演劇銭団Doリンク場 「そらあい~暁月夜に巣掻く想い~」
博多の知人が参加している劇団の公演がちょうどゴールデンウイーク期間中にあるというので足を運んだ。キャナルシティのすぐそばにある、ぽんプラザホール。100人ちょっとが入る大きさで、ザ・スズナリよりちょっと大きいぐらいだが、天井も高く、キレイで見やすいホールだ。
演劇銭団Doリンク場は2006年の結成。立ち回りを含むエンターテインメント性の高い時代劇を得意としている、と聞いていた。
今回の公演はオリジナル作品「そらあい~暁月夜に巣掻く想い~」。幕末の土佐藩を舞台に、倒幕に動く志士たちの情熱と苦悩を描く。
近藤勇も坂本龍馬も登場しない。主役は名もない若者たちだ。歴史の大きなうねりの中で、名もない者たちは結局名もないまま消えていく。それはどうしようもない真実であり、数限りなく演劇という手法でも語られてきたモチーフだ。
だがこの作品はそれらとは一味異なる。名もない若者たちの、家族や身近な人々への思いをこれでもかと描き込むことに多くのエネルギーを費やしている、という点においてだ。序盤は、幕末ものにしてはその部分があまりに強調されているため、なんだか甘ったるい舞台だな、やはり関東の人間には博多の味は甘いのか、と感じていた。しかしそれは大きな間違いで、その甘さがしっかりと作りこまれているからこそ、後半の大立ち回りや、悲劇的な展開が強烈に引き立ってくる。
そして、悲しいだけでは終わらない。この作品では、セリフの中で何度も比喩として「空」という言葉を語っており、それを通じて何か大きな無常感のようなものを提示している。今まで、無常という視点は厭世的な、あるいは達観した、冷めた見方だと考えていた。しかし、無常を認識することで、人は目の前に広がる大きな悲劇から、少しだけ救いの光を見出すこともできるのだ。この作品のメッセージを、自分はそう感じ取った。
エンターテインメント性の高い時代劇、といえば、劇団☆新感線に代表されるような、笑いあり、ドラマありのエキサイティングな舞台を想像しがちだ。しかし、彼らは強く娯楽を意識しつつも、笑いを重視することはせず、正攻法で物語に取り組んでいる。1幕のみとはいえ2時間を超える大作にもかかわらず、正攻法だけで最後まで見せるのは個々の役者だけでなく、演出も含めた劇団全体の実力が相当に高くなければできない。セリフもひとつひとつが実に丁寧に紡ぎだされていて、観客の心の中に詩を読んで、あるいは聞いているときのようなイマジネーションを広げてくれる。
前日のどんたくでも感じたことだが、博多の芸事に対する姿勢は歴史的に見ても極めて真摯であり、それが今日の演劇にも脈々と息づいているのだろう。これからはキャナルシティ劇場や博多座だけではなく、小劇場の公演にも積極的に足を運んでいきたいと思う。
演劇銭団Doリンク場のウェブサイト
http://dolinkba.ehoh.net/
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コメント
突然のコメント失礼致します。
劇団Do-リンク場の代表:小林です。
この度は、
ご来場頂きまして、
誠にありがとうございました!
伝わるものが1つでもあったこと、
本当に嬉しく思います!
今後もまだまだ精進の身、
今に甘んじぬよう、
次へ次へと、しっかり新しいお天道様を毎回昇らせてあげられるよう、
自分達の空を変えぬままに、
更に更に頑張らせて頂きます!
是非ご機会ございましたら、
またお会い出来ればと思います!
ありがとうございました!
投稿: 小林ゆう | 2012年5月 7日 (月) 06時28分
小林代表、こんにちは。
こんな適当に書いたエントリーをご覧いただき、恐縮至極です。
この日の夜、空に「スーパームーン」がのぼったのもきっと何かの縁かもしれません。
これからも、面白い芝居を見せてください!
投稿: ヤボオ | 2012年5月 7日 (月) 23時55分