« Tabata Noodle(たばたラーメン) | トップページ | Wicked behind the emerald curtain(ウィキッド バックステージツアー) »

2012年12月28日 (金)

Spider-Man Turn Off the Dark(スパイダーマン)

28日 20時
Foxwoods Theatre

2年前、貴重なプレビューを目にすることができた「Spider-Man Turn Off the Dark」。その後、不評を受けて演出のジュリー・テイモアが事実上の解雇。大幅な手直しをしてグランドオープンとなったわけだが、その正式公開版をやっと観ることができた。

まず、前回のエントリーはこちら。その続きとして書きます。
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2010/12/spider-man-turn.html

ここからネタバレになるので、予備知識なしで観たい人はブラウザーを閉じてください。

前回のエントリーを大雑把にまとめると、

・1幕は娯楽性重視で、空中戦がスゴい
・2幕は脚本重視で、ジュリー・テイモア節が炸裂
・ジュリー・テイモアがやりたかったことに、予算その他が追いつかなかった(推測)ために、2幕が中途半端なものになっていた

ということで、今後の希望としては

・ぜひ正式公開前に手直ししてほしい
・できれば、ジュリー・テイモアにもっと好きなようにやらせてみてほしい。それが無理なら、1幕のテイストを全編に広げて盛り上げてほしい

とえらそうに書いていた。

きょう観て、自分の希望はほとんどそのままかなえられていたことが分かった。演出は大幅手直し、そしてジュリー・テイモアが事実上解雇されたため、その手直しの方向性は後者、つまり全体が娯楽性重視となっていた。

プレビュー版では「真の敵」はグリーン・ゴブリンではなくアラクネだったわけだが、公開版ではアラクネはよく分からないチョイ役に甘んじ、悪役はあくまでグリーン・ゴブリンだ。プレビュー版で、装置トラブルで宙ぶらりんになったまま、客席に愛想を振りまいていたお茶目な悪役だが、その雰囲気を舞台上にも取り入れ、客をいじったり、くだらないギャグを言ったり(英語がよくわからなかったけど、みんな笑っていたからそうなんだろう)、と、なんだか遊園地のヒーローショーに出てくる怪人のようである。

そして、アラクネが出番を減らしたように、「分かりにくい」と不評だった部分はごっそり切り取られた。オタク青年が読んでいるコミックの物語を上演する、といういわば劇中劇という構造はきれいさっぱりなくなった。ここは、ちょっと残念である。後半、コミックを読んでいた青年たちが急襲されるシーンには驚きと感動があった。

でもそのシークエンスが消えると、全編にちりばめられた「超える」という演出上のキーワードがぼやけてしまう。二次元的な絵を立体化させて舞台装置にしたり、バンドのギタリストだけは舞台上にいて演奏をしていたり、ということだ。それによって、何かを隔てる壁を突き破ろうとしている、というメッセージを観客に届ける。それが上述の「劇中劇」という言葉の前の「劇」と後の「劇」が融合してしまう、という場面につながっているのだ。しかし新演出版では目指すべきゴールが見当たらず、ただの「ヘンな演出」に終わってしまっているのは何とも残念だ。

もちろん、この手直しは正しいものだ。ジュリー・テイモアに好きなだけやらせる、というのはビジネス上不可能だったのだろうし、終演後の満足そうな観客の表情を見たら、こうして正解だったことは手に取るように分かる。

だが、それにもかかわらず、釈然としないものは残る。自分の希望がかなっているのに、不満など感じてどうする、とは思う。だが、考えてみてほしい。こういう路線で行くなら、最初からジュリー・テイモアは要らなかったのだ。中途半端にテイモア節が残っているので、それが新演出になじまず浮いてしまっており、それらが目的を失って作品に巣くっている。これはもはやノイズでしかないのだ。

もちろん、プロデューサーとしては一から作り直すことも考えたろう。しかし、日程も予算もそれを許さなかったのは推して知るべしだ。結果的に、誰にとっても満足のいく形にならなかったのは、コスト高騰で新作が作りにくくなっている昨今、実にもったいない話ではある。

もちろん、新版になってよかった点も数多い。なので、これから観る人は先入観を持たず、思う存分楽しんでほしい。少なくとも話のタネにはなるので、一度は観てもいいのではないかと思う。

良かったのは、スパイダーマンもグリーン・ゴブリンに負けずお茶目なキャラクターに変わった。ちゃんと軽口を言いながら戦うあたりがいい。プレビューではあくまで「スパイダーマン」
だったのが、この正式公開版は「スパイディ」と呼びたくなる。そんな感じだ。

そうそう、この作品を観るのに一番適した席は、2階席の最前列である。前回観たときは上手側がいいと感じたが、新しい演出では下手側がやや有利かも、とも思った。もっともその席はほとんど「プレミアムシート」され、高くつくのだけれど。

Unset

一瞬、目の前にスパイディが現れて糸を放って去っていった。糸を拾ってみた

|

« Tabata Noodle(たばたラーメン) | トップページ | Wicked behind the emerald curtain(ウィキッド バックステージツアー) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/98342/56417497

この記事へのトラックバック一覧です: Spider-Man Turn Off the Dark(スパイダーマン):

« Tabata Noodle(たばたラーメン) | トップページ | Wicked behind the emerald curtain(ウィキッド バックステージツアー) »