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2010年7月11日 (日)

四季「美女と野獣」ホレたぜ!福井ビースト

ビースト 福井晶一
ベル 坂本里咲
モリース 松下武史
ガストン 田島亨祐
ルミエール 百々義則
ルフウ 遊佐真一
コッグスワース 吉谷昭雄
ミセス・ポット 遠藤珠生
タンス夫人 大和貴恵
バベット 長寿真世
チップ 牧野友紀

実に12年ぶりの東京公演となる「美女と野獣」が開幕した。京都や福岡、広島や静岡などでも観てはいるが、大好きな作品にもかかわらず比較的(あくまで本人比)観た回数は少ない。そう考えると関東でのロングランはやはり嬉しいものだ。

初日を迎えるにあたって、注目のポイントは2つ。1つは新たに作られた「四季劇場・夏」だ。大井町駅からやや遠回りに商店街を歩き、その中ほどを右に折れて10メートルほど歩くと突如右手に見えてくる。徒歩5分。商店街には飲食店も多いので、観劇前にちょっと飯でも、というニーズには応えてくれそうだ。

「スマートチケット」とかいう、QRコードつきのチケットをリーダーにかざすと、だいたいの座席位置を示す紙がプリントされて出てくる。慣れない人もいるので入場にやや時間はかかっていたが、システムそのものは快適に動いていた。ただ、ガラケーの画面にQRコード、ってのはやや古いかなあ、とも思う。この際四季の会会員カードをFelica対応にしたらどうか。ついでにいっそ「四季カード」の発行に手を染めてくれても…特典にちょっと期待。

1階のロビーはちょっと狭め。2階のほうが余裕があるが、椅子が少ないため床に座り込む児童がちらほら。その2階にスナックコーナーがあり、VIE DE FRANCEのパンを売っている。なので他の劇場に比べればサンドイッチやホットドッグなどのコストパフォーマンスは悪くない。ドリンクメニューに、アイスカフェオレがなかったのは残念。

男子用トイレは1階、2階ともに狭い。2階のほうがわずかに広い。客席数を考えれば2階の利用がおすすめだ。女子トイレの内情はわかりません。

と、劇場観察もそこそこに席に座る。生オケでないのは悲しい。なんだか音質のイマイチな録音のオーバーチュアとともに幕があがった。

もう1つの注目ポイント、それは何といっても福井晶一ビーストの登場である。

福井ビースト、と聞いたとき、「それはピッタリだ!」と感じた。新しいビースト役の名を聞いてそう感じたのは2回目。1回目は、ついに舞台に登場することはなかった、初演の山口祐一郎だ。その他の役者の場合、芥川英司も、荒川務も、石丸幹二も、今井清隆も、柳瀬大輔も、最初は「イメージが違うな」と感じたものだ。もっとも、実際に観るとそんな違和感は吹き飛んで、みな実に魅力的、個性的な愛すべき野獣たちだったが――。

その期待の新ビーストが舞台に登場。果せるかな、まさしくディズニー版美女と野獣のビーストそのものだった。

大きな体に小さな心臓。傲慢さと純粋さが同居する、恐ろしくて、かわいくて、せつなくて、ちょっと面白いビーストがそこにいる。

演技だけ、あるいは歌だけ見れば、歴代のビースト役者のほうが上を行っているかもしれない。だが福井晶一の場合、存在そのものがビーストになりきっているのだ。このビーストを見てしまうと、これまでのビーストはみな「うまくこなしていた」ように思えてしまう。

一幕最後の「愛せぬならば」。福井が「愚かなヤツ…」と歌い出した瞬間、背中がゾクゾクッとした。悲痛な思いを絞り出すように、しかし堂々と歌い上げるその姿と歌声に触れたら、男でも惚れてしまいそうになる。女性であれば、そして福井ファンであれば、卒倒すると思う。

笑いもきちんと取れていた。ところどころ、他の役者なら笑いが起きる場面でそうならないこともあったが、逆に他の役者なら笑わせないところで笑いが起きていた。福井ビーストの、いかにも人づきあいの苦手な不器用さが、期せずして笑いを誘うのだ。

フィナーレではアレの動向が非常に気になったが、カツラをかぶっていることもあり、さほど心配するに至らなかった。「多少おでこの広い人だな」というぐらいだ。それも含め、王子に見えるかどうか気をもんでいたが、これは大丈夫。眉毛のキリッとした、精悍な顔つきのカッコいい王子である。まあ王子というより王様かもしれないが。きっと、野獣に変えられる前はもっとだらしない顔だったのだろうが、苦労して、さらに愛し愛されることを知ったことで、顔つきが変わったのだろうな、などと妄想したくなる。だからコッグスワースは最初誰だか分らなかったのだ。

福井ビーストを見るだけでも、この公演に足を運ぶ価値はある。今回こそは、最初だけ出してすぐキャスト変更、ってのはナシですぜ。

ベルには坂本里咲。個人的に大好きな女優さんだし、声もかわいいのでベル役で十分通用するのだが、そろそろこの役は若手にバトンタッチすべきと考える。東京初演では、堀内敬子や濱田めぐみの大抜擢があった。ぜひ今回の公演で、四季を引っ張る新たなヒロインが生まれることを期待したい。その前に、まだ見てない沼尾めぐみのベルは見たいけど。

ビースト以外は経験者の多い、安定感のあるキャスト陣ではあるが、ガストンやルミエールにはもっと強烈さが欲しいのも偽らざるところだ。「美女と野獣」は、アニメーションをそのまま舞台にしたような作品だ。もっとデフォルメした、派手な演技が見たい。やはり歴代のガストンでは、今井清隆の印象が非常に強い。背はちょっと低かったけど何ともアクの強い、食えないガストンだった。自分はアニメーション版を見たときから、このガストンというキャラクターが大好きなので、これを誰が演じるかはビーストやベル並みに気になるのだ。吉原光夫のガストンを見逃したのは全くもって残念だ。この作品限定でいいから戻ってきて演じてほしい。一方ルミエールは、下村尊則の系譜を道口端之が受け継いでいるが、もっとヘンなルミエールが出てきてくれると嬉しい。

遠藤珠生のミセス・ポットは初見。歌も表情も、なかなかチャーミングなポット婦人である。アンサンブルでは、シュガーポットがちょっこし気になった。

この東京公演がいつまで続くか分からないが、福井ビーストがどう進化していくのか、新キャストがどう入ってくるのか、楽しみに通いたい。横浜→大井町のシーサイドなハシゴ観劇もそのうち実践することになるだろう。

201007112332000

四季「美女と野獣」ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/bb/index.html

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コメント

こんばんは。

レポ、お待ちしておりました!
自身が行けない分、絶対に初日に行っていただき、レポしていたけると、勝手に思っておりました。

花ベルがきたら、通い詰めになりそうですね(笑)

いろいろなレポの更新がないときは、やめられてしまったのかな? と不安になりますが、MJから更新があり、安心いたしました。

これからも楽しみにしております。

投稿: 宇都宮 | 2010年7月12日 (月) 01時59分

おお、うちの地元なんです。そう言えば初日だなあと昨日話していたところでした。行こうって気になりました。ありがとうございます。

投稿: taiyo | 2010年7月12日 (月) 07時38分

ヤボオさん、こんばんは。早速の初日レポありがとうございます

幻の山口ビースト懐かしいです。
福井さんははまり役になりそうですね。不器用で、でも誠実なビーストを観せてくれそうです。夏休みも重なっても7月は売り切れのようです。

新キャストには阿久津ガストンってどうでしょう?(笑)


しかし救われないのはエジプトです。新ビーストに続き、新将軍デビューはないのでしょうか?
もちろん復活もです。

投稿: 千尋 | 2010年7月12日 (月) 20時09分

宇都宮さんこんにちは。

生来のナマケモノなので、とくに面白いことがないとブログもほったらかしにしてしまいます。

美女と野獣は大好きな作品なので、ちょくちょく通う予定です。

投稿: ヤボオ | 2010年7月13日 (火) 01時29分

taiyoさんこんにちは。

おお、そうでありましたか。大井町久しぶりに行きましたが、なかなか味のある商店街なので、こんどゆっくり覗いてみようかと思います。

投稿: ヤボオ | 2010年7月13日 (火) 01時30分

千尋さんこんにちは。

阿久津ガストンいいですねえ。そのぐらいの強烈さが欲しいところです。

外部からの起用も積極的にお願いしたいです。

投稿: ヤボオ | 2010年7月13日 (火) 01時34分

こんばんは。
きっと行ってくださるだろうと信じてました。
福井ビーストとても気になります。
今井さんの時のように『…王様じゃん』ってならないようで安心しました。

15周年もありますし、野村・芥川コンビの復活なんてあったら楽しいんですけどね。

投稿: らべたん | 2010年7月13日 (火) 03時56分

らべたんさんこんにちは。

今井ビーストもなかなか良かったですが、確かに王子ではなかったですな。

復活はぜひ芥川・堀内コンビでお願いしたいです。

投稿: ヤボオ | 2010年7月14日 (水) 00時30分

ヤボオさん、こんばんは
なかなか東京までは行けないのでレポ楽しみにしていました。毎回見てもいないのに、見た気にさせられています。ありがとうございます。
今年の夏は、新トート閣下もデビューされますし、福井ビーストも見たいので東京行こうかな~と思っています。
こちら大阪では花グリンダが待たれる所ですが、まだみたいなので京都でポリーを堪能しようとチケットを数回取りました。
四季観劇歴20年ですが、最近ホントにキャストが自転車操業状態な感じがしてやみません。愛する劇団はいつまでも最高のグレードで芸術を提供して欲しいものです。

投稿: みーやん | 2010年7月15日 (木) 22時40分

みーやんさんこんにちは。

新トート閣下、楽しみですね!まだチケット確保してないですが、観たいと思います。
四季のキャストは決して人材がいないわけでもないと思うのですが、どうして自転車操業になってしまうのでしょうねえ。とっても不思議。

投稿: ヤボオ | 2010年7月16日 (金) 01時31分

久しぶりにコメントします。
私も行って来ました。「美女と野獣」
福井ファンの私としては1幕の最後、まさに卒倒しそうでした!!カッコよすぎる!福井ビースト!ラストの素顔見せの場面は叫びそうになりましたし…★
娘と行ったのですが、福井ビースト気に入ったようです。声がカッコいい、と言ってました。
しかし、しきりと「ベルがおばさん!」と文句を言っておりました。やはり子供からしたら、おばさんなんでしょうねえ…ぜひ、若い新ベル期待します!!

投稿: たつとこ | 2010年7月27日 (火) 12時56分

たつとこさんこんにちは。

ぜひ娘さんには、「見かけで判断することのないように」と教えを・・・いや、無理か。

投稿: ヤボオ | 2010年7月28日 (水) 01時32分

 こんばんは。初コメントで失礼ですが文章中の役者さんのお名前
沼尾めぐみ さんではなく 沼尾「みゆき」さんではありませんか?
 わたしも沼尾さんにベルをぜひ演じてほしいと思います!グリンダの時から大ファンなのです。
 先日観劇しましたが、思っていたより小さな劇場でロビーは大混雑。プログラムを買うにも長蛇の列でした。
 

投稿: ミラクルK | 2010年7月31日 (土) 23時11分

ミラクルKさんこんにちは、はじめまして。

ご指摘どうもありがとうございます!
固有名詞を間違えてはいけませんな。今後はきちんと校正してからアップするようにいたします。

今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

投稿: ヤボオ | 2010年8月 1日 (日) 02時45分

坂本 里咲さんで、ベル役はきついですね。
見た目がおばさんだもん。

投稿: 若手 | 2010年12月23日 (木) 16時35分

若手さんこんにちは。

まあ、そのあたりは好き好きということで…

投稿: ヤボオ | 2010年12月25日 (土) 01時35分

>ベルには坂本里咲。個人的に大好きな女優さんだし、声もかわいいのでベル役で十分通用するのだが、そろそろこの役は若手にバトンタッチすべきと考える。

僕も先日美女と野獣を観に行きましたが、40代後半の坂本ベルには少々がっかりしました(坂本さんファンのヤボオさんには申し訳ありませんが)。
せめて、30代前半の樋口さんあたりを起用して欲しかったです。

投稿: パレ・フーゴ | 2012年1月21日 (土) 10時27分

パレ・フーゴさんこんにちは。

長年演じ続けることで味が出てくる役、というのもあると思いますが、少なくともこの作品のベルはそういう役ではないと思いますねえ。

投稿: ヤボオ | 2012年1月22日 (日) 03時47分

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