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2013年2月16日 (土)

宝塚雪組「ブラック・ジャック ~許されざる者への挽歌~」@シアター・ドラマシティ

大劇場を後にして、そのまま阪急電車で梅田駅へ。シアター・ドラマシティでまさかの宝塚はしご観劇。

「オーシャンズ11」も、宝塚を知らない人にとっては「そんなのもやるのか!」と驚くだろうが、こっちはもっとすごい。「ブラック・ジャック」である。

だいぶ前、まだ宝塚を観たことがなかったころ、舞台に詳しい人から「宝塚を観ない人は、何か特殊な集団で敷居が高いと思いがちだが、実はなんでもありのエンターテイメント集団。『ブラック・ジャック』までやりましたからね」と教えてもらった記憶がある。まあ、そこで引き合いに出すぐらいだから、宝塚の中でも特殊な作品ではあるのだろう。もっとも、すでに逆転裁判や銀河英雄伝説に挑み、この秋には「戦国BASARA」まで控えていることを考えると、もうブラック・ジャックぐらいでは驚かないかもしれないが。

というわけで、宝塚がブラック・ジャックに取り組むのは2回目。以前は94年に安寿ミラ主演で上演しており、これは映像で観た。今回は再演というわけではなく、まったく別のストーリー。どちらも原作にはない、オリジナルのストーリーだ。

原作にも、如月先生の話とか宝塚っぽいエピソードがあるけど、あえてオリジナルに挑んでいるのは何か事情があるのか、ないのか、そのへんはよくわからない。

前回の公演が1幕のみの短い話だったのに対し、今回は2幕を使った長編。なのでドラマチックな展開を予想していたのだが、まったく正反対の舞台になっていた。

ひとことでいえば「ブラック・ジャックの知られざる日常」を描いた舞台。

一応、軸となる事件はあるのだが、その展開よりも、ブラック・ジャックが毎日どんな生活をしているのか、どんな言葉を口にし、どんなことを考えているのか。それを淡々としたタッチでつづっていく。

だが、これが実にいい。基本的にポーカーフェイスのブラック・ジャックが、原作の中で時おり見せるふっとした表情や、口からこぼれる言葉。それをうまく再現している。作・演出の正塚晴彦は相当原作を読みこんでいるのだろう。しかし、原作のエピソードやセリフは使わず、ブラック・ジャックらしいセリフをオリジナルで作り出している。見事な職人芸だ。

ブラック・ジャックを演じた未涼亜希がまたいい。セリフの言い方もさることながら、何気ないしぐさや立ち居ふるまいが、シニカルな外面に秘めた人情味ある心根が感じられ、実にブラック・ジャックだった。

もうひとり、ピノコを演じた桃花ひなが素晴らしかった。あの難しい役を正面から描こうとするのが宝塚のすごいところだが、それを全身で受け止めて、ピノコになりきっていた。

ブラック・ジャックの日常を描くうえで、ピノコは欠かすことのできない存在だ。ピノコがいたからといって、ブラック・ジャックの孤独は癒されるものではないだろう。だがそれでも、毎日のようにとんでもない事件に巻き込まれているブラック・ジャックが、わずかに心を落ち着かせられる瞬間があるとすれば、やはりピノコと過ごす時間に違いない。あのドラマチックとはいえないラストシーンは、実に心に響いた。

漫画が原作でありながら、決して派手な作品ではなく、実に静かな、心に沁みる珠玉の一品だった。宝塚の「何でもあり」の姿勢は、何でも取り入れてしまうというインプットの部分だけではなく、さまざまな作品を生み出せる、アウトプットの部分にも言えるのだ、と知った。

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宝塚花組「オーシャンズ11」@宝塚大劇場 蘭寿とむのカリスマ性がヤバい

「逆転裁判」以来、すっかりファンになった蘭寿とむ。花組トップお披露目公演の「ファントム」を大劇場で観てからちょっとご無沙汰していたが、久しぶりにそのお姿を拝見した。

演目は「オーシャンズ11」。宝塚のオーシャンズ11なんて、それだけで十分面白そうだ。そこに蘭寿とむが出るのだから、これは観ない道理がない。

で、その蘭寿とむオーシャン。これがもう最高だった。

「ファントム」では、やや子供っぽいオペラ座の怪人を演じており、それはそれでなかなかキュンとする仕上がりだったのだが、今回は「一癖も二癖もある連中に囲まれて、どんな事件を巻き起こしてやろうかな」というルパン三世のオープニングナレーションが頭に浮かぶような、大胆不敵な盗賊団のリーダーだ。

映像も含めれば彼女の出演作はずいぶん観たが、その中でも一番の当たり役のように感じた。カッコよさは今さら言うまでもない。かつて『週刊AKB』でSKE48 チームKIIの秦佐和子が、蘭寿とむのどこが好きかと問われ「走るシーンの、ステレオタイプな走り方」といってポーズをまねていたが、そのとき指先までまっすぐ伸びていた。ここがポイントで、蘭寿とむは指先までカッコよさが行きわたっているのだ。

そして今回は何といっても、蘭寿とむ一流の、トップにふさわしいカリスマ性が生きている。この人についていこう、この人を支えていこうという気持にさせるリーダーの資質がまぶしいほどに発揮され、魅力が数倍にアップしている。

その輝きが仲間たちを演じる花組のメンバーに反射し、舞台上にいる者すべてがぐっと引きたつ。舞台上のみならず、観客席も含めた劇場全体の空気が華やいだものになっていく。これぞスター。これぞタカラヅカだ。

宝塚版「オーシャンズ11」は2011年に星組が上演して以来の再演だそうだが、まるで蘭寿とむのために作られたかのように錯覚するほどのはまり具合である。

映画「オーシャンズ11」はシナトラ版もジョージ・クルーニー版もエンターテインメント性の極めて高く、観終わったあとに余計なものを残さないスカッとした後味が売りだが、この舞台もまさにその方向性を踏襲。幕が下りたあとは「あー面白かった!」という感想しか出てこない。

これはいいものを観た。東京公演にも足を運びたくなってきたぜ!

Ocean

「オーシャンズ11」公式ページ
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/316/index.shtml

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