彼女のアイーダがいいのは前からだ、というかもしれない。確かにそうだ。しかし考えて欲しい。濱田めぐみという女優は、同じ役を演じていても、演技をどんどん変えていく。「ウィキッド」のエルファバは、初日と終盤ではぜんぜん違うキャラクターになっていた。もともと、彼女は内面から役を作っていくタイプらしい。このイベントのときに、役作りは今までの人生や、演じた役を思い出しながら進めていく、と述べている。

となれば、今回のアイーダには、エルファバが混じっているのではないか?という予想があった。

そういう先入観があったからかもしれないが、確実に、アイーダの中にエルファバがいると感じた。これは個人的な印象だから、異論もあると思うが、以前の濱田アイーダは、王女としての自覚に裏打ちされた、凛としたたたずまいが強く前面に出ていたと印象がある。

しかし、久しぶりに見た濱田アイーダは、その王女オーラは健在なのに、どこか女の子っぽさというか、フェミニンな雰囲気をものすごく感じるのである。

これは、やばい。

以前は、どこか近寄りがたい神々しさに接して「さすがはめぐ様」と心の中でひざまずいていた。だが今回は、見ているうちにどんどん、本気でアイーダが好きになってきてしまう。痛い話ではあるが。

それを象徴するのが「迷いつつ」のあとの「愛してるわ」というセリフ。「ウィキッド」の、「生まれて初めて…幸せ」のセリフをちょっと思い出す。ブロードウェー版で、イディーナ・メンゼルが「I feel wicked」と言っているところだ。あの言い方に非常に近い。

このセリフを聞いたとき、背中がゾクゾクッとした。そしてそのあとの、口をふさぐ仕草。だめだ、可愛いすぎる…。自分の中で、また何かがぶっこわれた音がした。

一段とパワーアップしためぐ様アイーダに会うために、しばらく海劇場通いが続きそうだ。この作品が未見の人、あるいは濱田アイーダを見ていない人は、この「海のエジプト」を訪れてほしい。

 

……というところで、このエントリーを終えるわけにはいかんのだろうな、やっぱり。

 

開けてびっくりの冗談キャスト、初日に渡辺ラダメス。一体何を考えているんだ劇団四季。つうか浅利代表。

最初に言っとくが、俺は渡辺正という役者は結構好きである。没個性的で印象に残らない役者よりも、たとえグリンダ様に「悪目立ちじゃない?」と言われようが、個性がある役者のほうがいい。

だから、名古屋で渡辺ラダメスが登場したと聞いて、すぐに観に行った

そして期待通りの悪目立ちっぷりに快哉を叫んできた。聞き苦しい歌声と、抑揚のない演技。しかし、それによって、どこかお坊ちゃまで世間知らずなラダメス像を作り出しており、これはこれでアリかな、とも思えた。客観的に見れば、ぜんぜんダメなのだけれど。

あれから2年近く経っている。普通なら「きっと劇的に成長したに違いない」と期待するところだが、俺にはそれは絶対ない、という自信があった。果たせるかな、渡辺ラダメスは2年前と全く同じだった。ただメイクが、前回見たときには「ラッツ&スターかよ!」と突っ込みたくなるほど濃いメイクだったのが、だいぶ薄くなっていた。

まあ、全く成長がないというのは言いすぎか。いくつか、演技面で変化もあった。ところどころ、ラダメスの「情熱家」の側面を感じさせるようになっている。「迷いつつ」のナンバーでは「ついに キターーーーーーーー!」と叫ぶように歌っていた。それがいいかどうかはともかく。そして前回見たときにココだけはいい、と思えた、地下牢の暗闇の中でアイーダに向ける笑顔は健在だ。

そんなわけで、マニアックに見ればなかなか面白いラダメスなのであるが、初めて彼を見た人は「なんだコリャ」と思うだろう。少なくとも、注目の集まる初日に出すキャストじゃない。

この作品では、アイーダ、ラダメス、アムネリスのバランスが極めて重要だ。そのトライアングルがきれいに決まらないと、この舞台の構造が見えなくなってしまう。しかし、この日はラダメスがどーんと落ちている。この時点でバランスなどあったものではない。そして五東アムネリスは、さすがの安定感で、歌唱力と演技力によって姫様オーラを高レベルでキープしている。しかし彼女のアムネリスは、どちらかというと受けて輝くタイプのもので、自ら強引に光り輝くものではない。この結果、もうトライアングルは全く成立せず、ただただアイーダという恒星の周りを、ラダメスやアムネリスが、ゾーザーやメレブたちと一緒になってぐるぐる回っている、という構図になってしまった。

だから、この公演は正直、作品的に見れば失敗である。しかし、それを埋めて余りあるほど、濱田アイーダが素晴らしい。だから、「ラダメスがちょっと…」と二の足を踏んでいる人も、勇気を出して海劇場に足を運ぶべきだ。大丈夫、そんなにひどくはないから(というレベルでいいのか?)。

ま、新ラダメスと新アムネリスの早期投入を期待したいところです。

四季「アイーダ」のホームページ
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2009年9月13日 (日)

四季「南十字星」夢子のリナが秋で舞う 

保科 勲 阿久津陽一郎
リナ・ニングラット 秋 夢子
島村中将 田代隆秀
原田大尉 鈴木 周
塚本少尉 前田貞一郎
ニングラット博士 池田英治
ルアット・ニングラット 内田 圭
ニルワン 藤川和彦
キキ 山中由貴
オットー・ウィンクラー 吉賀陶馬ワイス
原田春子 都築香弥子
岡野教授 維田修二

南十字星の初日に足を運ぶ。この作品、かなり久しぶりだ。どのくらい久しぶりかというと・・・初演の初日以来だ。実に5年ぶりとなる。

別に避けていたわけではないが、キャストもほぼ固定で、また観よう、という誘因がなかったのだ。

5年前に見たとき、作品全体には好印象を持ったが、荒削りな部分が多いのと、エンターテインメント性をもっと出したほうがいいのでは、と感じた。その印象は、5年たって再見しても、あまり変わらない。多少の変更はあったように思うし、気のせいかテンポが良く感じたが、ほとんど変化はないといっていい。

そもそも、この作品はあくまでメッセージを伝えることが第一であり、演出やエンターテインメントは二の次、という考えもあるかもしれない。しかし、本当にそうだろうか?

自分は、「昭和の三部作」の上演自体には反対ではない。もし、四季が8月は毎年、輸入物のミュージカルの上演をいっさいやめて、徹底して昭和の三部作を上演する、と言っても、それはそれでありだろうと思う。シベリア抑留やBC級戦犯の話は、近年また語られる機会が増えているように思うが、これらは確かに未来へ語り継がなくてはいけない記憶だ。そして、四季はそれをミュージカルというエンターテインメントの形を取ってなしえようとしている。

さればこそ、もっとエンターテインメントとしての完成度を上げてほしいのである。「李香蘭」はある程度出来上がっているように思うが、「異国の丘」「南十字星」は、もっともっと磨き上げる必要がある、いや磨き上げればもっと上質のエンターテインメントになるはずだ。上演時間も短くていい。それでは戦争の記憶を言い尽くせないというかもしれないが、2時間40分が5時間30分になったところで、語り尽くせるものでもあるまい。何となく楽しいから、あるいは楽しそうだから観よう、という観客が増え、そうした人たちが自然に戦争の記憶を共有するようになるのが理想ではないかと思う。その人がどう感じるか、興味を持って自ら詳しいことを調べたり、折に触れて思い出したりするかどうか、それは観た側の問題だ。

さて、この日、長く固定されてきたキャストに変更があった。主人公・保科勲は阿久津陽一郎のままだが、ヒロインのリナ・ニングラットに秋夢子が起用された。

中国出身の美人シンガー、秋夢子はCATSのジェリーロラムでおなじみ。自分も好きな女優さんだが、「アイーダ」は日本語のセリフの発音がおぼつかないことを差し置いても、やや期待はずれだった。

しかし、今回のリナ役の起用は大正解だ。

歌のうまさは言うまでもない。そして何度も言うけど、とにかく美人。最初、かすりの着物で登場したときは思わず膝を打った。

これまで樋口麻美がずっとリナを演じてきたわけだが、麻美リナに比べると、夢子リナはちょっとアダルトなムード。テレビ東京の旅行番組に出てくる美人若女将みたいな雰囲気だ。だがそれがいい。

特に、二幕でリナらが独立運動を始めたあたりから、ぐんと良くなる。リナのインドネシア人としての誇り、同胞たちと共に戦おうとする覚悟がびりびり伝わってくる。麻美リナだと、保科への好き好きビームの熱量が多すぎて、ラストがどうも保科を想うリナと、自分の信じた道を歩む保科、というややすれ違いな結末に思える。しかし夢子リナの場合、保科もリナも、互いに信じるところを貫き通し、日本やインドネシアという国を超え、共に人類の長い歴史を紡いでいくこうとしているように見える。そこで2人は恋人として、同士として、そして同じ人類として、強く、固く結びついているのである。

夢子リナは、強いのだ。それがいい方向に作用している。思えばそれが悪い方向に作用したのがアイーダだった。アイーダは、王女としての誇りを常に身にまといながらも、どこか弱さがあり、それがアイーダという人物の魅力になっている(アムネリスは、弱そうに見えて最後は王女としての立場に目覚める。この2人は対称的なのだ)。しかし夢子アイーダは強すぎて、その弱さを表現しきれていなかった。だから物足りなかったのだろう。

阿久津の保科は、ますます役と俳優が一体化しているようで、四季特有の発声法ながらセリフやものごしが実に自然だ。まあ最初のシーンの詰襟学生服姿とカツラは思いっきり不自然だが。あとカーテンコールのにやけた表情もな。でも、この保科の優しく力強く、そしてすがすがしい生きる姿勢を見事に演じていることは、もっと賞賛されていいと思う。

ほかの役にも、春のめざめで若者を叱り飛ばしていた大人の男性・大人の女性がそのままスライドしてきていたり、アンサンブルにも坂本剛や菊地正、荒木美保に田村圭といった濃いメンバーが顔をそろえており、なかなかの見応えだ。この日「おっ」と思ったのは、内田圭のルワット。前回見たとき、この役は藤川ニルワンの怪演に目を奪われてあまり印象が残らなかったが、内田ルワットは、「エビータ」のマガルディで見せたような甘いマスクとボイスを完全に封印し、力強く、血気さかんな独立運動の闘士を熱く演じていた。

ミーハー視点で見ても十分面白いものになってこそ、この作品の存在価値はあるだろう。そしてさらに洗練させていけば、国境を越えて愛される作品になるかもしれない。ぜひその日を目指して、四季はこの作品を勇気を持って変えていってほしいと思う。

「南十字星」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/minami/index.html

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2009年9月 5日 (土)

四季「春のめざめ」千秋楽公演

ベンドラ 林 香純
マルタ 撫佐仁美
テーア 岸本美香
アンナ 松田佑子
イルゼ 金平真弥
メルヒオール 柿澤勇人
モリッツ 三雲 肇
ハンシェン 一和洋輔
エルンスト 竹内一樹
ゲオルグ 白瀬英典
オットー 加藤 迪
大人の女性 都築香弥子
大人の男性 田代隆秀
女性アンサンブル 玉石まどか、勝間千明
男性アンサンブル 玉井晴章、南 晶人

5月2日に開幕した「春のめざめ」がいよいよ千秋楽。長かったような短かったような、まるで自分の学生時代のような微妙な公演期間だった。千秋楽は抽選でなく一般発売で、それがAKB48「涙サプライズ」の発売記念大握手会とかぶっており、しかも電話がつながったのが篠田麻里子と握手する寸前で、予約番号の確認作業までしてそのまま携帯をポケットにしまい、何くわぬ顔で麻里子様と謁見した後に急いで予約番号を入力するという綱渡りだったが、ぶじチケットを確保することができた。千秋楽を見るのは「マンマ・ミーア!」大阪公演千秋楽以来か。初日も観たわけだが、初日も千秋楽も観た、というのは四季以外でも記憶にない。

四季としてはもっとロングランを目指していたのだろうが、やはりファミリー向けの作品が圧倒的な強さを誇る四季のファン層にはさほど響かなかったのか。この作品で新たなファン層の掘り起こしを図った面もあるのだろうが、それがどのぐらい効果を挙げたのかは知る由もない。

そこは観客が心配しなくてもいいだろう、と言われるかもしれないが、そうとばかりも言えない。

だって、俺はまたこの作品を観たいから。このままオクラ入りなんて勘弁だぜ。

自由劇場という空間の魅力を最大限に生かし、劇場に足を踏み入れた瞬間から世界観に入り込む感覚を再現。舞台上ではとことんカッコいい曲と演出を、四季の若い役者たちは十二分に生かしてそれぞれの持ち味を発揮してくれた。

ブロードウェーで初めて観たとき、四季での上演は、男優陣は大丈夫だろうけど女優陣が不安だなあ、と予感した。その予感は半分当たり、半分はずれた。はずれたのは男優陣のほう。「大丈夫」なんていうレベルをはるかに超えて、最高のパフォーマンスを見せてくれた。主演の柿澤勇人は完全にメルヒオールと一体化していたし、ゲオルグの白瀬英典とハンシェンの一和洋輔は出色の出来だった。

女優陣は、やはり厳しかった。ベンドラに輝きが薄く、大人と子供の境目にある女性が放つ独特のきらめきを描き出すことができなかった。そのため男性にとっての「春のめざめ」と女性にとっての「春のめざめ」のバランスが崩れ、全体的にオトコどもの頭の中はエロでいっぱい、という「パンツの穴」的な青春グラフィティーになってしまった。それはそれで好きなんだけどさ。金平真弥の情の深さを感じる歌声と、岸本美香のおばちゃんテーアは良かったが、やはりこの作品のカギはベンドラなのだ。

千秋楽は劇団の若手メンバーが大挙して見学していて、ロビーにはアンサンブルで見かけた人、初めて見るけど間違いなく女優さんだという人がごった返していた。みんなキレイで、これならベンドラ候補なんてざっくざくいそうな気がするが、難しいものである。

この作品、四季はキャストだけでなく制作面から若手中心で進めた。それを売りにした面もあり、発表記者会見で浅利慶太は喋らなかった(その場にはいたようである)。その結果を、内部ではどう評価するのか。守旧派は「ほうら言わんこっちゃない」と見るのだろうか?もしそう言われたとしても、この作品を支えた若手たちは、胸を張ってこう言ってやればいい。

「マジでFuck!」

千秋楽ということで、カーテンコールはえんえんと続き、ベテラン田代隆秀の簡単なあいさつもあった。柿澤勇人は何度も、まるでa-nationにサプライズ出演した小室哲哉のように深々とおじぎをしていた。すがすがしい姿ではあったが、そう行儀よくしなくてもいいんじゃないか。観客に向かって、そして後ろの客席で座っていた代表に向かって、中指を突き立てるぐらいの威勢の良さが欲しい。「春のめざめ」は劇団四季をぶっ壊すパワーのある作品だ。自民党は本当にぶっ壊れてしまったが、四季はそれを自己革新の推進力として生かすことができると信じてやまない。

さてこの中に劇団員が何人いるでしょう?

「春のめざめ」ウェブサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/springawakening/index.html
  

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2009年8月 9日 (日)

四季「ウィキッド」見ろー花代様だァーッ!

千秋楽直前の「ウィキッド」東京公演に超弩級のサプライズ。

木村花代グリンダが、オズの国に降り立った。

200908091231001

みんなで~♪ 祝いましょう~♪ と、花歌ならぬ鼻歌なんぞをノンキに歌ってる場合じゃない。発表は土曜の昼。さっそくその日のマチネに出演した。しかし自分はそのとき水戸黄門まつりに行っていたのでそんなこととはつゆ知らず、由美かおるの撮影に興じていた。帰りの特急ひたちの中でこのことを知り、慌てて予約センターに電話するもチケットは売り切れ。そりゃそうだろうさ。当日発売オンリーのS見切れ席25枚に賭けることにして、日曜の海劇場へ。ありがたいことにチケットを入手することができ、花代グリンダ2回目の舞台を鑑賞した。

「みんな私に会えて嬉しいのね?」

その第一声にじーんと来たのはマンチキンの国民だけではあるまい。会場を埋め尽くした木村花代ファン(誇張アリ)がいっせいに心の中でうなずいた瞬間だ。俺に至っては涙が出そうになった。2006年末、ブロードウェーでこの舞台を観て、木村花代グリンダなんて実現したらいいな、と思ってからというもの、何かにつけて「これはグリンダ役への布石か?」と考えるようになってしまった。クレイジー・フォー・ユーを見てもオペラ座の怪人を見ても、常に自分の頭にあったのはグリンダ役のことだ。マコにグリンダ、ジェリーロラム。自分の好きな四季の三大ヒロインを、ぜひ木村花代に制覇してほしかったのだ。

だからパンフレットでグリンダ役にその名前が掲載されたときは小躍りするほど嬉しかったが、出す出すといって出さないのが劇団四季クオリティー。まだ安心はできない。しかしこの1月ほどのキャストの動きを見ていると、花代グリンダのフラグが立ちまくっているので、あるいは、という期待もあった。そしてとうとうそれが現実のものとなった。

ルックスは最強。沼尾みゆきもかわいいんだが、正直に言うと初めて沼尾グリンダを見たとき、あーちょっと似合ってねえなあ、と感じた(もちろん今はそんなことはない)。しかし、花代グリンダはあの敷居の高そうなブロンド巻き巻きヘアーのウィッグがバッチリ決まっているではないか。

いきなり高音をのばさなくてはならないソロもそつなくクリア。そりゃ本職のオペラ歌手である沼尾みゆきに比べたら数歩譲るかもしれないし、頑張って声を出してる感があることも否めない。しかしそれは沼尾や苫田亜沙子を見ているからそう思うのであって、この役にとっては全く申し分がない。

そして、その表情には憂いがある。このオープニングは、ラストシーンからつながっている。ラストシーンでは、グリンダはエルファバへの強い思いから表情を曇らせるのだが、そうであればオープニングでも悲しい顔になっていなくてはおかしい。しかし、通常はこの時点では憂いを前面に出さない。ネタばれになってしまうからだろうか?だが花代グリンダはあえてそうしているのだ。他のグリンダとは少し違うな、と感じた。

もっとも、この作品は演じる人によって印象がだいぶ異なる、解釈の余地の大きい作品だ。違う感じがするのは当然といえば当然である。問題は、どう違うか、だ。

全体の印象としては、沼尾みゆきのおバカさがかわいいグリンダとも、苫田亜沙子のイケイケで計算高い感じのするちょい悪グリンダとも違う。なんというか、自然体なのだ。

エルファバに当てつけて言う「悪目立ちじゃない?」「グリーンピースが煮えくり返ってるわ」も、思いついたことをそのまま口にしちゃいました、ってな感じで、悪意があまり感じられない。グリーンピース発言の後など、そのセリフがクラスメートに大ウケしたことに、やや当惑気味になっていた。さらに、ディラモンド先生の「静粛に!」という言葉を受けて、周りに「ほら、静かになさいよ」と注意する仕草まで見せる。これは驚き。苫田グリンダが、周りと一緒になってエルファバをからかうのと正反対である。そしてその流れで、ディラモンド先生に「昔話はもうたくさん!」と抗議する場面も、他の役者だとグリンダがわがままを言っているように見えるが、花代グリンダは「クラスの代表として私が言います!」みたいな優等生キャラになっていた。

花代版グリンダは、そのピュアさが強く感じ取れる。これはグリンダファンで花代ファンの俺が言うことだから、あまり信憑性はないだろうが。

そしてピュアであると同時に、いや、ピュアだからこそなのかもしれないが、とっても乗せられやすい。その場の空気とか、他人の言葉とか、あるいは自分の感情に、すぐにノリノリになってしまう。

フィエロに一目ぼれしてからダンスホールのシーンあたりまで、ずっと出しまくりの好き好きビームは尋常なレベルじゃない。だから、ボックの注意をネッサローズに向けさせたのも、エルファバにクラッシックすぎる帽子をプレゼントするのも、計算や意地悪というより、フィエロに舞い上がっちゃってたもんでつい変なテンションでやっちまいました、という印象だ。

では、なぜオズの居城で、エルファバの「一緒に来て!」という言葉には乗せられなかったのか。これは、その直前にオズの巧みな言葉で十分に乗せられてしまっていたからだろう。

そうして、他人の言葉や自分の感情に左右されて生きてきたグリンダが、物語の最後にやっと自分の意思で行動し、新しい道を歩き始める。「ウィキッド」の物語は、そういうグリンダの成長譚という一面があることを、花代グリンダは再認識させてくれた。まあ、それもエルファバに乗せられているのだと考えることもできるあたりが、価値観の混乱を意図的に引き起こす「ウィキッド」らしい点でもある。

ピュアでお調子者、といえば、そう、この花代グリンダのキャラクターは「夢から醒めた夢」のピコを彷彿とさせる。ちょっと暴言気味かもしれないが、自分はそんな印象を持った。

それにしても、この数年で、木村花代は飛躍的に女優としてのレベルをアップさせたと思う。多くの役、特にオペラ座の怪人のクリスティーヌと、クレイジー・フォー・ユーのポリーを演じたことが大きかったのではないか。それをこのグリンダ役を見ているとひしひしと感じる。高音が実にきれいにのびているのを聴くと、やはりクリスティーヌ役はこのグリンダへの布石だったと思わずにはいられない。そして、花代グリンダは歴代グリンダの中で、もっとも笑いの取れるグリンダである。ああこれはポリーだな、という笑いの間の取りかたが何箇所かで見え隠れした。

グリンダ最大の見せ場である「Popular」では、その両方が堪能できる。美しい声で歌いながら、どっかんどっかん笑いを取りまくる。そうそう、これだよ俺が求めていたのは。四季のウィキッドが開幕して以来、どうしてもこの曲だけは満足しきれていなかった。Popularに関する限り、客観的に見ても花代グリンダがトップだと思う。

ファンとしては、次々衣装を変えてくれるグリンダ役は実にうれしい。制服姿も似合ってるし、ピンクのドレスも黄色の洋服も胸元ちょっとセクシーめなので、いやらしくにやけてしまうのは内緒だ。また、二幕のエルフィーとのタイマン勝負では、チャームポイントでもあるふくれっ面が拝めるぞ!

そしてアンコールでは満面の笑顔。クリスティーヌはキャラ的に、異国の丘では作品的に、ここまでの笑顔は出せないからね。あの炸裂する笑顔は、まさに「1億のスマイル」というにふさわしい。いや、これは時節柄不適当な表現でした。ダメ。ゼッタイ。

とにかく、木村花代ファンは言うまでもなく観るべき。グリンダファンも当然だ。そして俺のように花組でグリンダ信奉者という人は、女房子供を質に入れても、女房子供がいない場合には、いや、そういや俺もいないんだが、そこはモノの例えっつうか。とにかく、グレートなキャスティングだ。

東京公演にどれだけ出るか分からないが、大阪公演では相当な出演が期待できそうだ。今から大阪に行くのが楽しみになってきたぜ!

グリンダ 木村花代
エルファバ 江畑晶慧
ネッサローズ 山本貴永
マダム・モリブル 八重沢真美
フィエロ 北澤裕輔
ボック 伊藤綾祐
ディラモンド教授 前田貞一郎
オズの魔法使い 栗原英雄
男性アンサンブル 清川 晶、町田兼一、齊藤 翔、
松尾 篤、田井 啓、奈良坂潤紀、
賀山祐介、清原卓海、三宅克典
女性アンサンブル 服部ゆう、長島 祥、あべゆき、
孫田智恵、小野さや香、小澤真琴、
花田菜美子、荒木 舞、羽田三美

ウィキッドのホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/index.html

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2009年8月 2日 (日)

四季「エルコスの祈り」全国公演(小美玉市)

エルコス 五所真理子
ストーン博士 岡崎克哉
ジョン 鎌滝健太
ダニエラ 菅本烈子
パルタ 丹下博喜
ダーリー 川口雄二
理事長 高林幸兵
セールスマン 神保幸由

「エルコスの祈り」全国公演を、茨城県は小美玉市で鑑賞。自分は千葉県柏市に住んでいるが、もともとは水戸の育ちであり、現在も本家は水戸の少し南、鉾田市にある。小美玉市はその鉾田市の隣りにあるので、本家に顔を出しがてら足を向けたのだ。

会場の小美玉市四季文化館「みの~れ」は、名前に四季が入っているからでもないだろうが、四季のファミリーミュージカル全国公演では高確率でスケジュールに組み入れられる。主催事業に熱心なホールなので、誘致に積極的なのだろう。

豊かな緑に包まれたなかなか魅力的なホールは、内装も木材を中心にした瀟洒なものだ。キャパシティは500ほどで、ほどよく段差がついていてとても舞台がとても見やすい。演劇にはぴったりの会場である。

さて、「エルコス」は1998年の全国公演以来である。当時はまだタイトルが「エルリック・コスモスの239時間」だった。そして97年入団の木村花代がいきなり主役に抜擢された公演であり、同時に始めて自分が彼女を見た公演である。

ファミリーミュージカルだが、四季のファミリーミュージカルは佳作が多い。そして子供向けということもあって、楽曲の覚えやすいメロディーが強く印象に残る。エルコスの主題歌ともいえる「語りかけよう」は、「魔法をすてたマジョリン」の「心から心へ」、「人間になりたがった猫」の「すてきな友達」と並ぶ名曲だ。この3作品でCDとか出してくれないかなあ。

50年後の未来。落ちこぼれと判断された子供たちを徹底した管理教育によって矯正させようとする「ユートピア学園」に、一台のロボットが送り込まれる。「CPΣ・081-1型ESPアンドロイド・エスパー エルリック・コスモス」略称エルコスと名づけられたこの女性型ヒューマノイドは、あらゆる業務に対応できるだけでなく、超能力まで使いこなす。そしてその開発者、ストーン博士はエルコスに、子供たちの夢や希望を取り戻させようとする。エルコスは子供たちと一緒に生活をしながら、それぞれの長所や個性を見出し、着々と博士の思いを実現していく。しかし、それを快く思わない教師たちの反感を買い、エルコスの追放を画策しはじめて・・・という、ちょっと古めかしいSF的世界観でストーリーが進行していく。

この作品は、「マジョリン」や「人間になりたがった猫」と比べると、ラストがちょっぴり悲しい終わり方である。そのため、四季の公式携帯サイトでダウンロードできる「語りかけよう」の着メロを聴くだけで、うっすら涙が出てきそうになる。年のせいではない、断じて。小林よしのりの言葉を借りて言えば「涙管が塞がっている」のだ。

とはいえ、俺も四季の舞台をさんざん観てきた。だから今回は大丈夫だろう、と思っていたが――ダメだった。あのラストシーンは反則だと思う。

そして、その感動はエルコス役への思い入れが強いほど、大きなものとなる構造になっている。前回は木村花代にすっかり参っていたのでそれはもう強烈だったのだ。

今回、エルコスを演じたのは五所真理子。たぶん初見。五所エルコスが舞台に登場したときの感想は「かっ、可愛い…」。正直、メイクが濃すぎて顔はよくわからなかったが、小っちゃくて元気いっぱい、そこにあの真っ白なエルコスのコス、略してエルコスだから、これまた反則というものだ。そして、実はエルコスは学校の先生なので、どちらかというと歌のおねいさんなキャラ設定である。見た目・雰囲気と正反対なキャラに萌えまくりだ。「夢から醒めた夢」で娘役不在を嘆いたばかりだが、こんな隠し玉(別に隠しちゃいないが)がいたなんて!この五所エルコスにすっかり魂抜き取られ、まんまとラストシーンでまたもや必至に涙をこらえるはめになってしまった。

脇を固める中には、マジョリンのダビット役や、「マンマ・ミーア!」ペッパー役の鎌滝健太、そしてマンマのエディといったらこの人、の川口雄二など、おなじみの役者の顔も見え、実に楽しい舞台だった。

そして終演後には「ユタと不思議な仲間たち」で大人気の「お見送り」。ロビーで俳優たちと握手ができるという、AKB商法まがいのナイスなイベントだ。

迷わずエルコスのところに行こうと思ったが、人がいっぱいでなかなか近づけない。ふと横に、マジョリンのオカシラス様のイメージがいまだに強い実力派、この日セールスマンを演じた神保幸由がいるのに気づいた。ここでアイドルファンの自分と、四季ファンの自分との間で葛藤が生じる。「まずベテランの熱演に賛辞を述べるべきではないか?」四季ファンの自分が暴走するアイドルファンの自分をなだめる。そうだ、その通りだ。

俺「神保さん、応援してます!」神保「どうも、ありがとうございます。」うーむ、渋い。

さあ、エルコスのところに行こう。しかし、川口雄二が俺の前にたちはだかり、役の延長でおどけながら握手を求めてくる。川口雄二はいい意味で四季の雰囲気を変えるパワーを持った役者だ。彼も応援せねば。

俺「最高っス!」川口「ありがと~う(役の口調で)」さすがエンターテイナーだ。

いよいよエルコスだ!と思ったら、今度は鎌滝健太がいる。彼のペッパーは本当にハナについた。前途有望な、いい役者だと思う。

俺「がんばってください!」鎌滝「はい、がんばります」ナイスガイだ。

よし、心おきなくエルコスと握手だ!と思った瞬間、係りの人が「すいません、お時間ですので…」とロビーから俳優たちを引っ込めようとしている。ああ無情。アイドルファンの自分が急速に気化していく。

しかし去っていく五所ちゃんに(もうちゃん付け)、果敢に握手を求める人がいた。俺にあの積極性はないなあ。あったらもうちっとましな人生送ってるよ、と思いつつその様子を眺めていた。しかし転んでもタダで起きてはいかん、とその様子を撮ったのがこれ。

見よ、この腰の低さを。アイドルファンは実はこういう場面にものすごく弱いのである。先日も、東京ビッグサイトのAKB48大握手回で、休憩時間に控え室に入ろうとする高橋みなみと渡辺麻友を見かけたのだが、高橋みなみの方が人生でもAKBでも事務所でも先輩であるにもかかわらず、渡辺麻友に道を譲ろうとしていたのを見て、一生たかみなについて行こうと思ったぐらいだ。

そんなこんなで、たぶんこの全国公演、リピートしてしまいそうな気がしてきた。四季とAKB商法の強力タッグの前では、もはやなすすべもない。

「エルコスの祈り」ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/elcos/index.html

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2009年7月25日 (土)

四季「ウィキッド」濱田・沼尾のコンビ芸

グリンダ 沼尾みゆき
エルファバ 濱田めぐみ
ネッサローズ 山本貴永
マダム・モリブル 八重沢真美
フィエロ 北澤裕輔
ボック 伊藤綾祐
ディラモンド教授 前田貞一郎
オズの魔法使い 飯野おさみ
男性アンサンブル 清川 晶、町田兼一、齊藤 翔、
斎藤准一郎、田井 啓、奈良坂潤紀、
賀山祐介、清原卓海、三宅克典
女性アンサンブル 服部ゆう、長島 祥、真家瑠美子、
宇垣あかね、光川 愛、小澤真琴、
荒木美保、伊藤典子、羽田三美

ついこの前に濱田・沼尾コンビを観たように思ったが、調べたらもう半年も前の話だった。それならばまた観たくなってもいたしかたないというものではないか。大手を振って四季劇場「海」へ。

沼尾グリンダ様はかなりの連投が続いているが、疲れを感じさせない好調ぶりだ。この人の喉の強さは底なしだ。さすがオペラ歌手、といいたいところだが、それが自身の努力によるものであることはファンならみんな知っている。

そして濱田エルフィーも絶好調だ。安定感と存在感はもちろんだが、彼女がすばらしいのは、その演技、自分なりのエルファバ像をどんどん変化させている点だ。

特に、新しいエルファバ役が出てくると、大きく変化するように思える。樋口麻美のエルファバが出てきた後は、樋口エルフィーの持ち味である威勢の良さが演技のどこかに入るようになった。そして今回は、江畑晶慧のエルファバから強く感じるフレッシュさを取り込んでいた。一幕のシズ大学のシーンでは、女子大生というより、女子高生のような可愛らしさが炸裂していた。JKめぐ――こ、これは萌える……。

濱田めぐみは、まるで戦った相手の技を自分のものとする北斗神拳の伝承者のようだ。別にパクっているわけではなく、自分の演技を変えることを恐れない覚悟を持っているのだろう。実に頭の下がる思いである。

そんなわけで、グリンダ様の忠実なるしもべである自分も、今回はめぐみ様にすっかり傾倒していた。ま、よくあることですよ。

江畑の急成長ぶりは目を見張るものがあるが、やはり濱田・樋口のエルファバにはまだまだ及ばない。そして、濱田・樋口の実力差はほとんどなく、あとは趣味の問題という気がする。しかし、グリンダとの相性、という点で見れば、やはり濱田・沼尾のコンビに勝るものはない。意外にこの作品ではちょこちょこ許されるアドリブ(とはいかないまでも、ちょっとしたアレンジ)も、息がぴったりで見ていて楽しい。この作品では、2人の仲の良さが印象深いほどラストの感動も強くなる。この日の「For Good」は、格別の味わいだった。

いよいよ千秋楽も近づいてきた。このままオリジナルコンビで突っ走るのか?それとも新キャストが登場するのか?大阪公演も発売になり、大詰めを迎えたウィキッド東京公演。最後まで目が離せない。

「ウィキッド」のホームページ
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2009年7月12日 (日)

四季「夢から醒めた夢」東京公演初日 樋口ピコ復活

ピコ 樋口麻美
マコ 苫田亜沙子
マコの母 白木美貴子
メソ 有賀光一
デビル 道口瑞之
エンジェル 藤原大輔
ヤクザ 野中万寿夫
暴走族 韓 盛治
部長 田中廣臣
老人 山口嘉三
老婦人 斉藤昭子
夢の配達人 味方隆司


昨年の東京公演終了から1年を待たずに「夢から醒めた夢」東京公演の幕が開いた。自分にとっては2月の京都公演以来、約半年ぶりの夢から醒めた夢。なんべん見ても飽きのこない、大好きな作品だ。

吉沢梨絵の退団に伴い、この公演は真家瑠美子ピコのシングルキャストで行くのかと思いきや、意外にも樋口麻美ピコが大復活。今となっては保坂知寿と吉沢の中継ぎピコのような存在になってしまった樋口ピコだが、ここで挽回となるのだろうか。

前回、樋口ピコを見たのは記録によれば2005年の6月。考えてみると、あの公演はピコが樋口・木村花代・吉沢という強力な体制で、その他のキャストも実に豪華な布陣だった。

この4年で、樋口は女優として大きく成長したと思う。特に「ウエストサイド物語」のアニタ、そして「ウィキッド」のエルファバを見事に演じ、演技の幅をぐんと広げた。それがピコ役にどう反映されるのか注目だな、と期待しつつショウタイムへ。

しかし、正直なところ以前のピコと目だって変わった感じはしなかった。やはりソツのない、無難な優等生ピコである。よく聞いていると、歌い方に少しやわらかさが増し、ピコのやさしさをより明確に表現できているようにも感じたが、気のせいかもしれない。またこの日はやや声の調子が悪かったらしく、何度か苦しそうな場面もあった。

変わったといえば味方隆司の配達人である。味方配達人は、ひょうひょうとしていてつかみどころがない、食えない配達人というイメージがあった。しかし、この日の配達人は声も演技も重さと固さを感じさせ、夢の配達人というより、霊界の門番という雰囲気がした。また新しい配達人像が誕生したのも面白いが、味方隆司という人はいったいどれだけの引き出しを持っているのだろう。

マコには苫田亜沙子。現時点ではいちばん好きなマコだ。苫田という人は、女優としては比較的濃いキャラだと思うが、不思議にどんな役にも馴染んでしまうのが不思議だ。そして演技もさることながら、歌い方に表情があり、マコという自分の大好きな登場人物を非常にうまく、ていねいに創り上げている。さらに、観る者をひきつける独特の吸引力がある。アレの話だけじゃなくてさ。グリンダにクリスティーヌ、と重い役を次々こなしているが、今度は何を演じてくれるのか、実に楽しみだ。アムネリスはどうかな?アイーダ役にフレッシュなメンバーが加われば、それもありか。

残念なのは、これは最近ずっとそうなのだが、子供たちを演じる女性アンサンブルが低調なこと。若手の登龍門と言われるこの役も、北井久美子や村岡萌絵が抜けて以来、どうもさえない。この役の出来も作品の感動に深くかかわるだけに、四季の娘役養成システム(なんてものがあるかどうかは別として)は大いに奮起していただきたい。

初見のキャストもおらず、強烈な印象はないものの、全体的に安定した完成度の高い舞台だったことは確かだ。1月足らずの短い公演だが、足しげく通うことになるだろう。


「夢から醒めた夢」のホームページ
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2009年6月20日 (土)

四季「春のめざめ」谷口ベンドラ いいんじゃなーい?

ベンドラ 谷口あかり
マルタ 撫佐仁美
テーア 岸本美香
アンナ 松田佑子
イルゼ 石塚智子
メルヒオール 柿澤勇人
モリッツ 三雲 肇
ハンシェン 一和洋輔
エルンスト 竹内一樹
ゲオルグ 白瀬英典
オットー 玉井晴章
大人の女性 都築香弥子
大人の男性 田代隆秀
女性アンサンブル 玉石まどか、勝間千明
男性アンサンブル 加藤 迪、南 晶人

開幕から1月以上経過し、ついに新ベンドラ登場だ。

「春のめざめ」四季版にはおおむね満足しているものの、初回に見たとき感じた「女優陣が弱い」という点は、なかなか改善されなかった。前回観たとき、岸本テーアの投入でちょっと雰囲気が変わったと感じたが、やはり問題はベンドラだ。林香純のベンドラは、歌はうまいが見た目の雰囲気がベンドラらしくない。何べんも言うけど、俺のベンドラ基準はこの子だからね。ハードルはむちゃくちゃ高いのだ。

谷口あかりは、前回ロビーで目撃して、雰囲気はバッチリだなあ、と思っていた。しかしベンドラやその同級生の、ノーメーク(に見えるメーク)とあの古臭い衣装を着たときどう見えるかは未知数だった。

開幕とともに舞台に登場し、椅子に下着姿で立った谷口ベンドラ。

「ほおーう・・・」

俺だけでなく、客席全体からため息が漏れた(ように感じた)。いける。こいつはヒットだ。

正直なところ、女子高生に見えるかっつったらそりゃ疑問で、林同様ちょっと大人っぽい印象はある。しかし、顔つき、体つきがベンドラの危うさ、はかなさを伝えるのにぴったりだ。

舞台が進むにつれ、ついベンドラを視線で追ってしまう。そうそう、この感覚。男なら中学生ぐらいのとき、学校ではだいたいクラスの女子を目で追っていたと思うが、その感覚が蘇ってきた。まあ他の作品を見るときは当たり前なんだけどね、俺の場合。何しろ正常ではない観劇姿勢ですから。

歌は林に一歩譲る。意外に低音が響くので、歌い方はあまりベンドラっぽくないかもしれない。演技はまだ硬いが、序盤の母親とのやりとりではそれなりに笑いも取れていたので、今後の伸びは期待できそうだ。

ということは、今のところ評価すべきは見た目だけ、ということか?

あえて言おう。その通りである。そして、それはこの作品では重要なことなのだ。

この「春のめざめ」は、「A Rock & Roll Fable(ロックンロールの寓話)」だと思う。この言葉は、ウォルター・ヒル監督の1984年のヒット映画「ストリート・オブ・ファイヤー」の冒頭にかかげられる言葉だ。

この作品は寓話にすぎない。19世紀末時点では、これはリアリティーあふれる物語だったのかもしれない。しかし21世紀の今となっては、10代の性の目覚めであそこまで悩む子供も大人もいないだろう。児童虐待や若者の自殺には悲しいことに今もリアリティーがあるが、そこはこの作品の主たるテーマではない。

この作品のテーマはあくまで10代の性の悩みであり、そしてそれはもはや都市伝説化している。そう考えると、この作品にはそもそもテーマがない。あるのはただ、カッコよく歌い踊る若者たちだけだ。それを素直に楽しむのが、「春のめざめ」の正しい鑑賞法であると自分は考える。

四季は、記者会見や宣伝で「命の大切さを訴えるという意味では、『こころの劇場』と同じ」とか言っていた。大ウソだ。恐らく、この作品を上演したいと考えた劇団内の一派が、上層部を説得するためにでっちあげたものだろう。そしてそれがそのまま、エンターテインメントより芸術性・文学性を求める日本の演劇界に対する言い訳にもなる。

寓話である以上、その登場人物は見た目からして分かりやすいほうがいい。メルヒオールとベンドラは美男美女であるべきだ。モリッツはダメさ加減がにじみ出ているべきだし、ハンシェンは怪しくなくてはいけないのだ。

そういう意味で、今回の舞台はやっと「役者がそろった」という印象を受けた。舞台自体の吸引力が、さらに増したと感じた。いつもは途中ちょっと眠くなるシーンもないではないのだが、ずっと集中力を維持することができた。

ベンドラ以外にも初見キャストが。石塚イルゼはどうだろう。石塚智子って、昔「コーラスライン」とかに出てた石塚智子だろうか?さらに、昨年の「CHICAGO」日本人キャスト公演にもその名前があるけど、同一人物か?いずれにしても、あまり強い印象がないのである。この舞台では、歌もうまいし、演技にも熱が入っていた。しかし、やはり金平真弥があまりにも強烈すぎたため、どうも物足りない感が残ってしまう。金平の声と演技には、あばずれた中にも慈母の情が感じられ、それがモリッツとの最後の会話のシーンで観客の胸を打つのだ。

大人の女性は都築香弥子、大人の男性は田代隆秀にそれぞれ交代。中野今日子・志村要コンビ同様、ベテランの技が冴え渡る。田代は演じる役によって本当に別人のように見えた。さすがである。

新ベンドラを迎え、舞台全体が活性化していたように思えた。岸本テーアは子供おばちゃんぶりに磨きがかかり、ハンシェン・エルンストのディープキスはさらに激しさを増してきた。この日はほぼ満席だったが、平日は空席も多いと聞く。ぜひここでもう一度加速度をつけて、この自由劇場での公演を大成功させてほしいものだ。それが四季の未来を開くことになるはずだから。

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春のめざめ ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/springawakening/index.html

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2009年6月13日 (土)

四季「ソング&ダンス~55ステップス~」鈴木ほのか他1名登場

ヴォーカルパート 渡辺 正、村 俊英、李 涛、井上智恵、鈴木ほのか、
花田えりか
ダンスパート 川東優希、斎藤准一郎、松島勇気、徳永義満、加藤敬二、
成田蔵人、金久 烈、神谷 凌、前田順弘、
加加藤久美子、駅田郁美、杏奈、須田綾乃、柴田桃子、
柴田厚子、坂田加奈子、高倉恵美、今 彩乃、泉 春花

先週から名古屋の55ステップに鈴木ほのかが登場。これは朗報だ。鈴木ほのかの四季への参加が、マンマ・ミーア!だけで終わってしまったらさびしいと思っていた。しかも、ソング&ダンスへの出演、ということは、今後も四季の作品に出るという期待も大いに高まってくる。

こりゃ名古屋に行ったらぜひ観なくてはと思っていたら、今週さらに新キャスト。びっくり仰天の「渡辺正」ときたもんだ。こもった歌声で苦しそうに歌うことで、「マンマ・ミーア!」のサム役や「アイーダ」のラダメス役で悪評をほしいままにしてきた男である。それが「ヴォーカルパート」の筆頭に挙がっている。つまり、芝清道や阿久津陽一郎のパートだ。いったい何の冗談だろう。これはこれで観なくては、と、ほのか様とは微妙に異なる興味を抱いて名古屋ミュージカル劇場へ。

ほのか様は期待通り、いや、期待以上だった。美形とナイスバディはもちろんだが、その歌声の素晴らしさを四季ファンに強烈にアピールする結果となった。ほのか様の声は、デビュー当時はどちらかというとかわいらしい、細めの声だった。それが長年のキャリアと、おそらく本人の修練の結果、実にボリュームのある声へと生まれ変わった。しかし、デビュー当時の可憐な声も実はまだ健在なのである。それを示したのが「メモリー」だ。多くのグリザベラ役者は、張りのある太い声で歌い始めるが、ほのか様は最初シラバブかと思うほど、細い声で歌い始めた。そして次第にその年輪を感じさせる声に変えていき、また細い声に戻したり、と、曲の中で声のトーンを自在に変化させていた。まさに、それは鈴木ほのかという女優のこれまでの軌跡を象徴している歌声であり、同時にそのイメージがグリザベラの平坦ではなかったであろう人生(猫生?)とぴたりと重なる。グリザベラそのものがここにいる、と感じた。歌いあげる声量は、早水小夜子にはかなわないかもしれない。しかし、最後の「ほら、見て」の一言がずしんと胸に響いた。こんな経験は久しくなかったかもしれない。ほのかグリザベラ、何としても横浜で見たい。これは絶対に。

李香蘭の「二つの祖国」も良かった。やはりここでも、東宝と四季という、2つの世界を渡ろうとしている鈴木ほのかの存在が李香蘭のイメージにだぶる、というのはちょっと強引すぎかな。

一方の渡辺正。思わず渡辺正(笑)と書きたくなってしまうほど、自分の興味は「いかに笑わせてくれるか」だった。しかし、最初の曲「ようこそ劇場へ」は、本来彼のパートの曲なのに、村俊英が歌った。あれえ。同様に、二幕初めの「夢を配る」は李涛が。重要な曲を他のパートに任せてまで彼を登場させる四季の狙いって一体…。

そんなわけで、彼のソロがやっと聞けたのは「アイーダ」のナンバー「星のさだめ」。相変わらず苦しそうに歌うので、ちっともロマンチックじゃない。しかし、これは本番の舞台を観ているから、さほど驚かない。続く「ノートルダムの鐘」の「トプシー・ターヴィー」は、これは歌が歌だから、あまりそれが気にならない。そう、さかさま祭りだからね。歌のまずい人が(あっ言っちゃった)ミュージカルでソロを歌う、というのもありなのかも。これぞ「道化の祭り」だ。

二幕に入っても相変わらずで、「エビータ」の「飛躍に向かって」では、苦しそうな歌声にぎこちない動きがプラス。こんなチェ・ゲバラがいたら、キューバ革命は成功していなかったと思う。

最後の見せ場「スーパースター」は相当心配していたが、実はそれほど悪くもなかった。歌いだしはちょっとずっこけたが、ノってくるにつれて、それなりにサマになって見えてきたのだ。やはり「ジーザス・クライスト=スーパースター」はロックである。芝や阿久津がいかに歌がうまくても、彼らの歌い方はロックではない。じゃあ渡辺正の歌い方がロックかと言われれば、「ちゅらさん」のジョージ 我那覇に「それはケイタツ、ロックじゃナイよ」と言われてしまいそうだが、そもそも歌のまずい人が(また言ったな!代表にも言われたことないのに!)ミュージカルの舞台でソロを務めるという状況は、ある意味でロックである。だから、何となく受け入れられてしまったのかもしれない。

というわけで、出番が少なかったこともあり、期待していたほどのショックもダメージもなかったが、自分のようにハナから笑いにきている不謹慎な客はともかく、普通にこの作品を鑑賞したい人には、やはり不満は残ると思う。作品主義を尊重するなら、変えるべきだろう。個人的には渡辺正嫌いじゃないので、もっといろんな作品で観たいとは思うが、彼が立つべきはこの舞台ではないはずだ。

しかし、なんだかんだ言って公演自体はなかなか満足のいくものだった。村はやはりカッコいい。その歌声には男の色気というか、艶がある。それが数々のナンバーでいかんなく発揮され、改めてファンになった。スターライトエクスプレスもぜひ上演してほしいものだ。

松島勇気が参加したことで、細かい場面にシャープさとちょっとした笑いが添えられたことも大きい。加藤・松島のコンビはセリフや歌でなく「動き」で観客を魅了できるのが実にいい。高倉恵美もいつも通りキレイだ。

まあ、渡辺正そんなに嫌いじゃないよ、という人以外にはあまり強く勧められないが、鈴木ほのかが出ているうちに、ぜひ多くの人に見ていただきたいところではある。

「ソング&ダンス」WEBサイト

http://www.shiki.gr.jp/applause/songdance55/index.html

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2009年5月16日 (土)

四季「春のめざめ」じょじょに微妙なキャス変

ベンドラ 林 香純
マルタ 勝間千明
テーア 岸本美香
アンナ 松田佑子
イルゼ 金平真弥
メルヒオール 柿澤勇人
モリッツ 厂原時也
ハンシェン 一和洋輔
エルンスト 竹内一樹
ゲオルグ 白瀬英典
オットー 加藤 迪
大人の女性 中野今日子
大人の男性 志村 要
女性アンサンブル 玉石まどか、有村弥希子
男性アンサンブル 玉井晴章、南 晶人

いいペースで3回目。そして待望の新キャスト、それもブロードウェーで観たときから期待していた厂原時也の投入である。

三雲モリッツも悪くはない、というかかなりいい。歌にはパンチがあるし、モリッツのダメさ加減が実にいい具合に出ている。あんなにダメなんだから、周囲の人ももうちょっとケアしとけよ、というレベルである。あのヌボッとした雰囲気は、モリッツのスタンダードなのだろうと思う。あっちで観たときのモリッツも、やはりそんな空気を醸し出していた。

しかし、厂原モリッツは少し毛色が違う。

ダメであることは確かだが、もうちょっとこう、なんというか、ギラギラした、刃物のような危うさがある。ある意味、非常にロックである。その演技を見ていて、ふとアリスの「狂った果実」を思い出した。年がばれちゃうけど。

表情や演技、歌い方が実に細やかで、自分なりのモリッツを200%表現しようという姿勢が前面に出ている。その意気やよし。作品によっては、あまり自分を出そうとすると壊れてしまう舞台もあるが、この「春のめざめ」は役者がガンガン前に出てもビクともしない。むしろそうしたエネルギーを吸い取ってより磨きがかかる作品だ。そもそもロックってそういうものじゃないのか。「春のめざめ」には「役者ではなく作品を見ろ」の論法は通用しない。役者を見ることと作品を見ることは、この際同義だ。

その存在感が冴え渡ったのは、2幕でイルゼと2人、観客の方を向いて語り、歌うBlue Windのシーンだ。もともとここは見せ所だが、今日は一段と深い感動を覚えた。2人とも生と死の境界線、光と闇の狭間に立ったことで互いの存在を強く認識し、一瞬引かれあう。そしてイルゼの「むき出しの生」に触れたモリッツは、次第に表情を和らげ、死の覚悟が揺らいでいく。しかし、結局モリッツは後ろ向きの生より前向きの死を選ぶ(実はその前後感覚は若さ特有の錯覚だ)。その葛藤が表情の変化で手に取るように分かる。涙をためたその瞳には、ハンシェンならずともドキドキしちゃうぜ。厂原モリッツ、一見の価値がある。

そしてもうひとり、岸本テーアにも注目だ。あのメガネがますます顔をまるっちく見せて、ちょっとおばちゃん顔になっているファニーなテーアである。話し方もどことなくおばちゃんっぽい。いるいる、こういう女学生。斉藤由貴主演の「恋する女たち」に出てきた小林聡美みたいな感じだ。逆説的だけど、そのおばちゃんっぽさが子供っぽさを増幅させている。さすが岸本、子供を演じることにかけては一日の長がある。

新キャスト投入で、ますます目が話せない「春のめざめ」。次はいよいよ新ベンドラか?

この日、客席やロビーで普通に谷口あかりや浦壁多恵、伊藤綾祐がいた。もちろん歌いだしたりはしないが。間近で見て、谷口ベンドラを早く見てみたい気持ちで一杯になった。

「春のめざめ」WEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/springawakening/index.html

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2009年5月 9日 (土)

四季「ウィキッド」ワンダフル!新エルフィー

グリンダ 沼尾みゆき
エルファバ 江畑晶慧
ネッサローズ 小粥真由美
マダム・モリブル 八重沢真美
フィエロ 北澤裕輔
ボック 金田 暢彦
ディラモンド教授 前田貞一郎
オズの魔法使い 飯野おさみ
男性アンサンブル 須永友裕、町田兼一、熊 剣、
松尾 篤、田井 啓、坂本 剛、
賀山祐介、清原卓海、内海雅智
女性アンサンブル 長島 祥、間尾 茜、真家瑠美子、
孫田智恵、今井美範、有美ミシェール、
花田菜美子、柴田桃子、遠藤珠生

第三のエルファバ、今井美範がなかなか定着しないなあ、と思っているうちに第四のエルファバがゴールデンウィーク突入と同時に登場した。江畑晶慧である。

彼女は韓国出身とのことだが、以前「ライオンキング」のナラ役で観たとき、日本語のセリフにぜんぜん問題のない人だなあ、と思った記憶がある。歌も安定していて力があった。その後ソフィー役としてデビューしたが未見。まさかエルファバ役とはノーマークだった。

いったいどんなエルファバになったのだろう、と楽しみに海劇場へ。

沼尾みゆきの板についたグリンダ様の歌唱を堪能したのち、舞台に飛び出してきた江畑エルフィー。第一印象は、メガネがよく似合っていて、シズ大学の制服に違和感のない、フレッシュな感じのエルファバ。小粥ネッサと並ぶと、ネッサのほうが姉に見える。妹属性のエルファバなんて初めてみたぞ!

ライオンキングで感じたのと同様、セリフには全く問題がない。問題がないどころか、日本人ではないと思う人はほとんどいないのではないか、というレベルだ。その点について不安な人は、安心していいと思う。

一幕では、そのフレッシュな雰囲気を生かし、ちょっと上目づかいの娘っぽい表情が印象的だ。しかし、二幕では下目づかいで周囲を威圧したり、フィエロに対してはまっすぐに視線を送ったり、と表情を変えている。少女から大人へ、エルファバを演じ分けている。これはなかなかいい。

地声が低めでややハスキーということもあり、歌は低音が実に力強い。高い声の沼尾グリンダとも対照的だ。しかし高音もきれいに伸びる。

そりゃ濱田めぐみ、樋口麻美のエルファバに比べたら、歌のパンチ力も、演技の情感もまだまだ足りないのは確かだ。しかし、この2人のエルファバは、レベルが高すぎるのだと言っていい。もともと難役だったエルファバを、さらにハードルの高いものにしているのだ。自分がブロードウェーで観た2人のエルファバと比べたら、江畑エルフィーは全く遜色ない。まあイディーナ・メンゼルを観ていないからそんなことが言えるのだ、と言われるかもしれないが――。

ただ濱田エルフィーにも樋口エルフィーにもない、一幕のはつらつとした雰囲気は彼女の持ち味だと思う。二幕で、あえて“ウィキッド”の汚名を着たときとの落差がもっとも大きい。だがグリンダと対面したときに、ふっと少女時代の表情を覗かせる。まだ全体的には荒けずりな演技の中でも、そうした細やかさが垣間見えるのは重要なポイントだと思う。

さて、第4のエルファバが誕生したことで、いよいよ新グリンダの登場に注目が集まる。木村花代が「美女と野獣」を抜けたら、いよいよグリンダフラグが立つか?それとも、別の“花”が先に来てしまうのか?9月千秋楽へ向け、自分のモチベーションを大きく左右すると思われる新キャスト動向、しばらく目が離せそうにない。

幕間に「グリンダのソーダ」を飲んでみた。味はまあまあ。店員のお姉さんの「お次グリンダでーす」がツボにはまった

「ウィキッド」WEBサイト

http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/index.html

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2009年5月 5日 (火)

四季「春のめざめ」アンサンブルにも注目

※まだまだばれます。読む前に観ましょう。

ベンドラ 林 香純
マルタ 撫佐仁美
テーア 有村弥希子
アンナ 松田佑子
イルゼ 金平真弥
メルヒオール 柿澤勇人
モリッツ 三雲 肇
ハンシェン 一和洋輔
エルンスト 竹内一樹
ゲオルグ 白瀬英典
オットー 加藤 迪
大人の女性 中野今日子
大人の男性 志村 要
女性アンサンブル 岸本美香、浦壁多恵
男性アンサンブル

伊藤綾祐、玉井晴章

はやばやと2回目の「春のめざめ」。「ウィキッド」並みのペースだ。

劇場に向かおうと浜松町駅の改札を抜けたら、キレイな女性2人がいたのでつい目を奪われた。そして驚いた。AKB48チームAの佐藤亜美菜と高城亜樹だった。あみなはメガネをかけていたが一発でそれと分かる。あきちゃはメガネすらなく、そのまんま。無防備すぎだろ。おそらく、文化放送に向かう途中だったものと思われる。

幸せな気持ちで自由劇場へ。メインキャストは変わらず。アンサンブルが変わった。キャスト表をチェックせずに見ていたので、最初は変わったことに気づかなかったが、よく見るとボックが前回上手のステージシートに座っていたのが、下手側に移動している。それで変更があったことを知った。今回は2階席で見ていたので、舞台全体の動きがよく見えたのだ。

この作品のアンサンブルは、ステージシートの中に観客のフリをして座っており、突然舞台に参加するという立ち位置になっている。ステージシートの存在は、舞台と客席という壁を崩し、そこに一体感をもたらす効果があるが、この作品ではさらにそれを一歩進めているのだ。

もっとも、そうした手法は演劇の歴史をぐーんと遡れば、昔からあったものだということが分かる。ギリシャ悲劇における「コロス」は、舞台の上で芝居を眺めながら、必要に応じてその舞台に参加していた。日本でも、能舞台おける地謡が同じような役目を果たしている。

マイクパフォーマンスといい、この作品は「古さ」をうまく使って「新しさ」に結びつけて成功したといえるだろう。

話がそれたが、女性アンサンブルはメンバーが変わったことがすぐ分かった。岸本美香がいたからである。俳優としては短所であろう身長の低さを逆に利用し、「美女と野獣」のチップや「ユタと不思議な仲間たち」のモンゼなどを演じてきた個性派だ。彼女のパフォーマンスは素晴らしかった。「Totally Fucked」では、壁面によじのぼり、パンツが見えそうな勢いで(見えなかったけどね)小さな体を大きく動かしていた。彼女もテーア役に名前を連ねているが、ぜひメインキャストで見てみたい。テーアと言わず、ベンドラだって行けるんじゃないか?というのは主観的っつうか趣味に走ってますかね。

メインキャストでは、男優陣はうまく固さが取れてきた。それが、もっとのびやかな演技につながっていってほしい。この作品は、完成度の高い世界観を持っているが、俳優たちの自由な演技を許容する懐の深さも兼ね備えているように思う。もっともっと弾けてもいいはずだ。それが突き抜けたカッコ良さを生み出してくれるに違いない。

女優陣は、予想どおり全く同じ演技。それぞれの役者のパフォーマンスは、もう完成してしまっている。恐らくこれ以上は変わらない。だから、早めにメンバーチェンジして刺激を与えていかないと、ダイナミックさが売りのこの作品にスタティックさを与えてしまう。新キャスト投入、期待してまずぜ。

それにしても、自由劇場はこの作品にピッタリの空間だ。客席と舞台との一体感をこれほど感じられる劇場もほかにあるまい。つくづく、四季が上演してくれて良かったと思う。そうでなければ、ツアー版がやってきて、Bunkamuraとか厚生年金会館とかActシアターとか、どでかい箱で上演していただろうから。恐らくそれではこの作品の魅力は伝わらない。このぜいたくな演劇空間は、体験してみるだけの価値がある。

そもそも自由劇場は、実験的なワークショップの場になってほしいとかねがね思っていた。それが近年は懐古趣味的な作品や、ファミリーミュージカルの劇場になってしまっていた。それらが悪いというつもりはさらさらないが、それだけではもったいない。春のめざめ終了後も、野心的な取り組みの基地として活躍してほしいものだ。

さて、約束どおり2階席で見てきたので、アレに関するレポート。ちゃんと露出してました。でも一瞬。出してすぐひっこめる、みたいな。ジャネット・ジャクソンのポロリレベルだ。ブロードウェーではかなり長時間露出してたので、差は大きい。これなら無理して出すことなかったんじゃ、とも思うが、オリジナル演出と、日本的倫理観の落としどころがここ、ということなのだろう。がんばった成果なのなら、それにいちゃもんをつけるものではない。むしろ、あの場面はいろんな意味で「ドキッ」とさせることが重要なのに、正直なところ今のベンドラでは「ドキッ」としないことのほうが問題である

昭和初期に上演されたときのポスター。日本演劇って開明的だったんだな。

「春のめざめ」ウェブサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/springawakening/index.html

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2009年5月 2日 (土)

四季「春のめざめ」初日 デブ男の歌がうますぎる

※かなりばれます。

ベンドラ 林 香純
マルタ 撫佐仁美
テーア 有村弥希子
アンナ 松田佑子
イルゼ 金平真弥
メルヒオール 柿澤勇人
モリッツ 三雲 肇
ハンシェン 一和洋輔
エルンスト 竹内一樹
ゲオルグ 白瀬英典
オットー 加藤 迪
大人の女性 中野今日子
大人の男性 志村 要
女性アンサンブル 玉石まどか、勝間千明
男性アンサンブル 伊藤綾祐、南 晶人

何かと物議を醸したい感ありありながら、いまいち醸し出せずにいるままで初日を迎えた「春のめざめ」。教育再生会議のメンバーとか、政治家に頼んで「上演中止要請」でも出させて論争にするとか、そういう猿芝居でもあればちょっと面白いのにな、と思っていたが、さすがにそんなことはできなかったか。

とにもかくにも、昨年末にあっちで観たとき、しまったもっと前から観とくんだったと歯ぎしりした快作が日本上陸だ。トニー賞独占とはいえ、およそファミリー層からは縁遠い「若者たちの性の目覚め」を描くロック・ミュージカルとあってさすがの四季もメガヒットにはならないと判断したか、自由劇場での公演というずいぶん控えめな選択をした。

この作品の魅力はスタイリッシュさ。その一言につきる。洗練された音楽と、意表を突いたパフォーマンスとがあいまって作り出す圧倒的なカッコ良さ。それが「春のめざめ」のすべてと言っていい。

自分のように音楽に詳しい人でなくても、この作品の音楽が魅力にあふれたものであることは分かる。ミュージカルの音楽の場合、ノリのいい曲、耳に残る旋律でなくても「イイ!」と素直に言えるケースは少ないからだ。いつのまにか繰り返し聞きたくなってしまう、蠱惑的なその響きは、何とも形容しがたい思春期の心情を見事に観客の中に再現してくれる。

そしてあちこちで伝えられているように、自分もエントリーでレポートしたが、極めて特徴的なマイクパフォーマンス。あえてハンドマイクやスタンドマイクなど、形としてのマイクを登場させ、その持ち方、取り出し方、渡し方で登場人物の心理状態を表現するという、誰でもやりそうなのに、誰も考え付かなかったという斬新な演出手法だ。

性の問題、自殺、同性愛、世代間対立といった重苦しい問題を描きながらも、音楽とパフォーマンスのパワーによってその重力部分を吹き飛ばしてしまい、後には何も残らない。あえて言えば、爽やかな観後感(そんな言葉あるんかいな)だけが観客の心に残るのだ。

だから、この作品はある意味、「感動させて」しまったら失敗なのだと思う。日本の観客の中には「泣ける」ことを期待して劇場に向かう人も多い。しかし、泣いてしまったら、この作品の真価を味わうことはできないのだ。

四季の実力なら、音楽やパフォーマンスをオリジナルどおりに再現することは十分にできるだろう。不安なのは、それが重さを吹き飛ばすほどの風力をもったカッコ良さに昇華できるかどうか、である。

期待半分、不安半分で自由劇場に到着。ロビーに入って、さっそくひとつ安心した。案内などのスタッフが、そろいの作品ロゴの入ったTシャツを着ていたからだ。実は、これはオリジナルの劇場でもやっていたことなのだ。ブロードウェーの劇場でスタッフがTシャツを着ていることは珍しく、それがまた実に決まっていた。ロゴもかっこいいからね。物腰も他の劇場とはちょっと違って、よりフレンドリーな印象だった。なんだかアップルストアのように、スタッフひとりひとりが作品の世界観、ブランドを体現しているのだ。「これは他の作品とは違うな」とまず感じた記憶がある。自由劇場のスタッフは、中身はいつもと変わらないけれど、形から入るのが日本人だ。大いに結構じゃないか。

そして劇場内に足を踏み入れると、客席の雰囲気もオリジナルとそっくりだ。緞帳はなく、ステージはそのまま見えている。舞台装置はほとんどなく、昔の教室をイメージした高い壁と、数々の楽器と、ステージシートが用意されているだけ。劇場というより、ちょっと大きなライブハウスに入った感覚だ。うーん、わくわくしてきた。

そして開演。細かいところで変更点もあったようだが(正確には把握できてません。すいません)、ほぼオリジナルどおりだ。日本の文化に合わせて変更、などという情報もあったが、それはセリフをどう訳すか、という問題に収斂されたのだろう。訳については他の輸入作品同様、賛否両論があるだろうが、そんなに違和感を感じたところもなかった。

出演者については、全般的に男性陣の熱演ぶりが目立った。主役・メルヒオールの柿澤勇人。文句なしのハンサムさんだ。会見の映像では仮面ライダーカブトとかメイちゃんの執事の人みたいな雰囲気かな、と思ったが、実際に見るとアンジャッシュの人みたいだった。でもかっこいい。メリハリの効いた演技で、頭脳の明晰さと精神的な不安定さが同居するメルヒオールの危うさをうまく表現できていたと思う。歌も合格点だ。エルンストの竹内一樹とハンシェンの一和洋輔は、90年代に日本テレビで放送された「同窓会」を思い出させる同性愛シーンに体当たり。キモチ悪いほどのガチホモっぷりで、観客がさあーっと引いていくのが分かったほどだ。

ダメ男くんのモリッツを演じたのは韓国出身の三雲肇。ブログのエントリーは上げていないものの、彼が「ライオンキング」でシンバデビューを果たした舞台を実は観ている。そのときは「あちゃー」というぐらい日本語の発音が全くできておらず、比較的外国人俳優の発音には寛容な自分もさすがに許せなかった。しかし、この舞台では全く問題ないと感じた。ダメダメな演技もなかなか堂に入っていたと思う。

そして出色の出来は、太ったメガネの男、ゲオルグを演じた白瀬英典の無駄に素晴らしい歌声だ。パンフレットの写真を見ると本当は太っているわけではないようだが、髪型や衣装で藤子不二雄のまんがに出てくるような太った少年になりきっている。その見た目のインパクトは相当なもので、少年たちのシーンではまずそこに目が行ってしまうほどなのだが、その見た目からは想像できない、低音ながらクリアーな美しい声で「どうしても 揉みたい あのオッパイを♪」とか歌う。もう二重三重に面白い。面白いだけでなく、それがちゃんとカッコいい。これは重要なポイントだ。

対して女性陣は低調だ。ベンドラはじめ、みな思春期っぽさがない。なんだかみな大人びていて、大人びた上に子供の演技を重ねているようで、いまひとつ説得力がないのだ。この男性陣との差は何なのだろう。頭の中がエロでいっぱい、という時期は男だとみな一様に体験しているので、演技がしやすいのだろうか。女性の場合、そういう時期があってももう少し複雑で、一人ひとり異なるものなのかもしれない。

実年齢とか、見た目の問題ももちろんある。しかし、そこは演技でカバーできる部分だと思う。オリジナルだって、ティーンエイジャーの俳優ばかりが演じていたわけではない。まあ確かに自分が観たときのベンドラはリアル18歳の超絶美少女だったけれど。極端な話、芝清道がメルヒオール、荒川務がモリッツを演じたって、作品としては成立するはずだ。面白すぎて別の作品になってしまう恐れはあるが。

ただ、一人だけ、ひときわ輝いていた女優がいた。イルゼ役の金平真弥だ。彼女は良かった。二幕から唐突に出てくる(原作でもそう))メルヒオールやモリッツの幼馴染み、イルゼ。彼女は、ほかの娘たちと違いちょっとあばずれていて、その分少し大人っぽいキャラだから演技しやすい部分もあるのだろうが、その表情にはせつなさがあふれ、その歌声には慈愛の情が満ちている。正直、オリジナルを観たときにイルゼの印象はあまり強くなかった。金平の実力によってこの役が引き立ったのだ。

全体的には、十分満足のいくものだった。しかし、まだカッコ良さが重苦しさを吹き飛ばしきれていない。客席には涙を浮かべている人もいた。繰り返すが、この作品は泣かせては失敗なのだ。もっともっとカッコ良くしなくてはいけない。男性陣はまだ固さもあったので、それがほぐれてくればさらなるブラッシュアップが可能だと思う。控えにまわった厂原時也の登場も楽しみだ。問題は女優で、相当なテコ入れが必要になるだろう。こちらは固さも多少あったかもしれないが、どちらかといとそれぞれの役者レベルではもう完成してしまっているような気がする。だから、対応策としては総取り替えしか道はないかもしれない。「ふたりのロッテ」を観たときには、女学生っぽい女優さんがたくさんいるじゃないか、と思ったが、あれは制服に騙されていただけなのか?

しばらくは、女優の変化を期待しつつ、男優の進化を見守るという形でリピートすることになりそうだ。

最後に、一部の人は気になっているであろうアレのシーン。「エクウス」のように暗くしたり、という演出はなかったのでよかった。しかし、ベンドラの衣服のはだけ方が実に控えめで、1階席ではどこまで見えたのか判別不能だった。次は2階席でチェックする予定だが(最低)、おそらくあまりたいしたものは見えないのではないか。実に残念だ。メルヒオールのほうは、オリジナル同様、ちょっと半ケツが見える程度。柿澤ファンの人は上手側から狙おう

200905021248000

「春のめざめ」WEBサイト
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四季「キャッツ」東京公演千秋楽前日

グリザベラ 早水小夜子
ジェリーロラム=グリドルボーン 秋 夢子
ジェニエニドッツ 小松陽子
ランペルティーザ チェ ウンヘ
ディミータ 有永美奈子
ボンバルリーナ 西村麗子
シラバブ 南 めぐみ
タントミール 八鳥仁美
ジェミマ 王 クン
ヴィクトリア 千堂百慧
カッサンドラ 井藤湊香
オールドデュトロノミー チェ ソンジェ
アスパラガス=グロールタイガー/バストファージョーンズ 村 俊英
マンカストラップ 芝 清道
ラム・タム・タガー 荒川 務
ミストフェリーズ 金子信弛
マンゴジェリー 百々義則
スキンブルシャンクス 劉 昌明
コリコパット 花沢 翼
ランパスキャット ユ ホンチョル
カーバケッティ 齊藤太一
ギルバート 入江航平
マキャヴィティ 青山祐士
タンブルブルータス 川野 翔

千秋楽の抽選ははずれ、千秋楽移動に伴う発売分も入手できず、楽前日に参戦を決めた。村、芝、荒川とナイスミドル(?)がそろい踏み、青山マキャビティなんていう贅沢キャストも。もちろんグリザベラは早水小夜子だ。(みんな辞めちゃったし…)

だがひとり、非常に不安なキャストが。スキンブルシャンクスの劉 昌明だ。彼がまだユ・チャンミンと本名を名乗っていた3年前、スキンブルシャンクスとしてデビューしたばかりの時に観劇した。あれはひどかった。日本語の発音は多少割り引いて考えるにしても、歌も演技も最低で、大好きなスキンブルシャンクスのナンバーを台無しにされたことに怒りを感じた。それ以来、名前だけで避けていたほどだったが、2007年、「ユタと不思議な仲間たち」で実にいい演技をしていたため、勝手に自分の中で彼とは和解していた。

とはいえ、スキンブルを演じるとなるとやはり不安だ。和解の条文の中に、スキンブルだけは演じない、という項目を入れておけばよかった。

しかし、この日の彼のスキンブルシャンクスは素晴らしかった。昔は口を開けた間の抜けた表情が鼻についたが、今はいろんな表情を見せるようになった。時おり間の抜けた顔に戻るが、それがひとつの個性にも感じられた。ほかの役者が演じる優等生っぽいスキンブルシャンクスとはだいぶ印象は異なるものの、これはこれでアリだと感じた。そして、歌については高音が実にきれいに伸びる。「♪夜行列車の 旅は素敵~」のくだりは、実は結構みんな苦しそうに歌っている。それを実にのびやかに歌い上げていて、素直に感動した。いいスキンブルシャンクスになってくれた。今回の東京公演最大のわだかまりが、千秋楽前日にして解決できたのは何とも嬉しかった。

そうなると、もうあとはお祭り騒ぎである。実力派ぞろいのキャストなので、見ていて何の不安もない。そもそも観客が不安を感じる、ということはおかしいのだが、この1年ぐらいはそんなキャストばかりで、観てもエントリーを上げないことが続いていたのだ。

心なしか、役者たちもいつも以上に楽しんでこのキャッツを演じているような、何かいい意味で余裕のようなものが感じられた。それがこの作品の楽しさを、改めて心に深く感じさせてくれたように思う。スキンブルがすべってこけそうになったり、秋夢子のジェリーロラムが歌詞を間違えて村俊英のアスパラガスが微妙にずっこけたり、といったこともあったが、すべてご愛嬌だ。

終演後は簡単な特別カーテンコールも行われ、荒川務の名人芸によるタガー締めまで、10分近く拍手をしていたように思う。いつまでもこの空間を共有していたいと感じていた。本当に楽しい公演だった。

4年6カ月におよぶ東京公演。自分はさっぱり人間的に成長していないけど、年齢だけは着実に重ねている。そろそろ真剣に人生に向き合うべきだとは思うが、まあ横浜公演が終わったらということにしておこう。

200905021642000 バイバイ!次は横浜で会おう

「キャッツ」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/cats/main.html

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2009年4月11日 (土)

四季「アンデルセン」20年ぶりの再会

※ばれます。ばれてもさほど問題のない作品とは思いますが、一応宣言しておきます。

ハンス・クリスチャン・アンデルセン 佐野正幸
マダム・ドーロ 斉藤美絵子
ペーター 有賀光一
ニールス 松島勇気

「アンデルセン」である。この作品を観るのは、1987年12月の青山劇場以来。実に21年半ぶりだ。当時はタイトルを「HANS」として、サブタイトル的に「ハンス・アンデルセン」と表記していた。ちなみに当時の自分は大学一年生。厚顔の、いや紅顔の美少年の面影を残していたさわやかな青年だった。とブログには書いておこう。そのころの生活レベルではミュージカルなんてとても手が出せない財政状況だったはずだが、公演期間を見る限り、おそらく自分の誕生日だから、とフンパツしたのではないかと思う。そのあたりはさすがにあいまいだが、大学生協のチケットぴあカウンターで発券する際、大金をはたくので緊張した記憶が残っている。

ちなみに当時のキャストも紹介しておこう。

ハンス・クリスチャン・アンデルセン 市村正親
マダム・ドーロ 八重沢真美
ペーター 佐藤秀樹
ニールス 加藤敬二

うひょー、すげえキャスト。ご存知のように市村・八重沢はこのとき夫婦だった。市村も、まさか自分が後に離婚してアイドル歌手と結婚するとは思わなかっただろう。八重沢だって20年後にまだ四季の舞台に立っていて、そこでABBAの曲を歌っているなんて想像もしなかっただろうし。俺もまさかこの年になるまでおんなじような生活を続けているとは……ちょっと予感はしてた。

さて久しぶりに観たHANSならぬ「アンデルセン」。おなじみ童話界の巨人・アンデルセンの若き日々を、「人魚姫」の劇中劇とバレエをふんだんに盛り込んでつづるミュージカルだ。

20年ぶりではあるが、ストーリー展開はだいたい頭に入っている。そしてその通りに舞台は繰り広げられた。

お話を作るのが大好きで、子供たちの人気者だったアンデルセン。しかしそれがもとで町を追い出され、大都会コペンハーゲンに一旗上げようとやってくる。そこで若気の至りから人妻であるプリマドンナに恋をして、舞い上がって「人魚姫」を書きプレゼント。思いは届かなかったが、これがバレエ化され大ヒットし、名声を手に入れて新しい人生を歩みだすという青春グラフィティ的な成功譚。

だが、どうも自分の中にあった印象と、何かが違う。それも大きく。

ストーリーは確かに同じである。しかし、自分はこの作品に、もっと暗いイメージを持っていた。

人魚姫の悲しい結末同様、ハンスの思いは叶うことなく、泡となって霧散してしまう。たとえ国王から勲章をもらったって、それが何だというのだ。やるせない気持ちを山ほど抱えたまま、栄光への道を「歩まざるを得なくなった」男、それがハンス・アンデルセンだった――そう記憶していたのだ。

なぜそんな思い違いをしていたのだろう?単に18歳の俺の理解力のなさがそうさせたのか。いや、当時の自分にはまだ純真な心が残っていて、金や名誉よりも好きになった人と添い遂げることのほうが価値がある、などと思っていたのか(まさか!)。それとも、単純に長い年月で記憶が勝手に書き換えられてしまったのか。あるいは……市村がそういう演技をしていたか。

今となっては確認する術はない。ただ、この舞台は単純なサクセスストーリーではなく、そういう悲しい要素が隠されているのは確かだ。ラストシーンで、国王からの勲章を使いとして持ってきたマダム・ドーロ。彼女が口にした「わが友、ハンス」という言葉に、何とも冷たく残酷な響きを感じたのは男性なら理解していただけるのではないかと思う。だって、ハンスはドーロと「友」なんかになりたくはなかっただろうから。

だから、佐野正幸演じるハンスが、嬉々としてその勲章を受け取り、わが青春に一点の悔いなし、という表情をしているのに強烈な違和感を覚えた。いや、佐野ハンスはそういう解釈なのだろうから、そこに文句をつけるつもりはない。実直でまっすぐないいハンスだとは思う。しかし、自分が抱いていたこの作品の悲しいイメージと、どうも相容れなかった。

その点、やはり市村は、ハンス・アンデルセンの「恋しさとせつなさと心強さと」を表現していたように思えてならない。

作品としては、派手な面白さはないものの心温まる良作だし、バレエが好きな人にはおすすめだろう。「人魚姫」の劇中劇は、昨年末にブロードウェーで観た「リトル・マーメイド」よりずっと水中の世界のように見えて、改めてバレエの力に感服した。でもまあ、バレエに興味ないとちょっと眠くなるかもしれない。眠気を感じたら松島勇気のもっこりタイツを刮目して目に焼き付けよう。あれを見るだけでも劇場に足を運ぶ価値があると思うぞ。

20年前の加藤・八重沢コンビ。真美さんあんまり変わってないね

「アンデルセン」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/andersen/

      

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2009年3月10日 (火)

四季「春のめざめ」キャスト発表   か

5月2日の開幕へ向け、準備も着々と進んでいるのかどうかは分からないが、とにかく本日「春のめざめ」制作発表が行われた。動画中継もあったようだが、会見映像はすでにyoutubeにアップされ、公式サイトに貼り付けられている

今回は若手を中心に制作を進めていこうという姿勢の現われか、代表は登場せずに劇団専務と「演出補」を務める横山清崇、宇垣あかね、由水南、そして音楽監督のキンバリー・グリッグスビーというメンバーで会見。俳優が演出補ってことは、四季には演出プロパーの人材がいないのか?という疑問はさておき、若い世代に任せていくのは歓迎だ。

今回の会見では俳優がナンバーを披露するシーンもあったようで、その動画ももちろん見られる。注目は何と言っても「誰がベンドラを演じるのか?」だ。

で、動画再生。「MAMA WHO BORE ME」でベンドラのソロパートを歌っているのは……

……

……。分からん。

ネットに上がっている情報をいろいろ探ると、どうもこないだ京都の「夢から醒めた夢」でパレスチナの子を演じていた「林 香純」らしい。年齢的にも若そう。ちっちゃい子は岸本美香だよね?

男優陣は、いきなり三雲肇が登場。後半のソロで出てきたのは誰だろう、と思ったらライオネル役などを務めた柿澤勇人らしい。

パフォーマンスの出来はスルーしていいだろう。まだ開幕まで2カ月ある、ということ以上に、この舞台はシンプルなステージとシンプルな衣装、マイクの使い方など小技の効いた演出、そして若者の感情をストレートに表現するピュアなロック、といった要素の微妙なバランスの上に成り立つ繊細な作品であり、それらを徹底的にスタイリッシュに洗練させているのが魅力である。評価は実際のステージを観るまで分からない。

日本語歌詞は、毎回いろいろ言われるが、聞いているうちに慣れるんじゃないかと思う。確かに日本語訳するとこっ恥ずかしい内容ではあるが、もともとこの舞台はこっ恥ずかしい話なのだ。

肝心のキャスティングをどう見るか。これも難しい。正直、林香純が演じたパレスチナの子供はあまり印象がない。昔は夢から醒めた夢を見ると、かわいそうな子供たちの中に「おおっ」という若手女優が必ずいたものだが、最近はそういう経験がない。それだけ今の四季には娘役が不在ということだ(はい、ここでいろんな人を思い出さない!)。とりあえず、この動画だけでは何とも言いようがない。まあルックスだけで言えば、宇垣あかねが一番可愛かったように思うが・・・

男優陣は、三雲も柿澤もこの舞台に合っていると思った。確か、このナンバーは主役であるメルヒオールは参加してなかったような気がするが、柿澤メルヒオールならばっちりイメージ通りだ。三雲も雰囲気はいいけど、さすがにセリフの多いこの役では日本語の発音がきついだろう。

集合写真もニュース系のサイトにちらほら出ているが、そこには厂原時也や伊藤綾祐の顔も見える。やっぱりメルヒオールの本命は厂原か?こちらもイメージ通りすぎてつまらないぐらいぴったりだ。

そういうわけで、男優に関しては全く不安がない。女優については不安が払拭できない。何しろあっちであんなにプリティーなベンドラ見ちゃってるから、ハードルがとてつもなく上がっているのだ。残り2カ月でどうなるものでもないだろうが、林がいい演技を見せるのか、それとも全く別のベンドラが出てくるのか、不安に期待を上塗りして初日を待ってみたい。

 

*みかん星人さんがブログ記者として会見に参加されたようです。リンクを貼らせていただきます。
http://mikanseijin.moe-nifty.com/logbook/2009/03/post-c93a.html

 

「春のめざめ」観劇エントリー
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2008/12/spring-awakenin.html

四季公式サイト 動画レポート
http://www.shiki.gr.jp/navi02/news/005510.html

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2009年3月 1日 (日)

四季「ウィキッド」めぐみゆき&豪華アンサンブル

グリンダ 沼尾みゆき
エルファバ 濱田めぐみ
ネッサローズ 小粥真由美
マダム・モリブル 武 木綿子
フィエロ 北澤裕輔
ボック 金田 暢彦
ディラモンド教授 前田貞一郎
オズの魔法使い 飯野おさみ
男性アンサンブル 清川 晶、町田兼一、玉城 任、
丹下博喜、成田蔵人、白倉一成、
賀山祐介、田中宣宗、三宅克典
女性アンサンブル 長島 祥、間尾 茜、真家瑠美子、
あべゆき、今井美範、有美ミシェール、
花田菜美子、伊藤典子、増山美保

久しぶりに濱田めぐみ&沼尾みゆきのコンビが観たいと思い、四季劇場「海」へ。だが注目ポイントはもう一つある。アンサンブルだ。

女性アンサンブルには、一度はエルファバ役に抜擢されながら、またアンサンブルに戻ってしまった今井美範。再起の日を目指して準備に余念がないといったところか。男性アンサンブルにはフィエロにキャスティングされているもののまだ出番のない玉城任。こちらも、デビューへ向けてアンサンブルをこなしながら作品の空気をその身に馴染ませているのだろうか。

そしてもう一人、女性アンサンブルに真家瑠美子がいることを見逃してはいけない。この報を聞いて、こりゃ観に行かなきゃと思った。本来なら京都の「夢から醒めた夢」で主役・ピコを演じていてもおかしくない真家がなぜここにいるのか。答えはひとつしかあるまい。エルファバ候補と、フィエロ候補がいる以上、そこに「グリンダ候補」がいてもおかしくはない。真家グリンダ!そうか、その手があったか!想像するだけで心躍るキャストではないか。絶対実現してほしい。

オリジナルキャストの濱田・沼尾と、シャドーキャビネットのように次のメインキャストをねらう役者が共演するという、マニアックな豪華キャストの舞台となった。

さて久しぶりの濱田エルファバは一時声の調子を悪くしていたらしいが、この日は絶好調で力強くエルファバを演じ、歌っていた。濱田エルファバの演技はときどきそのトーンが変わっており、彼女がさまざまな試みをしていることが伺えるが、なんとなく最初のバージョンに戻ったような気がする。

沼尾グリンダは疲労がたまっているのか、ピーク時に比べるとやや声に力がなかった。しかしそこは声楽家、うまくごまかして違和感を感じさせない。笑いの間の取り方はあいかわらずちょっとずれてたりするものの(だがそれがいい)、さすが濱田との息はピッタリで、仲の良さがリアルに伝わってくる。「For Good」は久しぶりにしみじみとした感動に包まれた。

今井のアンサンブルはこれまで何度も観ているが、端正な顔立ちと目ヂカラが発するオーラはひときわ目立っている。アイーダや試験的に演じたエルファバの評判は今ひとつだったようだが、やはり一度は彼女のエルファバを見てみたいものだ。

玉城任はスカイ役ぐらいしか印象がなく、それもさほど強烈な印象でもないのだが、舞台に出ていると自然と目を引く華やかさがある。もっとも猿のマスクをかぶってしまうシーンが多いため、素顔をさらしている時間は限られているが。

そして真家は、あのキラキラ~☆な瞳が目印になって、どんな衣装を着ていてもすぐに彼女と分かる。たとえエメラルドシティのサングラスをしていてもだ。行ける、絶対行けるぞグリンダ役!

やはり主役級を一度でも演じた人は、特別な存在感を身に着けるのだろうか?もちろん贔屓目もあるだろうが、この3人はアンサンブルを演じながらも大いに光っていた。本当は瑠美ちゃんばっかり見ていたんだろうと言われると否定はできないが。

そうそう、久しぶりといえば小粥ネッサローズ。総督になってからの演技になにやら凄みが増していて非常に良かった。

最近、特に平日などは客席がややものさびしいことも多いようだが、この日はチケットは全て売り切れ。やはりウィキッドはこうでなくてはいけない。千秋楽もそう遠くはないと思うが、新キャストはそれまでに間に合うだろうか?間に合わなくてもいい。また遠征の口実ができるというものだ。定額給付金の使い道はそれに決定だな。

「ウィキッド」WEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/index.html

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2009年2月 8日 (日)

四季「夢から醒めた夢」苫田マコ比較検討

ピコ 吉沢梨絵
マコ 苫田亜沙子
マコの母 白木美貴子
メソ 飯村和也
デビル 川原洋一郎
エンジェル 藤原大輔
ヤクザ 野中万寿夫
暴走族 韓 盛治
部長 田中廣臣
老人 維田修二
老婦人 丹 靖子
夢の配達人 天野陽一

昨年東京公演で観たばかりなのに、終わってしまうとすぐに観たくなる「夢から醒めた夢」。その京都公演が1月20日に幕を開けたのですぐにでも行きたかったが、そこは俺も大人だ。ここはひとつ、マコが変わるのを待ってみようじゃないか、と余裕の構えを見せていた。そして今週、マコが 未見の苫田亜沙子にチェンジ。それを確認した瞬間に速攻でチケットを確保した。ぜんぜん大人じゃない。

この日は前日大阪に泊まっていた。かつては、京都公演でマチネのときにはグランヴィア京都の中のおばんざいの店で飯を食っていたのだが、それがなくなってしまってからいまいちあの近辺でお気に入りの昼飯が見つからない。なので大阪で軽くたこ焼きでも食ってから行こう、と思い店に飛び込んだら、そこは自分で焼くタイプの店だった。知っている人も多いと思うが、たこ焼きを自分で作るのはかなり難しく、また時間がかかる。しかしどんな状況であろうとも与えられた機会には全力で取り組むのがこのブログのルールだ。店員さんに助けてもらいながら、うまく丸くなるまでじっくりと丹精こめて作り上げていたら、すっかり大阪を出遅れてしまった。うまかったけどな。

そんなわけで到着したときにはすでにハンドベル隊が始まっていたが、なんとか間に合ってよかった。これを見ないと自分の中で「夢から醒めた夢」が始まらない。もう萌絵ちゃんのことは思い出さないようにした。言ってるそばから思い出してるよ。

さて、これまでなかなかお目にかかれなかった苫田マコ。アレの話はひとまず横に置いて、期待どおりの素敵なマコだ。グリンダ役を経ていっそう演技にも磨きがかかったようにも思うが、彼女の魅力はやはり胸、じゃなかった歌声である。はい、ちゃんと横に置きます。

花田えりかのマコが苦手なのは、その歌い方が一本調子だからだ。苫田マコは声量も豊かだが、きちんと「歌で演技をする」ことができている。丁寧にメリハリをつけて歌うその姿勢から、マコという子の優しさ、真面目さが伝わってくるようだ。そして、ピコと歌うとき、母と歌うとき、それぞれ相手の歌い方に合わせて声の強さやトーンをきちんと調整している。だから「二人の世界」も「素晴らしい一日」も、いつも以上の感動を覚えた。やはりいい歌い手というものは曲の価値を最大限に引き出してくれる。

そして、今回興味深い初見キャストが2人いた。ひとりは、マコの母親役の白木美貴子だ。以前は東宝ミュージカルを中心に活動していた人で、だいぶ昔「レ・ミゼラブル」で彼女のエポニーヌを観たことがある。あのエポニーヌも、もうこんな大きな娘がいる年齢になったのか。俺も年取ったわけだよ。基本的に人材の流動化はいいことだと思うし、実力ある中堅俳優が減っている今、四季にとって外部人材の積極的な登用は不可欠だ。ベテランのみならず、若手も入ってくるとなおいいんだけど。特に女優さんとか。剣持たまきとかいいクリスティーヌになると思うだけどなあ。その白木マコ母、声楽系のマコ母が続いたからか、とてもナチュラルな感じがして非常によかった。今後も四季の舞台に立ってくれるのだろうか。活躍に期待したい。

もう一人、最近では「ユタと不思議な仲間たち」のクルミ先生を怪演してその存在感を遺憾なく発揮していた丹靖子が老婦人として登場。最近佐和さんとか若い老婦人(日本語としておかしい)が続いていたこともあり、実年齢的にも上の丹にこの役はぴったりだが、それ以上にその確かな演技力により、一見地味な役を極めて高い完成度で仕上げていた。話し方、表情、すべてが年老いた人のそれでありながら、セリフの心はきちんと客席に届く。これがベテランの技というものか。最強の老婦人登場だ。

続投組では、天野陽一の配達人が予想外に良くなっていた。夢の配達人は、演じる人によって全くテイストが異なるという、個性で勝負しなくてはならない役だ。前回観たときは、まだ天野はどういう配達人になればいいのか全く決めかねている様子だった。しかし、今回は違う。自分なりの配達人像を発見したようだ。それは、いっこく堂とか林家いっ平とか言われている濃いめの顔を生かした、何となく男くさい、暑苦しい感じの配達人である。四季独特の発声法を愚直に守っているところを逆手にとって、それを配達人の個性にしてしまった。これはこれでアリだと思う。デンジャラスな下村配達人、ひょうひょうとした味方配達人、インチキくさい荒川配達人、ミステリアスな北澤配達人。そこにまた新しい配達人像が加わったことに、この作品のファンとして喜びを感じる。

川原デビルも、前回の京都公演以来だが、あのときと比べると自分なりのデビルに手ごたえを感じ始めているようだ。あまりオカマキャラに固執せず、自由に演じている。だからオカマというよりテンションの高いおじさんに見えるが、これもまたアリだ。

吉沢ピコの安定感は変わっていない。ピコにアンにと大忙しだったからか、また一段と痩せているように見えた。ファンとしては心配だし、この役にとってもあまりスリムになりすぎるのはマイナスな気がする。あと、ラストの歌い方を少し変えてきた。当初から声をもっと伸ばせとかいろいろ言われてきたところだ。同じ歌い方をするとどうしても以前演じた人と比較してしまうのが人情なので、歌い方を変えるのはいいアイデアのような気がする。

さて、本題のアレの話。前回東京で南マコを見たときに、「これは苫田マコと比較せねば!」と思ったのでそれを実現できてよかった。で、感想としては、やっぱり苫ちゃんはすごいや、ってことで。この衣装はアレを強調しないというか、むしろ強調されないような造りになっているのだが、それでも隠せないナイスバディ。マコの髪型は、ストレートに落とした髪を左右とも前後に振り分けて垂らしており、その前に垂らした髪は、定位置としては肩のあたりにある。その部分が、首を動かしたことで中央のほうに移動すると、胸の谷間にひっかかって定位置に戻らない。

で、南マコとの勝負だが、恐らくあのときは、衣装のサイズが合っていなかったために大きく見えていたということもあったのではないかと想像している。だがそれを差し引いても、恐らく容積としては南マコのほうが勝っているような印象だ。だが南の場合、体全体的に容積率が高いということもある。苫田も声楽家だからある程度のボリュームはあるが、グリンダ役でも分かったように、締まるところは締まっている。「BLEACH」に倣って盛りで表現するなら、同じ特盛でもご飯すくなめの「アタマの特盛り」にしたほうが、肉の量は多く見える、ということで、個人的には苫田に軍配を上げておきたい。槙原の150キロより、江川の130キロのほうがバッターにとっては打ちにくいという。つまりは、そういうことだ。

Kyoto0208

もちろん南めぐみも好きだけどね。

夢から醒めた夢 ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/yume/index.html

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2009年2月 7日 (土)

四季「オペラ座の怪人」千秋楽へラストスパート

オペラ座の怪人 高井 治
クリスティーヌ・ダーエ 高木美果
ラウル・シャニュイ子爵 鈴木涼太
カルロッタ・ジュディチェルリ 諸 英希
メグ・ジリー 荒井香織
マダム・ジリー 秋山知子
ムッシュー・アンドレ 増田守人
ムッシュー・フィルマン 青木 朗
ウバルド・ピアンジ 半場俊一郎
ジョセフ・ブケー 平良交一

半年ぶりの大阪四季劇場と高井ファントム。1年ぶりの涼太ラウル。そして3年ぶりの高木クリスティーヌだ。

一時期、のどの調子を悪くしていた高井治だが、完全復活とはいかないまでも、かなりのところまで回復してきたようだ。ところどころ辛そうなところはあるが、あまりはらはらすることなく、安心して観ていられる。そして、声の調子の悪さを演技面でカバーしてきたことで、結果的にファントム役としてさらに一皮むけたようにも感じた。

涼太ラウルのお坊ちゃんぶりも健在。今のラウルの中ではいちばんしっくりくる。

高木クリスティーヌは、非常にスタンダードなクリスティーヌだ。歌にも演技にもソツがなく、そのぶんつかみどころのないちょっと不思議ちゃんな感じがまたクリスティーヌらしい。まだ全盛期ほどではない高井、しばらく戦線離脱していた涼太に合わせてか、のびのある歌声は少しセーブ気味だったような気がする。

この日は全体として非常にまとまりのある舞台で、改めて「オペラ座の怪人」が本来持つ作品の魅力をしみじみと感じ取ることができた。高井の不調、木村花代クリスティーヌ投入、新ラウル賛否両論など、何かと話題が多く、荒れた印象の大阪ロングランだったが、千秋楽を前にやっと落ち着いてきたということか。あるいはまだ最後にひと波乱あるのか。できれば新ファントムとか期待したいところだが――。

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「オペラ座の怪人」ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/operaza/index.html

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2009年1月12日 (月)

四季「ソング&ダンス~55ステップス~」変な男そろい踏み

ヴォーカルパート 阿久津陽一郎、芝 清道、李 涛、井上智恵、早水小夜子、
秋 夢子
ダンスパート 西尾健治、萩原隆匡、松島勇気、徳永義満、斎藤洋一郎、
岩崎晋也、脇坂真人、神谷 凌、厂原時也、
加藤久美子、駅田郁美、杏奈、須田綾乃、柴田桃子、
恒川 愛、坂田加奈子、今 彩乃、斉藤美絵子、泉 春花

年末、55ステップスに木村花代さまが登場。こりゃあ正月に早速行かなきゃな、と思ったが前日予約に大苦戦。ならば次の連休に賭けよう、と一応月曜のキャスト発表を確認したうえでチケットを確保した。が、水曜にあっさりキャスト変更。新年早々やってくれるじゃねえか、と頭にきてチケットを8つに引き裂こうとしたが、直前購入なので当日劇場手渡しのため手元に現物がない。思わず四季に電話して「キャンセルできないのは分かってるから、俺の代わりに引き裂いておいてくれ」と言おうと思ったが、fudohさんのブログでたしなめられ、思いとどまった。さらに、前日になって千尋さんのコメントで芝清道が高井治の務めていたパートで再登場という情報をもらい、劇場に向かうことを決意。みなさんありがとうございます。ブロゴスフィアはすばらしい。

まあ新年最初の舞台だから、景気よく「花見」と行きたかったところだが、阿久津、芝という四季を代表する変なヤツ2人に、「ウィキッド」のフィエロ役以来めきめきと変なヤツオーラを身に着けてきた李涛という組み合わせ。トリオ漫才でもやるつもりか、というヴォーカルパートの顔ぶれは興味津々だ。花見はできなかったけど、お笑いというのも正月の定番である。ここは爆笑ヒットパレードで年明けといこうじゃないか。

さて、開幕以来観ていなかったのでこれが2回目の55ステップス。まずは前回芝だったポジションに現れた阿久津陽一郎。にやけ顔で口上を述べる阿久津はどうにもインチキくさくて期待どおりに面白い。意外にはまっている、と感じたのは二幕最初の「夢を配る」。芝配達人はくねくねとしたふしぎなおどりがあまりにも強烈すぎたが、ちょっといかがわしい雰囲気の阿久津配達人は、ほんのわずかではあるが下村配達人を思い出させる妙な存在感がある。これはアリだと思う。ぜひ実現してほしいものだ。そして“本家”の芝をコーラスに従えての「スーパースター」。うーん、これは文句なしにカッコいい!阿久津が実は2枚目だということを久しぶりに思い出した。無理にユダを演じようとするのではなく、ひとりのロックスターを演じているようにも見える。それが幸いした。

そしてポジションを横滑りしての芝清道。オープニングの「ようこそ劇場へ」では阿久津の声と張り合うようにいつもより余計に力強く歌っていた。ある意味これも期待どおりで嬉しい。チム・チム・チェリーはちょっと哀愁が感じられてナイス。まあ芝のバート役はないだろうけど、やっぱりメリー・ポピンズ四季でやってほしいぞ。「ドレミの歌」ではその芸人魂をいかんなく発揮し爆笑を誘う。「ピラトの夢」も情感たっぷりに歌っていて、この人は本当に「ジーザス・クライスト=スーパースター」という舞台を愛しているのだと感じた。やっぱり見たい、芝ジーザス。東京アンコール&名古屋に期待だ。そして注目の芝ファントムが登場する、「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」。仮面なしで怪人役行けるんじゃないかというルックスはまず◎。そして歌は、「夜を統べる闇の帝王」といったムードで、威圧感のあるファントム像を表現していた。一瞬、「エリザベート」のトート様が頭をよぎった。メイクまで想像すると吹き出してしまうのでそこでやめた。やはり芝のファントムは観てみたい。今回はソング&ダンスだからこういうキャラクターになったが、実際にファントムを演じるとなればもちろん演技は変わってくるだろう。「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」は、かつて沢木順がどこかのインタビューで話していたが、これまで女性経験のない男が、誘拐してきた少女を前に歌う歌である。虚勢を張りながらも、おさえきれない高揚感が官能的な響きとなって客席を包み込む名曲だ。そういう演技を芝がどう見せるのか、大いに興味がある。「スターライト・エクスプレス」もよかった。やはり上演してほしい作品だ。男の子向けだから日本ではウケないのだろうか。

そして李涛。これはもう、ラム・タム・タガーに尽きるでしょう。ちょっと、というかだいぶフィエロ・ティゲラーが混じっており、ツッパリ(死語)というより金持ちのボンボンが甘やかされて遊び人になっている雰囲気だが、タガーの雰囲気は十分すぎるほどだ。芝・阿久津という変なタガーの両巨匠の薫陶を受け、ぜひ千秋楽前にキャッツシアターにタガーとして復帰してほしい。

女性ヴォーカル陣では、秋夢子が初見。きりっとした濃いめの美人である夢子はどんな格好をしても実に絵になる。その声量も「キャッツ」のジェリーロラムでおなじみだ。しかし、「リトル・マーメイド」のナンバー「パート・オブ・ユア・ワールド」は、意外にも花田えりかの一種ノウテンキな雰囲気のほうがアリエルっぽくて合っていたように感じた。あくまで比較の問題だが。

全体的には、アクの強い男性陣に実力派の女性陣、という組み合わせがぴたりと決まり、充実した公演になっていたと思う。花ちゃん見たかったけどね。また、ダンスパートでは、高倉恵美の名前が外れたことにとてもがっかりしていたが、そのパートに入った今彩乃がまた美人さんで…。と、今年も正常ではない観劇態度は絶賛継続中である。

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「ソング&ダンス~55ステップス~」のホームページ

http://www.shiki.gr.jp/applause/songdance55/index.html

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2008年10月25日 (土)

四季「ジーザス・クライスト=スーパースター」ひたちなか公演

ジーザス・クライスト 金田俊秀
イスカリオテのユダ 金森 勝
マグダラのマリア 高木美果
カヤパ 金本和起
アンナス 吉賀陶馬ワイス
司祭1 阿川建一郎
司祭2 手島章平
司祭3 飯田達郎
シモン 本城裕二
ペテロ 賀山祐介
ピラト 青井緑平
ヘロデ王 星野光一

昨年の東京・京都公演で評判の良かった金森 勝(キム スンラ)のユダ。当時は芝清道ジーザス降臨の可能性もあったので、それが出てきたときに一緒に観にいこうーーっ、と思っていたら結局出なかったため、スンラユダも結局観られずじまいだった。キムスンラといえば自分と同じ茨城の出身。ご当地キャストのこの公演をひとつ観てやろうじゃないか、というわけで急遽参戦決定。

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ひたちなか市、というのは勝田市と那珂湊市が合併してできた市であり、このひたちなか市文化会館ももとは勝田市文化会館だったはずだ。初めて来たけどずいぶん立派な施設である。勝田市といったら日立製作所。この建設を請け負ったのも日立グループらしい。なるほど、そういうことか。自分をはじめ、水戸の人間は勝田を下に見ていたきらいがあるが、日立をかかえる勝田のほうがよっぽど裕福だったわけだ。いまや水戸の財政状況は相当厳しいものになっており、茨城町から合併を拒否される始末。えらそうにしていてすまんかった。

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ロビーで時間をつぶしていると、よくありがちなさまざまな祭事のチラシを置いてあるカタログラックがあるが、その中にさりげなく茨城原子力協議会の広報誌「あす」が置いてあるあたりが実にこのエリアらしく、ほのぼのとしてくる。わけない。

ぜんぜん本題に入れない。来る途中も、車内で「少女隊ベスト」なんか聞いていたため、すっかり頭の中が80年代になっていて、本気でジーザスを観ようという気構えになれない。何しろ勝田といえば、高校のときに好きだった子が……いや、その話はやめとこう。

さて。今回の注目スンラユダ。なるほど、こりゃあ熱い。ジーザスに寄せる思いが、ひりひりするほど伝わってくる。この作品では最も重要なところだ。それが伝わらないと、なぜユダがジーザスを裏切ったか感覚的に理解できない。パワフルな歌で魅せる芝ユダに対し、こちらは情熱的な演技で魅せるユダだ。そのジーザスへの思いは一途であり、ひたむきであり、いじらしくもある。それだけに、終盤ユダのあわれさには涙を誘われる。「スーパースター」ではもっとはじけても良かった。そうしてくれないと、ユダがかわいそう過ぎて笑顔で劇場を後にできないじゃないか。

そしてそのジーザスを演じるのが、最近「エビータ」のチェや「キャッツ」のラム・タム・タガーなど重要な役への抜擢が続く金田俊秀。ぱっと見実にカッコいいジーザスだ。しかしそれ以上に歌がすばらしい。「ゲッセマネ」は、サビの部分でかつてロンドンで観たときの役者と同じぐらい声を伸ばしていた。伸びたからどうだ、というものではないが、やはりここは思わず客席から拍手が起きるぐらい伸ばしてほしいのが自分の本音だ。海外では途中休憩をはさむ形で上演されており、ここで1幕が終わる。それだけ大きな見せ場なのだ。

まだ演技は荒削りで、柳瀬大輔の繊細なジーザス像には遠く及ばない。だが、演技は荒いがパワーを感じさせる、という意味では、どこか山口祐一郎のジーザスをほうふつとさせるものがある。今後に期待だ。

ほかのキャストも、全体的にみな歌がうまく、この作品の音楽性の高さを改めて実感することができた。逆に演技力に関してはユダ以外全体的にもう少しだったが、歌の力でそれを十分に補い、大きな感動を生んでいたと思う。今さらながら、ミュージカルって歌なんだなあと感じた次第。また、この日は日本生まれの日本育ちであるキムスンラは別として、非常に外国人比率の多い陣容だった。しかし、それによるセリフの聞き取りずらさなどは全く感じなかった。自分は外国の俳優に日本風の名前を名乗らせることには今も反対だが(外国人の起用には反対しない)、この日四季を初めて、あるいはひさしぶりに観た人の多くは、外国人が出演していたことに気づかなかったと思う。

かなり満足度が高かったので、また別の地方にも足を伸ばしてみようと思う。ちょっと今回は地元だったので青春プレイバックになってしまいあまり集中できなかった。まあ青春と呼べるような時代はなかったけどな、俺の場合。

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ジーザス・クライスト=スーパースターのホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/jesus/

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2008年10月 5日 (日)

四季「マンマ・ミーア!」五東ドナやっと初見

ドナ・シェリダン 五東由衣
ソフィ・シェリダン 谷内 愛
ターニャ 増本 藍
ロージー 青山弥生
サム・カーマイケル 渡辺 正
ハリー・ブライト 明戸信吾
ビル・オースティン 坂本 剛
スカイ 玉城 任
アリ 孫田智恵
リサ 丸山れい
エディ 上田 亮
ペッパー 鎌滝健太

登場以来ずっと見たかった五東ドナ。名古屋に行く機会があったのでようやく確認することができた。

ついこないだまで美少女ベルをやっていたかと思ったら、ちょっとお姉さんのアムネリスを経て一足飛びに娘を嫁に出すドナだ。女優さんってすごい。演技全体の雰囲気も歌声も、やわらかで上品な感じが持ち味の五東由衣がいったいどういうドナになるのか、興味深いところだ。

見た目としては、井上智恵のドナが若さを隠し切れなかったのに対し、うまい具合に老けたムードを出しており、「さぞや昔はかわいかったであろう、でも今も十分チャーミングなおばさん」に仕上がっている。そして演技も歌も、自身の持ち味をそのまま生かし、優しさに満ち溢れたドナになっていた。

だから、どちらかというとドナのカッコよさ、強さが前面に出る一幕よりも、ドナの優しさ、弱さが印象的な二幕の方で存在感をアピールしていたように思う。「The Winner Takes It All」では、ソフィへの深い愛の奥底に秘めていたサムへの思いが歌っている間に少しずつ氷解してきて、やがてそれが激流のように流れ出して最後は絶叫になる。これは見応えがある。

一幕の井上」に対し「二幕の五東」といったところか。そしてホー・チミンからの帰還が待たれる鈴木ほのか。続々登場する強力な新ドナのおかげで、名古屋のマンマ・ミーア!は非常に充実している。なのに観客席が少しさびしかったのは残念だ。

さてこの日はほかにも初見キャストが。まずは増本ターニャ。ふつうに美人で、とても整形している(という設定の)ようには見えない。こちらもかなり上品な雰囲気で、かつあのナイスバディなので、「Does Your Mother Know」はドキドキしてしまった。ペッパーの気持ちが初めて分かったぜ。ヤッスー クックラーモウー!

前回見たときエディだった坂本剛がいっきに老け込んでビルに。でもそんなに老けきれてなくて、エディが島を出てスポーツ冒険家になって帰ってきました、てな雰囲気。坂本剛の演技は好きだけど、もうちょっと年輪を重ねる必要がありそう。

エディには上田亮。最近川口雄二や坂本剛など、半分オジサン化していたエディに慣れきっていたのでちょっと違和感があったが、別にエディはオジサン役じゃない。ちょっとスカイやペッパーより年下に見えたりするところもあるが、悪ガキな感じのエディも悪くない。

マンマ・ミーア!はどっちかというとクドい味付けの作品だが、今回のキャストの顔ぶれだと、全体的に薄味というか、上品な京風仕立てになっていた。こういうマンマ・ミーア!もオツなものだ。

新名古屋ミュージカル劇場では、ドリンクコーナーの隣に謎の空間がある。そこがエーゲ海仕様になっていた。

マンマ・ミーア!のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/mammamia/index.html

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2008年10月 4日 (土)

四季「ソング&ダンス~55ステップス~」開幕

ヴォーカルパート 芝 清道、高井 治、田中彰孝、井上智恵、早水小夜子、
花田えりか
ダンスパート 西尾健治、萩原隆匡、松島勇気、徳永義満、加藤敬二、
岩崎晋也、脇坂真人、神谷 凌、厂原時也、
加藤久美子、駅田郁美、室井 優、須田綾乃、柴田桃子、
恒川 愛、坂田加奈子、高倉恵美、斉藤美絵子、泉 春花

四季のエンターテイメント・ショウ、「ソング&ダンス」の最新作、「55ステップス」が開幕した。

「ソング&ダンス」はこれで4作目になるが、実は観るのは初めてだ。99年に初めて上演したときは、きら星のごとく並んだ役者を目当てにチケットを買ったのだが、体調が悪くて行けなかった。それ以来、なんだか足が遠のいてしまっていた。

特段期待していたわけでもないが、それなりに楽しいだろう、というぐらいの気持ちで初日の「秋」へ。

とりあえず観終わった後の感想としては、ほぼ予想通りの「それなりに楽しい舞台」という印象だ。もっともそれは年間5~6回ぐらい芝居を観て、そのうち1~2本は四季、という正常な観劇態度の人の目線での印象で、毎週のように女優さんウォッチにいそしんでいる自分のような正常ではない観劇態度の人には「それなり」どころではなく、あんなことやこんなこと、いろんな楽しみ方が用意されている。

基本的に、予備知識はなしで観たほうが楽しいと思う。だからここから先はもう観たよ、という人以外は読まれないほうがよろしいかと思います。

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2008年9月28日 (日)

四季「ブラックコメディ」素顔のめぐ様に会いに行こう

ブリンズリー・ミラー 荒川 務
キャロル・メルケット 濱田めぐみ
ミス・ファーニヴァル はにべあゆみ
メルケット大佐 志村 要
ハロルド・ゴリンジ 栗原英雄
シュパンツィッヒ 高橋征郎(劇団民藝)
クレア 八重沢真美
ゲオルク・バンベルガー 勅使瓦武志

ブラックコメディの2年ぶりの再演が始まった。評判が良かったのだろうが、こんなに短い間隔で再演するということは、やはり「石○が抜けたぐらいではビクともしないぞ」という意思表示なのだろうか。もっともそれなら「壁抜け男」をやるか。

この作品、実は初見である。もともとコテコテのエンターテインメントが好きな自分としてはストレートプレイとか積極的に観ておらず、今回もスルーかと思っていたが、めぐ様降臨のニュースが。その手にまんまと乗せられて自由劇場へ行ってきた。

今さら説明するまでもないが、この作品は停電で互いの姿も確認できないほど真っ暗な一室で、訳ありな複数の男女が織り成す喜劇だ。「アマデウス」「エクウス」のピーター・シェーファーの作で、一幕1時間30分の小編である。

演劇の基本を踏まえた上で、それをひっくり返してみせる手法はさすが当代随一の劇作家、シェーファー先生の作品である。上演時間のわりに意外と登場人物が多いが、いずれも全く無駄がない脚本はほれぼれするほどの完成度だ。そして「舞台上の人物は互いが見えていないが、観客には見えている」という大いなる矛盾を抱えつつ、それを驚きの手法で解決してしまう奇抜な演出は、演劇空間とはどんなフィクションでも可能にできるのだ、ということを改めて感じさせてくれる。

ただ、古典的演劇手法を踏まえたコメディ、となると日本には三谷幸喜がいる。その爆発力のある笑いに慣れてしまっている自分にとっては、どうしても笑いの面での物足りなさを感じてしまったのも事実だ。ただ、半笑いの状態がずーっと持続するのはなかなか快感でもある。

役者陣では、まず荒川務が、弱気で、やや女にだらしない彫刻家を熱演。「異国の丘」の誠実な演技もいいが、こういういい加減な男は荒川のはまり役だ。声のトーンや間の取り方で笑いを取るのもお手のもので、かえって石丸幹二がこの役をどう演じていたのか気になってしまった。

そして濱田めぐみ。最近アイーダとかエルファバとか、人生や国をしょいこんだ重い役が多かっただけに、ひさしぶりの「娘役」はファンにとって嬉しい限り。色を塗り替えない、ほぼ素顔に近いめぐ様はやはり最高だ。私服っぽいラフな衣装がまた萌える。

栗原英雄のゲイっぷりもお見事。ほかの役者もみなすばらしく役にはまっていて、飽きる暇もないこの作品をますます飽きさせないものにしている。

演劇の面白さ、荒川務のいいかげんさ、めぐ様のかわいらしさ。その3つのうち、どれかひとつでも味わってみたいと思うなら、劇場に足を運んでみるべきだろう。

Bcp

例によって「前回の舞台写真」のないパンフレット。だが稽古着姿のめぐ様もまた・・・

「ブラックコメディ」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/black/index.html

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2008年9月 7日 (日)

四季「美女と野獣」静岡に花代ベル降臨

ビースト 佐野正幸
ベル 木村花代
モリース 喜納兼徳
ガストン 田島亨祐
ルミエール 百々義則
ルフウ 遊佐真一
コッグスワース 青木 朗
ミセス・ポット 奥田久美子
タンス夫人 竹原久美子
バベット 有永美奈子
チップ 川良美由紀

しばらく行方不明になっていた木村花代。さまざまな憶測が飛びかっていたが、ベルという最高の形での復帰が実現した。

花ちゃんベルは福岡で一度見たきりだが、その奇跡のような美しさにはびっくり仰天した。多くの役を演じてきた彼女のキャリアの中でもベストワンの輝きである。歴代のベルと比べても、堀内敬子ベル、濱田めぐみベルにひけをとらないクオリティで、この三人をもって日本三大ベルと呼称するのは俺が勝手に決めたルールだ。ちなみに、この福岡公演では沼尾みゆきベルとか吉原光夫ガストンといった気になるキャストが続出した。結局一度しか行けなかったが、もっと遠征したかったなあ。

さて千秋楽間際になって突然の花ちゃん降臨に沸いたのは静岡市民ではなく、全国の木村花代信奉者たちだ。遠征組が続々と静岡入りする中、自分も後れ馳せながら花ちゃん詣でにやってきた。

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静岡市は仕事で何度も来ている。食べ物がうまいので今回もどこかでと思ったが、いろいろ重なって余裕のないスケジュールに。だが軽く飯を食うぐらいの時間はあったので、駅前の「松乃鮨」で寿司を食って静岡市民文化会館へ。

Shizuoka4

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さて久しぶりの花ちゃんベルは、相変わらずの美しさ。普段着の青い洋服も、ピンクだ!のドレスも、どれもあつらえたようにぴったりと似合っている。そして晩餐会の黄色いドレスや、ラストのお姫様ドレスはもう、ため息しか出てこない。こんなに役と女優がマッチするなんて、そうそうあることではないだろう。なのになぜメインで使わないのか理解に苦しむ。

ベルは一幕のほとんどでプンスカしているので、あのキュートな怒った顔が全開だ。そして二幕でビーストに心を開いたときのデレデレぶりがまたくすぐられる。とにかくファンにとってはたまらない花代スペシャルな三時間だ。

ベルとしてはもちろんのこと、花ちゃん自体久しぶりのお目どおりだったわけだが、少し痩せたような気がする。そして、これは本当に気のせいだとは思うが、やや体調が悪そうに見えた。もちろん演技や声の伸びはいつもどおりだが、なんとなく、である。杞憂だといいが。

そう頻繁に観ている作品ではないので、この日も初見のキャストが多数。まず佐野ビーストだ。声がまさしく野獣である。特に、やや甘い響きの柳瀬大介に比べ、硬質な声なので、一幕の猛々しいビーストが実にしっくりくる。演技でも、笑わせるところはひとつもスベらないぞ!という意気込みを感じるサービス精神旺盛なビーストで、子供たちにも大もてさ。そうだ、佐野のグロールタイガーとか見たいぞ。まあ魔法が解けたとき、王子様、と呼ぶには少なからず抵抗があるが…。

そして百々ルミエール。強烈な個性はなくとも、ひとつひとつの演技を丁寧にこなしていて、好感の持てるルミエールだ。いたずらっぽい笑顔が印象的な、ナイスガイでもある。そうだ、大塚俊のルミエールとかも見てみたいぞ。

女優陣では奥田久美子のミセス・ポットが出色の出来。もともとこの役は「かわいいおばさん」だが、そこに奥田自身のフンワリした雰囲気が加わって、たまらなくかわいらしいポット夫人になった。まだ若いが抜群の歌唱力でキャッツのグリザベラに抜擢され、その後「ふたりのロッテ」などで着実に演技の幅を広げている。いずれ四季の至宝となるべき歌姫だ。

有永バベットもセクシーで最高。前回広島で観たときは、小川美緒の意表を突いたロリ系バベットに衝撃を受けたが、やはりバベットはこうでなくては。ディミータのときは素顔がよく分からなかったが、なかなかの美人さんじゃないか。

全体的に、歌のうまい人が多く、コッグスワースやモリースまで美声を響かせていたので、舞台全体が非常によくまとまっていた感じがした。最近は、「役者を見ずに作品を見ろ」と言われたって、その作品を役者が邪魔してるようなことも少なくないが、今回は作品の魅力がストレートに伝わってきた。

本当にこの作品は何度見ても楽しい。「変わり者ベル」は映画で大好きになって、ビデオで何度も繰り返し見たナンバーだが、初めて観たとき、それがそのまま舞台になっていたのに度肝を抜かれた。舞台オリジナルである「ガストン」のマグカップダンスには毎回心が弾むし、ミュージカルの「すごい!」のハードルを一気に5倍ぐらいに引き上げてしまった「ビー・アワ・ゲスト」は前奏が鳴っただけで鳥肌が立つ。ハリウッドにおける「スター・ウォーズ」のように、ブロードウェーにおける作品の制作システムまで変えてしまったお化け作品は、今なお色あせることがない。東京では劇場がなかなか空かないからかしばらくご無沙汰だが、そろそろどうですか?花代ベルや沼尾ベルをできるうちに!どうせなら濱田ベルの復活も!まあ四季においてこの役の年齢制限はあんまりなさそうだから、焦ることはないか?

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「美女と野獣」のホームページ
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2008年9月 6日 (土)

四季「夢から醒めた夢」苫田を越えるか?南マコ

ピコ 真家瑠美子
マコ 南めぐみ
マコの母 織笠里佳子
メソ 有賀光一
デビル 道口瑞之
エンジェル 石井雅登
ヤクザ 野中万寿夫
暴走族 大塚 俊
部長 田中廣臣
老人 維田修二
老婦人 佐和由梨
夢の配達人 天野陽一
男性アンサンブル 松本和宜、石野喜一、畑野年孝、中村 巌、
金子信弛、牛 俊杰、田井 啓
女性アンサンブル 畠山 馨、中元美里、鈴木真理子、井上あゆみ、
織田なつ美、白澤友理、小澤真琴、海野愛理、
有村弥希子、佐伯真由子、峰岸由佳

南マコが今週から登場。これは近いうちに観に行かねばのう、とのんびり構えてたら、週の途中に有賀光一がエンジェルからメソに横滑りするわ、そのエンジェルに若手の成長株・石井雅登が入るわ、おまけに夢の配達人には全国限定と思われていた天野陽一が登場、と大きく変動。こりゃ一大事と2週連続で四季劇場「秋」へ。

先に男性キャストの動きについて。有賀のメソは、さすがこの役をかなりの回数こなしてきただけあり、板についている。霊界に来た原因が受験からいじめに変わったが、その表情は吉田戦車の「戦え!軍人くん」に登場した「いじめてくん」のような、おどおどしたしたまさしくいじめられっ子のものだ。もう有賀のキャリアを考えるとこの役は卒業するべきなのだろうが、ここまではまっているとずっと演じ続けてほしいような気もする。

そして石井エンジェル。自分は石井雅登は「キャッツ」のスキンブルシャンクスでしか見たことがないが、はつらつとしたいい演技とアイドル性を感じていたので、エンジェルは適役だと感じた。ロビーパフォーマンスでその顔を見たときの印象は「意外に素顔は地味?」というものだったが、エンジェルの衣装で舞台に登場すると、若さあふれるキラキラした空気を漂わせていた。道口デビルとはきれいに正反対になっており、このコンビはなかなか魅力的である。その屈託のない笑顔と甘いボイスは、どこか古谷直通エンジェルを彷彿とさせる。

全国公演で登場したが、未見だった天野陽一演じる夢の配達人。噺家のような顔とよく通る太い声は嫌いではないが、うーん、ちょっと厳しい。特段、どこが悪いというわけではないが、いまひとつ存在感が薄いのだ。この舞台におけるこの役は、バレエ「くるみ割り人形」におけるドロッセルマイヤーのように、舞台の全体を統べ、観客に送り届けるという重要な存在である。やはりこの役には人並み以上の存在感が欲しい。下村尊則や荒川務、味方隆司と比べられるのは、確かに気の毒ではあるが…。また、他の配達人に共通して見られるしなやかさがなく、どこかゴツゴツした感じがする。そうすると、どうしても脳味噌筋肉に思えてきてしまい、配達人のキャラクターとはかけ離れてしまう。たぶん、これは最近奔放な発言を繰り返し関係者をやきもきさせている、若き金メダリストのせいだ。

もっとも、夢の配達人のキャラクターは役者の裁量が大きいらしく、演じる者によってだいぶ雰囲気が異なる。下村配達人は危険な香りがしたし、北澤配達人はミステリアス。味方配達人はひょうひょうとしています。荒川配達人は詐欺師だ。だから、天野配達人も自分なりの配達人を創り上げればいいと思う。体育会系の鬼コーチな配達人、ってのも面白いかもしれない。

さて、注目の南めぐみマコである。南めぐみといったら「キャッツ」のシラバブだ。彼女の魅力は何といってもその歌である。高い音を、声を張り上げずに出すことができるその歌い方が印象的なので、生き生きとせずに高い声を出さなくてはいけないマコにはぴったりなのではないか、と期待していた。

そこは期待通りで、幽霊であるマコにふさわしく、そしてピコの声を掻き消すことなく、澄んだ声で心地よい歌声を披露してくれた。ただ、シラバブのときと比べると、声の強弱を一定に保ちながら音の上げ下げをする、まるでエディタ・グルベローヴァのような彼女特有のテクニックがあまり見られなかった。最近歌い方を変えたのだろうか?

彼女は、花田えりか同様韓国出身の女優さんである。そのため、日本語のセリフには不安もあったが、第一幕の登場シーンでは全く問題がなかった。そうと知らなければ外国出身とは気づかないのではないか。しかし二幕のお母さんとのやりとりでは、少し発音が怪しくなった。おそらく、それだけ演技に力が入っていたのだろう。気にする人は気にするだろうけど、個人的にはたとえ発音が少々不自然さでも、熱のこもった演技や歌はそれを十分にカバーできると思う。

そしてルックスについて。猫メイクはとても似合っていてかわいらしいシラバブだったが、あのメイクを落とした顔を見るのは初めてだ。遊園地の西の館で待機していたマコ。うん、大丈夫。ちゃんとかわいい。かわいいんだけど、なんというか、庶民的な顔立ちである。堀内敬子マコや木村花代マコのような美しも、紗乃めぐみのような愛嬌もなく、印象はやや薄いかもしれない。あと、どちらかというと健康的な肌の色をしており、「透き通った~♪」と歌われるマコにはちょっとアレかも。母親役の織笠里佳子と並ぶと、お母さんのほうが色白だ。まあお母さんは食事もろくに食べてないので顔色が悪いんだろう、ということで。いろいろ文句はつけたが、自分としては十分合格点を越えているマコだ。今後、何度も見たいマコである。

しかし、南マコについては、ルックス面でもう一点、言及しなければいけない点がある。これ以降は、女性の方の閲覧を禁止したいと思います。男性と、心に親父が住んでいる女性の方だけ、読み進めてください。

あなたは男性ですか? ( はい / いいえ )

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2008年8月30日 (土)

四季「夢から醒めた夢」真家ピコどうでしょう

ピコ 真家瑠美子
マコ 花田えりか
マコの母 織笠里佳子
メソ 飯村和也
デビル 道口瑞之
エンジェル 有賀光一
ヤクザ 野中万寿夫
暴走族 大塚 俊
部長 田中廣臣
老人 維田修二
老婦人 佐和由梨
夢の配達人 北澤裕輔
男性アンサンブル 松本和宜、石野喜一、畑野年孝、中村 巌、
金子信弛、牛 俊杰、田井 啓
女性アンサンブル 畠山 馨、中元美里、鈴木真理子、井上あゆみ、
織田なつ美、白澤友理、鈴木友望、海野愛理、
小澤真琴、有村弥希子、佐伯真由子、峰岸由佳

吉沢梨絵がおそらく「赤毛のアン」準備のために降板。昨年の全国公演からピコを演じていた真家瑠美子が登場した。

真家ピコは初見だ。この作品が心底好きな自分としては新ピコを見られる、というだけでわくわくしてくる。そして真家瑠美子は「赤毛のアン」のダイアナで見て、ちょっと体はいかついけど顔も声もかわいい女優さんだな、と思っていたので大いに楽しみにしていた。

夢の配達人に紹介され、観客の前に飛び出してきた真家ピコ。吉沢ピコにくらべればサイズはちょっと大きめだが、やはりかわいいピコである。澄んだ声のセリフが耳に心地いい。第一印象はばっちりだ。

その演技は実に丁寧で、ピコの純真さがストレートに伝わってくる。目がいつもキラキラしているのがなんとも魅力的だ。

笑いはあまり取れていなかった。保坂知寿ピコの笑わせ指数を10とすると、吉沢ピコが8.5から9、樋口麻美ピコ・木村花代ピコが7.5、真家ピコはようやく7といったところ。吉沢ピコと比べれば落差は大きいが、樋口・木村と比べればさほどの違いは感じない。

もっとも、笑いの「間」の取り方は非常にいいと思った。あとは声のトーンなどをその場の空気に合わせて変えられれば、だいぶ吉沢レベルに近づけるのではないか。まあそこが難しいところなのだが。また、出てきた瞬間から笑わせる気まんまんの保坂ピコや吉沢ピコと違い、どこか真面目で優等生なピコなので、客としても笑うのをためらってしまう雰囲気がある。

考えてみると、ピコが笑わせるシーンは、脚本というより保坂が演技で編み出したものが多い。吉沢ピコはそれを受け継いでいるが、樋口・木村は必ずしもそれをなぞることなく、独自のピコを作り出している。真家ピコも、彼女なりの新しいピコを追求すればいいのではないか。

歌に関しては、やや高音が苦しそうだったり、低音が出きらなかったりするところもあるが、あまり歌にうるさくない自分としては全く問題ないレベルである。ただ、やはり「誰でもないあたし」はコブシを回してほしいところだ。

全体的に、個人的な趣味で言えばかなり好きなピコだ。かわいいから評価が甘くなっているかもしれない。しかしかわいいのも実力のうちだ。

というわけで、真家ピコは今後も見てみたい。とりあえず新マコ登場したら突発必至だ。

Akiharu

この日は雨で、野中万寿夫ピエロはロビーに登場。ホイッスルで交通整理を始めるわ、客の傘を3つほど集めてジャグリングをするかと思えば「そんなのムリ」とガッカリさせるわ、ライオンキングに入場しようとして頭をぶつけるわ、ノリノリの大サービスで大いに沸かせていた。

「夢から醒めた夢」ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/yume/index.html

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四季「ライオンキング」激闘!芝・スンラ サバンナ血風編

ラフィキ 金原美喜
ムファサ 芝 清道
ザズ 雲田隆弘
スカー 金森 勝
シェンジ 池末絵己子
バンザイ 韓 盛治
エド 朝隈濯朗
ティモン 黒川 輝
プンバァ 福島武臣
シンバ 瀧川 響
ナラ 江畑晶慧
サラビ 松下沙樹
ヤングシンバ 岡田勇太
ヤングナラ 鈴木彩花

福岡限定モデルかと噂されていた芝ムファサが東京に急きょ登場した。

ことし1月、福岡シティ劇場で観ているが、その時と演技は同じか変わっているか、ひとつ確認してやろう、と前日予約で四季劇場「春」へ。

……変わっていた。

福岡のときは、子煩悩さが前面に出た、おだやかで柔らかな、優しさあふれるムファサだった。しかし東京プライドランドに颯爽と現れたムファサは、肩で風切って歩く、ギラギラした武闘派に変身していた。その声には威圧感があり、体全体から闘気が湯気のように放出されている。ラオウみたいだ。思わず「拳王様!」とひれ伏したくなる。芝的には、少し「ユタと不思議な仲間たち」のペドロ親分が入っているのを感じる。

あの優しかったムファサを変貌させたのは、この男――金森勝(キムスンラ)演じるスカーである。

以前fudohさんのブログで読んで大いに興味を持っていたが、確かにこれはすごい。本気で狂っている。イッちゃってる感じだ。死と野望にとり憑かれた狂気の王、それがスンラスカーだ。ハイエナの巣窟で恍惚と歌い踊るその様はデンジャラスなことこのうえない。

そして2幕はじめの「スカー王の狂気」。肉親の死とひきかえに野望を達成しながら、満ち足りることなくムファサの影におびえる姿はまさに「リチャード三世」そのものである。なるほど、スカーってつきつめるとこういうキャラクターになるのか。日本初演から10年経って初めて知る作品の新たな側面だ。

芝vsスンラの直接対決、これをずっと見たかった。「ジーザス・クライスト=スーパースター」で実現するかと思いきや、スンラユダは登場したが芝ジーザスは結局舞台に立つことがなく、対決は持ち越しに。それだけにこの2人によるガチの勝負は見ごたえがあった。とはいえ、2人がにらみあうシーンは非常に少なく、ムファサは1幕で退場してしまう。これは残念だ。もうシンバのその後とかどうでもいいから、この2人が動物の大軍を率いてアフリカ大陸を2分する大決戦を繰り広げるという展開を見たくなったほどだ。

ぜひ、続きを「ジーザス」全国公演で見られることを期待したい。

「ライオンキング」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/lionking/index.html

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2008年8月14日 (木)

四季「夢から醒めた夢」東京公演開幕

2005年春以来の「夢から醒めた夢」東京公演。自分にとっては昨年3月、野中デビルが衝撃のデビューを飾った福岡以来だ。

劇場に着くと、ちょうどその野中万寿夫が竹馬に乗って出てきた。こういうロビーパフォーマンスが突然目の前で始り「うわあ・・・」と感動したりしたいわけだが、「ここで野中が出てくるということは、きょうはヤクザ役で出演するのか」と考えてしまうあたりがヲタの悲しさである。

パフォーマーと見学者入り乱れてごった返すロビーに入り、さっそくキャストをチェック。

ピコ 吉沢梨絵
マコ 花田えりか
マコの母 織笠里佳子
メソ 飯村和也
デビル 道口瑞之
エンジェル 有賀光一
ヤクザ 野中万寿夫
暴走族 大塚 俊
部長 田中廣臣
老人 維田修二
老婦人 佐和由梨
夢の配達人 北澤裕輔
男性アンサンブル

石野喜一、金子信弛、田井 啓、中村 巌、松本和宣、
牛 俊杰、畑野年孝

女性アンサンブル

南めぐみ、井上あゆみ、大橋里砂、佐伯真由子、小澤真琴、
白澤友理、鈴木友望、中元美里、有村弥希子、鈴木真理子、
海野愛理、峰岸由佳

ピコには吉沢梨絵。「赤毛のアン」京都公演が控えているのでどうかと思ったが、やはり初日を背負えるピコはこの人しかいないということか。

さっと上から順に見ていって、ピコ~メソまで福岡のときと同じ、その後一番下の「夢の配達人」が北澤裕輔であることを見て、うーんあまり代わり映えのしないキャストだな、という印象を受ける。そしてやっぱりマコが、マコが…。

気を取り直してアンサンブルをチェック。男性なんて見ない。女性アンサンブルを丹念に見る。ああやっぱり萌絵ちゃんが、萌絵ちゃんが…。

この段階で、モチベーションが15%ぐらいにダウン。でも、やっぱり「夢から醒めた夢」は四季レパートリーに限らず、あらゆる舞台の中で最も好きな作品だ。その初日に参加できるの幸運を感謝してしっかり目に焼き付けておくべきだ。気を取り直してもう一度キャストボードを眺める。そこで目に飛び込んできたのは

「デビル 道口瑞之」

うおおおおおおこれは見てえ。「美女と野獣」のルミエールや「ユタと不思議な仲間たち」のヒノデロなど、若手ながら次々と難役をこなし、その怪優ぶりを発揮してきた個性派が、ついに四季史上最も強烈なキャラクター、デビルに挑戦だ。

そしてもうひとつ

「暴走族 大塚 俊」

ウホッそうきたか。小柄な体とキレのある動き、器用さとアクの強さが共存する四季の名バイプレーヤーがコテコテの暴走族とは!中年ライダーウェルカムだぜ。

ここでモチベーションが一挙に85%にアップ。意気揚々と客席へ…とその前にハンドベル隊だ。北井久美子といい村岡萌絵といい、どうしてハンドベル隊における俺の推しメンは消えてしまうのか。とかいいつつ、南めぐみもカワイイじゃん、と上機嫌になってパチリ。

Hand

さて、夢の幕が上がる。

北澤配達人は大きな帽子で顔を隠し、多少にやけたポーカーフェースを崩さないミステリアスな配達人だが、以前に比べるとだいぶ表情の変化、特に笑顔を見せるようになった。歌も演技も細かく丁寧で、申し分がない。

吉沢ピコが、もはや木村花代よりも樋口麻美よりも、はるかにピコを自分のものにしていることは今さら言うまでもない。ちょっとおばちゃんっぽい子供、というのが吉沢ピコのイメージだが、「ふたりのロッテ」「赤毛のアン」と少女役を続けてこなしてきたのが影響したか、ちょっとだけ女の子らしさがアップしたような気がする。自分の中で何かのパラメーターがアップした。

霊界空港の場面になって、お待ちかね道口デビル登場。見た目は…ちょっとキレイ。そりゃ、川原洋一郎デビルや、野中万寿夫デビルに比べるからだろうけど。オカマキャラというよりは、「オペラ座の怪人」の劇中劇「イル・ムート」のメイクをしているようだ。

ヒノデロのようなしなやかな歌声を予想していたが、それはいきなり裏切られる。第一声の「落ちろー!」は、ほとんどシャウトしているかのようなパワフルモード。アドレナリン出まくりの、エネルギッシュなデビルである。セリフでは、うなるような低音の声と、そしてオネエ口調の高音の声とをくるくる変えながら話す。「一人あしゅら男爵」みたいだ。

とにかく、自分なりの新しいデビルを創ろうという姿勢が強く感じられ、ますますこの俳優が好きになってきた。ちょっとその勢いが空回り気味だったところもあったけれど、初日でそれは許容範囲。もう少し余裕が出てくると、いろいろ遊んでくれそうで楽しみだ。

そしてもうひとつの目玉、大塚暴走族。いきなり「ここは霊界空港」のセクハラシーンでは、尻をさわる、というより思いっきりつかんでおり、もちろんそれでビンタされたときのリアクションも全力。まさに期待通りで顔がにやついてくる。

舞台に出ているときは自分にスポットが当たっていないときも、すべてのシーンで細かく表情を作っているので目が離せない。気づいたら暴走族ばっかり見ていた。野中ヤクザとの小芝居合戦の息もぴったりで、実に安定感がある。それが作品全体のムードを作る。暴走族がこんなに重要な役だったなんて何十回と観てきて初めて知った。

それにこの中年ライダー、実にカッコいい。その極みが、ピコが霊界空港を去るときの握手だ。暴走族というよりちょいワル親父のニヒルな笑いを浮かべ、がっちりと握手を交わす。反則ですって。

デビルvs暴走族+ヤクザの演技合戦を見られただけで、かなり満足できた。公演全体を見ても、若い力とベテランの妙技がぶつかりあう、力のみなぎったいい舞台だったと思う。

が。やっぱりキャスティングにちょっと不満が残る。飯村メソは、受験を苦にして自殺、ということならなんとなく納得もできるが、新設定のいじめを苦に自殺、というのは、ガタイが良すぎてちょっと違和感がある。佐和さんが老婦人ってあんまりだろ。いや、きれいなおばあさんは見ていて気持ちよかったのだが、なぜここでこの人を使う?

そして花田マコ。花田えりか自体は、以前ほど苦手ではなくなった。京都で観た「ウェストサイド物語」のマリアは、意外にいいじゃないか、と思えた。しかし、マコはだめだ。この人がマコを演じるだけで、感動が半減してしまう。

たいへん語弊のある言い方だが、マコは「死んでるところ」に萌えるのだ。「GS美神 極楽大作戦!!」のおキヌちゃんと一緒である。なのに、花田マコは死んでる感じがしない。「二人の世界」では、生きてるピコよりよほど元気に歌っている。

なんだ、好き嫌いの趣味の問題か、といわれれば、その通りである。否定はしない。あえて言おう。俺はマコが心の底から好きなのだ。どのぐらい好きかっちゅうと、グリンダと同じぐらいだ。だって堀内敬子と木村花代が演じてきたんだぞ。俺にとって「夢から醒めた夢」はマコなのだ、ってのは言い過ぎにしても、ピコがどんなに良くたって、マコがいまいちだったらだめなのである。

新マコは出てこないのか。そうだ、パンフレットのキャストもチェックしてみよう。

ピコ
吉沢梨絵、真家瑠美子

マコ
花田えりか、苫田亜沙子、南めぐみ

マコの母
織笠里佳子

メソ
飯村和也、有賀光一

デビル
野中万寿夫、川原洋一郎、道口瑞之

エンジェル
有賀光一、藤原大輔、石井雅登

ヤクザ
野中万寿夫、大塚 俊、韓 盛治

暴走族
韓 盛治、大塚 俊、渡邊今人

部長
田中廣臣

老人
維田修二、武見龍麿

老婦人
菅本烈子、安田千永子、佐和由梨、佐藤夏木

夢の配達人
北澤裕輔、荒川務、佐野正幸、星野光一

……あれ? あれ? あれ?

ピコはこの2人だけ?真家ピコ未見だから見たいけど、花ちゃんは?花ちゃんはあ?それにあーちゃんもナシ?

マコは、とりあえずこれも未見の苫田マコをまず見たい。南マコ、これもよさそうだ。今回の子供役もなかなかだったし。同じ「キャッツ」のバブ役、紺野美咲もキャスティングしてほしいところ。

大塚ヤクザも早く見たいものだ。野中デビルにも再会したい。味方隆司の名前がないのはちと残念。荒川&佐野さん働きすぎだろ。

うーん、全体的に「うひょーこれ見たい」という配役があまりない。まあ予定外のキャストが突然出てくることもあるから、偉大なる代表様の気まぐれがいい方向に働くことに期待しよう。

にしても花ちゃんどこ行ったんじゃああああ!

「夢から醒めた夢」ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/yume/index.html

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2008年6月22日 (日)

四季「ウェストサイド物語」俺がトニーだ!福井晶一上洛

ジェット団(The Jets)

リフ 松島勇気
トニー 福井晶一
アクション 西尾健治
A-ラブ 澤村明仁
ベイビー・ジョーン 大空卓鵬
グラジェラ 恒川 愛
エニイ・ボディズ 室井 優

シャーク団(The Sharks)

マリア 花田えりか
アニタ 団 こと葉
ロザリア 玉井明美
ベルナルド 望月龍平
チノ 畠山典之

おとなたち(The Adults)

ドック 岡田吉弘(劇団昴)
シュランク 勅使瓦武志
クラプキ 石原義文

京都で続く「ウェストサイド物語」のロングラン。このまま新キャストもなく終了かと思っていたが、トニー役に福井晶一が登場だ。

自分は女優さん目当てで劇場に通っているが、実は男優も結構好きだ。そういう男性ファンはわりと多いのではないかと思う。別に四季の会にはバイセクシャルが多いというわけではない。男はそもそも男が好きなのだ。だから任侠映画というジャンルが存在する。最近任侠映画がウケないのは、男が素直に男を好きと言えない世の中になっているからだろう。

四季で男に人気のある俳優といえば、芝清道やキムスンラといった名前がまず出てくるだろうが、福井晶一もかなり上位に食い込むのではないかと思う。最近の当たり役といえば何といっても「キャッツ」のマンカストラップだ。ご存知「ジェリクル武闘会」を主催している、硬派度200%のリーダー猫だ。終演後、キャッツでは猫たちが客席をまわって観客と握手をするが、福井マンカストラップとの握手は「ブラック・レイン」のラストシーンで高倉健とマイケル・ダグラスが交わしたような、熱い力のこもった握手だった。

そんな福井が演じるトニーは一体?それを自分の目で確かめるために、京都劇場に向かった。

オープニングの街のシーンが終わり、リフがトニーの職場を訪ねる場面。そこにいたのは、実に大人っぽい感じのトニーだった。声も物腰も落ち着いており、リフに対しても弟のような視線で語りかける。この場面のリフは、仲間達に冷静に指示を出す不良グループのリーダーの顔ではない、どこかトニーに甘えているような仕草を見せるが、このトニーとの組み合わせだとそれが妙にしっくりする。思わずアニキィィィィィ!と叫びたくなるような、ちょっとマンカストラップの入った頼れる兄貴分といった雰囲気だ。

続いてのソロナンバーでは、高いキーがやや苦しそうだったが、艶と張りがある福井ボイスを披露し、女性ファンのみならず、男性ファンも魅了しまくりだ。

そしてきりっとした眉毛が印象に残る、まさしく役者、という端正な顔立ち。うーんいいオトコだ。いろんな意味で気になる髪は地毛を染めて勝負。だからちょっと…いや、なんでもない。

福井トニーは、阿久津陽一郎演じるつかみどころのない変人トニーとも、鈴木涼太演じる青年と少年の間で揺れる危ういトニーとも異なる。うまく言えないが、あえて言えばそれは実に男らしいトニーだ。

その男らしさとは、任侠映画っぽい雰囲気ももちろんだが、それだけではない。自分に訪れる運命から決して逃げることなく、正面から受け止め、あくまで前向きに生きていこうという「生きる姿勢」に大いに男を感じるのだ。

移民の子として生まれたこと、そこから来るいわれなき差別、仲間たち、働くということ、そしてマリアとの出会いと突然の悲劇………。いいことも、悪いことも、楽しいことも、つらいことも、トニーは全て受け入れて生きている。ガッツな純粋さ、とでも言おうか。そんな人間的な魅力を感じさせるのだ。

しかし、それは度量の大きさとイコールではない。もしそうだったらあの悲劇は起きなかった。数々のつらい運命を受け入れてきたと言っても、決してそれを忘れているわけではない。そうした運命への怒りや嘆きも、感じないのではなく、ぐっと呑みこみ、押さえているのだ。それが、リフの死を前にして爆発し、悲劇は起きたのだ。福井の演技を見て、そんなことを考えていた。ほかの2人が演じたトニーでは、このシーンはまさに「衝動」であり、若さゆえの不安定さが悲劇の引き金となっていた。しかし、福井の場合、ほんの一瞬ではあるが体全体から明確な「殺意」が感じられた。トニーの中で眠っていた何かが覚醒したのだ。

ラストで「俺を撃て!」とシャーク団に叫ぶシーンも、ほかのトニーは悲嘆に暮れて、自らの命を投げ出そうとしているように見えるが、福井トニーだと少し異なって見える。このトニーは、マリアに関する誤った情報を得て、それをそのまま受け入れ、その結果、自分がそうするべきだと考えたからこそ敵の前に姿を現しているのだ。それはまるで、「独眼竜政宗」で人質となった輝宗(北大路欣也)が、政宗(渡辺謙)に対し「そうだ、わしを撃てい!」と叫んだときのような、覚悟を決めた一種のすがすがしさえ漂わせていた。

このトニー、千秋楽までの間にどれほど登板するのか分からないが、この後どのように変わっていくのか、あるいは変わらないのか、注目してみたいキャストだ。機会あったらもう一度観たいものである。すでに観る予定のある人は、ぜひ期待して劇場に足を運んでほしい。髪は薄いが演技は濃いぞ!あっ言っちゃった。

マンカストラップのイメージからすると、ぜひ福井のリフも観てみたい気がする。福井リフに阿久津トニーなんて、なんかBLっぽいデンジャラスさだがそれもまたいいだろう。そうだ、いっそリフはスキンヘッドにしてしまったらどうだ。いろいろ気にならないで済むし。ベルナルドに「黙れこのハゲ!」って言われて「これはハゲじゃない。剃ってるんだ!」と言い返したら神なんだが。スキンヘッドにしたら、そのまま「王様と私」とかにも出られそう(退団前提だけど)。ユル・ブリナーのような凛々しい王様になりそうだ。そういえばユル・ブリナーと大葉健二って似てるよな。

「ウェストサイド物語」ウェブサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/wss/index.html

 

 

この日はライトダウン2008の一環で、醜悪な京都タワーのライトアップが消灯されていた。

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2008年6月 1日 (日)

四季「ミュージカル異国の丘」意外に無難?荒川ボチ閣下

石丸幹二も、下村尊則もいない「異国の丘」。過去、この作品で主役を演じていた二人の俳優は相次いで四季の舞台を降りてしまった。四季は退団(事実上の退団も含む)した人間の写真はポスターやパンフレットに使用することをかたくなに拒むため、この公演のポスターは過去の公演写真をPhotoshopか何かで絵画処理したものだし、WEBサイトではその画像の主役の顔のところに文字を重ねてしまうという徹底ぶり。建前としては肖像権だとか何とか言うだろうが、おそらくは単なる嫌がらせだ。まったく大人げない。

それはともかく、果たして誰がこの役を受け継ぐのか。注目を集めていた中、ウワサに上がったのはベテラン・荒川務。てっきり若手にバトンタッチをするものと思っていたから、裏をかかれた感じだ。

その話を聞いても、あまり観ようという気はしなかったためチケットは確保していなかった。しかしながら、初日を迎え、実際に荒川務の名前がキャスト表に載ってくると、やはりちょっと観たくなってきた。つい、ふらふらと前日予約して四季劇場・秋へ。

九重秀隆(ボチ) 荒川 務
宋愛玲 佐渡寧子
吉田 中嶋 徹
神田 深水彰彦
西沢 深見正博
大森 田中廣臣
杉浦 香川大輔
平井 維田修二
宋美齢 中野今日子
李花蓮 岡本結花
劉玄 青山祐士
宋子明 山口嘉三
蒋賢忠 中村 伝
九重菊麿 武見龍磨
アグネス・フォーゲル夫人 武 木綿子
クリストファー・ワトソン 志村 要
メイ総領事 高林幸兵
ナターシャ 西田有希

さて、その荒川ボチ。この作品はシベリア抑留のシーンと、九重の回想シーンを交互に綴っていく。シベリアのシーンはともかく、学生時代を過ごしたニューヨークのシーンはさすがに年齢的に無理があるか……と懸念していたが、そこはさすが永遠の70年代アイドル、顔はちょっと皺が目立つものの、軽やかなダンスで「若いオーラ」を存分に発揮。少なくとも、下村尊則の時ほどの違和感はない。

その“若さ”と、ベテランらしい深みのある演技で観客の心をとらえており、なかなか魅力的だ。そしてあの特徴ある声が、重くなりがちなこの作品にまろやかな味わいをもたらしている。

石丸ボチは実直さが体中から満ちあふれる好青年であり、下村ボチはどこか浮世離れした雰囲気がいかにも名家の出、という雰囲気だった。それぞれ魅力はあるが、この荒川ボチは、ひょうひょうとした中に真の強さを秘めているという、この脚本で描かれた規格どおりの、九重秀隆という感じがする。

そういう意味では、ナイスなキャスティングだと言っていいだろう。ただ、どうも物足りなさが残ってしまうのは、石丸ほど歌声に伸びがないせいでも、あまりに無難すぎて下村ほどインパクトがないせいでもない。やはりこういうときこそ、若手を起用してほしい、という期待感があるからだ。キャストブックを見ると、今回の九重は荒川務のシングルキャストだ。せめてダブルでも「おっ」と思えるキャスティングを見せてほしかった。

ほかのキャストは、まず宋愛玲に佐渡寧子。過去、この作品を2回観たときは両方とも木村花代だったため、佐渡愛玲は初見。これまた非常に無難な感じの愛玲で、全く非の打ちどころはないが、ボチが一瞬で一目惚れするほどの華やかさにはちょっと欠けるように思う。俺だったら、一緒にいたミニスカ花蓮のほうに目が行きそうだ。岡本結花は完全にコスプレ枠になっており、浅利慶太が面白がって「ちょっとチャイナドレスでも着せてみるか」とキャスティングしたのに違いない。あまりチャイナドレス姿を披露する場面はなかったが。武木綿子のアグネス・フォーゲル夫人はいかにも食えない策謀家という雰囲気で非常に良かった。深水彰彦、青山祐士らは前回観たときと同じだが、実にこの役にはまっていると思う。

いわゆる「昭和三部作」は、そんなに観てはいないものの、それなりに評価はしている。戦争をテーマにしつつも、きちんとエンターテインメントとして見せよう、という姿勢があるのがいい。だが、この「異国の丘」や「南十字星」は、脚本や演出が、まだまだ未完成のような気がしている。上演時間も、もう少しコンパクトにしてはどうか。それでは戦争のさまざまな事実を伝えきれない、と言われるかもしれないが、しょせん2時間や3時間で伝えきれることではないのだ。エンターテインメントとして、その歴史に興味を持つきっかけになれば十分だと思う。それこそが「風化させない」ということにつながる。俳優だけでなく、演出も若手にバトンタッチして、フレッシュな感覚で完成度を高めていってほしい。

ひと月ほどの公演だか、木村花代愛玲が登場したらまた行ってしまうかどうか、思案のしどころだ。

「異国の丘」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/ikoku/index.html

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2008年5月24日 (土)

四季「マンマ・ミーア!」ちえドナキタコレ

最近、四季のキャストの動きが激しい。動きは激しいのはいいことだが、情報が十分に開示されないため新しいキャストを見たいという「異常な観劇態度」で劇場に向かうと空振りする。先日は五十嵐可絵が「赤毛のアン」のダイアナ役に名前を連ねたので自由劇場に行ったらその週は結局登場せず。でもまあ田邊真也のギルバートが見られたからいいか。そのまま「ライオンキング」に流れると、お目当ての田村圭ちゃんナラは目撃できたが、楽しみにしていた藤川和彦ティモンと飯村和也シンバがなんの前触れもなく変更に。またそれで出てきたシンバがかなり「・・・?」な出来だったのでとうとうエントリーを上げそびれてしまった。一方、海劇場では第三のエルファバとして今井美範が登場。翌週月曜の段階では樋口麻美とダブルではあったが名前が残っていたので、まあ新エルフィーに問題なければバトンタッチするんだろうと踏んでチケットを確保したところ、翌日には名前が消えていた。

と、これだけ冷たい仕打ちに会えばいい加減学習しそうなものだが、今度は井上智恵がドナデビューというニュースが。まだ鈴木ほのかとのダブルだが、土曜マチネにヤマを張ってチケット確保。新幹線も予約。本当に懲りないものだ。

しかし、今回は幸運にも新ドナにめぐりあうことができた。まあマチネがほのかドナだったら、サイゴン行きの前にもう一回見ておきたいと思っていたところだしそれはそれで良しとして、そのままソワレに居残るつもりではあったが。

さて、この日のキャストは以下の通り。

ドナ・シェリダン 井上智恵
ソフィ・シェリダン 谷内 愛
ターニャ 八重沢真美
ロージー 青山弥生
サム・カーマイケル 渡辺 正
ハリー・ブライト 味方隆司
ビル・オースティン 脇坂真人
スカイ 玉城 任
アリ 丸山れい
リサ 木内志奈
エディ 坂本 剛
ペッパー 鎌滝健太

井上ドナは、福岡公演の制作発表でアナウンスされたにもかかわらず、結局登場しないまま終わっていた。それがついに名古屋でデビューだ。

最初はまだドナには若いんじゃないかとか、いろいろな声があった。しかし井上智恵という人はエビータにしろアイーダにしろ、新しい役につくたびに賛否両論が上がるものの、実際に演じると反対意見はなりを潜めるケースが多い。それだけの実力者だということだ。だから今回も不安はなかった。

果たせるかな、井上ドナは実にナイスなキャスティングだった。

登場してすぐ、ルックスについての「若すぎる」という懸念は払拭された。もともとどちらかというとおばさん顔(失礼)だったこともあり、気が若くてオシャレな、かわいいおばさんといった印象だ。

演技はさすがにソツがない。まだデビューして数公演目のはずだが、もうすっかりドナになりきっている。笑いの間の取り方も合格点だ。

そして何といっても井上の魅力は歌だ。「Money, Money, Money」でさっそくその伸びやかな声を披露。保坂知寿や早水小夜子の声が頭に残っているので、低音の響きが弱いように感じるが、別にそれはこの曲に必須というわけではない。そしてそのぶん、高音がキレイに伸びる。ABBAの曲の、純粋というかある意味素朴な魅力がストレートに伝わってきて心地いい。それが炸裂するのは「Super Troopers」だ。井上のクセのない声を中心に、ロージー、ターニャの声がとてもきれいにそろっており、何だか聞いていて感動を覚えた。

二幕に入ると、歌より演技で見せるシーンが多くなる。最大の感動シーンであると同時に、ドナとソフィの生きる姿勢が交錯するというこの作品の特異点でもある、髪を梳き、ウェディングドレスを着せる場面。ここでは少し「若さ」が出てしまったか。友達感覚の母娘、というのが近年増えているようだが、このドナとソフィはまさにそんな雰囲気で、ドナの寂しさがぐっと涙を誘う、という情感が不足していたようにも感じる。

しかしアンコールでは、ほのかドナに不足していた「動き」、つまりキレのあるダンスで大いに客席を沸かせていた。この人、昔はアイドル歌手になりたかったんじゃないか?というぐらい、実にサマになっていた。

全体的には期待以上の素晴らしいドナで、今後が非常に楽しみだ。鈴木ほのかドナは、ある程度完成した状態で出てきて、今後どのようにこなれていくか、という楽しみがあったが、井上ドナはまだまだ余裕というか、伸びしろを残した状態だと思う。エビータも、アイーダも、井上は演じるうちにどんどん役を自分と同化させ、演技の完成度を高めていた。どういうドナに成長してくれるのか、わくわくする。

鈴木ほのかドナは、また帰ってきてくれるだろうか?ぜひこの役に定着してほしいものだ。ほのかドナと井上ドナは強力なツイン・ダイナモで、やや営業的に苦戦しているこの作品をけん引してくれることを願ってやまない。

さて、この日は前回ほのかドナを観たときと比べ、だいぶキャストも入れ替わった。サムは渡辺正。彼についてはこのあたりでさんざん書いているのでもう書くこともないが、しばらく顔を見ないとまた見たくなる、不思議な役者だ。相変わらず歌は苦しそうで、演技も下手だからご安心を。ひょうひょうとした味方ハリーは大阪以来。そして最近は「ウィキッド」のアンサンブルで渋い演技を見せていた脇坂真人がビル役に登場。舞台映えのする体格と、全身からあふれるワイルドさが実にビルらしい。しかし演技やセリフはとても丁寧なので、それがまたジョークが下手で、不器用なビルのイメージにつながる。まだまだ固さはあるものの、実に味のある役者だと思う。これからどんどん前に出てきてほしいものだ。スカイの玉城任も久しぶりに見た。セリフや歌の声が苦しそうなので、渡辺サムと一緒にいると、実はお前がサムの子だろ、と指摘したくなる。青山弥生&八重沢真美のコンビはもはや名人芸の域に達しているし、愛ちゃんソフィーは大阪のころよりどんどん娘っぽく、キュートになってきた気がする。いや、正直むちゃくちゃかわいい。これ以上追いかける女優を増やすのは財政も人間も破綻するから避けたいところだが・・・。本当にハナにつく鎌滝健太ペッパーは大好きだし、エディにはかつて「夢から醒めた夢」で暴走族を演じていた坂本剛。これがまたいい。川口雄二のややオジサンが入ったエディも好きだが、坂本エディにはどこか凄みがある。かつて本島でやんちゃしてたけど、今じゃドナの姐さんのもとでカタギとして頑張ってます、みたいな感じだ。

そうした中、弱いのがアリ&リサである。ここの人材不足が深刻だ。マンマ・ミーア!は、親世代(女)、親世代(男)、子世代(女)、子世代(男)の4象限が絶妙のバランスで均衡し、それらが互いにぶつかったり、入れ替わったりして面白さを出す、というところに脚本の妙がある。自分がこの作品を心底気に入っているのも、そのあたりに理由がある。だから、アリ&リサにももう少し存在感を出してもらわないと困る。それに、オープニングのシーンはこの2人が笑いを取ってくれないと、観ているこっちが恥ずかしくなってしまう。誰かいないのかなあ。萌絵リサとかさー(最近どこいった?)。花嫁アリとかさー。つか佐藤朋子は花嫁とジリアンしかさせてもらえんのか?まあそれでも役があるだけ幸せかも。

この日の公演は、何だかとても楽しかった。いや、マンマ・ミーア!という作品はもともと楽しい作品なのだけれど、これまでにない、リラックスしたのびやかな雰囲気が舞台から漂っていたのだ。四季の舞台はいつもピリピリした緊張感があり、それが舞台の魅力に他ならないのは事実だが、こういう空気もまた悪くない。それが、新ドナの影響なのか、カンパニーの組み合わせなのか分からないが、恐らくその両方だろう。

ぜひ名古屋公演をいい形で終わらせて、また東京にも戻ってきてほしい。その前に中都市公演か?それでもいいぞ。広島とかまた行きたいしな!

マンマ・ミーア!のWEBサイト

http://www.shiki.gr.jp/applause/mammamia/index.html

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2008年5月 5日 (月)

四季「オペラ座の怪人」日本公演20周年

オペラ座の怪人 高井 治
クリスティーヌ・ダーエ 木村花代
ラウル・シャニュイ子爵 岸 佳宏
カルロッタ・ジュディチェルリ 種子島美樹
メグ・ジリー 宮内麻衣
マダム・ジリー 秋山知子
ムッシュー・アンドレ 寺田真実
ムッシュー・フィルマン 小泉正紀
ウバルド・ピアンジ 半場俊一郎
ジョセフ・ブケー 岡 智

せっかく大阪に来たのだ、日本公演20周年記念カーテンコールが実施されている「オペラ座の怪人」を観ない手はない。

去年のクリスマス以来、3度目の拝謁がかなった花ちゃんクリスティーヌ。昨年2回観たときとはだいぶ印象が変化した。以前は、プレアデス星団と交信しているような無表情さが目立っていたが、笑顔の割合がぐっと増えた。そして、クリスティーヌといえばファントムとラウルの間で揺れ動く役どころであり、演じる人によってどちらに心が傾いているが異なって見えるのが楽しさの一つだが、最新バージョンの花ちゃんクリスは、完全にファントム寄り。というか、はなっからラウルなんか眼中にないようだ。一幕の最後、屋上でラウルのプロポーズを受け入れるときも、直前までうっとりした表情でファントムへの想いを語っており、とうてい本気で婚約したとは思えない。オペラ座の地下に住むファントムのために、そのオーナーを籠絡しようとしているんじゃないか。そんな魂胆まで透けて見えるようだ。

二幕ではファントムの暴走に戸惑っている表情も見せるが、このクリスティーヌはファントムとラウルの間で揺れ動いているのではなく、エンジェル・オブ・ミュージックとファントムの間で揺れ動いているのである。ラストの決心も、エンジェルであろうとファントムであろうと、その存在すべてを母の心で受け入れよう、という決意のようだ。

このクリスティーヌの心の中に、ラウルは全くいない。これはこれで新鮮で面白い。

一方、放置プレイになってしまったラウルを演じたのは岸佳宏。スキンブルシャンクス役でフレッシュな魅力をふりまいていた彼がどういうラウルになるのか楽しみにしていた。ぱっと見のルックスは太川陽介のようだ。しかし、Lui-Luiを歌っていたころのキラキラした太川陽介ではなく、旅番組でローカル線に乗って温泉に入っているようなごく最近の太川陽介だ(それはそれで結構好きだ)。岸は芸大卒の声楽家だが、セリフの発音はやや苦しそうで、歌もセリフっぽい歌だとなんだかイマイチである。演技・存在感も発展途上という印象。より多くの役を経験して、大きく成長してほしいものだ。

最近、調子を落としているという噂の高井治。確かに相当つらそうではあったが、テクニックと気合いでそれをカバーしていた。そのぶん、普段はおとなしめの演技がより熱いものになり、鬼気迫るファントムらしさが出たのはけがの功名か。しかし、そんな評価を受けるのは高井自身も不本意に違いない。俳優がベストの状態で舞台に出られるようにするのは劇団の仕事だろう。建前とはいえ「その日に最高の状態の俳優を舞台に立たせる」と豪語しているのだから、調子の悪い俳優が何日も何週間も舞台に出ているのはあまりにおかしな話ではないか。最近の四季のキャスティングはますます変だ。

終演後の特別カーテンコールは、まず支配人2人が出てきて簡単なスピーチ。その後オペラ座の誇るバレエをお楽しみいただく。それからキャスト陣が舞台上を歩きながらかわるがわるごあいさつ。これはどことなくハロルド・プリンスの演出を微妙にぱくった感じで面白い。どうせなら全員が同時にしゃべって何を言っているのかよくわからないものにしたらもっと面白かった。そして俳優達が客席に飛び出してのマスカレードで大いに盛り上がる。最後に満を持してファントムが登場し、全員でカーテンコール。なかなか感動的だった。何より、以前はカーテンコールでも見られなかった花代スマイルが120%炸裂していて、たまらない可愛さだった。

この花クリスなら、また近く観に行きたい。大阪楽しいしな!

記念週ということで、会場内の至るところにバラが飾られていた。

「オペラ座の怪人」WEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/operaza/index.html

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2008年3月31日 (月)

立岡 晃さん、死去

四季の名バイプレーヤー・立岡 晃さんが29日、亡くなった。享年78歳。

亡くなったその日も、「ウェストサイド物語」の舞台に立っていたという。しかし最後の一瞬まで役者であったその人生をどう評価するかは、当人以外の誰にも許されないことだ。

だから今はただ、偉大な俳優の業績に心を馳せ、静かにその冥福を祈りたいと思う。

近年は最後の役となったドック、「オペラ座の怪人」のムッシュー・レイエが記憶に新しいが、自分にとって最も印象深いのは「夢から醒めた夢」の老人役だ。

彼が、霊界空港で長年待ち続けた妻を優しく迎え入れるシーンが好きだ。その姿を見てもすぐには声をかけられず、照れたように、はにかむように笑みを浮かべてじっとその視線を待ち、そして一言。

「やあ、おまえ。やっと来たね」

昔はいいシーンだな、というぐらいの感想だったが、自分も年齢を重ねるにつれ、この演技の重みが身にしみてくるようになった。

秋劇場のロビーパフォーマンスでは、階段の踊り場で、ひとりひっそり手回しオルガンを奏でていた。誰も通らないときでも、とても楽しそうに。

Yy102

こんなピンぼけの携帯写真しか残ってないのは残念だが、そんな写真の中で、やはり携帯を向けているファンに「いよっ」とばかりに手を上げている。その姿こそ、自分にとっての立岡 晃そのものである。

四季のお知らせページ

http://www.shiki.gr.jp/navi/news/002790.html

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2008年3月20日 (木)

四季「ウィキッド」新キャストぞくぞく

グリンダ 西 珠美
エルファバ 樋口麻美
ネッサローズ 山本貴永
マダム・モリブル 森 以鶴美
フィエロ 北澤裕輔
ボック 伊藤綾祐
ディラモンド教授 前田貞一郎
オズの魔法使い 飯野おさみ
男性アンサンブル

須永友裕、西野 誠、永野亮彦、成田蔵人、脇坂真人、
白倉一成、品川芳晃、上川一哉、関 与志雄

女性アンサンブル 長島 祥、永木 藍、鳥原如未、あべゆき、黒崎 綾、
有美ミシェール、石野寛子、柴田桃子、遠藤珠生

オズの国に次々と新キャスト投入。飯野オズがまず観たい。と思ってたら西グリンダ&北澤フィエロ登場。そろそろ行くか、と考えていたらディラモンド教授まで替わってしまった。そんなわけで前日予約。

考えてみたら西珠美って初見だ。「オペラ座の怪人」でも「ジーザス・クライスト・スーパースター」でも観る機会がなかった。冒頭の登場シーン、シャボン玉に乗ってお出ましのグリンダ様。ぱっと見のルックスは背がすらっと高く、スタイルもなかなか。顔のふんいきも美人顔だ。歌は沼尾みゆき、苫田亜沙子と比べて遜色ないが、一歩ぐらいは譲るか?演技は非常に固い感じがしたが、先行した2人とはやや異なる方法でそれなりに笑いも取っていた。たとえばWhat Is This Feeling? の歌い出しで独特の間を取っていたり、Popularのやりとりに新たなアレンジを加えたり、といったぐあいに。

ただ、沼尾のような愛きょうも、苫田のようなぶっとんだ感じもなく、ふつうに鼻持ちならない女、という印象もある。まだ役にこなれていないからか。時間が経つにつれ、2人は違った味わいが出てくることを期待したい。

北澤フィエロ。李涛フィエロがすっかりイメージとして定着し、だいぶ気に入っていただけに新フィエロがどう自分の目に映るか不安でもあったが、さすが安定感のある北澤だ。ばっちりイケメン王子になりきっている。フィエロはちょっとヘンな奴なところがあるクセのある役で、「オペラ座の怪人」ラウル役の感じから、そのヘンな奴なところが出てこないかな、とも懸念していたが、それも大丈夫だった。半分にやけたまま固まった表情が、どことなくつかみどころのないフィエロらしさにつながっていた。そういえば、北澤は「夢から醒めた夢」の夢の配達人でも、つかみどころのないキャラクターを演じていた。なかなか幅広い演技の出来る人である。

演技の細かさはさすがで、エルファバを救出した後、グリンダに向けた銃を静かに下ろすときの、覚悟と慈愛に満ちた複雑な表情は涙を誘う。

ダンスに関してはやはり李に及ばないが、Dancing Through Lifeでフィエロが見せる「将来を暗示する」動作は、キレがいい李だとその動きも“決まって”しまい、あまり目に止まらない。しかし北澤だとその動きがややぎこちないため、かえってよく目立つというけがの功名(?)もあった。

飯野オズは、松下オズのインチキくささも、栗原オズのうさんくささもない、意外にも一番「悪」を感じさせるオズだ。そしてその悪に裏打ちされた男の色気が漂う。ここは飯野おさみの本領発揮といったところだろう。

「アイーダ」のファラオ役でおなじみの前田貞一郎がディラモンド教授に。声がよく通り、身のこなしも敏捷で、ヤギというより鹿男のようだ(全ての鹿の声が山寺宏一というわけではないのだが)。セリフ回しが早く、武見龍磨ディラモンドのように笑いを取るセリフで観客が反応するための間を取ったりはしていなかったが、今後そのあたりは変わっていくかもしれない。

新キャストを迎え、変化が始まった四季のウィキッド。今のところ、いずれも無難な配役という印象だが、ぜひサプライズも期待したいところだ。まずは阿久津陽一郎フィエロ。「南十字星」が終わるころには可能性も…?そして、やっぱり観たい木村花代グリンダ。まだまだ数年はロングランしてもらわなきゃあな。別に東京でなくてもいいぞ!

「ウィキッド」WEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/index.html

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2008年3月 9日 (日)

四季「魔法をすてたマジョリン」@茨城県民文化センター

マジョリン 関根麻帆
ブツクサス 藤田晶子
ニラミンコ 味方隆司
ダビッド 鎌滝健太
オカシラス 神保幸由
プレッツェル婆さん はにべあゆみ
ステファン 上領幸子(劇団昴)
タツロット 那俄性 哲
花嫁 佐藤朋子

マジョリン全国公演が自分の本家のある水戸に来るというので、一族郎党を率いて茨城県民文化センターへ。魔女といえば、オズの国でも異変が起きているらしい。いささか気になるところではあるが、この週末はオカシラス様の統べる魔の山に潜入だ。

今回は一行に児童も含まれているため、大手を振って前のほうで観劇。関根マジョリン&味方ニラミンコは2006年夏に東京で観たときと同じ。藤田ブツクサスは初見だがテレビ録画で繰り返し観ているので初めての感じがしない。鎌滝ダビッドに那俄性タツロットも同一コンビだ。

というわけで懐かしい雰囲気の公演だったが、まほりんがなんだかとてつもなく美人になっている。前回は比較的後ろのほうの席だったので気付かなかっただけだろうか?目鼻立ちのハッキリした、ハーフのようにも見えるキレイな顔。なのにあの身長。くうーっ萌えてきたぜ。アンサンブルではどこかで観ているのかもしれないが、他の役でも拝見したいところだ。いま、娘役といえば何だろう?ソフィもいいが、いっそのことピコとかどうよ?味方デビルとセットでさ。

その味方ニラミンコはもはや名人芸の域に達している。最初は反応の薄かった茨城の子供たちだったが、一幕後半ぐらいから爆笑を始める。二幕になると、もはや子供たちはニラミンコしか見ていない。味方隆司は器用な役者だと思っていたが、昨年のハムレットでは、その役者としての能力の高さに圧倒された。全くもって尊敬に値する俳優だ。

美人といえば花嫁はもちろん佐藤朋子。2006年3月には、この人のジリアン見たさに長岡京まで「人間になりたがった猫」を観に行ったが、また別の役で観たいものだ。

今回はアンサンブル、特に魔女たちを演じていた女性アンサンブルにも美人が多かった。カーテンコールで素顔を出したとき「もったいねえーっ」と心の中で叫びたくなるほどだ。

なんだかファミリーミュージカルなのに、完全に美人さん探しになっている。これは四季に「異常な観劇態度」と指摘されても否定できないところだ。

自分が幼稚園に通っていたときからある、茨城県民文化センター。小、中、高それぞれの時代で思い出深い。このエントリーで紹介した、数少ないクリスマスの楽しい思い出もここだった。大学に入ってからも、東京よりいい席が取りやすいということで、のりPや渡辺満里奈、新田恵利を観た記憶がある。そうそう、ここで「ジーザス・クライスト・スーパースター」全国公演を観たのが、自分がミュージカルにのめりこむきっかけの一つとなった。

恐らく就職してからは初めて来たように思う。これからも茨城県民に文化を届けて欲しいものだ。改装を繰り返し、ホール内部はあまり古さを感じさせないが、空調が弱くてちょっと寒かった。

四季「魔法を捨てたマジョリン」WEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/majorin/index.html

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2008年3月 2日 (日)

四季「マンマ・ミーア!」ムーン復活!鈴木ほのかドナ出現

ドナ・シェリダン 鈴木ほのか
ソフィ・シェリダン 谷内 愛
ターニャ 八重沢真美
ロージー 青山弥生
サム・カーマイケル 荒川 務
ハリー・ブライト 明戸信吾
ビル・オースティン 栗原英雄
スカイ 田邊真也
アリ 山本貴永
リサ 玉井明美
エディ 川口雄二
ペッパー 丹下博喜

2月26日に開幕した名古屋のマンマ・ミーア!。主役のドナに鈴木ほのか、というニュースが飛び込んできた。これはハリーならずともびっくり仰天だ。仰天して銀行を休んだりはしないが、そもそも銀行にも勤めてはいないが、発売初日にゲットした週末公演がなんとも待ち遠しくなった(プレ公演は入手できず)。

鈴木ほのか。彼女を初めて見たのは89年の「レ・ミゼラブル」コゼット役ではないかと思う。87年初演時の斉藤由貴のインパクトが良くも悪くも強すぎて、他のコゼットはどうだろうなあ、と思っていたが、ほのかコゼットは実に可愛らしく、すっかり気に入ってしまった。

その名前は頭に深く刻み込まれたので、どこかでまた見たいとは思っていた。しかし機会がなく、結局再会するのは97年、同じ「レ・ミゼラブル」で、今度はファンティーヌを演じたときだ。

この公演は岩崎宏美がファンティーヌとして復活した年で、自分の興味は主にそちらに傾いていた。何度か鈴木ファンティーヌも見たが、正直、印象はあまり強くない。彼女はアイドル顔で、ファンティーヌを演じていても「まだコゼットいけるんじゃね?」というほどだったが、声の線が細く、歌唱力は岩崎の前ではどうしても二歩も三歩も譲ってしまうのだ。

というわけで、その後も名前だけは常に頭の片隅にありながら、見る機会なく数年が過ぎる。彼女自身、いくつかミュージカル公演に名を連ねていたものの、あまり本領を発揮できるような役は得ていなかったようだ。自分の記憶からも、だんだん遠ざかっていた。

しかし、彼女の演技を見る機会は、最高の形でやってきた。ドナという素晴らしい役で彼女をまた舞台で見られることが本当に嬉しい。

このままだと、本当に中途半端な役しかできない役者人生を送ってしまうかもしれなかった鈴木ほのかにとって、自分の育ての親といえる東宝の最大のライバルである四季に参加すること、しかもこの夏には「ミス・サイゴン」への出演も決まっていることを考えれば、その決意はなみなみならぬものがあることは容易に想像できる。四季にとっても、保坂知寿が抜けたあと、迷走を続けたドナ役である。それをハッキリ打ち出せなかったことが、福岡公演の早期終了を招いてしまった。そのドナに東宝から引き抜いた女優を迎える、というのは話題性もあり願ったりだったろう。

今年に入って、四季では芝清道ムファサ&村俊英スカー、苫田亜沙子グリンダ、吉沢梨絵アンと新キャストが続いていたが、ちょっと比較にならないぐらいのサプライズだ。

と、かなり興奮気味に指折り数えて待ちに待った土曜日。N700系のぞみで名古屋に向かった。

伝説の渡辺正ラダメスを目撃した「アイーダ」以来の名古屋ミュージカル劇場。大阪、福岡と旅してきた「サマーナイト・タベルナ」の出迎えを受ける。

Hotel

おなじみのオーバーチュアがかると、もうはやる気持ちを抑えきれない。この作品は心の底から大好きだ。でも音響の迫力がイマイチだった気がする。名古屋のスピーカーってあんなのでしたっけ。

ソフィーが出る、アリが、リサが出る。ロージーとターニャが現れる。そしてついに鈴木ほのかドナ登場。

「浜に打ち上げられたようね、お二人さん!」

うおおおおおおお美人だ!やっぱり鈴木ほのかだ。少しは年をとってるかと思ったけど、ぜんぜん変わってない。昔のままのほのかだ!

と親父三人衆とまったく同じ感想を脳内で叫び、気分はすっかりエーゲ海である。

とにかく、鈴木ドナはルックス最強。これは間違いない。目がくりんとしたかわいらしさがほのかコゼットの魅力だったが、その愛らしさは年をとっても健在。そして見逃せないのは、基本スリム体系でありながら、実にナイスバディだということだ。衣装によってはかなりドキドキしてしまう。しかし、それがあるからこそ「昔のままのドナだ!」と叫んだあとの、親父たちの妙なハイテンションぶりに説得力が加わるのだ。

演技の面では、かなり肩に力の入ったドナ、という印象だ。このままずっと行くのか、公演を重ねる中で変わっていくのかは分からないが、もう少し弱さ、かわいらしさの部分をのぞかせたほうがいいような気がする。それは本来の持ち味なので、自然と出てくるものと思われる。

ちょっと心配していたのは歌唱力だ。もともと細い声の人、という印象だったので、あのドナのパワフルな歌い方ができるのか、と案じていた。しかしそれは杞憂に終わった。ここはルックスとは対称的に、昔とまったく異なる発声法で、低めのキーもきちんと歌いこなしている。少し歌いだしがつらそうに聞こえることもあるが、それも序々にこなれてくるだろう。保坂の独特の歌い方、早水小夜子の圧倒的なボーカルに比べると、やや物足りないかもしれない。だが特徴ある彼女らに対し、非常にナチュラルに歌っているので、ABBAの曲にマッチしているような気もする。

ただ、カーテンコールではもう少しハジけて欲しかった。考えてみると、彼女はあまりダンス系の役はやってこなかったのかもしれない。「ミス・サイゴン」が終わったら、ぜひ四季にワラジを脱いで、さまざまな役にチャレンジしてほしいと思う。あの年代の女優が圧倒的に不足しているのがいまの四季だ。チャンスは多いのではないだろうか。

今回の公演で面白かったのは、鈴木ほのかドナと、谷内愛ソフィの相性が抜群によかったことだ。愛ちゃんは自分の中では娘属性があまりなく、お姉さん属性なのでソフィとしてはちょっとしっかりしすぎ、という印象があるが、鈴木ドナと並ぶと、なんだか本物の美人親子に見える。それが幸いして、Slipping Through My Fingers はプラスアルファの涙を誘った。

鈴木ほのかドナ、人によって感想はさまざまだろうが、自分としてはずっといてほしいドナだ。名古屋限定、開幕限定に終わることなく、これからも演じ続けてほしい。

ひとつ、嬉しい報告。

前回の福岡公演の際、ラストシーンの冗談みたいに大きな月が、投影のしょぼいものになっていてひどくがっかりした。「マンマ・ミーア!」は、月の光に導かれた優しい奇跡を描いた寓話だと思う。だからあの最後の月の存在感は不可欠の要素だ。ぜひ名古屋公演では復活を、と思っていたが、ばっちりあの月が登場している。これでI Have A Dreamの感動も倍増だ。こりゃ名古屋にも通っちまいそうだな。

Boad

マンマ・ミーア!のホームページ

http://www.shiki.gr.jp/applause/mammamia/index.html

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2008年2月23日 (土)

四季「赤毛のアン」吉沢梨絵最強伝説

アン・シャーリー 吉沢梨絵
マシュー・カスバート 日下武史
マリラ・カスバート 木村不時子
ステイシー先生/スローン夫人 五東由衣
ギルバート・ブライス 望月龍平
ダイアナ・バリー 真家瑠美子
レイチェル・リンド夫人 都築香弥子
バリー夫人 大橋伸予
スペンサー夫人/パイ夫人 倉斗絢子
ブルーエット夫人 高島田 薫
マクファーソン夫人 広岡栄子
ジョシー・パイ 長谷川ゆうり
プリシー 久居史子
ベル 泉 春花
ティリー 杏奈
ルビー 西田ゆりあ
フィリップス先生 鈴木 周
郵便配達アール/チャーリー 有賀光一
農夫セシル 百々義則
牧師/駅長 田中廣臣
キット 奥田慎也
ジェリー 松尾 篤
ムーディー 塩地 仁
トミー 北村 毅

「赤毛のアン」が開幕。当初まったく観る予定がなかった作品だが、開幕が近付くにつれ「こんどのアンは野村玲子ではないらしい」「どうも吉沢梨絵っぽい」という噂がネットに流れ始めた。

この作品も未見だし、そもそも「赤毛のアン」という小説についても、テレビや映画などを通じて取得した、極めて断片的な情報しか持っていなかった。そんな自分でも、吉沢アンというのはなんだかハマリ役のような予感がする。そこで急いでチケットを確保して自由劇場へ。

その吉沢アン。外れてばかりの自分の予想が今回は当たった。大当たりだ。マシューと初めて出会う駅のシーン、片手で帽子を押さえて走り出す姿はまさに小説の中から飛び出してきたようだ。

120%の元気で笑ったり泣いたり、オーバーアクション気味の演技はもはや吉沢の当たり役となった「夢から醒めた夢」のピコに通じるものがある。アンは孤児であり、幼いながら住む場所を転々とした悲しい運命の子だが、ピコも、以前の演出(2000年の福岡公演よりも前)だと、どこかあの元気さの裏に不幸を隠している雰囲気があった。その旧式ピコを思い出しながら観ていた。

もちろんその旧式ピコは保坂知寿である。今回の吉沢アンを観ていて、もうひとつ保坂とだぶる点がある。それは笑いの間の取り方だ。この「赤毛のアン」で、アンが出ている場面は8割方笑いを伴う。連続して笑いを取らなくてはいけない難役なのだ。しかし吉沢は、客を爆笑させるのも、軽くくすぐるのも自由自在で、アンが舞台にいるだけで、次は何をしてくれるんだろうとわくわくさせてくれる。このコメディエンヌとしてのセンスは、「マンマ・ミーア!」で保坂から学んだものだろう。保坂は、数名いるソフィーの中でも、吉沢に特に目をかけていたと言われる。保坂と吉沢では女優としてのタイプは全く違うが、保坂の遺伝子は確かに吉沢に受け継がれた、と感じた。

全体的に明るく楽しい舞台だが、もちろん笑わせてばかりいるわけではなく、時おり悲しみを隠しきれなくなる演技を見せる。これがまた、ふっと心を奪われそうになるようないい表情だ。そして静かに迎えるエピローグ。マシューとアンとのやりとりは、いい歳した野郎といえども涙がこみあげてくる。「レ・ミゼラブル」のラストシーンにも匹敵する名場面に、吉沢と御大・日下武史の名演技が加わるのだから、それもいたしかたのないことだろう。

吉沢、日下のほか、四季のストレートプレイには欠かせない木村不時子、ニューヨークの不良からカナダの好青年に生まれ変わった望月龍平、ピコ役に抜擢されたがいまだ未見だった真家瑠美子、優しさと稟とした雰囲気を併せ持つステイシー先生に五東由衣、「壁抜け男」の新聞配達から郵便配達へとジョブチェンジした有賀光一、さらに高島田薫に百々義則に田中廣臣に…と何とも粒ぞろいの共演者たちがずらりと並び、作品全体の完成度を高めている。

本当にいい舞台を観た、と素直に満足できる公演だ。会報「ラ・アルプ」でいかにも高井治がマシューを演じるようなことをにおわせてチケット販売にドーピングしたのはどうかと思うが、まずは日下マシューの名人芸を堪能しつつ、パリからカナダへ高井が向かうのを待つとしよう。

それにしても、今回の吉沢は見事に可愛くない。なのに、抱きしめたくなるほど(やったら犯罪)魅力的だ。本当にいい女優になった。次に何を演じるのか今から楽しみである。

四季「赤毛のアン」ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/anne/index.html

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2008年2月17日 (日)

四季「美女と野獣」広島公演開幕 新バベットがすげえ

ビースト 柳瀬大輔
ベル 坂本里咲
モリース 松下武史
ガストン 野中万寿夫
ルミエール 渋谷智也
ルフウ 中嶋 徹
コッグスワース 青木 朗
ミセス・ポット 織笠里佳子
タンス夫人 竹原久美子
バベット 小川美緒
チップ 川良美由紀

「美女と野獣」の広島公演が始まった。この作品は東京公演でいやというほど観たので、そのあとは2005年の福岡公演で木村花代ベルを観にいったきりだ。ブロードウェーでも1回だけ。しかし、自分の好きなミュージカルを5つ選べと言われれば確実に入ってくるであろうお気に入りの作品であり、できればもっとひんぱんに観たいものである。

昨年この広島公演が発表になった際、記者会見に花ちゃんが出席していたこともあり、騙されたつもりで初日のチケットを入手。案の定ダマされたわけだが、先日の静岡公演の発表会見が里咲さんだったのでまあ初日はそうだろうと思っていた。

それよりも、自分は広島に行ったことがなく、ちょうどこの数年、一度行かなければと思っていた所でもあるので、広島観光を兼ねて楽しみに出かけたわけだ。

会場に着き、キャストを確認後、プログラムの見本を覗いて(買わなかった)驚いた。ベル役のキャストに花ちゃんの名前がない!挙がっているのは「坂本里咲 井上智恵 西 珠美 小川美緒」の4人。こりゃまたいったいどういうわけだ??

そのことは後回しにするとして、まずはこの日のメインキャスト。里咲さんベルは初見ではない(はずだ)が、本当にベルのイメージ通りだと思う。芯の強さと、そこから来る不安とが同居していて、野獣やガストンならずともほっとけない雰囲気だ。ついこの間ロッテの母親を演じていたことを考えると、年齢的な違和感を感じないでもないが、声がかわいらしいのでさほどは気にならない。

柳瀬ビーストは、もはや芥川英司のビーストを越えたかもしれない。回数でも、役のハマリ具合でも。「愛せぬならば」をせつせつと歌い上げる姿も素敵だが、笑わせるシーンの間の取り方が絶妙で、観ているうちにどんどん愛着がわいてくる。

そしてかなり久しぶりに観た気がする野中ガストン。これがまた容赦なく笑いを取りに来る。こういう濃い目のお笑いキャラ演じさせたら彼の右に出る者はいない。ただ、野中があの衣裳とあのヘアスタイルで出てくると、かなりコントっぽくなってしまう。見た目ちょっと寺門ジモンみたいだし。ベル役もそうだが、このあたりはもう若手に任せたほうがいいのではないか。そう考えると、ポスト野中(私見)だった吉原光夫がいないのは本当に痛い。福岡のとき、吉原ガストン登場と聞いて、沼尾みゆきベルとセットになったら観に行こうとか考えていたら見逃してしまった。これはいまだに後悔している。自分はこのガストンという人物は、全ミュージカルの中でもグリンダに並ぶ好きなキャラクターなのだ。

今回のキャストで最も印象に残ったのは、実はバベットである。小川美緒。オペラ座の怪人で観たような気がしていたが、それは勘違いで、どうも初見らしい。

このバベットは声、表情、仕草、すべてが可愛くなおかつ色っぽい。今まで観たバベットでいちばん好きかもしれない。顔は細川ふみえと神田うのを足して2で割ったような顔で、つまり自分の趣味とは正反対なのだけれど、それでも好感を持ったということは相当印象が強かったということだ。

八田亜哉香のバベットを未見で、これも後悔しているのだが、過去に自分が観たバベットは、どちらかというと百戦錬磨のオトナの女性、という雰囲気だった。オトナの女性は火遊びの加減を知っているので、安全といえば安全である。しかし小川バベットは、妻子ある上司と不倫関係になって、その男の人生も家庭も一気に破壊してしまう新人女性社員のようである。こういう女性のほうが、危険性は高いのだ。ルミエールが渋谷だったからそう見えたのかもしれないが、このデンジャラスさは個人的にヒットである。こういう女性にかかわって自分の人生を台無しにするのが俺の夢だからだ。待てよ、そのためにはまず妻子を持たなきゃいけないか。

ただし歌については、数少ないソロパートを聴いた感じではやや弱かったと思う。彼女はベルにもキャスティングされており、将来性を高く評価されている様子だが、すべては歌にかかっているのではないか。静岡公演もあることだし、ベルデビューも楽しみに待ちたい。

というわけで、安定キャスト+気になるバベットの登場により、公演自体は大いに満足できた。やっぱりこの作品はいい。基本的に自分は馬鹿なので、明るくノウテンキな作品が一番しっくりくる。静岡のあとは恐らく仙台に行くだろうが、たまには秋劇場あたりで公演してほしいところだ。春秋両方ディズニー、ってわけにはいかんのだろうが。

それにしても気になるのは花ちゃんのゆくえである。李香蘭や南十字星などへの参加でもあるのかもしれないが、できればやっぱりグリンダで!あるいはまさかの電撃退団か?それは今のタイミングでは避けてほしいなあ。もうコゼットはちょっと厳しいし。キムならできるか?いやいや、そういう想像はやめておきましょう。

Alsok

「美女と野獣」のホームページ

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2008年2月10日 (日)

四季「ユタと不思議な仲間たち」芝と愉快な仲間たち

ペドロ 芝 清道
ダンジャ 丸山れい
ゴンゾ 深見正博
モンゼ 田村 圭
ヒノデロ 道口瑞之
ユタ 藤原大輔
小夜子 樋口 茜
寅吉 吉谷昭雄
ユタの母 菅本烈子
クルミ先生 丹 靖子
大作 菊池 正
一郎 遊佐真一
新太 厂原時也
たま子 後藤華子
ハラ子 上原のり
桃子 市村凉子

全国を回っていた「ユタ」が東京に戻ってきた。今回は観なくてもいいかな、と思っていたが、芝ペドロ登場の報を受け、つい前日予約で秋劇場へ。

ペドロというのは、なかなか魅力的な人物である。

前回観たときのエントリーにも、「ユタと不思議な仲間たち」は男ミュージカルだ、というようなことを書いた。この作品に登場する座敷わらしたちは、人間にも、幽霊にもなれず、どの世界にも属することができなかった、いわば究極のアウトローである。とんでもなくつらい生い立ちを背負いながら、決してそのつらさに逃げることなく、強く生きているわらしたちの姿には、どこかハードボイルドな雰囲気さえ感じる。

そのハードボイルドさが最も顕著なのがペドロという役だ。原作を読むとそれが一層明らかになる。物語の最後、突然訪れたユタとの別れにも、ペドロはあっさり「じゃ、あばよ」と言って去っていく。しかし、その眼には涙が浮かんでいる。そういう男っぽい所作がペドロの持ち味なのだ。

また、小夜ちゃんへの想いも、わらし達にはバレバレであるが、自分ではじっと胸に秘めているつもりでいる。そこにも男の哀愁を感じずにはいられない。

沢木順は、自叙伝「僕のミュージカル修業」の中でペドロ役についてこう語っている。

この作品のペドロをやってくれ、と言われたときは冗談だと思った。(中略)その役は、ぼくの理解ではいわゆるオジさん役で、まさかぼくがやる範疇の役だと思ったことはなかったのである。(中略)原作を読んでみて、「あっ」と思った。ペドロは若者で、小夜子とユタとの三角関係にあるのである。“オジさん”ではなかったのだ。

さらに、その後「オペラ座の怪人」でファントムを演じるにあたり、このペドロ役が生きたのだとも語っている。「ペドロとファントムとは共通項が多い」のだそうだ。

さすがは沢木順、という独特な解釈だが、自分も昨年初めてこの舞台を観て、また原作を読み、同じようなイメージを持っていた。前回観たときの田代秀隆ペドロも、昨年末NHKで放送された菊地正ペドロも、それぞれに魅力的ではあったが、ハードボイルドで、哀愁を漂わせるペドロ、という雰囲気ではなかった。芝清道なら、恐らくそれに近いペドロを演じてくれるのではないか、という期待があったのだ。

そして初めて自分の目の前に現れた芝ペドロは、自分のイメージ通り、そして期待をはるかに上回るすばらしいペドロだった。

「一家の親分」としての風格、情に厚い一面、小夜ちゃんへのピュアな思い、決して弱音をはかないダンディズム……。すべてが、実に男らしく「決まっている」。そこにあの男らしさ200%の歌声が加わる。もうしびれるぐらいにカッコいい。

もちろん、芝だから笑いを取ることも忘れない。自分もそうだけど、観客席の子供たちは、ペドロが何かするたびに、笑う準備に余念がない。「キャッツ」のラム・タム・タガーよろしく、舞台の隅にいるときも妙な小芝居をしているので目が離せない。

だが最後はちゃんとハードボイルドに決めてくれた。アウトローの象徴であるマタタビ姿に身を包み、声のトーンをぐっと下げてユタに別れを告げるペドロ。どうやら本人もここは限界までカッコよく演じようとしている様子で、どこか自分の演技に酔っているようにも見える。しかし実際のところカッコいい。ハンフリー・ボガードも顔負けだ。アル・パシーノ+アラン・ドロン<芝清道だ。って榊原郁恵ネタは古すぎだろ。

終演後のキャストによる見送りではまっさきに芝のもとへ。そのまんま「格好よかったです!」と告げると、芝は快心の笑みを浮かべて「ありがとうございます!」と返してくれた。ナイスガイだぜ、芝。

さて、この日はほかのわらし達も全員前回とは異なる。

丸山れいダンジャ。アリやリサのイメージがあるが、ダンジャはダンサー枠なのだろうか?クールさが際だついいダンジャだ。

深見正博ゴンゾ。かなりのベテランだが、とてもそうは思えないパワフルなゴンゾだ。しかしベテランらしく、動きやセリフの端々に何とも言えないいい味わいを漂わす。

道口瑞之ヒノデロ。もうこの人はすっかり下村尊則の後継者だ。妙に色気があり、そのために大いにキモチ悪く、笑いの取り方もばっちりである。あれ?広島のルミエールはどうなるのさ?

そして田村圭モンゼ。「エクウス」以来の圭ちゃんは、青山弥生や大徳朋子に比べると身長がだいぶ高いのでモンゼが務まるのか心配だったが、顔が小さいのでちゃんと小柄に見える(かなり中腰の姿勢を強要されてはいたが)。美人は何をするにも有利なのだ。そしてちょっとアニメ声がかったクリアボイスで、「~だおん♪」なんて言っていると、どっかの萌えキャラみたいでなんとも可愛い。見方間違ってますかね。ちゃんと握手もしてきちゃいました。すいません。

それにしても、今回は完全に芝ウォッチングになっていた。ついこの前福岡で芝&村ウォッチをしてきたばかりなのに。この男優追っかけ状態は年末の田邊ハムレット&望月ベルナルドから続いている。そして並行して実写版「魁!!男塾」や「アメリカン・ギャングスター」といった男満載の映画も観ている。なんだか男まみれの毎日だ。

だから、その反動で海劇場でグリンダのアレをウォッチしたり、AKB48に通ったりしたくなるのもやむを得ないというものではないか。そんな言い訳が通用しないことぐらい分かっとるわい。

ユタと不思議な仲間たち ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/yuta/index.html

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2008年1月20日 (日)

四季「ウィキッド」苫田グリンダきたああああああ

グリンダ 苫田亜沙子
エルファバ 濱田めぐみ
ネッサローズ 山本貴永
マダム・モリブル 武 木綿子
フィエロ 李  涛
ボック 伊藤綾祐
ディラモンド教授 武見 龍磨
オズの魔法使い 栗原英雄
男性アンサンブル

清川 晶、嶋崎孔明、永野亮彦、成田蔵人、脇坂真人、
白倉一成、品川芳晃、清原卓海、三宅克典

女性アンサンブル 有美ミシェール、間尾 茜、あべゆき、宇垣あかね、今井美範、
由水 南、石野寛子、柴田桃子、遠藤珠生

開幕から半年、ついに第二のグリンダ登場である。

当初の発表にあった佐渡寧子でも、開幕時にパンフレットに名を連ねた西珠美でもなく、クリスティーヌ役で知られる苫田亜沙子だ。2人を追い抜いてグリンダデビューしたのが、実力主義の結果なのか、大人の都合によるものなのかは知るよしもない。しかしこの3人の中でいちばん観たいのは誰かと聞かれれば、自分は間髪入れず苫田と答えるだろう。だから個人的にはこのキャスティングは嬉しい。

それにどうも自分はこのグリンダというキャラクターが心底好きらしく、最近は四季以外の作品を観ても「この女優さんはグリンダできそうだなあ」とかそんなことばかり考えている。だから新グリンダというのはとてつもなく大きな関心事だ。

この情報を知り、さっそく日曜の前日予約を狙うことにしたが、土曜の14時(会員向け前日予約の開始時刻)は、福岡でライオンキングを観ていた。第一幕が終わり、すでに14時25分。大急ぎでロビーから電話すると、幸運にも2階席に飛び込むことができた。

てなわけで福岡の予定を早めに切り上げて電通四季劇場「海」へ。苫田グリンダの出演する可能性は50%だったが、もし沼尾みゆきだったとしても、しばらくグリンダから離れることになるだろうから、それはそれで観ておきたいと思っていた。結果苫田グリンダに会うことができたわけだが、半年も交替なくこの難役を演じきった沼尾には本当にお疲れ様と言いたいところだ。もちろん、またすぐに戻ってきてほしいのも本音ではある。

さて、注目の苫田グリンダはどうだったか。

結論から言うと、申し分のないグリンダである。

歌については、沼尾と同様声楽の出身であり、その実力はオペラ座の怪人で十分すぎるほど立証済みだから心配もしていなかったが、堂々とした歌いっぷりにはベテランのような貫禄が感じられる。明るく、伸びのある声は聞いていて心地良い。

そして演技も、歌と同様に実に堂々としたものだ。沼尾が明らかに無理してキャピキャピしている(でもそこがいい)のに対し、苫田の場合はあの、普通の人より2~3度ぐらい体温が高いと思われるグリンダのテンションが、ごく自然に感じられる。これはやはり実年齢が若いからだろうか?

また、笑いの取り方もサマになっており、間の取り方が絶妙だ。これは大阪出身という遺伝子のなせる業だろうか。思ったことをずけずけと口にしてしまうものの、どこか憎めない、大阪のおばちゃんみたいな雰囲気もある。

見た目に関して言うと、沼尾が愛嬌あるタヌキ顔で実年齢より若く見えるため、あまり若返った感じがしない。むしろ落ち着き払っているために年上のようにも見える。

こう書いていると、歌も演技もいいが、見た目や雰囲気はおばさんっぽい、ということになり、さほど魅力的に思えないかもしれない。しかし実際には、舞台に登場しただけでついつい目が行ってしまい、終演後も、しばらくそのグリンダ姿が頭の中でぐるぐる回転するほど、好きにならずにはいられない素敵なグリンダなのだ。

一体その理由はどこにあるのだろう。

 

……やはり、アレか。

 

アレの力なのか?

 

そのアレについてだが、最大の注目ポイントとして、登場からずっとチェックしていた。久しぶりにオペラグラスも借りた。最低な客である。

冒頭、巨大なシャボン玉に乗って颯爽と登場した苫田グリンダ。ここではアレが強調されるような衣裳ではないので控えめだ。しかし、その後の衣裳チェンジに期待を感じさせるボリューム感である。

続いて入学式のスーツ姿。これもスーツだからアレに目がいくわけではないが、上着がちょっと上に持ち上がっているように見える。期待は高まる一方だ。

そして待ちに待ったダンスホールのシーンで、あのピンクのドレス姿を披露。

うわぁ…。

「後ろを留めてちょうだい!」のポーズが、まるでパイレーツだっちゅーの。いやあ、若いって素晴らしいですね。そこから「ポピュラー」まではグリンダにクギ付けだ。

ほか、アレが強調された衣裳としては、二幕でエルファバがオズのもとへ乗り込んできてはち合わせする時に来ている水色のドレスが、こりゃまたケッコーである。

というわけで、一部の男性ファンには非常にお勧めなのだが、全体的に見ると、もう少しバランスを調整したほうがいいと思えるところもある。グリンダは、自分に絶対の自信を持つ鼻持ちならない面を、間抜けな馬鹿っぷりの可愛さで中和しているようなキャラクターだ。その間抜けさが苫田グリンダからはあまり感じられない。その結果、如才なさが前面に出てしまっている。

そうなると、鼻持ちならなさが文字通りハナについてくるわけで、少し共感しにくいグリンダかもしれない。自分のような観客には、アレの攻撃によってその問題を吹き飛ばしてくれるのだが、その攻撃が一部の限られた嗜好のファンにしか通用しないことは言うまでもない。

もっとも、それは大きな問題ではない。そもそも、まだ四季に入って間もない、そしてこの役を得たばかり、の苫田が、ここまでグリンダを自分のものにしているのは、驚異的なことなのだ。今後、このグリンダがさらにどのような成長を遂げていくのか、興味と期待をこめて、エッチな視線で見守っていきたい。結局そこかよ。

さて、この日は初見キャストが何人か。簡単に感想をまとめておきたい。

・伊藤綾祐ボック

雰囲気は金田暢彦ボックを薄めたような感じだが、それもまたいい。ボックがいい奴なのか悪い奴なのかがあいまいになったことで、ウィキッドという作品が持つ「観客を惑わす」という仕掛けに貢献している。

・武 木綿子モリブル夫人

見た目の美人さが手伝って、より抜け目ない感じのモリブルになった。だが、モリブル夫人もボックと同じ「良い奴なのか悪い奴なのか分からない」キャラクターなので、どこか人の良さ、ちょっと抜けた部分も感じさせてほしいような気がする。

・栗原英雄オズ

これはいい。煙の中からぼわっと出てきたようなインチキおじさん。まさにオズだ。そして彼の武器である「人に愛される」オーラを存分に発揮している。このときにも感じたが、彼がこういう演技をすると、大泉洋に見える。考えればあのとき、すでにビルの中にオズ風味が混じっていたのかもしれない。

ほぼ固定だったキャストがだんだん動いてきた。次に出てくるのは第二のフィエロか、それとも第三のエルファバ、グリンダか。そういえば、マンチキン国の総統もそろそろ換えてあげたほうがいいのでは?

「ウィキッド」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/index.html

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2008年1月19日 (土)

四季「ライオンキング」来たか村さん、待ってた芝

ライオンキング福岡公演が6日開幕した。福岡では再演となるためインパクトのある話題が必要と感じたか、マンマ・ミーア!早期終了にあせりを感じたか、いきなり飛び道具級のびっくりキャストが登場した。これは観なければ、と福岡シティ劇場へ。本当は開幕してすぐに飛んで行きたかったのだが、開幕週は正月、翌週は3連休で航空運賃に割引設定がなかったため、3週目でやっと観劇。幸運にもメインキャストの変動はない。

ラフィキ 青山弥生
ムファサ 芝 清道
ザズ 岡崎克哉
スカー 村 俊英
シェンジ 孫田智恵
バンザイ 江上健二
エド イ ギドン
ティモン 藤川和彦
プンバァ 川原洋一郎
シンバ 田中彰孝
ナラ 熊本亜記
サラビ 西村麗子
ヤングシンバ 竹内 將人
ヤングナラ 松下 由季

四季の一線級がきら星のごとく並んだ豪華なキャスト。そして、そのいずれもがかなり濃いめのキャラクターばかりだ。博多だけにこってり味で勝負しようということか。

まずは芝のムファサ。百獣の王の威厳を保ちつつ、ぎらぎらした武闘派のムファサになるんではと想像していたが、だいぶ違った。

優しさが前面に出た、実に温かみのあるムファサである。

シンバに向ける眼差しには子煩悩さがあふれ、プライドランドの住民を見渡す視線は慈愛に満ちている。

そういえば、キャッツシアターで芝と握手をしたとき、ごつごつした感触を予想していたら、とてもやわらかい、女性のような手で驚いたことがあった。今回のムファサは、「剛」のイメージの強い芝の、「柔」の部分を引き出すことに成功したのではないか。

まだ、どこか役作りに手探りな様子もうかがえるが、今後どのように確立していくのか楽しみだ。機会あればまた見たいものだ。

そしてそれに対するは村スカー。四季を代表するボーカルの力強さをいかんなく発揮し、これまでにないスカー像を作り上げている。芝もパワフルな歌声で知られるが、やはり村の前では1歩譲らざるを得ない。

演技よりも、歌声によってカリスマ性、それもダークサイドのカリスマオーラを舞台のみならず、劇場中に充満させていた。そして村の歌には、常に男の心を奮わせる不思議な魅力がある。村にはぜひこれからも悪役に取り組んでもらいたい。

「象の墓場」でスカーが歌い上げ、ハイエナが踊り狂うシーン。村の歌のパワーと、ハイエナたちのダンスのスピードとがぶつかり合い、非常に見ごたえのあるシーンになっていた。

ラフィキは開幕以来この役を演じている青山弥生。そういえば開幕してすぐ、初めてこの作品を見たときのラフィキは青山だった。マンマ・ミーア!のロージーを経て、コミカルな演技にますます磨きがかかっている。

ティモン&プンバァのコンビは藤川和彦と川原洋一郎。背の低さをむしろ武器にして、独特の存在感を出し観客に強烈な印象を与える藤川と、ごつい風貌と、その顔に似合わないオネエ言葉(「夢から醒めた夢」デビル)やキモカワイクナイ演技(「人間になりたがった猫」スワガード)を披露するベテラン川原という、「二人の怪優」対決だ。

おなじみのご当地言葉、今回は博多弁となるセリフでの掛け合いは絶妙で、この2人が出ている間はずっと笑いが耐えなかった。すばらしいコンビである。

それにしても、2人ともキャラクターが強烈すぎて、動物よりも「中の人」に目が行ってしまう。これもライオンキングという作品ならではの楽しみ方だろう。

田中・熊本の主役コンビは、脇を固めるあまりにも濃いメンバーの中に埋もれがちではあるが、長くこの役を演じてきた2人だけに安定感が抜群だった。この2役はそれでいいのだろうと思う。

実はこの「ライオンキング」は、四季のロングラン作品の中では、自分にとって極端に観劇回数の少ない演目だ。しかし、今回のびっくり仰天キャストによって、その魅力は無限大に広がる可能性があるのだと感じた。東京公演は前人未到の10年に届こうというウルトラロングランになっているが、それはファミリーで楽しめる、といった単純な理由だけでは達成できるものではない。この作品の持つ力をもっと知るためにも、四季劇場「春」にもときどき足を向けてみようと思う。

四季「ライオンキング」WEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/lionking/

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2007年12月29日 (土)

四季「ウェストサイド物語」望月ベルナルド&高木マリア

ジェット団(The Jets)

リフ 松島勇気
トニー 鈴木涼太
アクション 西尾健治
A-ラブ 大塚道人
ベイビー・ジョーン 厂原時也
グラジェラ 恒川 愛
エニイ・ボディズ 木村仁美

シャーク団(The Sharks)

マリア 高木美果
アニタ 団 こと葉
ロザリア 鈴木由佳乃
ベルナルド 望月龍平
チノ 玉城 任

おとなたち(The Adults)

ドック 緒方愛香
シュランク 牧野公昭
クラプキ 荒木 勝

「ハムレット」観劇後、秋劇場で「ウェストサイド物語」。どちらも3時間前後の長い作品なのでだいぶ尻は痛くなるものの、「ウェストサイド物語」は古い作品ということもあり、常に観客を巻き込んで圧倒するものではないため、さほど観劇疲れは感じない。

木村花代マリアの登場時に観て以来、足が遠のいていたが、今回ぜひ観たいと思ったのはベルナルド役に望月龍平が起用されたからだ。望月龍平といえば、今年は「エクウス(馬)」だが、印象的なのは例の全裸シーンではなく、登場時の大声でCMソングを歌っているシーンだ。ある意味全裸より恥ずかしいと思えるあの演技を、嬉々としてこなしているように見えたとき、この役者の持っている可能性の大きさを感じた。

また、ある公演で、四季の関係者が大量に見学に来ていたことがあった。まだ入団前か、入団したてと思しき若者たちがロビーで固まっていたが、そこに望月龍平が登場した。運動部よろしくいっせいに望月にあいさつをする後輩たちに、「よっ」と軽く笑顔で応えていたその姿が、超カッコ良かったのを記憶している。

というわけでいつの間にか自分はかなりの望月ファンになっていた。そのベルナルドとなれば、これは観ないわけにはいかない。高木美果のマリアも観たいことだし。

ここから少しばれます。作品自体未見の人、先入観なく新ナルドを観たい人は読まないほうがよいです。

その望月ベルナルドだが、いきなり顔をラッツ&スターのように真っ黒に塗って登場。シャーク団関係者のメイクはそれが基本とはいえ、あそこまで塗らんでも、という気はする。すぐに慣れるけどね。オープニングのダンスを華麗にこなしていた。

ベルナルドである以上、どうしても加藤敬二と比べたくなるのは仕方のないところだ。威厳や存在感という面では、確かに加藤ナルドにはかなわない。望月が今後、内に秘めたカリスマ性をどこまで感じさせることができるかが課題だろう。だが、加藤の場合45歳という年齢もあり、「不良少年」というよりは、モノホンのヤクザに見える。だから「軍事会議」のシーンは、なんだか任侠映画を観ているようなカタルシスがある。「仁義なき戦い・頂上作戦」で、小林旭が梅宮辰夫の本拠地に乗り込み「広島ヤクザは芋かもしれんが、旅の風下に立ったことはいっぺんも無いんで」と言い放ったあの名場面を思い出して欲しい。

一方、望月ナルドは不良グループのリーダーとしての風格を備えつつも、やはりどこか背伸びをした「少年」の顔が垣間見える。グラジェラにからかわれ、何とかオトコの沽券を保とうとするあたりが微笑ましい。マリアへの兄妹愛もひしひしと感じられる(加藤ナルドだと、兄弟愛というより娘を箱入りにしたがっているように見える)。

リフを刺してしまったときの、すべてがすっ飛んでしまい、頭の中が真っ白になったあの表情。地味な演技だが重要なポイントだ。少年ナルドなら、あの場面で出てくる表情はあれしかあるまい。加藤も同じ演技はしているのだが、加藤ナルドは普通に人を殺しそうに見えるので、あまりショックを受けているようには感じられないのだ。

総合的に見ればまだまだ加藤には及ばないものの、一見の価値があるベルナルドだ。少年らしさが出ることで、舞台全体の雰囲気が「若者たちの悲しい青春群像劇」というイメージにぐっとシフトしたように思えた。前回観たときは、加藤の落ち着いた演技により、むしろアメリカ社会の影、移民社会の難しさ、という物語の背景のほうが色濃く感じられたからだ。

そして高木美果のマリア。彼女がクリスティーヌに抜擢されたとき、その歌声とあどけない演技にすっかり魅了され、それ以来ファンになってしまったが、一時期ずっと舞台から遠ざかり、さびしく感じていた。今年久しぶりに四季の舞台に立ち、「ジーザス・クライスト=スーパースター」で、こちらもマリアを好演。ご存知のように木村花代もこの「ウェストサイド物語」のマリアと「ジーザス・クライスト=スーパースター」のマリアを演じており、紛らわしいことこの上ない。

高木美果の声は相変わらず美しく伸び、聴いていてうっとりするほどだ。そして彼女の場合、セリフの声と歌の声がほとんど変わらない。「さあ、歌うぞ!」とスイッチが入って歌うのではなく、セリフがごく自然に、シームレスに歌へと展開していく。これはミュージカル女優として最高の持ち味ではないか。ビジュアル的にも、木村花代マリアや、未見だがプロモーションで見た笠松はるマリアがどちらかというと丸顔なのに対し、細面の美人マリアだ。ちょっと落ち着きすぎていて、もう少しきゃぴっとした感じがあってもいいのではと思ったが、何しろトニーはマリアに一目惚れするわけだから、やっぱり美人でないと説得力に欠ける。阿久津陽一郎のトニーなら、何を考えているか解らないので、誰に一目惚れしようとかえって納得してしまうが、この日のトニーは鈴木涼太だ。

鈴木トニーは、ただの絡みにくいヘンな奴に見えた阿久津トニーに比べると、ずっと普通の人だ。そして、何より歌がうまい。トニーが最初に出てきて、リフとダンスに行くことを約束し、分かれてからひとりで歌う歌は、旋律が微妙で歌いにくそうな歌だ。前回、阿久津トニーで聴いたときはどういう曲なのかサッパリ分からなかった。しかし鈴木トニーの歌で、ようやくその輪郭をつかむことができた。

ついでに言うと、玉城 任のチノもなかなか良かった。「マンマ・ミーア!」ではさほど印象がなかったが、今回の舞台では、チノの「マリアへの思い」「ベルナルドへの思い」「ベルナルドの妹としてのマリアへの思い」がそれぞれ感じられて、心に響いてきた。

この「ウェストサイド物語」で2007年の観劇は終了。この日に、田邊真也に望月龍平というこれからの演劇界を担っていく2人の有望な俳優の演技をそれぞれ新役で見ることができたのはよかった。今年はずっと女優さんを追っかけてきたのに、最後は男優ウォッチになるという意外な展開。異常な観劇姿勢が、新たな異常の扉を開いたということだろうか?それはそれでいいや。

「ウェストサイド物語」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/wss/index.html

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四季「ハムレット」田邊真也かっこええのう

クローディアス 志村 要
ハムレット 田邊真也
ポローニアス 維田修二
ホレイショー 味方隆司
レイアーティーズ 坂本岳大
ガートルード 中野今日子
オフィーリア 野村玲子
ローゼンクランツ/牧師 鈴木 周
ギルデンスターン 田中廣臣
フォーティンブラス 増沢 望
墓掘り1 明戸信吾
亡霊 石波義人(劇団昴)
劇王/重臣 高林幸兵
ヴォールティマンド 石原義文
ルシアーナス 高草量平(劇団昴)
オズリック 青羽 剛
マーセラス/重臣 深水彰彦
バーナードー 岡本繁治
フランシスコー 島村 勝
コーニーリアス/隊長/墓掘り2 雲田隆弘
和泉沢 旭
船乗り 朱 涛

四季の「ハムレット」は初見だ。こんなことなら、石丸幹二のハムレットを一度ぐらい観ておけばよかった。そういえば山口祐一郎が四季から去ったときも同じことを思ったのだった。俺が成長していないのか、四季が成長していないのか。たぶん両方。石丸幹二も、「退団か、死か。それが疑問だ」とさぞ悩んだことだろう。早くごたごたにケリがついて、新たな活躍を見せてほしいものだ。

というわけで、本格的に始まったポスト石丸レース。今回ハムレットに抜擢された田邊真也はその大本命だ。この人もずいぶんと持ち役の多い人だ。今年、自分が観ただけでも、

クレイジー・フォー・ユー(ボビー)
マンマ・ミーア!(スカイ)
○キャッツ東京公演(ラム・タム・タガー)※エントリー上げてません
ユタと不思議な仲間たち(ユタ)

とあり、ほかに自分は観ていないが確か「鹿鳴館」にも出ていたはず。働き者だ。何と言っても印象的だったのはボビーだ。軽快なダンスと、コメディーもいけるというところを披露し、当たり役になりそうだったが意外に短期間の出番だった。、また見たいものだ。スカイに関しては、現在のキャストの中では彼が最もいい演技をしているような気がする。

そしてこのハムレット。いやあ、男前のハムレットだ。王子様という言葉がぴったりである。やや弱々しい感じはするものの(ユタ?)、芯の強さは伝わってくる。演技はまだ固さが残り、狂った(フリをする)演技も、あまり狂っている雰囲気がないのは残念だが、まああくまでフリをする演技だから、ということで納得しよう。

四季独特の母音法の発声で長ゼリフを並べる点については、違和感を感じない。シェイクスピア劇では、時代の違いこそあれ、ざまざまな比喩や諧謔を多分に含んだセリフひとつひとつを味わうのも楽しみのひとつだからだ。これまで観たどんなハムレットよりも、セリフが自分の耳に届いてきたような気がしている。

脇を固める俳優陣の中で、ひときわ光っていたのがホレイショーを演じた味方隆司。この人も「魔法を捨てたマジョリン」のおネエ魔女から「この生命誰のもの」の青年まで、実に幅広い守備範囲を持った人だが、どちらかというと、ひょうひょうとした役のほうが多いような気がする。なので、ホレイショーはちょっとキャラが合わないかな、むしろレイアティーズにキャスティングされている福井晶一で観たいな、なんて思っていたが、ところがどっこい、このホレイショーがすごい。低い声と落ち着きはらった物ごし。それでいて、友を思いやる優しさと他人を受け入れる包容力が極めて明確に伝わってくる。登場してすぐに、
ハムレットが彼に寄せていた、絶大な「信頼感」を観客全員が共有することになる。全くもって素晴らしい俳優だ。

もう一人、四季の名バイプレーヤーである明戸信吾の墓掘りも良かった。彼も強烈な個性のキャラなので、墓掘りはちょっと…と思っていたが、さにあらずだ。自慢の歌声を披露しつつも、あくまで淡々と墓を掘っているその姿に、ぞっとするようなこの世の残酷さを浮かび上がらせている。

どうも俺は四季の俳優の実力を甘く見すぎていたようだ。こうした古典劇では、脚本に書かれていることをきっちりと折り目正しく押さえていくことが要求される。これは、即興ゼリフで洒落のめすよりずっと難しいことだ。そうした「抑えた演技」の中で表現をできるのは、真の実力を備えた者のみだろう。

一人だけ、抑えてない演技をしているのがオフィーリアの野村玲子だ。有名な、2幕の狂った演技である。これはいいのだ。周りが抑えた演技をする中で、あの狂乱ぶりは芝居全体に大きなアクセントをもたらしている。だが、一幕、つまりまだ狂ってない状態のときに、どうも芝居に無理がありすぎて、本当は大人なのに自分が少女だという固定妄想を持ってしまっているように見えてしまうのはいかがなものか。野村玲子はもともと好きな女優だったし、今もその実力が衰えていないことは認める。しかし、もうさすがにオフィーリアや「赤毛のアン」は後進に預けてもいいのではないかと思う。

と、すっかり役者の話ばかりになってしまった。ミュージカルは派手な作品が多いため、つい「作品を観て」しまうが、こうしたストレートプレイではじっくりと「役者を観る」ことができる。それによって、その実力のほどをまざまざと見せつけられた。これは「異常な観劇態度」ではないですよね?

ハムレットという作品について自分のようなニワカ&ミーハー演劇ファンが何かを語るのはおこがましいにもほどがあると思うので書かない。演出について言えば、オーソドックスの極みのようなものではあるが、兵士が闇の中からゆっくりと姿を現す迫力あるオープニングから、クライマックスの剣の試合まで、緊張感のとぎれることがなく、長い芝居ながら観客を常に引きつけることに成功していると思う。自分は3時間睡眠の5時起床で行ったから睡魔に襲われたが、平常状態ならそんなには眠くならないと思う。だから「シェイクスピア劇なんて寝ちゃうから」と敬遠している人も、ぜひ一度は訪れて欲しい公演だ。

この自由劇場で、ときおりこうした古典的な作品を演じるのは大いに結構なことだ。実力ある役者がその技を見せることができるのもいいし、若い俳優にとっての研鑽の場になるだろう。欲を言えば、同時に実験劇場として、新作のワークショップなども行ってほしいと思う。育成すべきは役者だけではない。作家や演出家が腕だめしをする場も必要だ。この自由劇場という空間は本当に芝居にとってベストな環境だと思う。この貴重な資産を、四季はもっと有効に活用すべきだし、そうできると確信している。

「ハムレット」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/hamlet/index.html

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2007年12月24日 (月)

四季「オペラ座の怪人」クリスティーヌでクリスマス

オペラ座の怪人 高井 治
クリスティーヌ・ダーエ 木村花代
ラウル・シャニュイ子爵 鈴木涼太
カルロッタ・ジュディチェルリ 種子島美樹
メグ・ジリー 荒井香織
マダム・ジリー 戸田愛子
ムッシュー・アンドレ 寺田真実
ムッシュー・フィルマン 青木 朗
ウバルド・ピアンジ 半場俊一郎
ジョセフ・ブケー 岡 智

いつも2週間ほどで姿を消してしまう花代様。パリ・オペラ座がお気に召したか、珍しく1月にわたる長逗留だ。登場週に拝謁を賜ったものの、こうなればもう一度見に行くのがファンの務めであろう。

前回とはファントムもラウルも違う。いや、メグ・ジリーもマダム・ジリーも違う。気付いたらカルロッタもピアンジも違う。大きく入れ替わったカンパニーの中で花代クリスティーヌがどう際だつか、そしてこの1月でどう変わったかに注目だ。

というわけで2回目の花代クリスティーヌ観覧となったが、劇的に変わっているということはなかった。しかし前回に比べればだいぶ固さが取れ、もともと違和感の少なかったこの役にさらに馴染んできた様子だ。声の伸びは心なしか前回の方があったように思う。この声に負担のかかる役で1月に及ぶ連投はさすがにきついか。

演技の面では、前回の不思議ちゃんな印象に比べ、ラウルを守ろうとする凛とした強さが少し出てきた。それに伴い、ラストシーンではファントムに対する母性のようなものが感じられる。気が強いようで情にもろい、大阪のお姉さんなクリスティーヌになりつつある。地元大阪で、木村花代が新境地を開きつつあるといえよう(だから、京都でももっとポリーを演じてくれれば…と小一時間)。

今後クリスティーヌをどの程度演じるのか、次の新役がどうなるか、全く分からないが、この経験が大きなステップアップになることは間違いないだろう。

花オタとしての萌えポイントとしては、笑顔満開のマスカレード、「イル・ムート」のメイドコスプレあたりが定番(?)だが、地下の隠れ家で怪人のマスクをはがそうとするとき、すっと怪人に身をかわされて一瞬不満な顔をする。その顔が異様にかわいいのでぜひ注目を。

さて久しぶりの鈴木ラウルは、「ウェストサイド物語」のトニー役で、子供のケンカはもうこりごり、と思ったか、ずいぶんと大人になっていた。クリスティーヌへの眼差しも暖かい。

その一方で、高井ファントムが佐野正幸に影響されたか、熱い演技を見せていた。美声を武器にしたクールなファントムというのが高井ファントムのイメージだが、この日は狂気と、その裏にある幼児性を強く感じさせる演技だった。これはなかなかの見物である。そして自分の持っているファントム像に非常に近い。

久しぶりの種子島カーラ&半場ピアンジコンビもノリノリで、ハンニバルから歌声自慢合戦を展開するなど、全体的に熱く盛り上がった公演でとても楽しかった。クリスマスの特別カーテンコールはなかったものの、大いに満足した。

でもなんで特別カーテンコールなかったんだろう。売れ行き好調なのでイベントを出し惜しみしたか、「ウィキッド」のカーテンコールにスタッフが回ったか、何か事情があるのだろう。まあ一部のオタ(俺含め)にとっては、この1カ月が特別カーテンコールどころか「木村花代 冬の特別公演」であるわけで……。

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四季「オペラ座の怪人」のホームページ

http://www.shiki.gr.jp/applause/operaza/main.html

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2007年12月 9日 (日)

四季アンコール公演「ふたりのロッテ」なんて豪華な~

ロッテ 吉沢梨絵
ルイーゼ 五十嵐可絵
パルフィー氏 栗原英雄
ケルナー夫人 坂本里咲
ムテジウス校長 奥田久美子
ウルリーケ先生 秋山知子
ペーター先生/ベルナウ編集長 小出敏英
アイペルダウワー/シュトローブル博士 勅使瓦武志
イレーネ 荒木美保
レージ 大橋伸予
マーサ 山下由衣子
オルガ 鈴木友望
メグ 服部ゆう
ヒルデ 梅崎友里絵
ローザ 山田真理子
ブリギッテ 齋藤 舞
シュテッフィ 小澤真琴
クリスチーネ 白澤友理
トルーデ/アンニー 木内志奈
モニカ 河内聡美

ファミリーミュージカル「ふたりのロッテ」が東京に帰ってきた。四季のファミリーミュージカルには佳作が多いが、これもそのひとつ。しかもキャストを見てびっくり、吉沢梨絵&五十嵐可絵という、オタ受けする(俺だけか?)ダブルヒロインで、つい2回も観てしまった。エントリーは1回しか上げていないが。その東京凱旋公演となれば観ずにはいられまい、とチケットを買っておいたが、キャストを見てまたびっくり。ケルナー夫人&パルフィー氏が坂本里咲&栗原英雄コンビではないか。ファミリーミュージカルだからこそ一線級の俳優を投入する、という四季のポリシーには大いに共感するところだが、いまはそんなことを言っている場合では・・・。

しかしファンとしては余計な心配などせず、ただ楽しむだけだ。何しろ、「作品」を観に行っているんだからな。という言い分はヒロイン見たさにファミリーミュージカルに足を運んでいる痛い男には使えないか。

といっても作品について今さら語ることもないので、坂本&栗原コンビについてレポートしておこう。

坂本ケルナー夫人は、声が細く可愛らしい雰囲気のキャリアウーマンだ。さすがに年齢は感じさせるが、パルフィー氏の「変わらないな」というセリフにも説得力がある。武ケルナーが、年相応に美しいのに対し、坂本ケルナーは年を感じさせない可愛さだ。まあそんな年でもないのだが。

一方の栗原パルフィー。少し子供っぽさを残した、いかにも芸術家らしいパルフィーだ。勅使瓦パルフィーが「芸術家にありがちなエゴイズム」を存分に発揮していたのに比べると、ややナイーブなタイプにも感じる。歌舞伎役者のようなキリっとした顔立ちと、優雅な立ち居振る舞いが印象的である。

この2人がカーテンコールで披露するバレエは、ルックスも動きも実に美しく、見ていてほれぼれするほどサマになっていた。この2人に、吉沢ロッテ、五十嵐ルイーゼ。それはもう本当に絵になる。アイペルダウワーならずとも写真に撮りたくなってくるほどだ。

そのアイペルダウワーに、夏の公演でパルフィー氏を演じた勅使瓦武志。何しろ顔が濃すぎるので、2幕のパーティーでは「なんでアイペルダウワーがここに?」という疑問を感じてしまう。病状を診察するシーンでは、微妙にロッテ(ルイーゼ?)への父性愛が残っているようにも見受けられた。奥田久美子はウルリーケ先生からムテジウス校長へ出世。暖かみがあっていい校長先生だ。

さてロッテ&ルイーゼはますます絶好調である。こっちが慣れてきたこともあるが、本当にフタゴのように見えてしまう場面もあった。このコンビには今後も期待だ。吉沢の歌唱力を考えるとエルフィー&グリンダは無理にしても、ピコ&マコはありか?いや、マコがパキパキ踊っちゃうのも問題か。

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やはりロッテ&ルイーゼ握手会とかやってほしい。

四季「ふたりのロッテ」ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/lotte/index.html

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2007年11月25日 (日)

四季「オペラ座の怪人」木村花代クリスティーヌ登場

オペラ座の怪人 佐野正幸
クリスティーヌ・ダーエ 木村花代
ラウル・シャニュイ子爵 北澤裕輔
カルロッタ・ジュディチェルリ 黒田あきつ
メグ・ジリー 宮内麻衣
マダム・ジリー 秋山知子
ムッシュー・アンドレ 寺田真実
ムッシュー・フィルマン 青木 朗
ウバルド・ピアンジ 石井健三
ジョセフ・ブケー 岡 智

四季のキャスティングにサプライズが相次いでいる。その極めつけがこの「木村花代クリスティーヌ」だ。ファンとしてはクリスティーヌ役への抜擢は嬉しいことは嬉しいけれど、この時期、ほかにやることがあるような気もする。また、正直キャラ違いのようにも感じる。果たしてあの髪型似合うんだろうか。それにクリスティーヌといえば声楽出身者の牙城ではないのか。大きなお世話かもしれないが、歌いきれるのか不安だ。

とかなんとか言いながら、とりあえず観ずにはいられないのが哀しい(痛い)ファンの性である。マンマ・ミーア!で通った大阪四季劇場へ久しぶりに足を向けた。

運良くかなりの好ポジションを確保。不安と期待が脳内で交錯する中、静かにオークションが始まった。

そして時代が遡り、「ハンニバル」の稽古風景。ほかのダンサー達と一緒に舞台に登場した花代クリスティーヌは……

極めて普通のクリスティーヌだった。あれ?キャラ違いというのは取り越し苦労だったか。

舞台が進んでいっても、ずっとクリスティーヌになりきっており(当たり前だが)、観ているこちらも自然にそれを受け入れている。観劇前に、さぞ違和感や驚きがあるのだろうな、と覚悟していたせいか、いささか拍子抜けでさえある。

ビジュアル的には、あのクリスティーヌの髪型も意外に似合っており、ちゃんとかわいい。マスカレードの衣裳もばっちりだ。スタイルがもろに出るハンニバルのダンサー衣裳のことは脇に置こう。

表情は少し硬い。これはまだこの役に慣れていないというより、クリスティーヌというもともとあまり感情表現の豊かでないキャラクターを、いつもどこか一点を見つめるような表情で演じていたからだろう。

その分、歌でその感情を表現しなくてはいけないわけだが、まだ花代クリスの歌はそこまでに達してないように思う。とはいえ、基本的には歌そのものに全く問題はない。「ウェストサイド物語」では高音が苦しそうな部分がいくつかあったので心配していたが、今回はそれもなく、安心してクリアな花代ボイスに浸るとができた。声量も音大卒のクリスティーヌに負けていない。表現力についても、場数を踏めば変わってくるだろう。

全体的な雰囲気としては、ファントムへの父性欲求が強いわけでも、ラウルとラブラブな感じでもなく、自分の世界を作ってそれを頑なに守っているというようなクリスティーヌだった。「いつも何かを夢見ている」といえば聞こえはいいが、何を考えているか解らない、ちょっと友達にはなりたくない不思議ちゃんタイプである。父に似て、変わり者の娘といったところか。そういえば「美女と野獣」のベルも変わり者と呼ばれてたな。

とにかく、普通にクリスティーヌであり、普通にかわいい。だから全国の花組諸君は、ためらわずに大阪に結集されたい。

さて、それにしてもなぜこのタイミングでクリスティーヌなのか。東でも西でも「マリア」が待っているというのに!その理由をちょっと考えてみよう。

(1)代表の気まぐれ
これが一番可能性が高い。木村花代がいったいいくつの役を経験できるか、面白がっているに違いない。

(2)大阪出身ということでご当地キャスト
これもないわけではないが、ご当地キャストは記者会見などへの出席については重視されているものの、実際に登場するかどうかは分からない。つまり、あまりキャスト選定において重要な要素ではないということだ。そもそも、ご当地キャストでいくなら「マンマ・ミーア!」にソフィ役で出演したはずだ。

(3)そのほかの理由
理由ったって、何の手がかりがあるわけでもないのでただ想像または妄想するしかない。なので、とびきり自分にとって都合のいい妄想をひとつ。

これは「グリンダ役への布石」ではないのか。

「ウィキッド」は、海外スタッフの発言力が強いようだ。キャスティングについても、例えばいちいちプロデューサーのオーディションを経ないと舞台に出してはいかん、というような強行な条件を突きつけているかもしれない。

それでは四季はたまったものではないから、当然、もう少し自由度の高い方法でキャスティングしようと考えるだろう。そのためには、オリジナルのカンパニーに対しこういう交渉をするはずだ。キャスティングする役者についての明確な基準を作成し、それを守るから自由にやらせてくれ、という。

そしてその基準の中には、「過去、○○の役を演じたことがある」という条項が含まれるだろう。当然、その役として最も可能性が高いはクリスティーヌ・ダーエだ。実際、現状でグリンダ役に名前が上がっている女優はみな同役経験者である。

だから、ここで無理にクリスティーヌを演じさせたのではないか……なんてことは、ないだろうなあ。

ところで、自分が観た回で、アクシデントというほどではないが、ひやりとしたシーンがあった。マスカレードのシーンで、華麗にキレのあるダンスを披露する花代クリスティーヌを、北澤ラウルがひょいっとリフトしようとしたところ、バランスをくずしてクリスティーヌが床に倒れてしまった。あっ、と思ったが、ラウルがガードしたこともあり衝撃はあまりなかったようで、その後無事に仮面舞踏会は進んでいった。落ちた直後は、北澤ラウルが「大丈夫?」、花代クリスティーヌが「ごめんなさい」と無声で互いを気遣っているように見えた。舞台中のキスシーンなどはさほどでもないが、このアイコンタクトにはちょっと北澤が羨ましくなった。ファンって馬鹿。というか痛いぞ俺。

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四季「オペラ座の怪人」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/operaza/index.html

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2007年11月24日 (土)

四季「アイーダ」渡辺正ラダメス登場

アイーダ 秋 夢子
アムネリス 江寿多 知恵
ラダメス 渡辺 正
メレブ 有賀光一
ゾーザー 飯野 おさみ
アモナスロ 川原 洋一郎
ファラオ 前田 貞一郎
ネヘブカ 松本 昌子

新キャストのチェック、ということなら、この人のことを忘れるわけにはいくまい。「アイーダ」に登場した渡辺正のラダメス将軍である。

渡辺正はもと東宝ミュージカルの役者で、現在も四季の正式な団員ではなく、別の事務所に属しているが、マンマ・ミーア!大阪公演のほとんどの回でサムを演じ、一躍その名を知られることになった。

彼を初めてみたときには、何の冗談かと思った。どう見てもサムには思えない若さは別にして、表情は乏しいし、セリフは棒読みだし、歌は非常に苦しそうに歌う。何でわざわざこの人をサムに据えたのか全く意図が見えなかったからだ。しかし、繰り返しそのサムを見ているうちに、その存在感に何ともいえない味わいを感じるようになり、だんだんファンになってきてしまった。やっぱり劇団四季って麻薬の製造人じゃないか。

その渡辺が、これまで阿久津陽一郎や福井晶一といった濃いキャラクターが演じてきたラダメスに挑戦するという。やはり見ておきたい、と新名古屋ミュージカル劇場へやってきた。

博物館のシーンで、アイーダに続き現れた渡辺正。第一印象は「あれ、顔違うじゃん」。

どうやら薄味の顔なので、メイクによって全く印象が変わってしまうようだ。その風貌は、エジプトというより中南米な感じで、しかもなんだか使命手配っぽい。まるでサムが警察に追われ海外逃亡し、ベネズエラ国籍を偽装しているような雰囲気である。

だがセリフや歌になるとやっぱり渡辺正。声はこもり、苦しそうだ。表現力も極めて乏しい。しかし妙な存在感は健在で、つい目が行ってしまう。それに見ていてなんだか面白い。

ラダメスとしては、自信たっぷりな阿久津ラダメスとも、自分の職務と生き方に忠実な福井ラダメスとも異なり、何となくゾーザーの七光りで将軍になっちゃったよ、というぼんぼんラダメスだ。だから、「この父親にしてこの息子あり 」で父と子が対立する積木くずしな場面に説得力があった。

表現力が乏しい、と書いたが、最後の最後に、きらりと光る演技を見せている。アイーダと共に石棺に入り、アイーダに語りかけるときの暖かい笑顔はなかなか良かった。自分も死へのカウントダウンが始まっているのに、満面の笑みを浮かべている。この場面、設定上は真っ暗でアイーダからその表情は見えないのだから、その笑顔に嘘はない。ここでは渡辺の年上の余裕というか、サムで父親役を演じてきた影響がいい形に出たといえるだろう。

まあ、ほかのラダメスに比べ影が薄いのは確かで、あまりお奨めできるものではないが、阿久津や福井はもう飽きるほど観たよ、という人は一度ぐらい試してみてもいいかもしれない。

もっとも、個人的には、この「アイーダ」はアイーダとラダメスの物語というより、アイーダとアムネリスの「ふたりの王女」の物語だととらえている。だから、ラダメスは多少影が薄くてもあまり問題はない。

この日はそのアイーダ、アムネリスともに初見キャストだった。

秋夢子のアイーダは、ビジュアル的に最強である。もともと掘りの深い美人顔だが、そこにきりっとしたアイーダのメイクがぴたりとはまり、芸術的に美しい。力強く伸びのある歌声も存分に発揮し、「強く、美しいアイーダ」を創り上げていた。そこに、ふと見せる弱さ、可愛さが加わると、さらに深みのある人物像ができると思う。今後の成長に期待したい。なお、中国出身の秋夢子は、日本語の発音が不安視される向きもあるが、少なくとも歌に関してはほとんど違和感を覚えない。セリフになると、ときどき「あたし」が「あだし」に聞こえるなど、怪しいところもいくつかあるが、許容範囲と思う。

アムネリスの江寿多知恵は、アンサンブルで観たことがあるかもしれないが、これまでノーマークだった。こちらも力強いボーカルが魅力で、秋夢子の声楽的な歌唱に比べるとよりソウルフルな歌い方であり、アムネリスにはぴったりだ。ただ、演技はまだまだ未熟で、生まれながらの王女という高貴さが感じられなかったのは残念だった。

この作品はアイーダ、ラダメス、アムネリスのバランスが全てといっても過言ではないが、この日はまだ3人とも自分の役割をこなすのが精一杯で、そのバランスはあまりしっくり来ていなかった。だから、率直に言ってこの回の出来は良かったとは言い難い。新ラダメスを笑いに来た自分のような不埒な客はいいが、純粋にこのアイーダという作品を観に来た観客には、不満の残るものだったのではないかと懸念する。千秋楽は決まっているが、それまでに大いに奮起を期待したいところだ。

しかし、その「全てといっても過言ではない」部分以外のところで、飯野おさみがさすがの存在感を示し、大いに楽しませてくれた。飯野と渡辺は「マンマ・ミーア!」で同年代の役を演じていたが、ここでは親子。舞台って面白い。そして、有賀光一のメレブがぐっと進化していた。以前観たときは情けなさ全開のヘタレっぷりが良かったが、今回は芯の強さを感じさせ、アモナスロが言うところの「若い作戦参謀」に仕上がっていた。だけどケンカはからっきしだよ、という一休さんなところもきちんと残しており、「私!?」というこの作品最大の笑いを取るセリフでは、ばっちり爆笑を誘っていた。

また、ネヘブカの松本昌子もノーマークだったが、演技・歌とも光っていた。今後の成長が楽しみである。そういえば、以前ネヘブカを演じていた今井美範が現在アイーダも演じている。これも観たいところだ。

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四季「アイーダ」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/aida/index.html

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2007年11月23日 (金)

四季「キャッツ」野中万寿夫マンカストラップ登場

グリザベラ 早水小夜子
ジェリーロラム=グリドルボーン 五東由衣
ジェニエニドッツ 高島田 薫
ランペルティーザ 磯谷美穂
ディミータ レベッカ ヤニック
ボンバルリーナ 遠藤瑠美子
シラバブ 紺野美咲
タントミール 高倉恵美
ジェミマ 王 クン
ヴィクトリア 千堂百慧
カッサンドラ 永木 藍
オールドデュトロノミー 青井緑平
アスパラガス=グロールタイガー/バストファージョーンズ 田島亨祐
マンカストラップ 野中万寿夫
ラム・タム・タガー 荒川 務
ミストフェリーズ 金子信弛
マンゴジェリー 武藤 寛
スキンブルシャンクス 石井雅登
コリコパット 入江航平
ランパスキャット 高城将一
カーバケッティ 花沢 翼
ギルバート 龍澤虎太郎
マキャヴィティ キム グヨル
タンブルブルータス 松永 隆志

先月終わりに荒川務マンカストラップで度肝を抜かれたばかりなのに、またまたびっくり仰天キャストがキャッツシアターに登場だ。今度は四季きっての名バイプレーヤー、野中万寿夫がマンカストラップを演じるという。

このキャストは初めてではない。おそらく、自分もかなり昔に見ているのだと思う。しかし、だいぶブランクがあることは間違いなく、もちろん今回の東京公演ではこれがお披露目となる。

野中といえば久しく「ライオンキング」のスカーも見ておらず、「夢から醒めた夢」のヤクザ&デビル、そしてマンマ・ミーア!のビルといったイメージが強い。それらの役からは、マンカストラップというのはかなり遠い。しかし野中が期待を裏切ることはまずあり得ないので、大いに期待してキャッツシアターへ。

連休の効果か、あるいは団体客が多いせいか、ひさしぶりに完売の盛況となったキャッツシアターに颯爽と登場したマンカストラップ。ヤクザやビルとはうってかわって、低く張りのある声で第一声「生まれたのか!?」。うーん、カッコいいぜ。思わずダンディーなおじさまマンカストラップを想像する。

でも違った。

基本的には、ジェリクル一家の「お父ちゃん」という雰囲気である。

ぐうたらママ(ジェニエニドッツ)をたたき起こしたり、グレた息子(ラム・タム・タガー)となんとかコミュニケーションをとろうとしたり、好奇心旺盛な娘(シラバブ)を危険から遠ざけたりと、ぶつぶつ言いながらも家族の面倒をよく見ている。

電車に乗ると明るく酔っ払って周りの人に迷惑をかけてしまうこともある(スキンブルシャンクスのナンバー)。

家族を脅かす存在(マキャビティ)には毅然として立ち向かう。お父ちゃんガンバレ!と思ったらあっさりやれれてしまう。

それでも、なんだかんだ言いながら、みんなに愛されている一家の大黒柱。あと、こう見えて昔はヤクザだったから、本気で怒らせたら怖い(かもしれない)。

そんなムードのマンカストラップだった。

最近は比較的若い俳優がマンカストラップを演じていたため、このおじさんパワー全開のマンカストラップは新鮮さを覚える。さわやかキャプテン、荒川務のときは、カンパニー全体が学校のクラブのように見えたが、今度はカンパニー全体が仲のいい家族に見えた。温かみのある、いいリーダー猫だと思う。皆さんに自信を持っておすすめしたい。

さてこの日はほかにも初見のキャスティングがあったので、感想をまとめておく。

まず五東由衣のジェリーロラム=グリドルボーン。これもぐっと大人のムードを漂わせている、熟女系ジェリーロラムだ。バストファージョーンズナンバーでは、ごちそうを欲しがるシラバブをけしかけるでも止めるでもなく、後ろでエマニエル夫人のようにけだるそうにしなだれている。大人の余裕だ。この二人、いつもは姉妹に見えるがこの日は親子に見えた。

この五東ジェリーロラム、アスパラガスナンバーのソロパートが実にいい。五東由衣は豊かな声量とクリアな声質を持った素晴らしいシンガーだが、ここではあえて「歌うように」歌うのではなく、「語るように」歌っていた。それが大いに心に響いた。決して似ているわけではないが、CDの保坂知寿ジェリーロラムをふと思い出した。

そしてグリドルボーンとしては、過剰なほどの大げさな演技で臨んでいた。ここは劇中劇、それも大衆演劇のようなものだから、これは正解と思う。

野中マンカストラップ、五東ジェリーロラム、そして荒川タガー。この日は全体的にアダルトタッチなキャッツだった。

そのアダルトな雰囲気の中で、逆にフレッシュさを際立たせていたのが、スキンブルシャンクスの石井雅登と、シラバブの紺野美咲だ。

石井は「ジョン万次郎の夢」で好演し、評判がよかったので一度見たいと思っていた役者だ。基本的には岸佳宏の演技に近いが、小柄で元気いっぱい、そして確かな歌唱力を持つ愛すべきスキンブルシャンクスが誕生した。今後かなりの人気を獲得するのではないか。

そして紺野シラバブ。ほしよさんのブログで推奨されていたので、これも楽しみにしていた。なるほど、これはかわいい。小柄に小顔、耳をくすぐる声と、三拍子そろったアイドル系のシラバブである。そのアイドルのオーラは強烈で、群舞の中でもつい目を奪われてしまう。ちょっと日本語がたどたどしいけど、だがそこがまたいい。前述のごちそうリレーでは、「食べたーい」と口をぱくぱくさせるのが反則技のかわいさである。

さらに、また別の意味で鮮烈な印象を残したのが、レベッカ・ヤニックのディミータ。これはないだろう。不自然な日本語で堂々と歌うその姿は、ただの「ヘンなガイジン」である。見た目が奇麗なだけに、なおのこと不自然さが際立つ。ひと昔前の芸人による金髪女性のモノマネのようだ。青木さやかが本当に登板してもこれほどヘンなことにはならないだろう。もし「恐れを知らぬ川上音二郎一座」を見た人がいるなら、ホイットモア夫人を想像してほしい。まさにあれだから。これはもう爆笑もので、個人的には嫌いではないが、初めてキャッツを観た人にはちょっと酷ではないかと思う。

安定したオトナの魅力と、フレッシュな男女アイドルの共演。さらにお笑い芸人まで登場。なんだか紅白歌合戦のようなぜいたくな気持ちになった公演だった。

四季「キャッツ」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/cats/main.html

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2007年11月22日 (木)

四季「ウィキッド」樋口麻美エルファバ登場

グリンダ 沼尾みゆき
エルファバ 樋口麻美
ネッサローズ 山本貴永
マダム・モリブル 森 以鶴美
フィエロ 李  涛
ボック 金田 暢彦
ディラモンド教授 武見 龍磨
オズの魔法使い 松下 武史

開幕から5カ月、ついに第二のエルファバ登場だ。すでに発表されている樋口麻美であり、サプライズではない。しかし、濱田めぐみがあまりにも完璧すぎる演技を続けたために、すっかりエルファバ=濱田めぐみというイメージが出来上がってしまった。予想されたこととはいえ、そのバトンを受け取るのは相当なプレッシャーだろう。入団以来エリート街道をばく進してきた樋口の実力が試される時だ。これは観なくては、といそいそと海劇場へ。

樋口麻美をアンサンブル以外で最初に観たのは2000年の「夢から醒めた夢」福岡公演だろうか。幻の樋口マコである。この時は旅行を兼ねて数日滞在し、別の日にも観たのだが、もう1回はベテラン鈴木京子がマコだった。どうもそちらの印象が強すぎて樋口の記憶が定かでない。その後「夢から醒めた夢」のピコを始めいくつかの役で彼女を観ているが、特に「南十字星」のリナは印象的だった。牢の外でブンガワン・ソロを歌う樋口の姿に、いい女優に成長したなあ、と感動したのを覚えている。最近では、「ウェストサイド物語」のアニタで、これまでの娘役っぽい殻を破った演技を見せたのが記憶に新しい。また一段とレベルアップしたところをアピールしていた。

だから、いかに濱田の後といえど、樋口エルファバを見ることにに不安は感じない。むしろどんなエルファバだろうかとわくわくして開演を待つ。

グリンダ様のお姿を拝謁した後、回想シーンに入っていよいよエルファバ登場。観客の前に勢いよく樋口エルファバが飛び出してきた。

その第一印象は、なんだか赤塚不二夫のマンガに出てくるメガネくんみたいだった。かなりインパクトが強い。率直に言っておかしい。濱田に比べ樋口は丸顔だが、丸顔にあのメガネの組み合わせは非常に危険だということがよくわかった。

そしてこのエルファバ、非常に元気がいい。屈折している雰囲気はあまり感じさせず、威勢の良さで周囲の目をはねのけているような、なんだか江戸っ子のようなエルファバである。また、明るいというほどではないが、笑顔もよく見せる。ただ樋口は、表情を大きく変化させるときに笑顔のように見えることが多く、そのせいもあったかもしれないが。

もっとも容姿については「Popular」でメガネをはずすとぐっと変わる。濱田は緑でもキレイだが、樋口は緑でもかわいい。その落差は樋口のほうが上だ。

のっけから元気がいいため、「ネッサを返して!」など、感情を爆発させるときのインパクトがやや薄くなる、というようなこともあったが、基本的にこの元気ハツラツなエルファバは悪くない。学生時代のシーンであり、若さを表現していると考えればむしろ自然だ。

歌にも元気があふれている。もともと声量のある樋口だが、その力強いボーカルをいかんなく発揮している。一幕最後の見せ場「Defying Gravity」では、濱田に負けない圧巻の歌声を披露。この作品では、一幕が終わり休憩に入ると、客席が「すごいね」「面白いね」とざわつくのが、リピーターにとってちょっと嬉しい瞬間なのだが、それはこのDefying Gravityというナンバーの出来によるところが大きい。この日もちゃんとざわついていたので、第一段階はクリア、という感じだ。

しかし、一幕は学生時代だから元気いっぱいでいいが、果たして二幕はどうなるんだろう。あれこれ頭の中で予想しつつ休憩時間を過ごす。

基本的には、二幕に入っても、やはり元気のいいエルファバだった。ただ、その元気の蔭に不安や孤独が見え隠れしている。それによって「強がっている」というエルファバの側面を表現することに成功している。なるほど、これはこれで面白い。濱田のエルファバは、意志によって支えられ、凛とした印象なのに対し、樋口のエルファバは、根性によって支えられ、脆さを感じさせる。

そうした雰囲気で最後まで樋口が演じ抜いたエルファバは、個人的には十分満足のできるものだった。

濱田との比較で言えば、濱田が演技・歌ともに強弱のメリハリをつけたものであるのに対し、樋口は常にフォルテ気味。ここは好き嫌いの分かれるところだろう。ただ歌について言うと、他の役者とハモるところでは、いまいちしっくりこない。自分の声で相手の声を消してしまうのを恐れ、必要以上に声を小さくしてしまったり、ということがある。なので二幕の「For Good」はいまいちだったかもしれない。

ひょっとしたら、元気がいいのはまだ登場したばかりで、肩に力が入りすぎているためなのかもしれない。少し時間を置いて、また見に来ることにしよう。

トータルに考えれば、濱田にはまだまだ叶わないのは事実だ。しかし、エルファバとしての合格ラインはゆうにクリアしていると思う。「えーめぐじゃないのか」と言わず、ぜひ足を運んで新しい西の魔女を目撃してほしい。

そうそう、樋口エルファバが濱田に勝っているところもある。それは笑いの取り方だ。エルファバが笑いを取るシーンはそう多くはないが、いい間合いで確実に笑いのツボを押さえていた。ダンスホールのあのダンスでも、濱田は、おかしいんだけど笑っていいものかちょっと迷う、というぐらいだったが、樋口は容赦なく、MP総取りのふしぎなおどりで爆笑を誘っていた。まあここも好みはあると思うが。

濱田が、登場時からすでに自分の中に完成されたエルファバを持ち、それを少しずつ「濱田めぐみ」に馴染ませていくように役を作ってきたのに対し、樋口は「樋口麻美」をエルファバに全力でぶつけ、その衝撃によって樋口エルファバを抽出しようとしている。まだ荒削りだが、今後磨きがかかっていけばもっとよくなるという期待感はある。

濱田・樋口とも他に演じるべき重要な役を持っているので、ウィキッドばかりにしばられるわけにはいかないだろうが、これからもこの2人にはエルファバを演じ続けてほしいものだ。

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「ウィキッド」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/index.html

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2007年11月12日 (月)

四季のWEBサイトが面白いことになっている件について

月曜から、また四季のWEBサイトが壮大なネタを投下してくれた。

まず、先週発売の「週刊新潮」が、9~10月のキャストボックス廃止騒動、石丸幹二の舞台降板、そしてマンマ・ミーア!福岡公演打ち切りなどについて取り上げたのに対し、「記事には明らかに間違いがある」との反論を掲載。だが読んでみると、事実誤認というより、こちらの回答をきちんと載せていないではないか、という抗議である。

正直、新潮の記事はいわゆる「ワイド」の最後のほうの扱いで、新聞で言えばベタ記事レベルだった。マスメディアに取り上げられたことはインパクトがあったかもしれないが、内容的にはネットで拾った情報に、電話で形だけ取材したようなものだった(実際にはFAXだったわけだが)。明らかに数合わせの埋め原稿である。だから、四季はスルーしてもよかったのだ。上場でもしていれば投資家への説明のために経緯と抗議をきちっとした形で公開することも必要だろうが、四季にそんな義務はない。過剰反応もいいところだ。

別にそれに文句を言う筋合いはないが、あまりに子供っぽい対応にファンのこちらまで恥ずかしくなる。四季の広報はプレス対応も非常に丁寧でオープンだと聞いたことがある。そのしっかりした広報がこんな恥ずかしい真似をするとも思えず、まあやはり代表様の怒りによって動かされたと見るべきだろう。

まあ、百歩譲ってそれは真面目な姿勢の現れ、と好意的にとらえることもできなくはない。問題は、同時に掲載された代表インタビュー「四季の話題3」。言わずと知れた、代表の自作自演インタビュー・浅利慶太オンステージである。

今回は保坂知寿・石丸幹二の退団について、未練たらたらで負け惜しみを言っている。相変わらずの独善ぶりには失笑どころか爆笑を禁じ得ず、突っ込みどころ満載というか突っ込めないところを探したほうが早いほどだ。こんな面白いネタを、四季はどうして月曜なんかに投下するのか。せめて金曜にしてくれたら、週末に十分な時間をかけて反応してあげるのに!

というわけで、横着して申し訳ないが軽くルー語変換だけしてみました。

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劇団四季『四季の会』会員向けに発行されている会報誌“ラ・アルプ”では、折々に、浅利慶太代表へのインタビュー『四季の話題』を掲載いたしております。『四季の話題3』は本来、同誌12月号に掲載されるものですが、雑誌『週刊新潮』に劇団四季の話題が取り上げられたこともあり、“ラ・アルプ”発行に先駆けて掲載させていただきました。

――韓国の『ライオンキング』は大盛況で千秋楽を迎えたそうですね。

浅利  Yes。

――最初は強い反対運動があったとか。劇団四季に対抗するため、韓国の演劇人によって「ミュージカル協会」が結成され、『ライオンキング』に出演した俳優は、彼らの主催する公演には出さないという声明が出たそうですね。

浅利  そういうプロブレムは霧散しました。1イヤービフォーこの組織が四季に対抗して立ちギブしたイベントが、ディスイヤーも実施されました。メインイベントは『ライオンキング』でした。

――最も強硬だった「ミュージカル協会」のユン・ホジン会長も、千秋楽の打ち上げパーティにいらしたとか。

浅利  来てくれました。フロムナウオンは提携してプロジェクトを興したり、ニューワークをメイクするときには協力してインニードオブなどと頼まれました。劇団四季をアクセプトしてくれたと思います。

――興行収支としては、赤字だったそうですね。

浅利  韓国でファーストのコマース公演です。ビギニングから覚悟していました。このワークは一つ一つ積み上げながら、ゲストをスプレッドしていくのです。ジャパンでの劇団のビギニングピリオドもセイムでした。原点から、粛々と韓国でのビジネスをコンティニューしていくということです。

(中略)

――石丸さんのような俳優がいないと困りませんか。

浅利  彼がいれば、劇団のインサイドでひとつのパートを担ってくれるとはシンクします。しかしヤングパースンのライズオブも著しい。だから居なくてウォリードするということはありません。ディスタイムの『ウェストサイドストーリー』がタイプマークな例でしょう。『ハムレット』も、田邊真也マスターがキャスティングされて頑張っている。また石丸マスターのように40ワールドミドルにアプローチすると、ステージアピアランスできる主役はそうメニーにない。そのこともヒーにとってはマインドマークなチャージになっていたのかもしれません。

――ということは、このまま石丸さんが退団すると言うこともありますか。

浅利  ヒー次第だとシンクします。退団したいなら、チェックするつもりはありません。ヒーは『鹿サウンドすハウス』のステージアピアランスも断ってきました。

――歌が無いのに?

浅利  Yes。

――でも契約中なのではありませんか。それでも断れるのですか。

浅利  ディッフィカルトなプロブレムに発展するポッシブルカスタムはあります。ヒーはもうバーンアウトしてしまったのかも知れませんね。

――そんな我儘が許されるのですか。本当の理由は?

浅利  それはわかりませんし、またノウしたくもないとフィールしています。ただ、ディスのアクターさんは先ずマイセルフのことをシンクアバウトします。日下マスターや僕の世代は、先ず劇団のことを第一にシンクアバウトしてライフしてきました。 マイセルフのコンディションや事情を劇団アクションより優先することはなかった。石丸マスターはウィーよりヤングが、同じシンキングを持ったカンパニーだとビリーブしていました。バッドラックです。

――頑張っている同じ世代の仲間たちを裏切ることにもなりませんか。

浅利  コンディションを優先するヒューマンたちだけになったら、ウィー第一ワールドが退いたシンスゼンは衰退のロードをウォークします。劇団アクションにボディーをリフトアップする信念を持ったアクターたちだけが、四季の未来を支えることが出来るのです。

――そういえば、保坂知寿さんが休団されてから、そろそろ1年ですね。

浅利  劇団四季はエブリイヤー10月インサイドに、参加アクターに対して次イヤーのステージアピアランス契約の継続パーパスを確認しています。更新しないという申し入れもこのタイミングです。四季は長期マークなトレーニングやヤングなアワーからのライフ保障を行なっているので、契約解除のオファーから1イヤーは、四季がリクエストしたワークをする契約アッパーパートのルールがあります。

――では1年経過すれば、外部の仕事も出来るようになりますね。

浅利  保坂マスターが辞めたいと言ってから、ちょうど1イヤー。彼女のケースはアクターを辞めたいのか、四季を辞めたいのか判りませんでしたから、一応スリープボディーというシェイプにして1イヤーゴーバイしました。ただ彼女が相当、疲労していた事はミステイクありません。

――何故ですか。『マンマ・ミーア!』のドナ役が長すぎたのですか。

浅利  そうです。彼女はドナに相応しいアクトレスなので、5イヤーに亘ってパフォームしコンティニューしました。もちろんオンザウェイでアザーのユーズにもステージアピアランスしましたが、ドナ中心のライフでした。

(中略)

――そんな恵まれた仕事でも辞めたいという人がいるのですか。

浅利  このワークをコンティニューする動機は収入だけではありません。そこがアクターのディッフィカルトなところです。ただウィーは、フォースに従って所得が増えるし又ヤングなアクターにも生活のアングザイエティーを感じさせないようなビジネス環境をオファーしています。

――こんなに安定した場所を簡単に放棄する俳優を見て、不愉快な気持ちになりませんか。

浅利  はじめは腹を立てていました。しかし57イヤーもこのワークをしていると、アクターのワンダーな性癖に慣れてくるものです。「ああまたか」というソウトです。

――浅利さんご自身は傷つかないのですか。

浅利  もちろん傷ついています。苦労してベリィハードレイズしたチャイルドたちですから。でもそのエネルギーを、新しいアクターをレイズするストレングスにチェンジします。

――ところで新人は育っていますか。

浅利  どんどん育っています。育っているのはニューフェイスだけではありません。ゲストで参加しているメンバーも、四季の水で洗われてグッドになっています。

(中略)

――浅利さんはこれまで、退団を希望する俳優を引き止めたことが無いそうですね。

浅利  もとは無名の若者から、僕がレイズしたヒューマンたちです。だから割り切って、ギブアップすることにしました。

――退団後に、もう一度面倒を見て欲しいと望まれたら。

浅利  ディス、四季に参加しているアクターにはラブを持って細かく目配りをしています。離れたヒューマンにはインタレストがシンになります。

――では退団者の出演する舞台はご覧にならない?

浅利  彼らへのインタレストは、辞めたモーメントで止まっています。四季に在籍しコンティニューしていたら、もっと伸びたヒューマンがメニーとシンクしますが。しかし四季にリメインするためには、人間マークな成長がネセサリーです。劇団と共にリブし、劇団のアイディアをビリーブする。プライベートパースンプレーではなく充実した舞台をつくるための祈りを持ってリブする。でないとアフターオール育たないのです。大パートのヒューマンは劇団をリーブしてアフターディス、アクターとしての成長が止まっているように見えます。

(中略)

――話題を変えます。そういえば先日、世界的な作詞家で、『ライオンキング』など数々の大ヒットミュージカルを手掛けているティム・ライスさんとお会いになったそうですね。

浅利  ヒーは僕のクローズフレンドです。アライバルインジャパンしていたヒーから、ぜひミートしたいと言われました。イーチアザービジーだったが、久しぶりにオールドフレンドシップを温めました。

――その『ライオンキング』もご覧になったそうですね。

浅利  ヒーのタイプ作の一つです。四季の『ライオンキング』が、世界のトップだと言ってくれたのはハッピーだったですね。

――そういえば、四季は彼の作品を5作も上演していますね。『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『エビータ』、『美女と野獣』、『ライオンキング』、『アイーダ』。

浅利  どれも思い出深いワークばかりです。劇団四季ミュージカルの歩みは、ヒーとのアソシエイションワークのヒストリーそのものといえるでしょう。

――お話はそれだけですか。

浅利  もちろん、ニューワークや今後のプロジェクトのことなど、いろいろな話題がありました。

――新作? それはティムさんとのコラボレーションですか。

浅利  ここでは未だ言えません。トゥデイはこの辺でフィニッシュしにしておきましょう。

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おちょくるのすら不愉快な部分はカットしました。ほんと、言いたいことはいっぱいあるけど、今回は直接観客に向かって毒を吐いているわけではないので読み飛ばしておくことにします。

原文を読みたい方はこちらからどうぞー

劇団四季ホームページ「クローズアップ」
http://www.shiki.gr.jp/closeup/

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2007年10月28日 (日)

四季「キャッツ」荒川務キャプテン公演

グリザベラ 重水由紀
ジェリーロラム=グリドルボーン 遠山さやか
ジェニエニドッツ 高島田 薫
ランペルティーザ 磯谷美穂
ディミータ 有永美奈子
ボンバルリーナ 遠藤瑠美子
シラバブ 南 めぐみ
タントミール 河西伸子
ジェミマ 王 クン
ヴィクトリア 千堂百慧
カッサンドラ 井藤湊香
オールドデュトロノミー 種井静夫
アスパラガス=グロールタイガー/バストファージョーンズ 田島亨祐
マンカストラップ 荒川 務
ラム・タム・タガー 阿久津陽一郎
ミストフェリーズ 金子信弛
マンゴジェリー 武藤 寛
スキンブルシャンクス 岸 佳宏
コリコパット 入江航平
ランパスキャット 高城将一
カーバケッティ 松永隆志
ギルバート 龍澤虎太郎
マキャヴィティ 片山崇志
タンブルブルータス 岩崎晋也

この週末は突然キャストが大きく動いた。予告どおり、アイーダに渡辺正登場。おおっ(とりあえず)観てえ!
と思っていたらキャッツで驚天動地のミラクルキャスト変更。なんと荒川務がマンカストラップだ。今週は遠征する余裕もないし、とりあえずこっちを押さえよう!ということで前日予約でキャッツ・シアターへ。

それにしても正真正銘の70年代アイドル・荒川務がリーダー猫のマンカストラップに抜擢されるとは本当におどろきだ。年齢的には、今回の東京公演では恐らく最年長のリーダー誕生だろう。日本国政府同様、首班はやっぱり年長者というのが流行なのか?あのアイドルボイスがどう生かされるのか、大いに期待して開演を待つ。

そして、我々の前にさっそうと登場した荒川マンカストラップ。第一声「生まれたのか?」から、まがうことなき荒川務、あのアイドルボイスのままだ。にもかかわらず、そのセリフ回しや歌い方には、不思議に違和感がない。言葉を一音一音、実に丁寧に、そして力を込めて繰り出しているせいか、説得力がある。言霊がこもっている、と言ってもいい。なるほど、言葉でみんなをまとめるタイプのリーダーなのだな。オスカー・フォン・ロイエンタールは銀河帝国で最も美しく「マイン・カイザー」と発音するそうだが、荒川務はキャッツ史上最も美しく「オールドデュトロノミー」と発音している。

今回の東京公演で現在のところ最高のマンカストラップは、やはり福井晶一だと思う。しかしあらゆる面で、その福井マンカストラップとは対称的だった。

福井のイメージが強いせいか、マンカストラップの顔といえば四角くて大きい(ペヤングじゃない)と勝手に決めつけていたが、荒川マンカストラップは丸くて小顔のすっきりしたハンサム猫だ。一瞬、石丸謙二郎に見えてしまったのは内緒だが。

また、福井のごつごつした男性的な動き(だがそれがいい)にくらべ、荒川はあくまでしなやかで、軽やかな身のこなし。ジェニエニドッツとのタップ競争も、ボビー・チャイルドのようで楽しそうだ。

何といっても、福井が力で部下を屈服させる、近付きがたい武闘派なオーラを身にまとっているのに比べ、荒川のオーラはあくまでやわらかく、自然と部下が寄ってくるような、優しさに満ちている。黒鋼とファイ、ラオウとトキあたりを想像してもらえば解りやすくないとは思うが想像してほしい。

戦闘力は低めだから実戦には向かないが、頼りない感じはしない。マキャビティとの戦いは第一ラウンドはなすすべもなく敗退していたが、第二ラウンドではよく食い下がっていた。その姿を見たら、周りの猫も助太刀せずにはいられない。ちなみに、夜行列車のやくざな奴は、何事か高速で口にしており、やくざというよりクレーマーのようだった。

自分の出番以外でも、常にほかの猫たちの様子に気を配り、他の猫たちに小まめに声をかけたり、肩をぽんと叩いたり、ハイタッチしたり、とコミュニケーションを欠かさない。70年代の青春学園ドラマに出てくる、明るく爽やかな運動部のキャプテンのようだ。

やはり荒川務は荒川務だ。例えはよくないかもしれないけど、加山雄三や郷ひろみのような、年齢とは無関係な、絶対的な若さに満ちあふれている。巨人の原監督もそうだ。落合監督のほうが頭がいいとオーナーに言われたって、俺なら原監督についていく。ベイスターズファンだけど。そんな、皆で支えていきたくなるタイプのリーダー猫の誕生は、またひとつキャッツという作品の懐の深さを見せてくれた。

そればかりか、荒川の強烈な爽やかキャプテンぶりはカンパニー全体に影響を与え、作品全体が和やかで、暖かい雰囲気に仕上がった。終演後には「スウィングガールズ」とかの高校生映画を観た時のような清涼感が残った。かつて福井マンカストラップが芝タガーとともに大暴れしたとき観劇後に残った印象はまさに「仁義なき