銀河英雄伝説@TAKARAZUKA
ついに登場、宝塚版銀河英雄伝説。以前東京で上演された舞台版(銀河帝国編・松坂桃李主演)もなかなかの出来だったし、その後制作された舞台版(自由惑星同盟・河村隆一主演)は未見だが河村隆一の演技が富山敬演じるヤン・ウェンリーそっくりで話題になった。
さて、宝塚版はどうか。東京公演が待ちきれなくて、大劇場まで足を運んだ。
田中芳樹によればだいぶ前に宝塚での舞台化企画はあったというが、恋愛要素がない、という理由でオクラ入りになったという。
今回の舞台化は、アニメ版第1期と同じ、リップシュタット戦役の終了までを描いている。もちろんその全てではないが、銀河帝国を中心にしつつも救国軍事会議クーデターなど自由惑星同盟のエピソードもかなり取り入れ、アンネローゼ暗殺未遂事件やジェシカの戦いといった話までフォローするアグレッシブさだ。
このため、当然舞台の展開はのっけからフルスロットル。そこでスクリーンへの投影などを使って歴史的背景を解説しながらの進行である。狂言回し役はフェザーンのルビンスキー。黒狐も形無しである。
話を追うのに精いっぱいで、人物の掘り下げが不十分、という声はあろう。しかし、あえて省略を避け、全力で銀河英雄伝説の世界を再現しようとする姿勢には、原作へのリスペクトが強く感じられ、見ていて心地よかった。
原作の大きな改編は、ヒルダの登場を無理やり前倒しして一応「恋愛要素」を加味したことだが、本当に格好をつけた程度で、改編というほどにもなっていない。
宝塚の原作物では、これまで「逆転裁判」や「相棒」、「メイちゃんの執事」を舞台で見て、映像では「ブラック・ジャック」なども見た。これらに共通しているのは、ハリウッド映画化のように都合のいいところだけ取り込んで、あとは好き勝手にやってしまう手法ではなく、まずは後先考えずに原作をまるごと飲み込んで、その上で自分たちの表現でアウトプットしていくという姿勢だ。
このため、舞台の完成度は決して高いとはいえない。だが宝塚はそれでいいと思う。芸術としての完成度よりも、客を楽しませるサービス精神を優先する世界であってほしい。
ラストシーン、キルヒアイスの死を悼むラインハルトがアンドレの死を嘆くオスカルに見えて「おおキルヒアイス、私を置いていくのかああ!」と叫びそうでちょっとおかしかった。
銀河英雄伝説@TAKARAZUKA 公式ウェブサイト
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