劇団四季「アラジン」開幕 結構いけるぞ
ジーニー | 瀧山久志 |
アラジン | 島村幸大 |
ジャスミン | 岡本瑞恵 |
ジャファー | 牧野公昭 |
イアーゴ | 酒井良太 |
カシーム | 西尾健治 |
オマール | 斎藤洋一郎 |
バブカック | 白瀬英典 |
サルタン | 石波義人 |
アラジン東京公演開幕。
四季が超大作ミュージカルを新たに投入するのは「ウィキッド」以来、実に8年ぶりだ。「リトルマーメイド」はちょっと小ぶりだから。しかし、もうあれから8年も経つなんて信じられないなあ。
チケット料金値下げ以来、資金力も低下していたのだろうと思うが、やはり8年も大きな話題がないと四季の会会員の忠誠度も下がってくる。
昨年、事実上の分裂騒動もあったわけだが、とりあえず経営体制も変わり、吉田新社長のもと新たなチャレンジもしよう、ということなのだろう。その意気やよしである。
だが「アラジン」の上演が発表になったとき、実は不安もよぎった。
そのころ、日本に伝わってきた「アラジン」の噂は「まずまず」と「イマイチ」が半々だった。いずれにしても「ライオンキング」や「美女と野獣」のような、衝撃的なものではないようだ。
となると、吉田新社長が功をあせって、評判が固まらないうちに売り抜けようとしているディズニーの口車に乗っちゃったんじゃないか。そんな不安が自分の中で渦巻いたのである。
しかし噂はあくまで噂。この目で観なきゃあな、と昨年末にニューヨークへ。そのときの感想は以下の通り。
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2014/12/aladdin-3a89.html
この時はあまり書かなかったけど、正直、作品全体の印象としてはイマイチかなあ、と感じていた。ジーニーはすごいけど、それ以外はどうもとっちらかった感じて好感を持てなかった。ジーニーというキャラクターも、果たして日本で受けるかどうか。それ以前に四季の水と合うかどうか。不安は全く払拭されなかったどころか、より濃くなってしまった。
そんな不安を抱えて電通四季劇場[海]へ。
キャストボードを見ると、瀧山久志がジーニー役という。あれってっきり道口瑞之だと思ってたのになあ。分からないものだ。
まだ未見の人も多いと思うので、微妙にネタばれする前に結論を先に言う。
感想を一言でいえば「結構イケる」だ。チケットを持っている人は期待していいし、まだの人は前日予約でトライして一度は観てみることをお勧めしたい。
で、どんなだったかというと。
幕が上がり、さっそくジーニー登場。ほほう、こんな感じか。瀧山久志という役者、いい存在感である。何と言うのだろう、出てくるだけでどこかちょっと面白い。それは吉原光夫にも通じるものがある。(吉原ジーニーちょっと見たいぞ!)そのあたりはこの役にぴったりといえそうだ。
歌はもともとオペラ歌手だからさすがだけど、ちょっと声が本調子じゃないような気がした。オペラ歌手の喉すら消耗させるほどの苛烈なレッスンをこなしたのだろうか。
そしてその語り口は、ブロードウェイのジーニーに比べややマイルドというか、ソフトでゆっくりしている。マシンガントークで客を圧倒させるのではなく、客の反応を見ながら一緒に盛り上げていこうとする。ジーニーはもともとキャブ・キャロウェイがイメージとしてあったらしいが、日本のジーニーはキャブ・キャロウェイというよりトニー谷だ。あっちで見たとき、こういうボードビリアンは日本にいないよなーと思ったけど、そうかトニー谷という手があったか!
もちろん往年のエンターテイナーだけでなく、最近のお笑い芸人のスタイルなど、さまざまな要素を貪欲に取り込んで、日本人の口にあうものになっている。これは役者だけでなく、四季のスタッフが相当に「日本人に受けるジーニー」を研究した成果ではないか。ふーむ、これはなかなかいいぞ!
そしてジーニーだけでなく、作品全体もとてもまとまりのあるものに感じられた。そこはやはり劇団の強みだろうか。演出もだいぶアレンジを加えているらしいが、正直向こうで1回観ただけだから、違いを具体的に指摘することはできないが、ジーニー同様、こちらも日本人のメンタリティーに合うように、細かく検証したのだと思う。
しかし、ディズニー相手にそこまでのアレンジを認めさせたというのは、四季もなかなかやるじゃないか。
もっとも、それはあくまで小幅修正なので、大きく演出が変わったりはしない。2幕はだいぶ退屈なシーンもあるし、「プリンス・アリー」は映画で大好きだったシーンだったので、もっと派手に演出してくれても、と思ったが、そのあたりはそのままだ。しかし、今回は小幅修正を認めさせただけでも大いに評価したい。
個人的には、女性陣の衣装が露出度高めなのが大いに気に入った。それにほら、岡本瑞恵が美人さんだし。ヘソ出し衣装、というだけでニヤニヤ笑いたくなる(←久しぶりに正常ではない観劇姿勢)。
そうそう、アラジンの友達役で白瀬英典が登場。「春のめざめ」以来、注目してきたというかつい目が行ってしまうユニークなキャラクターの役者だが、今回も相変わらずイイ声を響かせていた。白瀬のジーニー、見たいものだ。きっとアンダーで練習には入っているような気がする。
全体として、せっかくの「NEW MUSICAL COMEDY」なのに四季の悪いところが出て、カクカクした無粋なものになったらいやだなあ、と思っていたが、全くそんなことはなかった。むしろ、四季の良さでもともとの作品のアラを埋めている感じだ。観終わって、すぐにまた観たいと思ったのは久しぶりのことである。
ジーニーありきの舞台であることは間違いないので、今後も新たなジーニーが出てくるたびに劇場に足を運ぶことになるだろう。そうしないと、リピーターの動員も難しいはずだ。外部からの積極的な登用にも期待したい。もちろんOBもな!
「アラジン」のウェブサイト
https://www.shiki.jp/applause/aladdin/
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