四季「ジーザス・クライスト=スーパースター ジャポネスクバージョン」エルサレム・メタル・シティ
ジーザス・クライスト | 芝 清道 |
イスカリオテのユダ | 金森 勝 |
マグダラのマリア | 高木美果 |
カヤパ | 金本和起 |
アンナス | 阿川建一郎 |
司祭1 | 平山信二 |
司祭2 | 内海雅智 |
司祭3 | 真田 司 |
シモン | 本城裕二 |
ペテロ | 飯田達郎 |
ピラト | 村 俊英 |
ヘロデ王 | 下村尊則 |
早く観なくては、と思っているうちにジーザス・ジャポネスクバージョンが間もなく千秋楽。こりゃいかんと慌ててチケットを確保した。
先月観たエルサレム版はおっさんな感じが前面に出て、いまいちロック・オペラになりきれていなかったが、ジャポネスク版ではどうなるだろうか?実は結構期待して席に着いた。
1985年だったか、水戸で初めて劇団四季を観たのもこのジャポネスク版だった。当時は「江戸版」などと呼んでいたが。田舎の高校生にはアバンギャルドすぎた作品だったが、いまだにこの演出には斬新さを感じる。
まず舞台に跳び出てきた金森ユダ。彼のジャポネスク版ユダを見るのは初めてではないが、隈取が彼特有の鋭い視線を強調している。エルサレムのときのようなおっさんな雰囲気ではない。そうそう、これだ、これが金森ユダのロックなカタチなんだ。歌声も演技も、熱量が3割増しに思える。隅取ってすげー。
続いて登場、芝ジーザス。俺は動揺、いや、混乱した。
……なぜここにクラウザーさんが?
金森ユダの鬼気迫る演技が、魔界からクラウザーさんを呼び寄せたのか?
前回はこっちだったけど
今回はまさにこっちである。
だがこれはいい。聖人が魔界から来ちゃいかんだろ、とか、細かいことはこの際気にしない。
エルサレムのとき、というよりこの作品本来のジーザスは、冒頭から表情に迷いがある。若さ故の悩みだ。しかしこのジーザスには、迷いというより怒りがある。その声に相手を威圧する、言い知れない力がある。
もちろんこのジーザスも悩んではいる。しかし、いつものジーザスはカリスマになる手前で逡巡しているのに対し、このジーザスはカリスマになってから悩んでいる。そこが違う。そして芝の声もまさしくロックになっている。こっちはメタルだぜ!
かつて「ライオンキング」で、最初おっとりしていた芝ムファサが、金森スカーを前にしていきなり武闘派のムファサに変わったときがあった。舞台をアフリカから中東に移して、ふたたび2人がギラギラした火花を散らし始めた。
その熱い火花に呼応して、もうひとりのスカーが覚醒した。村俊英のピラトだ。村ピラトはぐっと抑えた演技と歌声で実に多くのことを語る。素晴らしいキャスティングである。しかし、ジーザスとユダに触発されたか、いきなりリミッター解禁。村俊英の本気を前にして、誰が太刀打ちできようか。いつも控えめに語っていたピラトの心情、ジーザスの器の大きさを知っているからこそ、それを許すことで自らの鼎の軽重を測ろうとしながら、できれば直接手を下すのは避けたいという本音も見え隠れするという、複雑なピラトの心の動きを熱く歌い上げる。
この膨大な熱量が、とうとう3人目のスカーにまで伝導した。そう、下村尊則のヘロデ王だ。ヘロデ王は、この作品で唯一笑いを取っていい役であり、このシーンは演出家が奇抜さによって腕を見せなくてはいけない。この数年、下村はヘロデ王を完璧に、いや完璧以上にこなしてきた。下村ヘロデはすごい。そんなことはみんな知っている。しかしこの日のヘロデは、いつもよりさらにぶっとんでいた。変人というより、あっちの世界にイッちゃってた。久しぶりにカタルシス感じまくりの3分間である。
芝ジーザス、金森ユダ、村ピラト、下村ヘロデ王。名前を挙げるだけで汗ばむような、濃すぎる面々。それが相乗効果によって、4倍というより4乗の濃さになっている。濃い、濃すぎるよ。カルピスの原液をコーラで割って飲むぐらい濃いよ。彼らが織りなす、男と男と男と男の、ギトギトした四角関係。観終わったあと、黒烏龍茶でも飲みたい気分になった。
なんだかスゴいものを観ちまった気分だ。エルサレム版ではなく、最初からこのジャポネスク版でロングランしてもよかったんじゃないか。作品の本質をひんまげてはいるかもしれないが、ある意味世界に誇れるカルテットの誕生だと思う。
「ジーザス・クライスト=スーパースター」公式サイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/jesus/
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コメント
ジャポのチケットは確保できず、観にいけませんでした。
行きたかったなぁ。でも、なんかこのレポ読めてよかったです。
毎回、見学商売さんの筆力に感心します。上から目線だったらすみません。下手な宣伝より、観に行きたい!と思わせる文章です。
投稿: ともこ | 2011年5月30日 (月) 22時05分
ともこさんこんにちは。
いつもテキトウなことばかり書いてお恥ずかしい次第であります。
アンコール上演、どうしてエルサレムなんだろう?四季のおじさんパワーを堪能できた舞台でした。
投稿: ヤボオ | 2011年5月31日 (火) 00時14分
何年も前の記事にコメントを寄せさせて頂きました☆
今、名古屋でやっているオペラ座の怪人で芝清道さんの大ファンになりたどり着いた記事たちに笑いっぱなしです。ジーザスのユダ役の芝さん観たいです。中年の濃い顔の武闘派のおっさんが大好きです(笑)
ぜひ今のオペラ座の怪人の芝清道さんのコメントがお聞きしたいです。ご覧になられましたか?
投稿: あき | 2016年6月21日 (火) 08時49分
あきさんこんにちは。ご返信遅くなり申し訳ありません。
先週名古屋に行ったので、芝ファントム見られるかなと思いましたが、マチネしかなくて断念しました。はやく見なくては!
投稿: ヤボオ | 2016年7月 9日 (土) 22時34分