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2010年4月 3日 (土)

劇団☆新感線30周年興行 SHINKANSEN RX「薔薇とサムライ Goemon Rock OverDrive」

作・中島かずき
演出・いのうえひでのり

石川五右衛門 古田新太
アンヌ・ザ・トルネード 天海祐希
シャルル・ド・ボスコーニュ 浦井健治
デスペラード豹之進 山本太郎
ポニー・デ・ブライボン 神田沙成加
エリザベッタ 森永みはる
海賊バルバ・ネグロ 橋本じゅん
マローネ(アバンギャルド公爵夫人) 高田聖子
ガヴァス・デ・ナルビオッソ将軍 粟根まこと
ラーカム・デ・ブライボン大宰相 藤木 孝
ゴンザンス男爵 右近健一
ドッカーノ伯爵/海賊翁オスクラ・メンデ 逆木圭一郎
ピエール・ド・ボスコーニュ 河野まさと
海賊サングリア 村木よし子
山賊ゲッソー/ジェイケンンス侯爵/海賊ゲッソーラ インディ高橋
海賊ヴィノ 山本カナコ
酒場の店主リカー/マグロマル子爵 礒野慎吾
親衛隊長デカール 吉田メタル
海賊セルベーサ 中谷さとみ
海賊ヘレス 保坂エマ
山賊マルゴーネ/海賊マルゴネス 村木 仁
エスパーダ男爵 川原正嗣
海賊ソルタード 前田 悟
カンテ 冠 徹弥
ヴォス 教祖イコマノリユキ
コスカーリャ司教 武田浩二

<少しばれます>

久しぶりの新感線。2008年夏の「五右衛門ロック」の続編にあたる「薔薇とサムライ」だ。

明るくてゴージャスな、豪華版いのうえ歌舞伎といった印象のこの作品。目玉は何といっても2003年の「阿修羅城の瞳」以来となる天海祐希だ。「阿修羅城」の彼女は、もう圧倒的な存在感で、この世のものとは思えないような、あの世のものを演じていた。7年たってもその存在感は健在。いや、むしろ高まっている。最初のシーンで舞台に登場したときから観客の視線を独り占めだ。彼女は立ち姿が際立って美しいわけでも、動きが華麗というわけでもないように思うが(ファンの人すいません)、その身にまとう眩し過ぎるオーラは他の追随を許さない。まさに舞台のために生まれてきたような人だ。その天海をさらに際立たせるのが、海賊姿から美しいドレス、そして明らかにオスカルな衣装まで(彼女は宝塚時代にオスカルは演じてないと思うが)、くるくると変わる七変化だ。彼女を見ているだけで、もう満腹なほどである。

だから、今回主役であるはずの古田五右衛門は、完全に脇に回っている。そのぶん、古田は細かい演技(と、細かいギャグ)に力を注いでいる。五右衛門は明らかにアンヌにホレているのだが、それが観客にひしひしと伝わってくる。古田の演技のうまさに改めて気付かされた。そしてラストシーンでは、セリフもシチュエーションも全然違うが、どことなく「カリオストロの城」の最後におけるルパンのように、未練たっぷりのせつない男心を感じさせ、ちょっとほろりときた。と思っていたら、最後のアレは明らかにルパン第1期18話のアレだろう。パクりというより、オマージュだな。と思っていたら、客の追い出しBGMがルパン第1期のエンディング曲。うーん、やっぱりなあ。

山本太郎、神田沙成加、浦井健治といった新感線初参加のメンバーも、みな驚くほど「新感線」に求められるものが何だか完ぺきに理解している。山本太郎の役どころは、ネタものなら池田成志が演じる役だろうし、浦井健治の役どころは、劇団員なら今回その子分を演じた河野まさとが演じるべき役だ。新感線の文脈をきっちりと押さえたうえで、自分の持ち味を発揮している。神田沙成加は、ばくぜんといい演技をしそうだな、と期待していたが、予想以上にいい。「レ・ミゼラブル」でも見ときゃよかったかな。

作品のテイストとしては、中島かずきらしい、敵・味方入り乱れての爽快な冒険活劇だ。しかしやや構図は単純なので(彼の脚本にしては)、いつものように頭の中に勢力図を描きながらストーリーを追う必要がない。また、曲の作詞を森雪丞が担当し、楽曲のウェイトがぐんと上がっている。これによって、他の公演よりもミュージカル的な雰囲気が強くなった。こういう場合、ミュージカルに慣れていない役者が演じると「何を言っているのかわからない」ことになるのだが、天海、浦井、神田らが、非常にはきはきとした発声で歌いあげるので、まるで劇団●季のミュージカルのように安定感があった。

やや長いのはいつものことだが、話のテンポもよく、立ち回りや大海戦など派手な見せ場も多いので、全く飽きることなく最後まで見ていられる。演劇ファンとしてもミュージカルファンとしても、自信を持ってオススメできる一作だ。

なのでこの作品自体には大いに満足している。本当に楽しかった。

が、これはあくまで個人的な事情で、やや複雑な思いもあることは確かだ。非常に楽しい時間を過ごしながら、どこか「昔の新感線は…」と思ってしまう。それがノスタルジーに過ぎないことは百も承知である。その上であえて言うと、今の新感線は、味が薄いのだ。そして、それが多くの人に受け入れられるものであることも知っている。だから複雑なのである。大人になった新感線が、大手プロダクションと連携し、より大きな興行を仕掛けることで、実に多くの人が新感線ワールドを体験することができるようになった。それはいいことだ。だが、昔の、もっと笑いもアクションも、ついでに下ネタも、より濃いめの味付けの新感線を、俺の舌が求めてやまないのだ。

例えて言うなら、今の新感線はカルピスウォーターだ。みんなに好かれる、ほどよい味。しかし、昭和40年代生まれとしては、子供のころに自分で作った、もっと濃い味のカルピスをまた飲んでみたいと思う。そんな感じ。

というわけで、やはり自分としてはこの秋に上演される久々の「ネタもの」、「鋼鉄番長」に大いに期待したい。規則正しく3年ごとに上演される、いのうえひでのり作・演出の「ネタもの」シリーズは、100%ばかばかしいギャグだけで構築され、それ以外には感動もカッコよさも何もない。3年前の「犬顔家の一族の陰謀~金田真一耕助之介の事件です。ノート」は、この10年ぐらいの新感線の中では最高傑作だった。あれ、DVDにしてくれないかな。みんなに見せたいんだけど。

201004031745002 桜と薔薇とサムライ

「薔薇とサムライ」公式ウェブサイト
http://www.bara-samu.com/

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コメント

今ごろのコメント、スミマセンっ!
ヤボ夫サマをこっそり師と仰がせて頂いているモノです

同じ日のソワレ公演を観に行きました
そして
同じアングルで写真を撮ったので、恐れながらコメントさせて頂きたくなりました

新感線は『五右衛門ロック』からデビューし、今年は「鋼鉄番長」が観たいので【新感線クラブ】に入ってみました
ヤボ夫サマおすすめの「ネタもの」は観たコトないので、期待大です♪

投稿: の。の | 2010年4月18日 (日) 15時45分

の。のさんこんにちは。

「ネタもの」は好き嫌いがはっきり分かれるので、気に入っていただけるかどうか・・・
DVD化されている「轟天」シリーズなどご覧になってみてはいかがでしょう。

投稿: ヤボオ | 2010年4月19日 (月) 00時25分

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