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2011年7月 1日 (金)

北区つかこうへい劇団解散公演「蒲田行進曲」

銀四郎 武田義晴
ヤス 相良長仁
小夏 木下智恵

北区つかこうへい劇団がいよいよその千秋楽を迎える。最後の演目は「蒲田行進曲」。北区にある滝野川会館で観てきた。

解散公演シリーズ、結局観たのは最初の「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」とこれだけで、飛龍伝やロマンスはチケットを確保しながら行けなかった。残念。

さて「蒲田」である。熱海(オーソドックス版)や飛龍伝が自分の中では上を行くが、世の中的にはつかこうへい作品の中で最もポピュラーと言ってさしつかえなかろう。

微妙な位置の映画スターである銀ちゃん、その彼女の小夏、そして小夏をお腹の赤ん坊ごと「押しつけられた」ヤス。3人の関係、銀ちゃんと小夏、銀ちゃんとヤス、そして小夏とヤス、それぞれが実に折り目正しく、じっくりと描かれているという構造的にも美しい作品だ。

つかこうへい作品に流れるものを「前向きのマゾヒズム」と称する向きがある。その言葉自体への好き嫌いはあるだろうが、言わんとすることは分かる。

映画版「蒲田行進曲」では、特にヤスの演技がまさしくそれだったが、原典である舞台を見ると、実は3人ともMであることがわかる。

MとMとMとの関係が、幸せなものになるわけがない。

話が突然それるけど、SKE48のメンバーが勝手に結成したサークルに「2次元同好会」というのがある。無類のアニメ好きで知られる松下唯を中心としたグループだ。先日、それを番組化する文化放送の企画で公開収録が行われ、松下唯、中西優香、古川愛李、秦佐和子という俺セレクションのようなメンバーが出演。当然見に行ったわけだが、そこでSとMの話になった。ゲストとして呼ばれた声優・森久保祥太郎が、「Sというのは、相手を攻撃するのではなく、『コレが欲しいんだろ?』相手の望むものを与えることに快感を覚える人のこと」と解説していた。それを思い出した。

話を戻すと、つまりこの3人の関係性では、望むものを与えてくれる人が誰もいない。3人とも、ずっと何かを求め続けるだけの悲しい関係なのだ。

だから蒲田行進曲の終盤は、とても悲しい。誰かが死ぬとか、誰かと別れるとか、そういう問題ではなく、人生の本質に絶望を感じさせる。

だがつか作品はどんなに悲しいラストを迎えても、観客が劇場を出た時、前に向かって歩きだせるように、エンターテイメントらしく、華やかに、カッコよく終わる。この日はアリスの「青い稲妻」で締めくくった。

94年からつか作品に出演しているベテラン、武田義晴の銀ちゃんと、劇団15期生というホープの相良長仁のヤスという組み合わせは、これからつか作品を日本演劇界がどう演じていくのか、その姿勢を示しているようで興味深い。木下智恵の小夏はいかにもつか作品のヒロインだし、吉田学やとめ貴志といった北区つかこうへい劇団を支えてきた熱い男たちの演技も心地よかった。

さて、7月3日をもって北区つかこうへい劇団は解散となり、一部の団員は新生「北区 AKT STAGE」へと移って活動を続ける。解散には賛否両論もあるだろうが、中の人たちが納得しているなら外野があれこれ言うことではない。18年間、500円や1000円といった金額で熱のこもった公演を続けてきたすばらしい劇団の面々に、心から感謝したい。北区も、時に役所としては問題になりそうなセリフも数多いつか作品を、18年もよく支えてきたものだ。ハコものではなくソフトを、というかけごえは全国の自治体で聞かれるが、それに成功した事例は数えるほどしかない。北区つかこうへい劇団は、間違いなくその成功事例だと言えるだろう。

本当にありがとう。

北区つかこうへい劇団のWEBサイト
http://www.tsuka.co.jp/index.html

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