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2011年4月12日 (火)

「レ・ミゼラブル」なかなかいいぞ!新キャスト

ジャン・バルジャン 吉原 光夫
ジャベール 岡 幸二郎
エポニーヌ 平田 愛咲
ファンテーヌ 和音 美桜
コゼット 中山エミリ
マリウス 原田 優一
テナルディエ 三波 豊和
テナルディエの妻 森 公美子
アンジョルラス 上原 理生

さてさて久しぶりのレ・ミゼラブル東京公演だ。そして現在演出での帝劇公演はこれが最後になるという。次回は先日ニュージャージーで観たツアー版の演出になるらしい。キャメロン・マッキントッシュは全世界のレ・ミゼラブルの演出を変更するつもりなのだろうか?それともロンドン公演以外を?あるいは日本公演は契約上はツアー版という位置づけなのか?よくわからない。

この日のジャン・バルジャンはこの公演から参戦した吉原光夫。劇団四季出身で、32歳のバルジャンは日本公演史上最年少だろう。

吉原光夫といったら、「夢から醒めた夢」の暴走族である。後にヤクザ役も担当したが、やはり暴走族が当たり役だった。野太い独特な声と、その立ち居振る舞いに独特なユーモアを感じさせるキャラクターが印象的なスケールの大きい役者で、将来を楽しみにしていた。とはいえ、実は夢から醒めた夢以外ではあまり見たことがなく、「ジーザス・クライスト=スーパースター」のユダ、「エビータ」のチェといった大役も見逃している。特に残念なのは、「美女と野獣」のガストン役だ。実にぴったりの配役に思えた。福岡公演に登場したとき、木村花代ベルを見に行った直後だったのですぐには突発せず、沼尾みゆきベルとの共演が実現したら行こうと準備していたが、結局その組み合わせはなかった。

退団後もその活動が気にはなっていたが、まさかバルジャンで再会できるとは。まるで冗談キャストのような信じられない話だが、個人的には楽しみすぎる配役である。

前置きが長くなったが、その吉原バルジャン。なかなか男前のバルジャンである。そういえば、ヤクザ役を見たときに「おお、この人結構カッコいいんだ」と驚いた記憶がある。しかし若い。市長様ぐらいまではいいが、パリのシーンあたりからは、ちょっと無理が出てくる。だがそれ以外は全く問題のない、いいバルジャンが誕生した。

全身からみなぎる力強さ。それは生命力にも、意志の強さにも、敬虔さの象徴とも受け取れる。コゼットがその背中を見るとき、これほど頼りになるバルジャンも他にいないだろう。また、その特異なキャラクターも健在で、いつも薄い笑みを浮かべているように感じる。その笑みは改心前はふてぶてしさに見えるし、市長のときは余裕に、歳を経てからは愛情の豊かさに見える。

もともと、四季の時代からセリフ回しには抑揚がなく、それを下手な演技に感じる人も多いと思うが、彼は細かい演技よりも存在感で表現する役者だ。もちろんバルジャン役としてはまだまだ未熟な側面もあるが、今後再演を重ねることで、もっともっといいバルジャンになっていくことを大いに期待したい。

この日はほかにも新キャストが多かった。ファンテーヌに宝塚出身の和音美桜、エポニーヌに東宝ミュージカルアカデミー出身の平田愛咲。2人とも強烈な印象を持つわけではなく、ある意味地味で、声量を自慢するタイプでもないのだが、心に響くみずみずしい演技と歌で好感を持った。

三波豊和のテナルディエは、基本に忠実というか、これぞテナルディエという教科書のような演技だった。歌っているイメージがないのだが、相当なボイストレーニングを積んだのか、十分な声の張りと伸びだった。ベテランにして努力の跡を感じさせるあたり、頭が下がる思いだ。

中山エミリのコゼットは、とても30代とは思えないかわいらしさ。目のぱっちりとしたはっきりした顔立ちなので実に舞台映えする。アンサンブルとして登場するシーンでさえとても目立ってしまうほど。ミュージカルに主演した経歴もあるが、歌はどうなんだろうと思っていたところ問題なかった。まあ声楽重視の人からすればとても受け入れられるものではないかもしれないが、かつての早見優とかを考えたらぜんぜんOKである。それに、誰も言わないのなら俺が言ってやろう。コゼットなんて、可愛けりゃいいんだよ!むしろ可愛いことのほうが大事なのだ。そうでなきゃ堅物マリウスが一目ぼれできないじゃないか。可愛いことで、愛されキャラをアピールすることこそこの作品が求めるコゼットの役割なのだ。

出色の出来だったのがアンジョルラスの上原理生。その歌声は、日本アンジョルラス史上最強ではないのか。歌声だけで学生たちをまとめるカリスマ性を表現できている。長身のルックスもいい。演技はまだまだこれからという感じだが、歌声がそれを補って余りある。

ガブローシュ→アンジョルラス→マリウスと横滑りを繰り返してきた原田優一はすっかりこの作品に体がなじんでいる様子で、新役であることを全く感じさせない。

ガブローシュといえば、この日のガブローシュはテレビでおなじみの加藤清史郎。さすが全国区の注目度を浴びてきたこともあり、スターのオーラを身にまとっていて、それによって舞台に貢献している。びっくりするほど小さく、丸顔のガブローシュは原作の印象とはほど遠いが、グランテールにブランデーを飲まされて吐き出したり、砦で眠ってしまったりと、細かい芝居で独特の味を出していた。

全体的に、上原理生以外はあまり声を張り上げるタイプの役者が少なく(岡幸二郎もやや控えめに歌っていた)、温かみのあるやさしいレ・ミゼラブルといった雰囲気にまとまっていた。これはこれでいいのではないか。何となく帝劇初演のころを思い出した。これが日本のレ・ミゼラブルの味わいなのかもしれない。


手書きメッセージに「大和魂」。なんというか、吉原らしい。

レ・ミゼラブル 公式ウェブサイト
http://www.tohostage.com/lesmiserables/index.html

 

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コメント

連投失礼します。(このエントリを読み損ねてました
まず13日ソワレに行ってきました。
いまひとつパンチ力にかける気がしていた新キャストですが
まさしく『コレはコレでいいじゃん!』と思いました。
そんな中でも三波豊和テナは先日NHKで観た25周年コンサートのマット・ルーカスのテナルディエを(ちょっぴりですが)彷彿させました。かなりイイと思います。
その時、一緒に観た友人が、吉原バルを大絶賛していて「チケット増やす」と言ってたので便乗し、新妻聖子新ファンテと共に後半観てこようと思います

投稿: の。の | 2011年4月21日 (木) 09時59分

レポ楽しく読ませていただきました。
子どもたちも大きくなったのでそろそろ東京遠征観劇を予定していたんですが、今回の震災で家族からダメを出されてしまい(泣)こちらのレポ待ってました。
ずっとロムさせていただいているんですが、同じ感性を持って舞台を見ている(と勝手に思ってるんです。すみません)ヤボオさんの舞台の感想はいつも的確で「ここはどうだったんだろ?」と言う所をきちんと書いていただいて、見てないのに見てきたように思えます。
今回は大阪公演もありませんので、嬉しかったです。
ありがとうございました。

投稿: みーやん | 2011年4月21日 (木) 14時15分

の。のさんこんにちは。

吉原光夫の、なんとなく回りの空気を和ませる雰囲気がいい方に出ているかもです。

投稿: ヤボオ | 2011年4月22日 (金) 00時15分

みーやんさんこんにちは。

いやいや、私の頭の中は中学2年生並みにいやらしいことで一杯なので、全く異なる感性だと思います。

投稿: ヤボオ | 2011年4月22日 (金) 00時16分

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