四季「アイーダ」 至高の三角関係
アイーダ | 濱田めぐみ |
アムネリス | 佐渡寧子 |
ラダメス | 阿久津陽一郎 |
メレブ | 中嶋 徹 |
ゾーザー | 飯野おさみ |
アモナスロ | 石原義文 |
ファラオ | 勅使瓦武志 |
大阪アイーダが開幕。なんとメインの3人が初演のオリジナルキャストそろい踏みだ。相次ぐ中堅俳優の離脱で全体的に層が薄くなりつつある中、四季はまんべんなく人気俳優を配置するのではなく、いずれかの公演に集中させる戦略を取ったか。いずれにしても必見だ。
この3人の組み合わせは自分にとって初めてだ。特に、佐渡寧子アムネリスは観たことがない。実は、過去一度だけ観るチャンスがあった。名古屋公演で、彼女の名前があったので期待して行ったのだが、現地のキャストボードを見たら変わっていた。それがこのときで、3人ともデビューしたばかりという、研究生公演のような出来栄えだった。ある意味貴重な体験だが、チケット代は3割引ぐらいでいいと感じた。
その待望の佐渡アムネリス。アムネリスの衣装がぴったりとはまっていて、まさに博物館の中から飛び出てきたような雰囲気。歌い方は、CDとちょっと雰囲気が変わっていた。年齢もあって、少し声量にかげりが出てきたのをテクニックでカバーしているのだろうか?しかし気になるレベルではない。
ここ数年、演技面で技巧をこらすアムネリスが多かったが、佐渡アムネリスは自然体というか、あまり演技っぽさを感じさせない。それが、アムネリスの世間知らずさに裏打ちされた純粋さにつながり、ますますアムネリスっぽくなっている。いい。実にいい。
普段のほほんとしている分、「おしゃれは私の切り札」のはじけ方がよりエッジが効いてくるし、最後の最後、王を継ぐ決心をする場面では、その内に秘めた覚悟がより色濃く感じられる。
濱田アイーダ、阿久津ラダメスのコンビはすでに体験済み。気心の知れたアムネリスを迎えたことで、さらにのびのびとした雰囲気になるのかと思ったが、これは逆だった。ヒリヒリするような「緊張感」を漂わせる三角関係となっている。特に、アイーダとアムネリスの友情は、やさしい雰囲気のアネリスだと、仲良しさんな感じになるのだが、この2人はまず王女としての誇りがあり、その立場を全うした向こうに友情を模索している。より高い次元で心を通わせている、といってもいい。
なるほど、ミュージカル「アイーダ」って、こういう作品だったのか。
これまでは、いつもどこかに「違和感」を感じながら観ていたが、今回初めて、ストレートにこの作品を楽しむことができたような気がする。
この作品はキャストを選ぶ作品なのだ。それを痛感した。ブロードウェーであっという間に終わってしまい、ディズニーミュージカルの黒歴史になってしまったのも、それはふさわしいキャスティングを実現できなかったからではないのか。日本でここまでロングランになったのも、四季の執念だと言えば確かにそうだが、やはり濱田めぐみをはじめこの作品にぴったりの役者を起用できたことが大きいのかもしれない。
しかし同時に、この作品の「完成形」を見てしまうと、実はこれが比較的陳腐なラブストーリーであることも明確になってしまう。1度観るにはいいが、何度も繰り返し観たくなるには、味が単調なのだ。
そうか、だから四季は、わざとキャスティングに「ノイズ」を入れて、その味に変化をつけようとしたのか……とまでは思わないけど、改めて舞台というのは役者まで含めて「作品」なのだ、と実感した。
「アイーダ」公式サイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/aida/index.html
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コメント
お待ちしていました!初演にはなかった味わいが加わったようにさえ感じます。
「常磐線の運休」と「片付けは後からでも出来る」を言い訳に実家ではなく、梅田にせっせと通いつめていました(笑)
これだけの完成形を魅せつけられると、そうじゃなくなった時の落差が…楽しみです。
投稿: らべたん | 2011年4月 4日 (月) 01時57分
ちょうど昨年の今頃から四季の講演をみるようになって東京の最後、渡辺ラダメスだったので阿久津ラダメスはまだです。大阪に来月あたりいこうかなと思いますが、もう変わってる可能性もありますね。渡辺さんはなんか癖になる俳優で私は好きなのですがやっぱり阿久津ラダメスと濱田アイーダで一度観てみたいです。未熟ゆえ、阿久津サムと渡辺サムのちがいがよくわかりませんでした。そんなにちがうものなのですね。
投稿: 太陽 | 2011年4月 5日 (火) 05時08分
ヤボオさん、さすがです。
「比較的陳腐なラブストーリーであることも明確になってくる」わけですね。1日に観たのですが、このキャストでもっと観たいはずなのに、きっとすぐにキャス変があるのが分かっているのに、でも次のチケットを入手しようとしない自分にとまどっていた私は、この言葉で自分の行動が腑に落ちました。
また、こちらのグログも楽しみにしています。
投稿: mitsuko | 2011年4月 6日 (水) 21時59分
らべたんさんこんにちは。
さっそくキャストが動き始めましたが、今度どのような展開を見せるのか。せっかく動くなら、新キャストを見たいものです。
投稿: ヤボオ | 2011年4月10日 (日) 22時16分
太陽さんこんにちは。
どちらがいいかは人それぞれですけど、違うのは確かですね。阿久津サムはかなり変化球ですけど、阿久津ラダメスはぐっとオーソドックス。キャストが変わると作品の印象も変わるので楽しいです。
投稿: ヤボオ | 2011年4月10日 (日) 22時18分
mitsukoさんこんにちは。
代表様は「俳優ではなく作品を見ろ」とおっしゃいますけど、俳優が変わることで見えてくる作品の真価もあるような気がします。さっそくキャストが動き始めましたが、日本での開幕地である大阪で、また新しいこの作品の魅力に気付かせてほしいですね。
投稿: ヤボオ | 2011年4月10日 (日) 22時22分