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2011年1月22日 (土)

四季「マンマ・ミーア!」びっくり仰天 樋口麻美ドナ

ドナ・シェリダン 樋口麻美
ソフィ・シェリダン 谷口あかり
ターニャ 八重沢真美
ロージー 青山弥生
サム・カーマイケル 阿久津陽一郎
ハリー・ブライト 味方隆司
ビル・オースティン 脇坂真人
スカイ 田中彰孝
アリ 木内志奈
リサ 柏 円
エディ 丹下博喜
ペッパー 大塚道人

・・・そうか、またマンマ・ミーア!を東京で上演しているのか。懐かしいのう。

東京初演でソフィを演じていた樋口麻美が、ドナを演じる日が来るとは・・・

わしも若いころは、大阪、福岡、名古屋、広島と観て回ったもんだが、今やそんな元気もない。リニアが開業して大阪まで1時間ちょっとだし、近所の茨城空港から全国どこにでも行けるとはいえ、遠征は老骨にちとこたえてならん。しかしここはひとつ、ひさしぶりに観に行かねば・・・ところで、今年は西暦何年になるのかな。

ってまだ2011年じゃないか!

劇団四季の時計はどうなっているんだ?あざみの近辺は時空が歪んでいるのか?

そりゃ樋口麻美だってもう30過ぎなわけで、ソフィの年齢じゃない。しかし、どう見たってまだドナ役には早すぎるだろう。

これは冗談キャストとしか思えない。そういうのは、阿久津サムとか、渡辺ラダメスとか、冗談の似合うヤツらでやってくれい。芝ジーザスとかな。

とかなんとか言いつつも、この目で確かめてみないことには、といそいそと海劇場へ。相変わらずの釣られ体質である。

もちろんちょっとした期待はある。樋口麻美は「ウェストサイド物語」でアニタを演じて以来、大きくステップアップした気がする。最近では、「コーラスライン」でヴァルを演じた。結局未見ではあるものの、なかなかの好演だったようだ。そうした経験で面白いドナを作り上げているかもしれない。

青山ロージーと八重沢ターニャの名人芸コンビが進んでいると、ちょっこしフライング気味に登場した樋口ドナ。見た目は・・・やっぱり若いだろ。とてもハタチの娘がいるようには見えない。でもまあ、そういう年に見えないカワイイおばさん、っていうのは世の中にたくさんいる。そう考えれば全くおかしなわけではない。

でもちょっと気になったのが樋口麻美の話し方。ご存じのように、彼女のセリフ回しは四季の母音法があまりにもはっきりくっきりしている。その口調は、このポップな舞台にあまり似合わないのである。

しかし、歌い始めると印象が変わった。「MONEY,MONEY,MONEY」「MAMMA MIA」「DANCING QUEEN」とも、低音の効いたパンチのある歌声で、ドナの存在感を際立たせている。これはなかなかいい。一方で、「SUPER TROUPER」や「ONE OF US」「Slipping Through My Fingers」など、どちらかというと柔らかい感じの歌は、ちょっとカドが立っててしっくりこない気がする。「Winner Takes It All」は迫力があって良かった。

そのセリフ回し同様、演技においてもひとつひとつの動きや表情を折り目正しくこなしている。そこは好き嫌いが分かれるところだろうが、回りのキャストもそれに影響されたかのように、おそらくはまだこなれていない主役を気遣ってか、実に丁寧に演じていた。その結果、そうかここはこういう演技をするところなのか、こういう間をとるべきなのか、と気付くことの多かった公演になった。

常に基本に忠実なのは、樋口麻美という女優の持ち味なのかもしれない。その姿勢を保ちつつ、今後どのように成長していくのか注目だ。しかし先は長いなあ。いつかは樋口ドナ、木村花代ターニャ、吉沢梨絵ロージーなんて時代が来るのかな、と妄想していたが、その一角だけとんでもなく早く実現してしまい、残りの2人は実現不可能になった。いや、長く演じていれば、いつの日にかきっと――。

実はこの日はほかにも注目ポイントがあった。

まず、初めてお目にかかる谷口あかりソフィ。かわいいソフィは大歓迎だ。歌唱力最強の江畑晶慧ソフィのあとだから、ちと歌に難点を感じるかもしれないが、ぜんぜん許容範囲。ただ、いかんせんあの外巻きヘアーが似合わない。何度も主張しているが、あの髪型を強制するのはやめにしてほしい。ベンドラやリーズルな髪型のままだったら、激萌えソフィになれるのに。

そしてもうひとり、アンサンブルに泉春花の名前が。55ステップスで神技を披露していたバトントワリングの女王だ。自分この人も大好きなんである。バトンの神技は誰もが知るところだが、演技や歌は未知数だ。ぜひ何かの役を獲得してほしいものである。ピコとかどうかな。そりゃ個人的な趣味に走りすぎか。

濱田めぐみのドナでもびっくり仰天だったのに、さらに低年齢化が進むドナ。いったい四季の、いや日本のマンマ・ミーア!はどこに向かうのだろう。それにしても、四季はあれだけ団員がいて、主役級の層はそんなに薄いのか?起用法に一考の余地があるのではないか?そうした中、いったん四季を出た役者がまたその舞台に出るケースが増えているのはいいことだ。うまくバランスを取って、これからも面白い作品を見せてほしい。役者も作品の一部ですよ!

そうだ、思い出した。みなが基本に忠実な演技をしているのに、1人だけアサッテのほうを向いていた奴がいた。言うまでもなく阿久津サム。あれ、誰か止めたほうがいいんじゃないのか。ほとんどただの変質者である。一挙手一投足がことこどとくヘンで、いちいち笑いを誘う。俺はそういうの嫌いじゃないけど、つうか大好きだけど、ABBAは怒るだろ。

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四季「マンマ・ミーア!」ホームページ

http://www.shiki.gr.jp/applause/mammamia/


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コメント

きっと行ってくださると思ってました!

樋口ドナ、年相応になれば納得のキャストだと思いますが、なぜ今?
いろいろ勘ぐりたくもなります。

阿久津サムの笑いのポイントはどんどん進化?していっているのでしょうか?
アイーダやWSSの細かいお芝居は好きでしたが。

今年もよろしくお願いいたします。

投稿: 千尋 | 2011年1月23日 (日) 11時49分

お久しぶりです。

低年齢化をすすめるべき演目が違うようにも思いますが、何か邪なお考えがあるんでしょうね。
個人的にはドナは客演枠でも良いのですが…堀内さんや末次さん、井料さん…趣味悪すぎですかね?

投稿: らべたん | 2011年1月23日 (日) 20時44分

千尋さんこんにちは。

そうですね、あのサムの動きは細かいお芝居っていうより、いらん小芝居っつうか。

ほとんど平成の山口祐一郎ですな。

投稿: ヤボオ | 2011年1月23日 (日) 21時43分

らべたんさんこんにちは。

代表様のお考えは崇高すぎてわからないので、そのあたりも含めて面白がるしかないですね。

堀内敬子の客演、ぜひ実現してほしいです。コメディエンヌとしての経験を積んだので、いいロージーになるような。

投稿: ヤボオ | 2011年1月23日 (日) 21時45分

師匠、連日のお邪魔で失礼します。

これ、まじっすか?みたいなキャスティングですね。
四季にはあーたんと、メグメグしかいなくなっちゃたんでしょうか?

あ、でも阿久津がいるか・・・・。

とりあえず、私も早いうちに襲撃します。

投稿: よしぼう | 2011年1月23日 (日) 21時56分

いつも拝見だけさせていただいていたのですが、
このキャスティングにあまりにもびっくりしたので
書き込みしました。
遅くなりました。はじめまして。友都ともうします。

私は好き嫌いが分かれるのは知っていますが、
樋口さんが好きな人間です。
ヴァルに起用とかは未見ですが、正直嬉しかったです。

しかし・・・・
ちょちょちょちょちょちょ~四季さん???
って感じです。

年齢がすべてではないですが…

めぐみさんも麻美さんもとっても良い役者さんなのに…キャスティング…

濱田ドナのとき、歌も演技も素敵だし、老けを知らないドナなら納得!
でも。。。ちょっと若いなぁ…って昨年末に思ったばっかりだったのに…

麻美さんって30代前半…何歳でソフィ産んだのさ?って感じです。
麻美さんは悪くないのですが…なんか…振り回されている感が…


もともと四季のキャスティングはわからんなぁ…と思っていましたが。
ここまできたか…って感じです。


7~10年くらいあざみ野は進んでいると思います。


あまりにも、びっくりしたので、言葉がまとまっておらず。ごめんなさい…


ドナでなくて、
ラダメスの若手を探すべきかと…なんて思う麻美ファンでした…

投稿: 友都 | 2011年1月24日 (月) 00時05分

はじめまして。いつも楽しく拝見させて頂いております。
めぐ様信者ではありますが、めぐ様を追いかけていれば時々当たってしまう麻美様。
ヤボオさんのレポ、目と耳に浮かんでくるようです。
うーん、流石。
さて、またしても当たってしまったチケットではありますが、しっかり握り締めて近々行って参ります。
何故か物凄く楽しみなのであります。
楽しみに思わせる意外なキャスティングこそが、浅利様の策略なのでしょうか。

投稿: yumo | 2011年1月24日 (月) 02時48分

はじめまして。コメントするのは初めてですが、
毎回楽しく拝見させて頂いております。

ここ最近の観劇日とそして感想がかなりリンクして
いたので思わずコメントしているところです。

私も樋口ドナには非常に驚きました。
以前ウィキッドでも直前めぐ→ひぐ
を味わったことがあったので少しは抗体(!?)
が出来ていたとは言え、この演目でも
そう来ちゃったかと。

肌の色と髪型だけでは誤魔化し切れていないことと
この演目における四季の発音法の違和感から
全体的な満足度が下がったのでしょうか。。

樋口さん自体は大好きなんですけど…
今回ばかりはちょっと…

…ま、それでも変人阿久津さんを観れたので
そこはピンポイントで大満足でした。

投稿: わんじろ~ | 2011年1月24日 (月) 10時38分

やおぼさん、こんにちは。私も、樋口ドナには、びっくりしましたよ~。この間、濱田ドナを観て、良いんだけど、やっぱ、若すぎるかな~って思ったばかりだったんで。でも、観てみたいです。樋口さん、好きなので。来月4日に「マンマ」観に行く予定なので、キャストが、どうなってるかですね。
阿久津サムは、変でした。う~ん、セリフ回しとかが、違和感が・・・。私は、荒川さんのファンなので、久々に荒川サムが観たいですがね~。

投稿: ろん | 2011年1月24日 (月) 19時31分

よしぼうさんこんにちは。

あはは、ぜひ見たってください。でも「襲撃」は人聞きが悪いな。パトロール隊は、どうかな?

投稿: ヤボオ | 2011年1月24日 (月) 23時57分

友都さんこんにちは。

確かに!若手ラダメスの発掘は急務ですな。あざみの限定の逆ウラシマ効果の解明も必要です。

ブログ拝読しました。興味深い問題意識をお持ちでいらっしゃるので、また読ませてください。

投稿: ヤボオ | 2011年1月25日 (火) 00時01分

yumoさんこんにちは。

濱田‐樋口、芝‐阿久津、という具合に役者同士で役を競わせるケースが多いみたいですが、やっぱり個性ってありますからねえ。

ま、いろんなキャストを観られるのは幸せなことだと思って、楽しんでいきましょう!

投稿: ヤボオ | 2011年1月25日 (火) 00時08分

わんじろ~さんこんにちは。

樋口ファンとしては、楽しみというよりハラハラしてしまう舞台でしたが、それでもなんとかこなしていたので大したものだとは思いました。

それにしてもこれだけ俳優がいるのに、一部の役者に頼りすぎな四季の現状はちょっと心配ですね。

投稿: ヤボオ | 2011年1月25日 (火) 00時13分

ろんさんこんにちは。

私も荒川サム好きです!でも、やっぱり元アイドルなので、最後のあの衣装が微妙に似合っちゃうんですよね。

その点、阿久津サムは見事に似合ってないのが嬉しくなります。

投稿: ヤボオ | 2011年1月25日 (火) 00時15分

ヤボオさんはじめまして。いつも楽しく拝見しております。

偶然にも金曜日に樋口ドナのデビューに立ち会いまして、ホントに「びっくり仰天」いたしました。
確かにいろいろ思う所はあるものの、無難にこなしていた所は凄いですねぇ~樋口さん。

あと思ったのは、足の細さとダンスの軽快さとちょっとしたセリフ(笑いを取るような所)や
動き(MANMA MIA!を歌いながらドアを背にずり落ちるタイミングや、SUPER TROUPERを
歌い終えた後の疲れ具合?)は少し保坂ドナを思い起こさせるなぁ~懐かしいなぁ~と思いました。


投稿: と~びん | 2011年1月26日 (水) 05時36分

と~びんさんこんにちは。

それは貴重な機会に恵まれましたね!
わたしもなんとなく保坂ドナに通じるところがあるな、と感じていたのですが、具体的にどこが、というのがわかりませんでした。

ご指摘のポイントを読んで、なるほどと得心しました。ありがとうございます。

投稿: ヤボオ | 2011年1月27日 (木) 00時38分

僕もたまたま取っていたチケットで樋口ドナを見ましたが呆れました。 あのしゃべり方は、ミュージカルを嫌いという人がよく口にする、“わざとらしい”を絵にかいたようですね。あそこまでの開口法は、子供のミュージカルだけで十分です。 マイクの性能だっていいんですから。。 それが気になって舞台の良さを台無しにされた気分です。この正月テレビ放映された、「嵐の中の・・」を観たのですが、録画して、1.3倍の速度でみると、普通の人が話しているように聞こえました(^^ゞ

話は違いますが、堀内敬子は、浅利さんのお気に入りでしたが、在団中に妊娠しているのが発覚して、解雇されたのではなかったでしょうか?四季に戻る可能性はゼロだと思います(笑) 余計な話しですみません。

投稿: マイク | 2011年1月27日 (木) 10時16分

ヤボオさんこんばんは、花組のaです
ごぶさたしております。

しばらくキャスト表に名前がなく、
心配してましたが、やっぱり
退団されたのですか、花代様・・・号泣
CFY全国公演で戻ってきてくれると信じてたのに。
悲しいですね・・・。

投稿: a | 2011年1月27日 (木) 22時02分

マイクさんこんにちは。

確かに四季メソッドに一番忠実な演技だけに、マンマ・ミーア!の微妙にユルい空気感とは合わないところがあります。

もっとも、東京初演を観たときは四季とこの作品がそもそも合ってないんじゃないかと感じたものですが。

日がたつにつれて、こなれてくればいいのですが・・・

投稿: ヤボオ | 2011年1月28日 (金) 00時39分

aさんこんにちは。

すでにソロ活動も始めてるみたいですし、また舞台で見られる日も近いと思います。

どんな作品でどんな役を演じるのか、今から超楽しみです。

投稿: ヤボオ | 2011年1月28日 (金) 01時14分

はじめまして。
地方在住のためなかなか観に行けず、時々こちらにお邪魔して楽しませていただいております。
樋口さんって、いつもめぐ様の次って感じで気の毒だなあと思っておりました。
仙台でめぐドナを観て、東京でロングランにするならめぐ様以外に誰がドナを?まさか樋口さんはないだろうと思っておりましたので、びっくり仰天です。
五東さんは退団してしまったのですか?

投稿: ayamama | 2011年1月28日 (金) 10時12分

ayamamaさんこんにちは。

もう誰が在籍しているのかサッパリわからなくなりました。

それでも各作品がちゃんと回ってるならいいのですが、あっちこっちで無理が生じている状況なので、ますます情報が欲しくなるのももっともですな。

投稿: ヤボオ | 2011年1月29日 (土) 01時49分

ヤボオさん、いつも楽しみに拝見しています。

おっしゃるとおり最近の代表様のお考えには…?
主役級が豊富だった10年前が懐かしく思われます。
そのうち阿久津・樋口の二枚看板まで去ってしまわないかと心配です。

投稿: 大将 | 2011年2月 1日 (火) 08時04分

大将さんこんにちは。

そうですね、ちょっと前までは誰かが退団しても、また新しい人が成長してきたし大丈夫、と思えましたが最近は不安を感じます。

救いは客演による復帰が多くなってきたことでしょうか?もっとオープンに人材が行きかうようになるといいと思います。

投稿: ヤボオ | 2011年2月 2日 (水) 00時47分

記事のエントリーからかなり時間たってのコメントすみません。。。

樋口さんドナは私もびっくりです!
YouTubeのshikichannelで見ただけですが、たしかに樋口さんは若い。このドナはちょっと違和感を感じてしまいました。

個人的には樋口さん好きですし、がんばってほしいです。彼女から自然に出てるあのはつらつとした明るさがドナに早くなじむといいなぁと思います

投稿: ワタコ | 2011年2月16日 (水) 13時31分

ワタコさんこんにちは。

考えてみたら彼女のデビュー間もないころからずっと見ているので、大きな役をどんどんこなすのを目撃できるのは楽しいですね。

どの役も真面目に取り組む一方で、「らしさ」を失わないのも魅力です。


投稿: ヤボオ | 2011年2月20日 (日) 00時27分

僕も先日樋口ドナを観ましたが、演技力・歌唱力共に素晴らしかったです。
30代前半でオバサン役はちょっと可哀想な気がしますが、裏を返せば四季の看板スターになったということでしょう。


>いつかは樋口ドナ、木村花代ターニャ、吉沢梨絵ロージーなんて時代が来るのかな、と妄想していたが

下村尊則さんや鈴木綜馬さんのように外部出演してほしいですよね。

投稿: パレ・フーゴ | 2011年7月24日 (日) 11時25分

パレ・フーゴさんこんにちは。

新しいロージーも登場したみたいだし、ドナだけでなくどんどん新しいターニャやロージー、サムが出てくるといいなと思います。

外部からの出演、鈴木ほのかドナみたいなヒットをまた実現してほしいですな。

投稿: ヤボオ | 2011年7月24日 (日) 20時22分

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