宝塚歌劇 花組公演「相棒」
杉下 右京 | 真飛 聖 |
パリス・エヴァンス | 桜乃 彩音 |
神戸 尊 | 壮 一帆 |
内村 完爾 | 星原美沙緒(専科) |
小野田 公顕 | 夏美 よう |
三浦 信輔 | 眉月 凰 |
教祖 | 絵莉 千晶 |
ノーマン・エヴァンス | 愛音 羽麗 |
角田 六郎 | 未涼 亜希 |
宮部 たまき | 桜 一花 |
米沢 守 | 華形 ひかる |
伊丹 憲一 | 真野 すがた |
稲田 麦子 | 初姫 さあや |
暴漢 | 扇 めぐむ |
芹沢 慶二 | 夕霧 らい |
アンコ | 華耀 きらり |
キナコ | 天宮 菜生 |
モチコ | 芽吹 幸奈 |
キャロル | 天咲 千華 |
あの人気刑事ドラマ「相棒」を宝塚がミュージカルにした。ゲーム「逆転裁判」だって舞台にするのだから今さら驚かないが、いやでもびっくりした。本当は大阪公演に行きたかったがもろもろの事情で実現できなかったので、日本青年館の東京公演に行くことに。
日本青年館大ホールっていつ以来だろう。昔は劇団四季も使っていて、ここで「夢から醒めた夢」を見た記憶もある。98年2月のことだった。それより遡ると、大西結花やらうしろ髪ひかれ隊など、大学時代によく来ていた。古いホールというイメージがあるが、広すぎず狭すぎず、演劇には適したホールだと思う。
さて、「相棒」だ。土曜ワイド劇場で放送していたときは和泉聖治の演出と水谷豊、寺脇康文の演技がばっちり嵌った面白さに大いに魅了されたが、レギュラー放送になってからはそう熱心に見ておらず、ヒット作となった劇場版もCATVで観たぐらいである。しかし、やはり杉下右京というキャラクターは日本の刑事ドラマの歴史に残る秀逸さであることは間違いない。
この宝塚舞台版では、寺脇演じる亀山薫に代わり、現在右京の「相棒」を務める神戸尊(及川光博)が登場。ストーリーはシーズン5の13話「Wの悲喜劇」を下敷きにしたオリジナルである。
主演の真飛聖は水谷豊のしゃべり方や細かい仕草をばっちりコピーしており、よくもまあここまでなりきれるものだというぐらいそっくりだ。開演前の陰アナからその口調で会場を沸かせていた。角田六郎の「暇か?」は似すぎだし、小野田公顕の喰えなさ加減も、鑑識・米沢や捜一トリオも実に正確に再現されていた。しかし、脚本・演出の石田昌也がパンフレットで「物まね大会にするつもりはないが」と述べているように、単なるモノマネをしているわけではない。オリジナルのキャラクターが持っている雰囲気や印象を大切にし、それを舞台の上で観客に感じてもらうにはどうすればいいかを緻密に計算した演技をしている。だから必ずしもモノマネ的アプローチを必要としているわけではなく、神戸役の荘一帆は及川光博の見せる優雅な物腰に絞って強調し、見事に神戸らしさを身にまとっていた。
そして、作品全体でも同じようなことがいえる。テレビ版「相棒」の舞台版、というのではなく、あくまでこれは宝塚歌劇だ。「相棒」の世界観はそのまま生かしながら、タカラヅカの世界に置き換わっているのである。石田は「様々なジャンルを『宝塚化』するのが宝塚の使命」と述べているが、この「宝塚化」のノウハウ、何でも貪欲に取り込んでしまう雑食性こそ、宝塚の競争力の源泉であり、また百年近い伝統がありながら活性化し続けている秘けつでもあるのだろうと思う。
テレビ版を知らなくても、オープニングからぐっと観客を引き込む派手な演出で、最後までテンポよく展開していく舞台は十分に楽しむことができるだろう。逆に、右京の飛びぬけた天才変人ぶりと「相棒」らしい笑いの要素が強調された舞台のため、原作ファンはややサスペンス性が足りない、と感じるかもしれない。個人的には、また観たいし、続編も期待したい、楽しい舞台だった。
自分は宝塚に深くかかわるとのめり込みすぎるのが分かっているので、こうした新ジャンルの公演に限って足を運んでいるわけだが、劇場に行くたびこの世界にどっぷり入ってしまう誘惑にかられる。やはり劇場という空間はどっかの代表は否定するが麻薬的要素に満ちているのである。
宝塚「相棒」公式ホームページ
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/161/index.shtml
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