2009年11月22日 (日)

四季「ソング&ダンス 55ステップス」アリエル花代のありえないキュートさ

「ソング&ダンス 55ステップス」福岡公演が19日から始まった。ヴォーカルパートは開けてびっくりの豪華な顔ぶれ。男性陣に金森 勝、高井 治、福井晶一、女性陣に井上智恵、鈴木ほのか、木村花代ときたもんだ。豪華というより、キャスティングしたの俺だろ、というぐらい個人的に好きな役者が並んでいる。こりゃあ行かないわけにはいかない。福岡が俺を呼んでいる。数日前に預金残高を見て愕然としたほど財政はひっ迫しているが、AKB武道館コンサートのDVDボックス購入を先送りして費用を捻出し、2月の「ミス・サイゴン」以来久しぶりの福岡へ。

この日、福岡は意外なほど寒かった。現地の人の話では、その前の週まで今年は冬が本当に来るのか疑いたくなるほどの陽気だったという。そして劇場に着くころには雨が降ってきた。

福岡シティ劇場に入り、エスカレーターを上がる。まずはこの日の顔ぶれを再確認して悦に入ってやろう、と思いキャストボードの前へ。

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今年の正月、この公演に一瞬だけ登場した木村花代が、ポジションを「娘役パート」に変えて復活だ。このトリオはいい。鉄板過ぎる。ぜひなんらかの作品で共演してほしい組み合わせだ。

そして男性陣に視線を移すと……

 

Σ( ゚ Д ゚ )

 

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(つд⊂)ゴシゴシ

 

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 ゚  ゚  ( Д )

 

何と福井晶一が渡辺正に変わっている。福井がいなくなるだけでも大打撃なのに、よりにもよってこの男だ。いったい何があったのだ。「雨男」「雨女」のように、渡辺正運が極端にいい(悪い?)人がいるのだろうか。

……俺か?

俺が連れてきちまったのか?

だとしたら福岡のみなさんごめんなさい。せめて一緒に東京に連れて帰ります。いや、それをしたら海劇場で泣く人がいるからだめだ。

というわけで、本日のキャストはこう。

ヴォーカルパート 金森 勝、高井 治、渡辺 正、井上智恵、鈴木ほのか、
木村花代
ダンスパート 鎌滝健太、斎藤准一郎、君島龍矢、徳永義満、萩原隆匡、
花島佑介、朱 涛、新庄真一、前田順弘、
加藤久美子、駅田郁美、徳江みさほ、須田綾乃、
柴田厚子、井上佳奈、小菅 舞、原田麦子、今 彩乃、泉 春花

どーんとモチベーションが下がった状態で開演。舞台上の花代様のお姿を見ているうちに、なんとかテンションも上がってきた。

男性陣では、金森勝(キム スンラ)が初見だ。あれだけ舞台の上で見ている役者さんだが、素顔を見るのは初めてのような気がする。いつもライオンや猫や、隈取り状態だったからね。どことなく矢島健一を思わせる風貌だ。作品に強烈なアクセントを加える独特の高い声には、荒川務の甘い響きとは正反対の鋭さがある。「エビータ」のナンバー「飛躍に向かって」を聞きながら、金森チェはアリだなあ、と感じた。もともと「ジーザス・クライスト=スーパースター」のユダと共通点の多い役である。ユダをあれほど印象深く演じた彼のチェを見てみたいと思うのは自然な話だ。

そして何といっても木村花代の娘役。「ソング&ダンス」では、いつもこのパートが物足りないと感じていたから(趣味の問題だけど)、これは嬉しい。

「ライオンキング」の「シャドーランド」をソウフルフルに歌い上げたかと思えば、なつかしや「マンマ・ミーア!」の「I have a dream」を娘度200%で熱唱。贔屓目だけど、まだまだソフィ役いけるじゃないか!そのあと「Slipping Through my fingers」でほのか様とのデュエットも実現。うーん美人親子だ。声の相性もいい。ぜひ次のマンマ・ミーア!はこのコンビで。

そしてとてつもなく楽しみにしていた「リトル・マーメイド」の「Part of your world」。ちょっとセクシーめの緑のドレスで登場し、深海から地上の世界を夢見る、人魚アリエルの思いを情感たっぷりに歌う花代さまのキュートなこと!この大好きな曲を彼女が歌うだけで幸せいっぱいだが、期待どおりのパフォーマンスだ。ずっと繰り返し聞いていたかったほどである。

ディズニーのアニメーションとしては、「リトル・マーメイド」は「美女と野獣」に負けず劣らず好きである。ヒロインだけに限って言うなら、理屈っぽいベルよりだんぜんノウテンキなアリエルだ。こうなると、ぜひミュージカル版「リトル・マーメイド」での花代アリエルを見たいと思うのが人情だが、正直なところあの作品は凡作だ。日本に輸入されることはないだろう。

二幕はちょっと出番が少なくて残念だったが、「名も知らぬ人」はさすがに歌いこんでいるだけあって聞きごたえ十分。あと、「メモリー」でちょこっとだけ登場する花代シラバブは貴重だ。

 

さて問題の渡辺正。何度かこのブログでも言及しているように、別にこの役者は嫌いじゃない。むしろ、使い方次第で実に味のあるいい存在感を発揮できる逸材だと思う。しかしその起用法が、いつもファンに喧嘩を売るような形で登場するので、どうも悪いイメージがついてしまう。そういう意味ではこの男も被害者である。

彼の「ソング&ダンス」は名古屋で見ているが、今回パートが変わったことで「キャッツ」ラム・タム・タガーのナンバーを歌った。これが実に珍妙でおかしかった。何というか、忘年会の余興でハッスルしてる課長さんみたいなのだ。見ている側も、ノッてあげたいけどいかんともしがたい感じで、微妙な反応になってしまう。つい、島本和彦の出世作「炎の転校生」(1984年)で、全校集会でマイケル・ジャクソンのものまねをして生徒の不興を買った技北先生を思い出した。

これ↓

Wazakita

まあ、前回見たときもさほど悪い印象はなかったし、それなりに彼の持ち味は出せていると思う。だが「名も知らぬ人」はその前にアレキサンダーズ・ラグライムバンドでダンスを披露した鎌滝健太にそのまま歌わせろよ、って感じだったし、福井晶一の「スーパースター」は余計に金を払ってでも聞きたかったのが本音である。

それにしても今回の劇団四季のやり方にはほとほとあきれ果てた。やっていいことと悪いことがある。開幕の1~2週いい役者をそろえる、というのは今に始まったことではないが、たった2.5日で看板役者を引っ込めてしまうとは。全国公演のチケット売り出しに合わせたタチの悪いプロモーションと見られても仕方がない。その気はなかったとしても、李下に冠を正さず、と言うではないか。いったい四季の羞恥心はどこを向いているのか。

ところで、バトンの金メダリスト泉春花は、このまま全国に突入するのか?終了後、燃え尽きて退団したりしないでほしい。ぜひまたほかの作品での活躍を見たいものだ。つうてもバトンが生かせる役とほかにないしなあ。史上初の女ヘロデ?ないない。

「ソング&ダンス 55ステップス」ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/songdance55/index.html

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2009年11月14日 (土)

四季「キャッツ」横浜公演 脱線トリオ、そろり発進

グリザベラ 早水小夜子
ジェリーロラム=グリドルボーン 秋 夢子
ジェニエニドッツ 礒津ひろみ
ランペルティーザ 愛沢えりや
ディミータ 団 こと葉
ボンバルリーナ 西村麗子
シラバブ 谷口あかり
タントミール 高倉恵美
ジェミマ 金平真弥
ヴィクトリア 千堂百慧
カッサンドラ 蒼井 蘭
オールドデュトロノミー 種井静夫
アスパラガス=グロールタイガー/バストファージョーンズ 村 俊英
マンカストラップ 芝 清道
ラム・タム・タガー 阿久津陽一郎
ミストフェリーズ 松島勇気
マンゴジェリー 川東優希
スキンブルシャンクス 岸 佳宏
コリコパット 入江航平
ランパスキャット 桧山 憲
カーバケッティ 松永隆志
ギルバート 龍澤虎太郎
マキャヴィティ 金久 烈
タンブルブルータス 川野 翔

新しいキャッツシアターは、なんとなく五反田キャッツシアターの2階部分を取り外したような構造だ。東京公演ではロングランの中で2階に空席が目立つことも少なくなかったのでナイス判断なのではないか。また、2階席があると1階席の後方は天井が低くて圧迫感があったが、それがなくなって全体的に開放感がでた。これはいい。

まあ基本的には五反田シアターの雰囲気そのままで、椅子なども再利用されているようなので新鮮な感じはないが、コンパクトにまとまっていてどこからも舞台が近く、オール1階席のこの空間は大いに気に入った。ロビーも広々としている。

客席を取り囲むゴミの数々は五反田からもってきたものもあり、新しいものもある。開演前にはぐるりと回ってチェックしたいものだ。

演出も、細かい変更はいくつかあるようだが、特に「横浜」を感じさせる大きな仕掛けが2箇所ある。詳しくは言わないが、一幕にひとつ、二幕にひとつ。個人的には一幕のアレ、好きだなあ。

さてこの日は、開幕ということでなかなかの豪華キャストである。キャッツの進行役はマンカストラップ、ラム・タム・タガー、ミストフェリーズの3人だが、そこに芝、阿久津、松島と、顔面濃度200%の野郎共がずらりとそろった。3人とも、猫の濃いメイクがほとんど意味がないほど素顔がよく分かる。しかしこの3人の能力と存在感は折り紙つきだ。

もっとも、この3人はそれぞれ、いらんことをするキャストでもある。芝はリーダーたるマンカストラップなのに、ところどころで笑いを取りに走るし、阿久津は登場とともに何語かよくわからない奇声を発するし、松島はグリドルボーンに怪しい視線を投げかける。

だがこの日は、3人とも不審な動きをぐっと封印していた。マンカストラップは真面目だし、タガーはおとなしく出てくるし、松島も持ち前のバレエの技術で観客を魅了する。いったいみんなどうしたというのだ。別にもっとふざけろというつもりはないが、ヤツらが神妙にしていると、なんだか薄気味悪い。きっといずれ何かやらかそうと企んでいるに違いない。近所の悪ガキかよ。

この3人に、早水小夜子のグリザベラ、村俊英のアスパラガスという職人たちも加わり、見ていて実に安定感がある舞台となった。決して開幕当初にありがちなガチガチの固い雰囲気ではなく、みなどこか余裕を持って役を演じていたように見えた。別に緊張感がないというわけではなく、実力のある者たちだからこそなせる業だ。もともと、キャッツはもっと自由さがあっていい作品だと思う。ロンドンの猫たちはまさに野良猫だった。完成度の高さが日本の、というか四季のキャッツの魅力であることに異論はないが、このあたりで少し新しい方向性を模索するのもよいのではないか。

さて、開幕当初はシラバブに五所真理子の名前があった。夏の「エルコスの祈り」全国公演でたいそう気に入った女優さんなので、楽しみにしていたが劇場のキャストボードでは谷口あかりに変わっていた。ちょっと残念だ。まあ谷口あかりもこれはこれで好きなわけで、ルックス最強なシラバブは見ていて顔がにやけてくる。ルックスといえば金平真弥のジェミマのキレイなこと!思わず見とれてしまう。とはいえ、これならさぞやアムネリス王女様も美しいだろうなあ、と想像したくなるのはいたしかたのないところだ。

横浜でどのくらいの公演をするつもりか分からないが、キャパシティを考えればそれなりの期間は続けないと採算は取れないだろう。中華でも食いながら通うことにしよう。

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「キャッツ」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/cats/index.html

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2009年10月24日 (土)

四季「アイーダ」金田ラダメス颯爽と登場

アイーダ 濱田めぐみ
アムネリス 五東由衣
ラダメス 金田俊秀
メレブ 中嶋 徹
ゾーザー 飯野 おさみ
アモナスロ 川原 洋一郎
ファラオ 前田 貞一郎
ネヘブカ 松本 昌子

開幕から3週間、早くもキャストが動き出した東京アイーダ。待望の新ラダメス登場だ。

金田俊秀といえば、韓国出身の若手成長株。「キャッツ」のラム・タム・タガーや「エビータ」のチェなど、重要な役を次々こなし、「ジーザス・クライスト=スーパースター」ではジーザス役に。自分はこのジーザス役をひたちなかで見ており、カッコよく、伸びのある歌声には大いに好感を持った記憶がある。

その金田ラダメス、冒頭から大いに存在感を発揮する。鼻筋の通った濃い目の顔は、エジプトの青年将校という役どころにぴったりだ。「勝利ほほえむ」をはつらつと歌うその姿には若さと、未来への希望が満ち溢れている。「♪心躍る 我らの夢~」という歌詞がばっちり似合っている。大国を支える誇りに満ちた若き提督。銀河英雄伝説で言うならばウォルフガング・ミッターマイヤーかナイトハルト・ミュラーか、といったところだ。これはいい。

だが、そうした男性的な歌い方が、アイーダへの思いを込めたロマンチックな歌では、ぐっと甘い声になる。このため、アイーダとのデュエットになると、力強い濱田めぐみの歌声に負けてしまう。だからだろうか、どうも全体的にはやや印象が薄いという感じも残る。たとえ悪目立ちでも、自分のカラーを出している渡辺正のほうが、少なくとも印象には残る。

そして「この父親にしてこの息子あり」では、再び若さを爆発させる魅力的なラダメスに戻る。この親子ゲンカは、実に見ごたえがあった。野心と、自由への渇望とが、お互いにむき出しでぶつかり合う。これは今までに観たゾーザー・ラダメスの組み合わせの中では最高である。

こう考えると、金田俊秀という役者は、すでに実績のあるジーザス・クライスト=スーパースターや、「ウェストサイド物語」のような、男くさい作品に合っているのかもしれない。想像だけど、いいリフやトニーになりそうだ。彼のチェは未見だが、大いに見たくなってきた。

またラダメスは、これまで彼が演じてきた役に比べセリフ部分が多い。そうなると、日本語の発音が心配されるが、問題になるレベルではなかった。彼が海外出身だということを知らなければ、話し方がちょっと変わっているな、と感じるぐらいだと思う。若いころの田村正和のような、どこかスカした感じの喋り方だ。これが青年将校のはつらつとした雰囲気とまるでミスマッチで、ちょっと面白い。

ただ、やはりセリフに気持ちが乗りきってない、という場面も散見された。日本語のセリフを話すのに頭脳のメモリ容量を相当食われているのだろう。たとえ発音が不自然でも、気持ちが乗っていれば観客には伝わる。「ウィキッド」のフィエロを演じた李涛がそうだったように。だから金田も多少の発音など気にせず、堂々と演技をしてほしいと思う。

金田ラダメスの第一印象はこんなところだ。ぜひ「勝利ほほえむ」「この父親にしてこの息子あり」で見せた、男っぽさと若さを前面に出した青年提督の顔を全体に貫いてほしいところだが、観る人によっては、甘い歌声のほうに軸足を置くことを望むかもしれない。どっちに動くのか、あるいはまた別の方向に行くのか。楽しみに見守りたいと思う。

さて3週足らずでお役御免になってしまった渡辺正はどうなるのだろう。初日に出すのはどうかとは思うが、ある意味面白いラダメスで、個人的には時々出てほしいものだ。それに周りのアイーダ観劇者の声を聞いたところ、渡辺ラダメスは男性にはおおむね好評のようである。うーん、しかし出てくるとまた叩かれるだろうしなあ。ここはひとつ、渡辺正にはゾーザーを演じてもらってはどうだろう。金田ラダメスとのコンビなら、なかなかいい親子ゲンカが見られそうである。

次はいよいよ、新アムネリス誕生か?こちらも大いに期待したいところだ。

四季「アイーダ」のホームページ
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2009年10月10日 (土)

四季「ドリーミング」秋のパンまつり

チルチル 大徳朋子
ミチル 岸本美香
犬のチロー 田中彰孝
猫のチレット 林 香純
パン 白瀬英典
本城裕二
柏谷巴絵
牛乳 市村涼子
砂糖 塩地 仁
光/隣の娘 沼尾みゆき
ベリリューヌ/ベランゴー 光川 愛
母親チル/夜の女王/母の愛 白木美貴子
父親チル 田代隆秀
祖母 斉藤昭子
祖父/カシの大王/時の老人 田島亨祐

メーテルリンクの「青い鳥」をベースにした劇団四季のオリジナルミュージカル「ドリーミング」が開幕した。1969年にファミリーミュージカル「青い鳥」として誕生し、その後「ドリーミング」と改称。しかし2003年にはまた「青い鳥」として東京・大阪ほかで上演されている。どうも「青い鳥」という場合にはファミリーミュージカルとして、「ドリーミング」という場合には一般作品という位置づけになるらしい。演出も違うのだろう。

いずれにしても、自分は未見だ。98年に大阪MBS劇場で上演したとき、なんとなく観に行こうかな、と思った記憶はうっすらとある。下村尊則の「夜の女王」がすごいらしい、と聞いたからだった。なぜ実現しなかったのかは思い出せないが、すでにこの段階で俺はひょいひょい遠征するようなダメ人間になっていたということだ。

今回も、当初はまあ観たことないから一度ぐらいは、という軽い気持ちだったが、開幕の数日前に公開された舞台稽古写真には、ほとんど誰が誰だか分からない写真ばかりの中、沼尾みゆきだけがハッキリと写っていた。キャスティングには気合が入っている、というメッセージだ。もとより四季は輸入の大型作品より、オリジナル作品に一線級を投入する傾向があるのはご存知の通りだ。がぜん、正常ではない観劇姿勢のモチベーションが上がってきた。

そして迎えた初日、秋劇場のキャスティングボードには上記のような配役が表示された。

果たせるかな、面白いキャスティングだ。

チルチルとミチルに、大徳朋子と岸本美香。どっちも小柄さが売りの、ファミリー系作品に欠かせない2人だ。特に岸本は、長く「美女と野獣」のチップとして食器棚に縛られていたが、近年はさまざまな役でその芸達者ぶりを披露している。「春のめざめ」ではテーアや舞台上の隠れアンサンブルで大活躍しており、個人的にますます注目している女優さんのひとりだ。もうこのコンビだけで、劇場に来たかいがあったというものだ。

わくわくしながら席につき、やがて開幕。もともとがファミリーミュージカルなので、正直だるい場面もある。だがそもそもメーテルリンクの「青い鳥」は、童話劇の体裁を取りながらも当時の社会風潮への痛烈な批判と、人として生きることへの哲学的な考察を含んだ重厚な内容だ。この舞台は十分に大人の鑑賞に堪えうるものになっている。まして自分のようにファミリーミュージカル出身の「夢から醒めた夢」や、「魔法を捨てたマジョリン」「エルコスの祈り」といった現役ファミリーミュージカルが大好きな人間にとっては全く抵抗がない。

ダイヤモンドをあしらった帽子を身に着けることで、普段は見えない、気付かない「本質」に目を向ける能力を得たチルチルとミチル。2人の冒険は、そのまま人生のダイジェストとなり、観客の心を打つ。

が、自分の目はチルチルとミチルどころか、平均的な成人男性の持つ瞳のレベルと比較しても数十倍曇っている。曇っているというより、濁っている。いや、腐っているといってもいい。

だから、ここでその作品の「本質」についてあれこれ言うのはやめておく。

ダメ人間はダメ人間らしく、正常ではない観劇姿勢で、印象に残った点を書き留めておこう。

まず目につくのが、白瀬英典の登場である。そう、「春のめざめ」で、張りのある最高に美しい声で「どうしても揉みたいあのオッパイを~♪」と歌い上げ、主役を食うほどの存在感を発揮し一躍四季の若手注目株に躍り出た(か?)あのゲオルグである。彼が演じるのはパンの精。たいそうらしく演説するが、言うことがころころ変わる、政治家タイプの妖精だ。その声は相変わらず舞台の空気を変えてしまうほどの影響力を維持しており、聞いていて実に心地いい。彼はまたここでキャリアを積み重ねることに成功した。次はどんな役を狙うのだろう?今から楽しみだ。

そして、林香純のチレット。言わずとしれた、「春のめざめ」のベンドラである。正直、自分は彼女のベンドラが苦手だった。しかし、このチレットは、いい。すごくいい。歌は春のめざめでもその実力を発揮していたが、ダンスも演技も、登場人物の多いこの舞台で常に観客の目を引きつける魅力がある。明らかにそれキャッツだろう、という猫メイクもばっちり決まっており、今すぐにゴミ捨て場に直行しても違和感がなさそうだ。見た目も、キャラクターも、どことなくボンバルリーナをほうふつとさせる。いや、ボンバルリーナの女子高生時代を見ているようだ。キャッツでボンバルリーナについては詳しく描かれていないが、チレットを見ていると、きっと若いころはあんなヤツだったんだぜ、と思えてくる。ちょっとはすっぱな物腰で、意地悪もするが、根っからの悪党というわけでもなく、どことなく憎めない。勝手にボンバルリーナのキャラ設定を考え、まるでキャッツのスピンオフ作品だな、とか痛い妄想を広げているうちに、11月のキャッツ開幕が待ち遠しくなってきた。

また何といっても、(自分にとって)この公演最大の目玉は、沼尾みゆきの「光の精」だ。グリンダ様といい、姫様キャラが完全に定着した沼尾みゆきの真骨頂である。光は、妖精たちのカシラとして、テキパキと指示を出す。まるで「追跡者」で部下を指図するトミー・リー・ジョーンズみたいにだ。それが実にカッコいい。俺も指図されてええ!「おだまりなさい」とか言われてみてえええ!きっとグリンダ様が良い魔女としてオズの実権を握ったあと、数年もするとこういう感じになるんだろうなあ。今度はウィキッドのスピンオフを見ているような錯覚に……。そして二役の「隣りの娘」の装いがまたいい。ぱっと見、アラサーのイタいコスプレイヤーのようだ。だがそれがいい。とてつもなく萌える。稽古場写真でないプログラムをもし作るなら、絶対にあの衣装の沼尾の写真を掲載してほしい。あるいは携帯サイトで待ち受け画像として提供してくれ。しかし稽古着姿も、重ね着のために体操服みたいに見えて、これがまた何とも。正直、たまりません。

他にも見所は盛りだくさん。主に東宝で活躍し、今年の「夢から醒めた夢」東京公演から四季に参加し、マコの母を演じた白木美貴子が圧倒的な存在感の夜の女王を熱演。こういういい人材が外部から来てくれるのは四季の未来を語るうえで実に重要なことだ。もうちっと退団者もと仲良くしてくれりゃあ、いろいろ面白いキャスティングが実現するのに。そして韓国出身の歌姫、光川愛の演じるベアトリーチェ、じゃなかったベリリューヌがどえらく美人である。声も素晴らしく、彼女のラフィキをぜひ体験したくなってきた。田島亨祐は老け役に挑戦だが、実に堂々と、重厚感ある歌声で魅了していた。田中彰孝は持ち前の、というかそれしかない(のかもしれない)元気ハツラツさと、ちょっとお馬鹿な演技で、舞台全体のムードをうまく作っていた。さらに、女性アンサンブルがわんさか出てくるのもこの舞台の魅力(個人的にだが)。中でも「マジョリン」でおなじみ、背はちっちゃいけれど実はとっても美人さんの関根麻帆にゃんが「健康の幸福」を好演しているので、ここもぜひ注目してほしい。

てなわけで、俺は完全に作品ではなく役者を観ていたわけだが、それで十分お腹いっぱいになることうけあいの舞台だ。

Dream

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2009年10月 3日 (土)

四季「アイーダ」もうめぐ様しか見えない

アイーダ 濱田めぐみ
アムネリス 五東由衣
ラダメス 渡辺 正
メレブ 中嶋 徹
ゾーザー 飯野 おさみ
アモナスロ 川原 洋一郎
ファラオ 前田 貞一郎
ネヘブカ 松本 昌子

ついに東京にやってきた、アイーダ。オペラ版の「凱旋行進曲」でも奏でて盛大にその初日を祝いたいところだ。

この作品は、派手で明るくて楽しいミュージカルが好きな(馬鹿だから)自分にとって、必ずしもお気に入りというわけではないかもしれない。最初観たときは、ちょっと眠くなった。しかし、エルトン・ジョンの音楽の威力だろうか、CDを聞いているうちにだんだんまた観たくなり、劇場に行くとその魅力に気づかされ、また観たいと思うようになった。そうして何度も観ているうちに、すっかりその魅力に絡め取られてしまった感じである。

だから、この東京公演は実に楽しみだった。それに海劇場は、ちょっと大人なムードのこの作品にとってぴったりの雰囲気だと思う。ウィキッドの終了は寂しかったが、次に来るのがアイーダとなれば、寂しさも中くらいなりおらが秋といったところだ。

そして、記念すべきこの公演の開幕キャスト。アイーダには濱田めぐみが来てくれた。いろんなアイーダも見たいが、やはりまずはめぐ様アイーダの素晴らしさを、東京のファンの目の前にたたきつけてほしい。そう考えていたから、これは嬉しい。

そして観劇後の感想。

出てくる言葉は「濱田めぐみ」。

その一言だけだ。

良かったとか素晴らしいとか、そんな言葉ではとうてい表現できない。彼女がこの役を演じるその空間に立ち会えたことが、途方もない幸せに感じられた。

自分がめぐ信者であることは否定しない。少なくとも、「美女と野獣」のときからずっとファンだった。しかし、それを差し引いて考えても、この濱田アイーダの完成度は世界に誇る出来だと言っていいのではないか。

彼女のアイーダがいいのは前からだ、というかもしれない。確かにそうだ。しかし考えて欲しい。濱田めぐみという女優は、同じ役を演じていても、演技をどんどん変えていく。「ウィキッド」のエルファバは、初日と終盤ではぜんぜん違うキャラクターになっていた。もともと、彼女は内面から役を作っていくタイプらしい。このイベントのときに、役作りは今までの人生や、演じた役を思い出しながら進めていく、と述べている。

となれば、今回のアイーダには、エルファバが混じっているのではないか?という予想があった。

そういう先入観があったからかもしれないが、確実に、アイーダの中にエルファバがいると感じた。これは個人的な印象だから、異論もあると思うが、以前の濱田アイーダは、王女としての自覚に裏打ちされた、凛としたたたずまいが強く前面に出ていたと印象がある。

しかし、久しぶりに見た濱田アイーダは、その王女オーラは健在なのに、どこか女の子っぽさというか、フェミニンな雰囲気をものすごく感じるのである。

これは、やばい。

以前は、どこか近寄りがたい神々しさに接して「さすがはめぐ様」と心の中でひざまずいていた。だが今回は、見ているうちにどんどん、本気でアイーダが好きになってきてしまう。痛い話ではあるが。

それを象徴するのが「迷いつつ」のあとの「愛してるわ」というセリフ。「ウィキッド」の、「生まれて初めて…幸せ」のセリフをちょっと思い出す。ブロードウェー版で、イディーナ・メンゼルが「I feel wicked」と言っているところだ。あの言い方に非常に近い。

このセリフを聞いたとき、背中がゾクゾクッとした。そしてそのあとの、口をふさぐ仕草。だめだ、可愛いすぎる…。自分の中で、また何かがぶっこわれた音がした。

一段とパワーアップしためぐ様アイーダに会うために、しばらく海劇場通いが続きそうだ。この作品が未見の人、あるいは濱田アイーダを見ていない人は、この「海のエジプト」を訪れてほしい。

 

……というところで、このエントリーを終えるわけにはいかんのだろうな、やっぱり。

 

開けてびっくりの冗談キャスト、初日に渡辺ラダメス。一体何を考えているんだ劇団四季。つうか浅利代表。

最初に言っとくが、俺は渡辺正という役者は結構好きである。没個性的で印象に残らない役者よりも、たとえグリンダ様に「悪目立ちじゃない?」と言われようが、個性がある役者のほうがいい。

だから、名古屋で渡辺ラダメスが登場したと聞いて、すぐに観に行った

そして期待通りの悪目立ちっぷりに快哉を叫んできた。聞き苦しい歌声と、抑揚のない演技。しかし、それによって、どこかお坊ちゃまで世間知らずなラダメス像を作り出しており、これはこれでアリかな、とも思えた。客観的に見れば、ぜんぜんダメなのだけれど。

あれから2年近く経っている。普通なら「きっと劇的に成長したに違いない」と期待するところだが、俺にはそれは絶対ない、という自信があった。果たせるかな、渡辺ラダメスは2年前と全く同じだった。ただメイクが、前回見たときには「ラッツ&スターかよ!」と突っ込みたくなるほど濃いメイクだったのが、だいぶ薄くなっていた。

まあ、全く成長がないというのは言いすぎか。いくつか、演技面で変化もあった。ところどころ、ラダメスの「情熱家」の側面を感じさせるようになっている。「迷いつつ」のナンバーでは「ついに キターーーーーーーー!」と叫ぶように歌っていた。それがいいかどうかはともかく。そして前回見たときにココだけはいい、と思えた、地下牢の暗闇の中でアイーダに向ける笑顔は健在だ。

そんなわけで、マニアックに見ればなかなか面白いラダメスなのであるが、初めて彼を見た人は「なんだコリャ」と思うだろう。少なくとも、注目の集まる初日に出すキャストじゃない。

この作品では、アイーダ、ラダメス、アムネリスのバランスが極めて重要だ。そのトライアングルがきれいに決まらないと、この舞台の構造が見えなくなってしまう。しかし、この日はラダメスがどーんと落ちている。この時点でバランスなどあったものではない。そして五東アムネリスは、さすがの安定感で、歌唱力と演技力によって姫様オーラを高レベルでキープしている。しかし彼女のアムネリスは、どちらかというと受けて輝くタイプのもので、自ら強引に光り輝くものではない。この結果、もうトライアングルは全く成立せず、ただただアイーダという恒星の周りを、ラダメスやアムネリスが、ゾーザーやメレブたちと一緒になってぐるぐる回っている、という構図になってしまった。

だから、この公演は正直、作品的に見れば失敗である。しかし、それを埋めて余りあるほど、濱田アイーダが素晴らしい。だから、「ラダメスがちょっと…」と二の足を踏んでいる人も、勇気を出して海劇場に足を運ぶべきだ。大丈夫、そんなにひどくはないから(というレベルでいいのか?)。

ま、新ラダメスと新アムネリスの早期投入を期待したいところです。

四季「アイーダ」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/aida/index.html

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2009年9月13日 (日)

四季「南十字星」夢子のリナが秋で舞う 

保科 勲 阿久津陽一郎
リナ・ニングラット 秋 夢子
島村中将 田代隆秀
原田大尉 鈴木 周
塚本少尉 前田貞一郎
ニングラット博士 池田英治
ルアット・ニングラット 内田 圭
ニルワン 藤川和彦
キキ 山中由貴
オットー・ウィンクラー 吉賀陶馬ワイス
原田春子 都築香弥子
岡野教授 維田修二

南十字星の初日に足を運ぶ。この作品、かなり久しぶりだ。どのくらい久しぶりかというと・・・初演の初日以来だ。実に5年ぶりとなる。

別に避けていたわけではないが、キャストもほぼ固定で、また観よう、という誘因がなかったのだ。

5年前に見たとき、作品全体には好印象を持ったが、荒削りな部分が多いのと、エンターテインメント性をもっと出したほうがいいのでは、と感じた。その印象は、5年たって再見しても、あまり変わらない。多少の変更はあったように思うし、気のせいかテンポが良く感じたが、ほとんど変化はないといっていい。

そもそも、この作品はあくまでメッセージを伝えることが第一であり、演出やエンターテインメントは二の次、という考えもあるかもしれない。しかし、本当にそうだろうか?

自分は、「昭和の三部作」の上演自体には反対ではない。もし、四季が8月は毎年、輸入物のミュージカルの上演をいっさいやめて、徹底して昭和の三部作を上演する、と言っても、それはそれでありだろうと思う。シベリア抑留やBC級戦犯の話は、近年また語られる機会が増えているように思うが、これらは確かに未来へ語り継がなくてはいけない記憶だ。そして、四季はそれをミュージカルというエンターテインメントの形を取ってなしえようとしている。

さればこそ、もっとエンターテインメントとしての完成度を上げてほしいのである。「李香蘭」はある程度出来上がっているように思うが、「異国の丘」「南十字星」は、もっともっと磨き上げる必要がある、いや磨き上げればもっと上質のエンターテインメントになるはずだ。上演時間も短くていい。それでは戦争の記憶を言い尽くせないというかもしれないが、2時間40分が5時間30分になったところで、語り尽くせるものでもあるまい。何となく楽しいから、あるいは楽しそうだから観よう、という観客が増え、そうした人たちが自然に戦争の記憶を共有するようになるのが理想ではないかと思う。その人がどう感じるか、興味を持って自ら詳しいことを調べたり、折に触れて思い出したりするかどうか、それは観た側の問題だ。

さて、この日、長く固定されてきたキャストに変更があった。主人公・保科勲は阿久津陽一郎のままだが、ヒロインのリナ・ニングラットに秋夢子が起用された。

中国出身の美人シンガー、秋夢子はCATSのジェリーロラムでおなじみ。自分も好きな女優さんだが、「アイーダ」は日本語のセリフの発音がおぼつかないことを差し置いても、やや期待はずれだった。

しかし、今回のリナ役の起用は大正解だ。

歌のうまさは言うまでもない。そして何度も言うけど、とにかく美人。最初、かすりの着物で登場したときは思わず膝を打った。

これまで樋口麻美がずっとリナを演じてきたわけだが、麻美リナに比べると、夢子リナはちょっとアダルトなムード。テレビ東京の旅行番組に出てくる美人若女将みたいな雰囲気だ。だがそれがいい。

特に、二幕でリナらが独立運動を始めたあたりから、ぐんと良くなる。リナのインドネシア人としての誇り、同胞たちと共に戦おうとする覚悟がびりびり伝わってくる。麻美リナだと、保科への好き好きビームの熱量が多すぎて、ラストがどうも保科を想うリナと、自分の信じた道を歩む保科、というややすれ違いな結末に思える。しかし夢子リナの場合、保科もリナも、互いに信じるところを貫き通し、日本やインドネシアという国を超え、共に人類の長い歴史を紡いでいくこうとしているように見える。そこで2人は恋人として、同士として、そして同じ人類として、強く、固く結びついているのである。

夢子リナは、強いのだ。それがいい方向に作用している。思えばそれが悪い方向に作用したのがアイーダだった。アイーダは、王女としての誇りを常に身にまといながらも、どこか弱さがあり、それがアイーダという人物の魅力になっている(アムネリスは、弱そうに見えて最後は王女としての立場に目覚める。この2人は対称的なのだ)。しかし夢子アイーダは強すぎて、その弱さを表現しきれていなかった。だから物足りなかったのだろう。

阿久津の保科は、ますます役と俳優が一体化しているようで、四季特有の発声法ながらセリフやものごしが実に自然だ。まあ最初のシーンの詰襟学生服姿とカツラは思いっきり不自然だが。あとカーテンコールのにやけた表情もな。でも、この保科の優しく力強く、そしてすがすがしい生きる姿勢を見事に演じていることは、もっと賞賛されていいと思う。

ほかの役にも、春のめざめで若者を叱り飛ばしていた大人の男性・大人の女性がそのままスライドしてきていたり、アンサンブルにも坂本剛や菊地正、荒木美保に田村圭といった濃いメンバーが顔をそろえており、なかなかの見応えだ。この日「おっ」と思ったのは、内田圭のルワット。前回見たとき、この役は藤川ニルワンの怪演に目を奪われてあまり印象が残らなかったが、内田ルワットは、「エビータ」のマガルディで見せたような甘いマスクとボイスを完全に封印し、力強く、血気さかんな独立運動の闘士を熱く演じていた。

ミーハー視点で見ても十分面白いものになってこそ、この作品の存在価値はあるだろう。そしてさらに洗練させていけば、国境を越えて愛される作品になるかもしれない。ぜひその日を目指して、四季はこの作品を勇気を持って変えていってほしいと思う。

「南十字星」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/minami/index.html

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2009年9月 5日 (土)

四季「春のめざめ」千秋楽公演

ベンドラ 林 香純
マルタ 撫佐仁美
テーア 岸本美香
アンナ 松田佑子
イルゼ 金平真弥
メルヒオール 柿澤勇人
モリッツ 三雲 肇
ハンシェン 一和洋輔
エルンスト 竹内一樹
ゲオルグ 白瀬英典
オットー 加藤 迪
大人の女性 都築香弥子
大人の男性 田代隆秀
女性アンサンブル 玉石まどか、勝間千明
男性アンサンブル 玉井晴章、南 晶人

5月2日に開幕した「春のめざめ」がいよいよ千秋楽。長かったような短かったような、まるで自分の学生時代のような微妙な公演期間だった。千秋楽は抽選でなく一般発売で、それがAKB48「涙サプライズ」の発売記念大握手会とかぶっており、しかも電話がつながったのが篠田麻里子と握手する寸前で、予約番号の確認作業までしてそのまま携帯をポケットにしまい、何くわぬ顔で麻里子様と謁見した後に急いで予約番号を入力するという綱渡りだったが、ぶじチケットを確保することができた。千秋楽を見るのは「マンマ・ミーア!」大阪公演千秋楽以来か。初日も観たわけだが、初日も千秋楽も観た、というのは四季以外でも記憶にない。

四季としてはもっとロングランを目指していたのだろうが、やはりファミリー向けの作品が圧倒的な強さを誇る四季のファン層にはさほど響かなかったのか。この作品で新たなファン層の掘り起こしを図った面もあるのだろうが、それがどのぐらい効果を挙げたのかは知る由もない。

そこは観客が心配しなくてもいいだろう、と言われるかもしれないが、そうとばかりも言えない。

だって、俺はまたこの作品を観たいから。このままオクラ入りなんて勘弁だぜ。

自由劇場という空間の魅力を最大限に生かし、劇場に足を踏み入れた瞬間から世界観に入り込む感覚を再現。舞台上ではとことんカッコいい曲と演出を、四季の若い役者たちは十二分に生かしてそれぞれの持ち味を発揮してくれた。

ブロードウェーで初めて観たとき、四季での上演は、男優陣は大丈夫だろうけど女優陣が不安だなあ、と予感した。その予感は半分当たり、半分はずれた。はずれたのは男優陣のほう。「大丈夫」なんていうレベルをはるかに超えて、最高のパフォーマンスを見せてくれた。主演の柿澤勇人は完全にメルヒオールと一体化していたし、ゲオルグの白瀬英典とハンシェンの一和洋輔は出色の出来だった。

女優陣は、やはり厳しかった。ベンドラに輝きが薄く、大人と子供の境目にある女性が放つ独特のきらめきを描き出すことができなかった。そのため男性にとっての「春のめざめ」と女性にとっての「春のめざめ」のバランスが崩れ、全体的にオトコどもの頭の中はエロでいっぱい、という「パンツの穴」的な青春グラフィティーになってしまった。それはそれで好きなんだけどさ。金平真弥の情の深さを感じる歌声と、岸本美香のおばちゃんテーアは良かったが、やはりこの作品のカギはベンドラなのだ。

千秋楽は劇団の若手メンバーが大挙して見学していて、ロビーにはアンサンブルで見かけた人、初めて見るけど間違いなく女優さんだという人がごった返していた。みんなキレイで、これならベンドラ候補なんてざっくざくいそうな気がするが、難しいものである。

この作品、四季はキャストだけでなく制作面から若手中心で進めた。それを売りにした面もあり、発表記者会見で浅利慶太は喋らなかった(その場にはいたようである)。その結果を、内部ではどう評価するのか。守旧派は「ほうら言わんこっちゃない」と見るのだろうか?もしそう言われたとしても、この作品を支えた若手たちは、胸を張ってこう言ってやればいい。

「マジでFuck!」

千秋楽ということで、カーテンコールはえんえんと続き、ベテラン田代隆秀の簡単なあいさつもあった。柿澤勇人は何度も、まるでa-nationにサプライズ出演した小室哲哉のように深々とおじぎをしていた。すがすがしい姿ではあったが、そう行儀よくしなくてもいいんじゃないか。観客に向かって、そして後ろの客席で座っていた代表に向かって、中指を突き立てるぐらいの威勢の良さが欲しい。「春のめざめ」は劇団四季をぶっ壊すパワーのある作品だ。自民党は本当にぶっ壊れてしまったが、四季はそれを自己革新の推進力として生かすことができると信じてやまない。

さてこの中に劇団員が何人いるでしょう?

「春のめざめ」ウェブサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/springawakening/index.html
  

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2009年8月 9日 (日)

四季「ウィキッド」見ろー花代様だァーッ!

千秋楽直前の「ウィキッド」東京公演に超弩級のサプライズ。

木村花代グリンダが、オズの国に降り立った。

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みんなで~♪ 祝いましょう~♪ と、花歌ならぬ鼻歌なんぞをノンキに歌ってる場合じゃない。発表は土曜の昼。さっそくその日のマチネに出演した。しかし自分はそのとき水戸黄門まつりに行っていたのでそんなこととはつゆ知らず、由美かおるの撮影に興じていた。帰りの特急ひたちの中でこのことを知り、慌てて予約センターに電話するもチケットは売り切れ。そりゃそうだろうさ。当日発売オンリーのS見切れ席25枚に賭けることにして、日曜の海劇場へ。ありがたいことにチケットを入手することができ、花代グリンダ2回目の舞台を鑑賞した。

「みんな私に会えて嬉しいのね?」

その第一声にじーんと来たのはマンチキンの国民だけではあるまい。会場を埋め尽くした木村花代ファン(誇張アリ)がいっせいに心の中でうなずいた瞬間だ。俺に至っては涙が出そうになった。2006年末、ブロードウェーでこの舞台を観て、木村花代グリンダなんて実現したらいいな、と思ってからというもの、何かにつけて「これはグリンダ役への布石か?」と考えるようになってしまった。クレイジー・フォー・ユーを見てもオペラ座の怪人を見ても、常に自分の頭にあったのはグリンダ役のことだ。マコにグリンダ、ジェリーロラム。自分の好きな四季の三大ヒロインを、ぜひ木村花代に制覇してほしかったのだ。

だからパンフレットでグリンダ役にその名前が掲載されたときは小躍りするほど嬉しかったが、出す出すといって出さないのが劇団四季クオリティー。まだ安心はできない。しかしこの1月ほどのキャストの動きを見ていると、花代グリンダのフラグが立ちまくっているので、あるいは、という期待もあった。そしてとうとうそれが現実のものとなった。

ルックスは最強。沼尾みゆきもかわいいんだが、正直に言うと初めて沼尾グリンダを見たとき、あーちょっと似合ってねえなあ、と感じた(もちろん今はそんなことはない)。しかし、花代グリンダはあの敷居の高そうなブロンド巻き巻きヘアーのウィッグがバッチリ決まっているではないか。

いきなり高音をのばさなくてはならないソロもそつなくクリア。そりゃ本職のオペラ歌手である沼尾みゆきに比べたら数歩譲るかもしれないし、頑張って声を出してる感があることも否めない。しかしそれは沼尾や苫田亜沙子を見ているからそう思うのであって、この役にとっては全く申し分がない。

そして、その表情には憂いがある。このオープニングは、ラストシーンからつながっている。ラストシーンでは、グリンダはエルファバへの強い思いから表情を曇らせるのだが、そうであればオープニングでも悲しい顔になっていなくてはおかしい。しかし、通常はこの時点では憂いを前面に出さない。ネタばれになってしまうからだろうか?だが花代グリンダはあえてそうしているのだ。他のグリンダとは少し違うな、と感じた。

もっとも、この作品は演じる人によって印象がだいぶ異なる、解釈の余地の大きい作品だ。違う感じがするのは当然といえば当然である。問題は、どう違うか、だ。

全体の印象としては、沼尾みゆきのおバカさがかわいいグリンダとも、苫田亜沙子のイケイケで計算高い感じのするちょい悪グリンダとも違う。なんというか、自然体なのだ。

エルファバに当てつけて言う「悪目立ちじゃない?」「グリーンピースが煮えくり返ってるわ」も、思いついたことをそのまま口にしちゃいました、ってな感じで、悪意があまり感じられない。グリーンピース発言の後など、そのセリフがクラスメートに大ウケしたことに、やや当惑気味になっていた。さらに、ディラモンド先生の「静粛に!」という言葉を受けて、周りに「ほら、静かになさいよ」と注意する仕草まで見せる。これは驚き。苫田グリンダが、周りと一緒になってエルファバをからかうのと正反対である。そしてその流れで、ディラモンド先生に「昔話はもうたくさん!」と抗議する場面も、他の役者だとグリンダがわがままを言っているように見えるが、花代グリンダは「クラスの代表として私が言います!」みたいな優等生キャラになっていた。

花代版グリンダは、そのピュアさが強く感じ取れる。これはグリンダファンで花代ファンの俺が言うことだから、あまり信憑性はないだろうが。

そしてピュアであると同時に、いや、ピュアだからこそなのかもしれないが、とっても乗せられやすい。その場の空気とか、他人の言葉とか、あるいは自分の感情に、すぐにノリノリになってしまう。

フィエロに一目ぼれしてからダンスホールのシーンあたりまで、ずっと出しまくりの好き好きビームは尋常なレベルじゃない。だから、ボックの注意をネッサローズに向けさせたのも、エルファバにクラッシックすぎる帽子をプレゼントするのも、計算や意地悪というより、フィエロに舞い上がっちゃってたもんでつい変なテンションでやっちまいました、という印象だ。

では、なぜオズの居城で、エルファバの「一緒に来て!」という言葉には乗せられなかったのか。これは、その直前にオズの巧みな言葉で十分に乗せられてしまっていたからだろう。

そうして、他人の言葉や自分の感情に左右されて生きてきたグリンダが、物語の最後にやっと自分の意思で行動し、新しい道を歩き始める。「ウィキッド」の物語は、そういうグリンダの成長譚という一面があることを、花代グリンダは再認識させてくれた。まあ、それもエルファバに乗せられているのだと考えることもできるあたりが、価値観の混乱を意図的に引き起こす「ウィキッド」らしい点でもある。

ピュアでお調子者、といえば、そう、この花代グリンダのキャラクターは「夢から醒めた夢」のピコを彷彿とさせる。ちょっと暴言気味かもしれないが、自分はそんな印象を持った。

それにしても、この数年で、木村花代は飛躍的に女優としてのレベルをアップさせたと思う。多くの役、特にオペラ座の怪人のクリスティーヌと、クレイジー・フォー・ユーのポリーを演じたことが大きかったのではないか。それをこのグリンダ役を見ているとひしひしと感じる。高音が実にきれいにのびているのを聴くと、やはりクリスティーヌ役はこのグリンダへの布石だったと思わずにはいられない。そして、花代グリンダは歴代グリンダの中で、もっとも笑いの取れるグリンダである。ああこれはポリーだな、という笑いの間の取りかたが何箇所かで見え隠れした。

グリンダ最大の見せ場である「Popular」では、その両方が堪能できる。美しい声で歌いながら、どっかんどっかん笑いを取りまくる。そうそう、これだよ俺が求めていたのは。四季のウィキッドが開幕して以来、どうしてもこの曲だけは満足しきれていなかった。Popularに関する限り、客観的に見ても花代グリンダがトップだと思う。

ファンとしては、次々衣装を変えてくれるグリンダ役は実にうれしい。制服姿も似合ってるし、ピンクのドレスも黄色の洋服も胸元ちょっとセクシーめなので、いやらしくにやけてしまうのは内緒だ。また、二幕のエルフィーとのタイマン勝負では、チャームポイントでもあるふくれっ面が拝めるぞ!

そしてアンコールでは満面の笑顔。クリスティーヌはキャラ的に、異国の丘では作品的に、ここまでの笑顔は出せないからね。あの炸裂する笑顔は、まさに「1億のスマイル」というにふさわしい。いや、これは時節柄不適当な表現でした。ダメ。ゼッタイ。

とにかく、木村花代ファンは言うまでもなく観るべき。グリンダファンも当然だ。そして俺のように花組でグリンダ信奉者という人は、女房子供を質に入れても、女房子供がいない場合には、いや、そういや俺もいないんだが、そこはモノの例えっつうか。とにかく、グレートなキャスティングだ。

東京公演にどれだけ出るか分からないが、大阪公演では相当な出演が期待できそうだ。今から大阪に行くのが楽しみになってきたぜ!

グリンダ 木村花代
エルファバ 江畑晶慧
ネッサローズ 山本貴永
マダム・モリブル 八重沢真美
フィエロ 北澤裕輔
ボック 伊藤綾祐
ディラモンド教授 前田貞一郎
オズの魔法使い 栗原英雄
男性アンサンブル 清川 晶、町田兼一、齊藤 翔、
松尾 篤、田井 啓、奈良坂潤紀、
賀山祐介、清原卓海、三宅克典
女性アンサンブル 服部ゆう、長島 祥、あべゆき、
孫田智恵、小野さや香、小澤真琴、
花田菜美子、荒木 舞、羽田三美

ウィキッドのホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/index.html

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2009年8月 2日 (日)

四季「エルコスの祈り」全国公演(小美玉市)

エルコス 五所真理子
ストーン博士 岡崎克哉
ジョン 鎌滝健太
ダニエラ 菅本烈子
パルタ 丹下博喜
ダーリー 川口雄二
理事長 高林幸兵
セールスマン 神保幸由

「エルコスの祈り」全国公演を、茨城県は小美玉市で鑑賞。自分は千葉県柏市に住んでいるが、もともとは水戸の育ちであり、現在も本家は水戸の少し南、鉾田市にある。小美玉市はその鉾田市の隣りにあるので、本家に顔を出しがてら足を向けたのだ。

会場の小美玉市四季文化館「みの~れ」は、名前に四季が入っているからでもないだろうが、四季のファミリーミュージカル全国公演では高確率でスケジュールに組み入れられる。主催事業に熱心なホールなので、誘致に積極的なのだろう。

豊かな緑に包まれたなかなか魅力的なホールは、内装も木材を中心にした瀟洒なものだ。キャパシティは500ほどで、ほどよく段差がついていてとても舞台がとても見やすい。演劇にはぴったりの会場である。

さて、「エルコス」は1998年の全国公演以来である。当時はまだタイトルが「エルリック・コスモスの239時間」だった。そして97年入団の木村花代がいきなり主役に抜擢された公演であり、同時に始めて自分が彼女を見た公演である。

ファミリーミュージカルだが、四季のファミリーミュージカルは佳作が多い。そして子供向けということもあって、楽曲の覚えやすいメロディーが強く印象に残る。エルコスの主題歌ともいえる「語りかけよう」は、「魔法をすてたマジョリン」の「心から心へ」、「人間になりたがった猫」の「すてきな友達」と並ぶ名曲だ。この3作品でCDとか出してくれないかなあ。

50年後の未来。落ちこぼれと判断された子供たちを徹底した管理教育によって矯正させようとする「ユートピア学園」に、一台のロボットが送り込まれる。「CPΣ・081-1型ESPアンドロイド・エスパー エルリック・コスモス」略称エルコスと名づけられたこの女性型ヒューマノイドは、あらゆる業務に対応できるだけでなく、超能力まで使いこなす。そしてその開発者、ストーン博士はエルコスに、子供たちの夢や希望を取り戻させようとする。エルコスは子供たちと一緒に生活をしながら、それぞれの長所や個性を見出し、着々と博士の思いを実現していく。しかし、それを快く思わない教師たちの反感を買い、エルコスの追放を画策しはじめて・・・という、ちょっと古めかしいSF的世界観でストーリーが進行していく。

この作品は、「マジョリン」や「人間になりたがった猫」と比べると、ラストがちょっぴり悲しい終わり方である。そのため、四季の公式携帯サイトでダウンロードできる「語りかけよう」の着メロを聴くだけで、うっすら涙が出てきそうになる。年のせいではない、断じて。小林よしのりの言葉を借りて言えば「涙管が塞がっている」のだ。

とはいえ、俺も四季の舞台をさんざん観てきた。だから今回は大丈夫だろう、と思っていたが――ダメだった。あのラストシーンは反則だと思う。

そして、その感動はエルコス役への思い入れが強いほど、大きなものとなる構造になっている。前回は木村花代にすっかり参っていたのでそれはもう強烈だったのだ。

今回、エルコスを演じたのは五所真理子。たぶん初見。五所エルコスが舞台に登場したときの感想は「かっ、可愛い…」。正直、メイクが濃すぎて顔はよくわからなかったが、小っちゃくて元気いっぱい、そこにあの真っ白なエルコスのコス、略してエルコスだから、これまた反則というものだ。そして、実はエルコスは学校の先生なので、どちらかというと歌のおねいさんなキャラ設定である。見た目・雰囲気と正反対なキャラに萌えまくりだ。「夢から醒めた夢」で娘役不在を嘆いたばかりだが、こんな隠し玉(別に隠しちゃいないが)がいたなんて!この五所エルコスにすっかり魂抜き取られ、まんまとラストシーンでまたもや必至に涙をこらえるはめになってしまった。

脇を固める中には、マジョリンのダビット役や、「マンマ・ミーア!」ペッパー役の鎌滝健太、そしてマンマのエディといったらこの人、の川口雄二など、おなじみの役者の顔も見え、実に楽しい舞台だった。

そして終演後には「ユタと不思議な仲間たち」で大人気の「お見送り」。ロビーで俳優たちと握手ができるという、AKB商法まがいのナイスなイベントだ。

迷わずエルコスのところに行こうと思ったが、人がいっぱいでなかなか近づけない。ふと横に、マジョリンのオカシラス様のイメージがいまだに強い実力派、この日セールスマンを演じた神保幸由がいるのに気づいた。ここでアイドルファンの自分と、四季ファンの自分との間で葛藤が生じる。「まずベテランの熱演に賛辞を述べるべきではないか?」四季ファンの自分が暴走するアイドルファンの自分をなだめる。そうだ、その通りだ。

俺「神保さん、応援してます!」神保「どうも、ありがとうございます。」うーむ、渋い。

さあ、エルコスのところに行こう。しかし、川口雄二が俺の前にたちはだかり、役の延長でおどけながら握手を求めてくる。川口雄二はいい意味で四季の雰囲気を変えるパワーを持った役者だ。彼も応援せねば。

俺「最高っス!」川口「ありがと~う(役の口調で)」さすがエンターテイナーだ。

いよいよエルコスだ!と思ったら、今度は鎌滝健太がいる。彼のペッパーは本当にハナについた。前途有望な、いい役者だと思う。

俺「がんばってください!」鎌滝「はい、がんばります」ナイスガイだ。

よし、心おきなくエルコスと握手だ!と思った瞬間、係りの人が「すいません、お時間ですので…」とロビーから俳優たちを引っ込めようとしている。ああ無情。アイドルファンの自分が急速に気化していく。

しかし去っていく五所ちゃんに(もうちゃん付け)、果敢に握手を求める人がいた。俺にあの積極性はないなあ。あったらもうちっとましな人生送ってるよ、と思いつつその様子を眺めていた。しかし転んでもタダで起きてはいかん、とその様子を撮ったのがこれ。

見よ、この腰の低さを。アイドルファンは実はこういう場面にものすごく弱いのである。先日も、東京ビッグサイトのAKB48大握手回で、休憩時間に控え室に入ろうとする高橋みなみと渡辺麻友を見かけたのだが、高橋みなみの方が人生でもAKBでも事務所でも先輩であるにもかかわらず、渡辺麻友に道を譲ろうとしていたのを見て、一生たかみなについて行こうと思ったぐらいだ。

そんなこんなで、たぶんこの全国公演、リピートしてしまいそうな気がしてきた。四季とAKB商法の強力タッグの前では、もはやなすすべもない。

「エルコスの祈り」ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/elcos/index.html

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2009年7月25日 (土)

四季「ウィキッド」濱田・沼尾のコンビ芸

グリンダ 沼尾みゆき
エルファバ 濱田めぐみ
ネッサローズ 山本貴永
マダム・モリブル 八重沢真美
フィエロ 北澤裕輔
ボック 伊藤綾祐
ディラモンド教授 前田貞一郎
オズの魔法使い 飯野おさみ
男性アンサンブル 清川 晶、町田兼一、齊藤 翔、
斎藤准一郎、田井 啓、奈良坂潤紀、
賀山祐介、清原卓海、三宅克典
女性アンサンブル 服部ゆう、長島 祥、真家瑠美子、
宇垣あかね、光川 愛、小澤真琴、
荒木美保、伊藤典子、羽田三美

ついこの前に濱田・沼尾コンビを観たように思ったが、調べたらもう半年も前の話だった。それならばまた観たくなってもいたしかたないというものではないか。大手を振って四季劇場「海」へ。

沼尾グリンダ様はかなりの連投が続いているが、疲れを感じさせない好調ぶりだ。この人の喉の強さは底なしだ。さすがオペラ歌手、といいたいところだが、それが自身の努力によるものであることはファンならみんな知っている。

そして濱田エルフィーも絶好調だ。安定感と存在感はもちろんだが、彼女がすばらしいのは、その演技、自分なりのエルファバ像をどんどん変化させている点だ。

特に、新しいエルファバ役が出てくると、大きく変化するように思える。樋口麻美のエルファバが出てきた後は、樋口エルフィーの持ち味である威勢の良さが演技のどこかに入るようになった。そして今回は、江畑晶慧のエルファバから強く感じるフレッシュさを取り込んでいた。一幕のシズ大学のシーンでは、女子大生というより、女子高生のような可愛らしさが炸裂していた。JKめぐ――こ、これは萌える……。

濱田めぐみは、まるで戦った相手の技を自分のものとする北斗神拳の伝承者のようだ。別にパクっているわけではなく、自分の演技を変えることを恐れない覚悟を持っているのだろう。実に頭の下がる思いである。

そんなわけで、グリンダ様の忠実なるしもべである自分も、今回はめぐみ様にすっかり傾倒していた。ま、よくあることですよ。

江畑の急成長ぶりは目を見張るものがあるが、やはり濱田・樋口のエルファバにはまだまだ及ばない。そして、濱田・樋口の実力差はほとんどなく、あとは趣味の問題という気がする。しかし、グリンダとの相性、という点で見れば、やはり濱田・沼尾のコンビに勝るものはない。意外にこの作品ではちょこちょこ許されるアドリブ(とはいかないまでも、ちょっとしたアレンジ)も、息がぴったりで見ていて楽しい。この作品では、2人の仲の良さが印象深いほどラストの感動も強くなる。この日の「For Good」は、格別の味わいだった。

いよいよ千秋楽も近づいてきた。このままオリジナルコンビで突っ走るのか?それとも新キャストが登場するのか?大阪公演も発売になり、大詰めを迎えたウィキッド東京公演。最後まで目が離せない。

「ウィキッド」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/index.html

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