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2011年1月10日 (月)

舞台「銀河英雄伝説」第一章 銀河帝国編

ラインハルト・フォン・ローエングラム 松坂桃李
ジークフリード・キルヒアイス 崎本大海
グリューネワルト伯夫人アンネローゼ 白羽ゆり
ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ 宇野実彩子
ウォルフガング・ミッターマイヤー 中河内雅貴
オスカー・フォン・ロイエンタール 東山義久
バウル・フォン・オーベルシュタイン 貴水博之
ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ ジェームス小野田
セバスティアン・フォン・ミューゼル 堀川りょう
フリードリヒⅣ世 長谷川初範
フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト 吉田友一
エルネスト・メックリンガー 岡本光太郎
ベルンハルト・フォン・シュナイダー 村上幸平
アウグスト・ザムエル・ワーレン 土屋研二
コルネリアス・ルッツ 平野勲人
シュターデン ひわだこういち
オフレッサー 中村憲刀
アルツール・フォン・シュトライト 北代高士
アンスバッハ 高山猛久
オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク 園岡新太郎
ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム 石鍋多加史
 

昨年の発表以来、その出来が注目されていた舞台版「銀河英雄伝説」がついに幕を開けた。原作の序盤、ラインハルトが門閥貴族に打ち勝って権力を掌握するまで(「黎明編」「野望編」)の物語を、銀河帝国パートのみに絞って描く。

主演は「侍戦隊シンケンジャー」シンケンレッド役で、主に女性の大きなおともだちから絶大な支持を受けた松坂桃李。そして「シンケンジャー」でもそうだったが、周囲に「テニスの王子様ミュージカル」で人気を集めた俳優を多数配置していることから、完全に成人腐女シフトと思われた。いざ劇場に足を運んでみると、果たせるかな客層は完全にソレである。かねてよりの銀河英雄伝説ファンと思われる人は極めて少なく、以前「シンケンジャーショー」俳優出演回を観に行ったときの、森田涼花めあてのアイドリングオタよりさらに少数派だ。こりゃあ場違いなトコに来ちゃったかな、という感じが漂った。

しかし、始まってみるとこれがなかなかの出来栄えだった。

原作のほんの一部とはいえ、壮大なスケールの物語を2時間半あまりで描くわけだから急ぎ足にならざるを得ないが、重要な場面や、観客に訴えかける演出には時間を割いてじっくりと見せる。「銀英を舞台にする」だけに満足せず、芝居としていいものにしよう、という姿勢が大いにうかがえた。しかも、それがカラ回りせず、原作の世界観とうまく融合している。

演出面において特徴的なのが、宇宙空間での艦隊決戦の様子を、冗談のように人数の多いアンサンブルがその肉体で表現していることだ。さらに、彼らが口をそろえて、重要な「語り」を担当する。

この手法を可能にしたのは、演出の西田シャトナーだ。演劇好きなら耳に覚えのあるであろうその名前。90年代を駆け抜けた劇団「惑星ピスタチオ」の中心人物である。

小劇場ブームが去り、唯一生き残った劇団☆新感線がひとり勝ちを収めつつあった中で、それに対抗しうる勢力と目されたのがピスタチオだった。自分はその活動期間の中では後半のほうで1作観ただけだったが、西田シャトナー、平和堂ミラノ、腹筋善之助、佐々木蔵之介といった中心メンバーの豊かな才能がぶつかりあう、エネルギッシュな舞台だった。その演出の最大の特色が、すべてを人間の肉体で表現する「パワーマイム」だった。

ちなみに自分はその作品を観たとき、非常に面白いが、それぞれの才能が別々の方向を向いているな、と感じた。そこがいのうえひでのりの方向性をみなが共有しちている新感線との大きな違いだった。その後、平和堂ミラノ、佐々木蔵之介らは退団し、ほどなく劇団は解散した。それぞれの活動をまた観てみたいものだ、と思っているうちに、平和堂ミラノが病気により急逝してしまう。演劇界における大きな損失だった。佐々木蔵之介の活躍はご存じのとおりだが、西田シャトナーは最近どうしているかな、と感じることも少なくなるほど、自分の記憶から消えかかっていた。

話が長くなったが、その西田シャトナーと「パワーマイム」が、この舞台で突然、目の前に現れたのである。イゼルローン要塞の間近にガイエスブルグ要塞がワープしてきたようにびっくり仰天だ。

かなりアバンギャルドなこの手法は、下手をすれば失笑を禁じえない。しかし、ギリギリのところで踏みとどまり、この舞台に大きな生命力を与えるのに成功した。演出技法としてだけでなく、この表現によって、何百万、何千万という途方もない数字が飛び交う恒星間戦争においても、結局は人と人との戦いであることを象徴的に示すという役割も担っていた。

三枝成彰の手による重厚感あふれる音楽も実に効果的に銀河英雄伝説の世界観を支えていた。忠臣蔵もオペラにしたこの人の手にこの舞台の音楽を依頼したのは大正解だったように思う。ただ、劇場の施設の問題か、音響がいまひとつだったのは残念だった。

俳優たちの演技に目を転じると、主演の松坂桃李が実にいい。まあかなりシンケンレッドとだぶる演技ではあるのだが、声がよく出ていて、セリフが聞き取りやすい。舞台向きの人かもしれない。テニスの王子様出身の俳優たちも、みなとてもいい声を出していた。そうした若い人に人気の舞台が、着実にいい舞台俳優を養成していることがわかる。一方で、東宝ミュージカルに出演している東山義久の声が聞き取りにくい。何やってんだ東宝。とはいえ彼の場合もともとダンスの人である。オフレッサーとの死闘で繰り広げる殺陣では、その美しい身のこなしが、凄惨な「ミンチメーカー」と不思議なコントラストを成して妖しい美しさを醸し出していた。あの美しさが、セリフや演技にももっと感じ取れれば、実にいいロイエンタールになるかもしれない。とりあえず、ラインハルトが皇帝になるまでには「マイン・カイザー」と美しく発音できるようになっておいてほしい。

そういえば、「特捜戦隊デカレンジャー」のデカブレイク、吉田友一が、これまたデカブレイクな感じの演技で、この舞台の唯一ともいえる「笑い」を担当していた。原作やアニメ版の雰囲気とは違うが、ビッテンフェルトを愛されキャラとして使うあたりは、この作品の世界観をよく理解していると評価していい点だろう。

総じて、実にまじめに、いい舞台をみなで作り上げているという印象がある。さっそく「外伝」で6月にミッターマイヤーとロイエンタールを主役にした舞台を製作するそうだが、第二章、自由惑星同盟編?も大いに楽しみになってきた。

ただ、個人的に、ちょっとものたりない部分もある。それは、おそらく、この作品はきら星のごとく立ち並ぶいいオトコたちを堪能して、ちょうどお腹いっぱいになるように設計されているからだ。自分が女性だったら、さぞもっと満足できただろうになあ、と思うとちょっとくやしい。次の外伝は、ぜひカーテローゼ・フォン・クロイツェルを主役にしてだな、女性士官のオリジナルストーリーを……

Ginei

舞台版「銀河英雄伝説」の公式サイト
http://www.gineiden.jp/index.html

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コメント

>>次の外伝は、ぜひカーテローゼ・フォン・クロイツェルを主役にしてだな、女性士官のオリジナルストーリーを……


アンタいい歳してまだそんなこと言ってるのかw
そんなんだから周りの女性客のブログ等で「あの気持ちの悪い連中」と呼ばれちまうんだよw つーか銀英伝ファンなら舞台なんか見に行くなよ。舞台って(笑)もうその時点で駄目だろw

>>アイドリングオタよりさらに少数派だ。こりゃあ場違いなトコに来ちゃったかな、という感じが漂った。

なにが凄いってそのオタ共と自分も同種だという自覚が無いのがアンタ凄いわw

投稿: | 2011年9月12日 (月) 21時22分

やあ、熱心な銀英伝ファンの方にコメントいただきとても嬉しいです。

気持ちの悪い連中の1人であることは確かなので、返す言葉もありませんな。

投稿: ヤボオ | 2011年9月13日 (火) 01時05分

李家豊の時代からの田中芳樹ファンで、「銀河英雄伝説」は初版第一刷の時から読んでいる、いわばオリジナルの銀英伝ファンの一人ですけど、舞台「銀河英雄伝説」は、確かに、なかなか良い出来でした。

やはり演出の西田シャトーさんと主演の松坂桃李くんの力量でしょうか。

また、振付の瀬川ナミさんと、それに応えられる東山義久さんと中河内雅貴くんも良かった。

それに、田中芳樹さんは元来、耽美派で、美少女や美形(美少年・イケメン)が好きだから、今回の舞台化を甚くお喜びのようです。

カーテローゼ・フォン・クロイツェルを主役にした女性士官のオリジナル・ストーリー・・・、面白いかも知れません。

投稿: ひかる | 2011年9月16日 (金) 01時34分

ひかるさんこんにちは。コメントいただきありがとうございます。

この舞台は、スタッフ、キャストそれぞれの個性が実に見事にかみあっていたと思います。やはり原作の世界観の優れていると、それぞれがある程度自由に動いても、きちんとあるべき方向へ向かうのではないでしょうか。

そういえば、インタビューで宝塚化の話もあったと言ってましたね。それはそれで見たいかも。

意外に自由惑星同盟編なんか、関西ノリの遺伝子がうまく機能するかもです。

投稿: ヤボオ | 2011年9月17日 (土) 02時06分

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