ハーレム見学
ニューヨークで、一度は行ってみたいと思いつつ、まだ訪れていなかったのがハーレムだ。
「ダイ・ハード3」の冒頭シーンもそうだが、とかくハーレムは物騒なところということが喧伝され、行ってはいけないというイメージが自分の中でも凝り固まっていた。その一方で、見学意欲も大いに高まっている。
そこで、日本人向けのニューヨーク観光会社が企画するツアーに参加した。日曜朝にゴスペルを見学したあと、いくつかのポイントを案内してくれるのだそうだ。これは面白そうである。
朝7時すぎにミッドタウンを出発しバスでマンハッタンを北上。セントラルパークと高級住宅街の間を抜け、7時半ごろハーレムに到着した。
まずは116丁目にある「First Corinthian Baptist Church」へ。
オペラハウスを改装したという協会で、内部は歴史を感じさせる劇場そのままの雰囲気。緊張感もあるが、次第に集まる信者の方々が互いに声をかけあう様子などを見ているうちに、だんだん気持ちもやわらかくなってくる。
舞台上には30人ほどのクワイヤー(聖歌隊)は、みな黒を基調にしたスタイリッシュなファッションで、すらりとした長身の人も、恰幅のいい人も、男性も女性も実にカッコよく決まっている。そしてピアノやギターなど、数人のバンドが下手に控えている。
8時を過ぎるとクワイヤーが歌いはじめる。途中から、そのうちの一人が礼拝の参加者を代表してリードをとり、他のクワイヤーや参加者がそれに続くようになる。
だんだん協会内の空気が盛り上がってくる。自分たちももちろん傍観者ではいられない。そうしなくてはいけない、というより、そうしたくなって、みな立ちあがって体中でリズムを取り始める。クリスチャンでなくてもゴスペルには魂を揺さぶられると聞いていたが、確かにその通りだ。途中、信者同士でコミュニケーションをとるよう促され、みな思い思いにハグしたり、手を握ったりしはじめる。自分はどうしようかな、と思っていたら(両隣はツアー参加者の女性だった)、前の席に座っていた男性がくるりと振り返り、手をさしのべてきたのでがっちりと固い握手を交わした。福井マンカストラップと交わした男の握手のようだった。
1時間ほどでゴスペルは終了。ここからが牧師さんの話で、礼拝の本番なわけだが、見学者たちは信者さんの迷惑にならないよう静かに退出。みな思い思いに寄付金を納めて協会を後にした。
いやあ、これは貴重な体験をした。エンターテインメントの原点は宗教的な部分にたどりつくということを改めて思い知った。
さらに北へ、125丁目のアポロシアター前へ。足元には数々のスターの名が刻まれていた。
その向かい側に、店舗のシャッターに絵を描き続けているフランコ氏が観光客の相手をしている。この十数年、ハーレムの街の美化に向けた多くの活動がなされ、中心部はもはや落書きと廃墟の街ではなくなった。フランコ氏もその担い手の一人。高齢だが寒い朝から元気に写真撮影やサインに応じていた。奥さんが日本人ということもあり、日本語もぽんぽん出てくる。その奥さんがTシャツやエコバックなどのグッズを販売している。日本人観光客にはぴったりの観光&お土産スポットだ。
フランコ氏と。
そのあともいくつかの観光スポットを効率よく回る。
初代財務長官・ハミルトンの生家(車中から)
ニューヨーク市立大学シティ・カレッジ
モリス・ジュメル邸
古い集合住宅
グラント将軍の墓
コロンビア大学
セント・ジョン・デバイン大聖堂
10時半ごろにはミッドタウンに戻り解散。3時間ほどのコンパクトなツアーだが、実に充実していた。しかも早い時間に終わるので、ミュージカルのマチネ前の観光のその前の時間を有効に使うことができるのもいい。
またこのツアーでは、ハーレムの歴史的価値を学ぶことに重点を置いていた。
ハーレムには多くの史跡保存地域があり、古い建物や街並み、数々の歴史的資産が点在している見ごたえのある地域だということを学んだ。
そして、まだ危険な地域があるのは事実とはいえ、中心街などは街の美化が大いに進んでいることも分かった。
そして何より、そこに暮らす人たちの日常の空気を、ほんのわずかとはいえ味わうことができたのは大きな収穫だった。
ハーレム内の移動は交通の便があまりよくはなく、またこの地域の情報は情報誌などでも非常に乏しいことから、危険を避けるという意味合いにおいても、ツアー参加がお勧めだと思う。
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コメント
ちゃんと起きれたんですね。良かったです。
投稿: みやばやし | 2010年12月28日 (火) 10時18分
みやばやしさんこんにちは。
起きましたよー。つうかホテルに戻ってすぐ寝て、3時ごろ起きてブログ書いてました。
投稿: ヤボオ | 2010年12月28日 (火) 21時13分