四季「リトルマーメイド」開幕 アリエルが可愛い
アリエル | 谷原志音 |
エリック | 上川一哉 |
アースラ | 青山弥生 |
トリトン | 芝 清道 |
セバスチャン | 飯野おさみ |
スカットル | 丹下博喜 |
グリムスビー | 星野元信 |
フランダー | 松下武史 |
フロットサム | 一和洋輔 |
ジェットサム | 中橋耕平 |
シェフ・ルイ/リーワード | 岩城雄太 |
ついに開幕した「リトルマーメイド」。ブロードウェーでの公演は何とも残念な出来であり、何でまた四季は買ったんだろう、と思っていたら、まったく異なる欧州ツアー版を持ってくるという。でもツアー版だから、セットはシンプルになるはず。フライングがすごいという触れ込みだが、それマーメイドラグーンシアターで見てるしなあ。
などと、あまりワクワクせずに迎えた初日ではあったが、やはり日本で新しい演目が始まるのは嬉しいものだ。
で、その出来はどうたったのか。
これは非常に判断の難しい作品だ。
いや、悪くはない。むしろいい。いいのだけれど、自分の中で、何が良くてそういう印象になっているのかよく分からないのだ。
なぜそんなことになったのかというと。
はっきり言おう。アリエルが可愛いのだ。
谷原志音はたぶん初見だけど、なんというか、正統派のアイドル顔だ。一幕の演技は、アニメ版のアリエルがそのまま飛び出てきたような天真爛漫さが炸裂していたブロードウェイのシエラ・ボーゲスに比べると、ちょっと落ち着いた感じに見えた。でも、露出度の多い衣装からのぞくナイスバディーがまぶしくて演技がよく見えないー。
二幕で地上に上がってからは、せつない展開に反比例して明るくはじけた演技になる。舞台版で追加された曲のひとつ「Beyond My Wildest Dreams(どんな夢よりも)」でのはしゃぎっぷりには萌え死にそうになるが、実はこれはシエラ・ボーゲスの演技にかなり近い。ブロードウェイ版のCDを聞くとそれがよく分かる。
可愛いだけでなく、歌がいい。よく伸びるキレイな声は聴いていて心地いい。「パート・オブ・ユア・ワールド」のシーンは聴きほれる。「ソング&ダンス」福岡公演で木村花代が歌ったこのナンバーも良かったが、それに匹敵する魅力だ。
ボディーに目がくらんでよく見えなかったけど、演技はまだ粗削りだったように思う。だがそれがいい。
てなわけで、観終わったときの心象はすこぶるいいのだが、単にアリエル萌えなだけじゃないのかという懸念があるのだ。もしアリエルが別の女優さんだったら、同じような感想を持てるかどうか分からない。だから、作品として判断がつきにくい。
アリエルだけではない。御年66歳の飯野おさみによる跳んだりはねたりの大熱演はさすがだし、ちっちゃい青山弥生が演じる巨大なアースラはどこかユーモアを漂わせ、見ていて飽きない。芝清道は――芝清道だった。こうしたベテランの演技がなかったらこの作品の印象はどう変わるだろう?
うーん、分からない。
ちょっと目先を変えて、ブロードウェイ版と比較してみよう。
全体的には、断然こちらがいい。何というか、カルロッタのセリフではないが、こちらのほうが演劇らしく見える。ブロードウェイ版は、セットこそ豪華だったが、ローラーシューズの人魚姫は全く浮遊感がなく、興ざめだった。全体的にまとまりがなく、音楽の良さを生かし切れていなかった。期待が大きかっただけに、悪いところを挙げたらキリがないほど。シエラ・ボーゲスは素敵だったが、もう一人のキャストの目玉であるノーム・ルイスは自分が観たときは休演で見られなかったのは残念。
セットは、今回の上演はかなりショボい。でも、そもそも演劇のセットなんてショボくて当たり前の世界だ。海中シーンは照明などで美しい空間を形作っているし、地上ではわざと平面的に描いた書き割りや、絵本をモチーフにした場面転換など、楽しい工夫もある。
ただ、やはり「アンダー・ザ・シー」や「キス・ザ・ガール」は、もっと観客を圧倒するようなパワーが欲しい。豪華なセットに頼らなくても、見せ方次第でやりようがあるのでは、というのは素人考えだろうが、やはりそういうワープ感を期待して来る観客も多いだろう。ましてディズニーミュージカルだ。「意外と地味だったね」なんて感想が聞こえてきそうな気もする。
とにもかくにも、始まってしまったリトルマーメイド。チケットの売れ行きも好調のようだ。日本では家族で見られる作品が圧倒的に強いので、しばらくはロングランが続くだろう。他の地域も待っているだろうし。
それにしても、なんで四季はリトルマーメイドに手を出したのか。
確かにファミリー層に売れるから、興業的な魅力はあるだろう。製作費も美女と野獣やウィキッドなどに比べればぐっと安いだろうし、銭ゲバのディズニーといえどブロードウェイでコケているだけに、ロイヤリティー面で強気には出られなかったのかもしれない。
しかし今なお期待したいのは、このリトルマーメイド上演が、他のディズニー作品の上演につながる布石であるという妄想だ。メリー・ポピンズの上演を心の底からお願いしたいが、マッキントッシュ&ディズニーという、その名を聞くだけで金を取られそうな人たちが握っている作品だから、ちょっと難しいかもしれない。ではニュージーズならどうだ。あれはあまり金がかかってないから可能性はありそう。「ビリー・エリオット」同様、社会的なテーマを含んでいるので、四季が上演するにはぴったりの作品だと思うが。いっそ来年、ブロードウェイと同時開幕で「アラジン」ってのはどうだ。
とにかく、リトルマーメイドについてはアリエルが可愛い限り良い舞台だ。アリエルが可愛くなくなったら・・・まあ、それはそのとき考えよう、それがどう見えるかはまたその次に考えよう。
リトルマーメイドの公式サイト
http://www.shiki.jp/applause/littlemermaid/
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コメント
こんにちは、ヤボオさん!
リトルマーメイド見に行かれたんですね。
私の方は、キャストが発表されてからチケットを探したのですが空席がなく、6月か7月くらいまで待たないといけなくなりました;;
飯野さんや芝さんを見たかったのですが……キャストの変更がしばらくないといいなあと思っています。
全体的にもいい公演だったようで、早めに見られなくて本当に残念です。
投稿: rion | 2013年4月21日 (日) 12時23分
rionさんこんにちは。
キャストが変わったら変わったで、面白いと思いますよ。ナイスなキャスティングを期待しております。
投稿: ヤボオ | 2013年4月21日 (日) 21時02分
こんにちは。
相変わらず素晴らしい表現力ですね。
私も13日に見ました。
四季の新作という大きな触れ込みの割に
ファミリーミュージカルのようなセットに
少々肩透かしを食らった思いでした。
谷原アリエルはとても良かったと思います。
でも、全体を通して一番強く感じたのが
「アリエルかわいい!」だったことで、
濱田アイーダがいない『アイーダ』と
同じ末路(?)をたどるのでは…という危惧も抱いてます。
『アイーダ』の時も思いましたが、
オリジナルキャストを見ておけてよかったです。
それって、作品主義を標榜する
四季の理念とは食い違う気もしますが。
投稿: とみたま | 2013年4月23日 (火) 17時25分
とみたまさんこんにちは。
オリジナルキャストが常に最高とは限らないので、今後も魅力的なアリエルの登場を期待したいと思います。
投稿: ヤボオ | 2013年4月24日 (水) 01時17分
師匠おつかれでやんす。
相変わらずのご慧眼、いつもながら頭が下がります。
私は既に2回行ってみました。
大井町が競馬以外でこれほど盛り上がるのをはじめて見ました。
セットのショボさは大いに不安ですね。そこを3大巨頭である芝・青山・飯野が補うというか・・・。
いい舞台なので、できればセットを豪華にするなどの手直しがほしいです。
それも、版権の問題で難しいのでしょうが・・・・。
投稿: らいおんきんぐ | 2013年4月28日 (日) 11時09分
らいおんきんぐさんこんにちは。
セットは変えられないでしょうね。もともとツアー用に作られたものですし、ロイヤリティーもさほど高くないのでしょうから、セットがしょぼいのは仕方ないのかもしれません。
投稿: ヤボオ | 2013年4月29日 (月) 01時15分
ヤオボさん、今晩は。「レミゼ」の欄にも書かせて頂きましたが、お久しぶりです。「リトルマーメイド」観てきました。確かに、セットなどは「美女と野獣」等に比べると、地味でしたね。もう少し派手さがあれば「アンダー・ザ・シー」など、もう少し盛り上がるかなとは思いましたが、仰る通りツアー版ですし、フライング関係で難しいのでしょうか。でも、個人的には、お気に入りのナンバーがいくつかありましたし、フライングは、素晴らしかったので、リピートするだろうなと思います。ベテランキャストも流石でした。谷原アリエルは可愛いし、声は綺麗だし。個人的には、スカットルがお気に入りです。荒川さんのファンなので、荒川スカットルが観てみたいです。丹下さんも良かったですけどね。
長文、失礼しました。
投稿: ろん | 2013年5月 2日 (木) 22時54分
ろんさんこんにちは。
セットがしょぼいのは、製作費もロイヤリティーも安いのでしょうから仕方ないのでしょう。チケット値下げして以降、高い買い物はできなくなっているのかもしれません。
荒川スカットルは確かに見たいかもです。
投稿: ヤボオ | 2013年5月 3日 (金) 03時10分
お久しぶりです。
谷原さんは製作発表からアリエルにピッタリと思っていました。
ヤボオさんの感想を読んで安心しましたが、私が遠征するのは9月とまだまだ先になるので、キャスト変更が怖いです。
もうひとりのアリエルは私的には・・・・・違うと思うので。
投稿: パチュリ | 2013年5月 5日 (日) 23時18分
パチュリさんこんにちは。
しばらく志音アリエルで行くんじゃないでしょうか?夢子も好きですけど、確かにアリエルは自分の中では違うかなーと思っています。というか、もはや自分の中では志音一択。もちろん、夢子アリエルも見たら感想変わるでしょうが。
投稿: ヤボオ | 2013年5月 6日 (月) 00時53分
こんばんは。
僕もリトルマーメイドにちょっと戸惑っています。
セットがしょぼい
アンダー・ザ・シーが迫力ない
鳥が蟹が、き、着ぐるみ(驚!!)
でも、ツアー版と言われて腑に落ちました。
それより何より「アラジン」がミュージカルぅ???
絶対観たい!お金を貯めなきゃ
2年後には大阪ですね
投稿: IHOHO | 2013年5月 9日 (木) 23時47分
IHOHOさんこんにちは。
アラジンは来るとしても4~5年先でしょうねえ。それよりも何とかメリーポピンズを!
投稿: ヤボオ | 2013年5月10日 (金) 22時04分
売り出し初日に買った12月14日公演を初観劇。ど真ん中で前に足を延ばせる通路のあるベストなポジションでした。幕間、一番前の席の女性が、結構な剣幕で、「上ばっかり見上げてこんな首の痛くなる席! 後ろの空いてる席に移動して!」とスタッフに怒っていました。確かに一番前はきつかったと思います。 さて、アリエルは開幕から時間もあり、声といい演技といい、”彼女がいるから面白い”でした。アリエルパパは、素晴らしい低音で深みのある父の愛を表現していました。金本&谷原というこの韓国人キャスト2人がいなかったら・・という感じでした。この作品はキャストで大きく面白さがかわる事でしょう。ごぼうのように細い体の魔女は完全にミスキャストでしたし、疲れ切って肩で息を吸う飯野さんは見たくなかったです。主役を食うような、役者冥利に尽きるセバスチャンをこなせる俳優がやっていたらこの作品自体変わると思います。前の席に何組か家族連れが来ていましたが、あきらかに寝ているお父さんが何組もいたのが笑えました。
投稿: マイク | 2013年12月15日 (日) 13時11分
マイクさんこんにちは。
志音ちゃん以外のキャストはどうも迷走してますねえ。層が固まらないまま終わってしまいそう。
投稿: ヤボオ | 2013年12月29日 (日) 22時33分