« AKB48劇場5周年特別記念公演 | トップページ | 四季「マンマ・ミーア!」東京公演初日~王女の帰還~ »

2010年12月11日 (土)

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」 良くも悪くも黒木メイサの映画

賛否両論渦巻く、というよりかなり否定的評価を受けつつある「ヤマト」実写版。

俺はといえば、実に楽しく観た。終わったあと「もう1回観ようかな?」と本気で思った。

この「楽しく観た」「もう1回」が、人によっては不満のもとになっているようだ。つまり、ヤマトらしい緊迫感に欠ける、そしてそこそこの上映時間にもかかわらず、オナカ一杯にならない、ということだからだ。

しかし、もう肉より野菜を好んで食べるようになっているヤマト世代には、このぐらいのマイルドさがちょうどいいんじゃないか、という感じだ。

そういう映画である。

ここからちょっとばれるので、これから観る人は読まないことを推奨します。

何が楽しかったかといえば、この作品が、アニメ版ヤマトに対する愛にあふれている点だ。そこかしこに、アニメ版へのオマージュと思われるセリフやエピソードが盛り込まれ、それらを探しているだけでもわくわくする。

発表当初話題を呼んだキャスティングについても、自分は「面白い布陣だな」と感じていた。古代進の木村拓哉が特に議論の対象になっていたが、自分はそれはアリかも派だった。古代というキャラクターは、実は大いなる宇宙戦争のかたわらで地球人・宇宙人入り乱れて繰り広げられる群像劇の、いわば狂言回し役で、特殊能力を持っているわけでも、とりわけ魅力的なキャラクターでもない。薄いキャラなのだ。もし声が富山敬でなかったら、あんまり印象が残らなかったかもしれない。だから、ある意味古代進は誰が演じてもいい。木村拓哉という強烈なキャラクターを持ってくれば、すなわち強烈な古代進の誕生を意味するのだ。どんな古代になるのか、大いに楽しみにしていた。それ以外のキャラクターも、おおむね納得がいくものだったし、真田さんが柳葉敏郎と聞いたときにはもうそれだけで劇場に足を運ぶ価値があると思った。

で、実際にスクリーンで見ると、期待どおりの演技が次々に繰り広げられ、嬉しくなった。いくつかアニメとは設定上の変更がなされているが、古代進の年齢上昇に伴い島もオジサンになり、森雪の役割変更とツンデレ化、佐渡先生の性転換などなど、いずれもストーリー上、演出上の理由があってのこととであり、さほど違和感は(個人的には)感じなかった。

一方で、柳葉敏郎の真田さんのように、アニメキャラの忠実なコピーもある。何といっても、山崎努という名優が完コピをしているのが興味深い。見る人によっては「あんなの沖田艦長じゃない」というかもしれないが、豪胆にして冷静、情は深いが自分の感情を表現するのが苦手で、でもちょっとお茶目、というあたりが、そのまま沖田十三だと感じた。

ストーリーもうまくまとまっていてテンポよく進むし、CGもまあまあの出来ばえで、最後まで眠くならずに楽しむことができた。

が、全体として何か物足りないという指摘は確かにその通りだと思う。いろいろ足りないところはあるが、自分が一番足りないと感じたのは、ヤマトの物語に満ち溢れる、戦争映画のロマンチシズムではないか。沖田・古代とデスラー、そして七色星団で激闘を交わしたドメル将軍といった、フィクションの戦争に欠かせない男と男の濃ゆーい関係。そういう暑苦しい要素はすっかりそぎ落とされ、すっきりさっぱりした味わいになっている。

だがそれはあくまで個人の趣味の問題であって、○○がないからこの映画は駄目、という批判にはあまり共感しない。

とはいえ、ではこの映画がすべて狙い通りに出来上がった快作かと言われると、それにもちょっと疑問符がつく。

おそらくこの映画は、「娯楽としての戦争映画」だった旧作とは異なり、ヤマトという閉鎖空間の中で展開する密室劇を目指したものと思われる。それを、迫力あるCGの戦闘シーンで包み込んで、一大エンターテインメントに仕立てよう、という寸法だったのではないか。問題は、その群像劇の軸を、古代と森のラブストーリーに置いてしまったことだ。いや、それは問題ではなかったかもしれない。そこに、ひとつの計算違いが起きたことが問題だったのだ。それは、森雪を演じるのが黒木メイサになったことである。

当初、森雪は沢尻エリカが演じる予定だったと伝えられている。彼女の人格や亭主のことはさておき、その演技力は大いに評価できる。もし予定どおり、彼女があのツンデレな森雪を演じていたらどうなっていただろう?

それを想像するのは意味のないことだが、黒木メイサになったことで、重大な祖語が生じた。沢尻エリカと黒木メイサは2歳しか実年齢は変わらないけど、黒木メイサはやっぱりカワイイのである。いや、沢尻エリカがかわいくないと言ってるのではなく、黒木メイサは、ちょっと大人っぽく見えるがその表情や動きが、どちらかというと少女っぽいのだ。木村拓哉との間に16歳差という実年齢差以上のものを感じてしまう。それがどうにも、2人のラブストーリーの説得力を失わせることになり、結果、群像劇の軸としてはあまりにも軟弱なシャフトになってしまった。ラストシーンで「おいおい!」とスクリーンに突っ込みたくなったのは観客の9割以上と推定される。もちろん沢尻が演じていれば丸く収まったかといえば、それは保障の限りではないのだが・・・

じゃあ黒木メイサのキャスティングは失敗だったのか。とんでもない。あのかわいらしいツンデレぶりは、日本映画界に残る魅力的なヒロインだった。俺が「もう1回観ようかな」と思った理由のほとんども、あの森雪をもっと見たいと思ったからだ。

あまりにも魅力的でありながら、その魅力ゆえにこの大作の根幹を揺るがすことになってしまった黒木メイサの森雪。本当に映画というのは何かひとつの要素で大きく味わいを変えてしまうのだ、とつくづく思う。

結局、この映画の楽しさは旧作へのオマージュでしかないことを考えると、旧作が好きな人には大いにおすすめしたいが(ただしあまり思い入れが強くないことが前提)、旧作を知らない、という人は、あんまり観ないほうがいいのかもしれない。

なんだかネガティブな結論になってしまったが、黒木メイサの森雪はほんとにカワイイので、女優さん好きな人はぜひ劇場で目撃すべき。あと真田さんもな。


俺が観た日、シネコンの受付も乗組員のコスプレをしていた。いいぞいいぞ!

SPACE BATTLESHIP ヤマトのウェブサイト
http://yamato-movie.net/top.html

 

|

« AKB48劇場5周年特別記念公演 | トップページ | 四季「マンマ・ミーア!」東京公演初日~王女の帰還~ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/98342/50275988

この記事へのトラックバック一覧です: 「SPACE BATTLESHIP ヤマト」 良くも悪くも黒木メイサの映画:

« AKB48劇場5周年特別記念公演 | トップページ | 四季「マンマ・ミーア!」東京公演初日~王女の帰還~ »