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2009年11月29日 (日)

東宝「パイレート・クィーン」山口祐一郎が青年?海賊

グレイス・オマリー 保坂知寿
グレイスの恋人・ティアナン 山口祐一郎
女王エリザベス一世 涼風真世
グレイスの父・族長ドゥブダラ 今井清隆
エリザベスの側近・ビンガム卿 石川 禅
グレイスの夫・ドーナル 宮川 浩

保坂知寿、山口祐一郎、今井清隆、石川 禅。この4人がそろい踏みと聞けば劇場に自然と足が向く。そんなわけで、28日に開幕した「パイレート・クィーン」の2日目の公演を観るために久しぶりの帝劇へ。

保坂・山口コンビの共演って、一体何年ぶりなんだろう。ひょっとしたら自分もその昔「ジーザス・クライスト=スーパースター」あたりで見ているのかもしれないが、たぶん初めてだ。

劇場に入ると、イングランドと独立前のアイルランド旗がプロジェクターで投影されている。プロジェクターが古いのかピントが合っておらず、どうもシャビーな雰囲気だ。いやあな予感がしたが、幕が上がり、海賊船の出航前のシーンが始まると、帝劇の盆をうまく使った船の表現、シンプルだが奥行きを感じさせる照明、そして明快なメロディーとで、船出の高揚感をかもし出し劇場を満たす。ぐっと引き込まれるオープニングだ。

16世紀のアイルランドを舞台に、イギリス女王エリザベス一世と対峙し自治を獲得した実在の女性、グレイス・オマリーをモデルにした、恋あり冒険ありのエンターテインメント性の強いミュージカルである。ストーリーは分かりやすく、ややあっさりしているが、その分娯楽要素を盛り込もうとしているのだろう。

ただ、そのわりにはシビレるほどのエンターテインメント性があるわけでもなく、全体的に薄味ではある。そこを全編にわたってふんだんに取り入れられているアイリッシュダンスと、役者の個性で埋めている印象だ。テンポよく展開するし、眠くなるシーンもないので、気軽に舞台を楽しみたいときにはうってつけの作品だ。

さて、保坂知寿はいきなり娘役として登場。設定は10代か。しかしこれが驚くほど違和感がない。これぞ女優だ。復帰第一作の「デュエット」もまずまずだったが、やはり彼女にはグランド・ミュージカルの舞台が似合う。大掛かりなセットと大勢のアンサンブルに囲まれて、実にのびのびと、いきいきと演じ、歌っている。それがさらに年齢を超越させるのだ。

そしてグレイスは母になり、「海賊の女王」としてリーダーシップを発揮するようになり、と成長を遂げていくが、その成長につれて演技を少しずつ変えていく。改めて保坂の実力を目の当たりにした気分だ。

一方の山口祐一郎。これが何と「青年」海賊という役どころである。長髪の若作りしたメイクで登場し、若さを表現しようとしているのか、変にカン高い声で歌い始める。この時点で、笑いをかみ殺している観客多数(推定)。そして保坂と異なり、冒頭で見せた若作り演技を最後まで貫く。途中から演技を変えるようなこざかしいマネはしないのだ。いよっ、男だね、山口祐一郎!だから、最後まで観客は半笑い状態で見守らなくてはいけない。しかも、途中いらぬ小芝居をして笑いを取りに来る。観客だけでなく、共演者も笑いをこらえるのに必死だ。

しかし、ソロナンバーになるとさすが山口。全身から感じられる違和感をものともせず、観客を引き込む歌声は圧巻だ。そして保坂とのデュエットも息はぴったり。これを待ち望んでいたのだ。

笑いといえば、石川禅も持ち味である巧まざるユーモアセンスを発揮し、本来憎まれ役であるべきビンガム卿を実にチャーミングに演じている。この人の実力は本当に日本のミュージカル界の宝だ。

今井清隆も、貫禄ある海賊の長でありながら娘への愛情を隠せないいい人ぶりをアピールするし、涼風真世もどちらかというと女王の威厳よりかわいらしさが前に出てしまう。最大の悪役である宮川浩も、どこか情けなくて憎めない。

こういう面々が、作品の印象を実にやわらかく、あたたかなものにしている。ポスターには「スペクタクル・ミュージカル・アドベンチャー」というふるったキャッチコピーが踊るが、そういうイメージで気合を入れて観劇に臨むと肩透かしをくらってしまうかもしれない。軽い口あたりの作品の中で、個性ある俳優たちがのびのびとその実力を発揮している。そういう舞台だと思って、ふらっと劇場を訪れるのがおススメだ。

ロビーに展示されていた船のセットの模型。

「パイレート・クィーン」ホームページ
http://www.tohostage.com/piratequeen/index.html

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コメント

ヤボオさん

あそびにきました。おもしろすぎますよ、感想が。

「そして保坂と異なり、冒頭で見せた若作り演技を最後まで貫く。途中から演技を変えるようなこざかしいマネはしないのだ。」って、演技を変えることができないってご存知のくせに(笑)。

山口さんの歌声がすきなんですけど、今回、キンキン声が多くて堪能できないので、演技のxxがよけい目だってしまって、辛口になってしまいます。

禅さんは、いつでも安心してみてられます。どんな役にも対応できる柔軟な演技力が魅力ですよね。

投稿: だいだい | 2009年12月 1日 (火) 00時37分

だいだいさんこんにちは。ようこそいらっしゃいました。

そ、そうでした、あの男には演技の引き出しが…

それにしてもあのカン高い声は演技なのでしょうか?気になります。歌えなくなったら、ただの面白いおじさんになっちゃうし。

禅さんは若いころはニガ手でしたが、年齢を重ねるに従ってどんどんいい役者になってきました。いま安定感という点ではトップレベルではないでしょうか。

今後ともよろしくお願いします。

投稿: ヤボオ | 2009年12月 1日 (火) 01時04分

ヤボオさんの記事を読んで、更に楽しみになってきました。

まずは二人の共演をまた観ることができるのが嬉しいです。
若作りな山口さんも楽しみに(笑)


エジプトにはあの方がご帰還です。金田さんの後では、濱田さんがいてもためらいますもの。
そして飯野ゾーザー閣下のテンションが下がってないかが、一番心配だったりします…

投稿: 千尋 | 2009年12月 1日 (火) 20時10分

千尋さんこんにちは。

そうですね、この2人の共演、とっても贅沢な気がします。見られるうちに観ておいたほうがいいですね。

保坂ファンティーヌとか、個人的にはぜひ実現してほしいのですが・・・

投稿: ヤボオ | 2009年12月 1日 (火) 23時52分

こんばんは。もう行かれましたか!さすがお早い!!
感想を読んでしまうと、早く行きたくて仕方ないです。
このキャスティングは、邪な心を持つ私にはたまりません。色々な合いの手を(心の中で)入れちゃいそうです。
まぁ、免疫が憑いて(!?)ますから、笑いを堪えるなんて容易いことです。

知寿さんは「スーザン…」以来です。年に数回しか会えなくなったことに、一抹の寂しさを感じますが、彼女にとってこれがBESTな選択だったんでしょうね。
私は彼女のイライザが観てみたいなぁ(某女優さまが譲りませんね。)

投稿: らべたん | 2009年12月 3日 (木) 23時29分

らべたんさんこんにちは。

設定は重厚なのに、かるーい気持ちで楽しむことができる舞台でした。みな実力者なので安心して観ていられるのも大きいのでしょう。最近いろんな意味で緊張感のある舞台ばかり観ていましたから・・・

投稿: ヤボオ | 2009年12月 4日 (金) 00時09分

ヤボオさん、こんばんは。
ヤボオさんと同じ理由でチケットを入手してあります。
もっとも東京より近いという理由で大阪遠征ですが。

保坂さんが久々に大劇場の舞台に立つということで
とても楽しみにしていますが、
実力が存分に発揮されているようで楽しみです。
最も敬愛する俳優さんですから。

ストーリーはともかく、
歌は満喫できそうで、こちらも本当に楽しみです。

投稿: とみたま | 2009年12月 4日 (金) 18時31分

とみたまさんこんにちは。
大阪ではまたそれぞれの演技に変化しているかもしれません(一名除く)。時間を置いてまた観たい一作です。

投稿: ヤボオ | 2009年12月 4日 (金) 23時21分

ヤボオさん、こんばんは。

観てきました。
保坂さん山口さんの舞台、楽しかったです!

保坂さんはああいう役は本当にはまりますね。
山口さんには時々吹き出しそうになりました。
牢獄の場面は衣装と長髪がちょっとジーザスを思わせましたね。

二人の歌を聴けたのが、何より嬉しい舞台でした。

投稿: 千尋 | 2009年12月12日 (土) 22時15分

千尋さんこんにちは。

本当に楽しい舞台でしたね。もっと重たい作品かと思ったのに、山口祐一郎が出ているせいで、いや、出ているおかげで、ぐっと軽くなったのかもしれません。

山口ジーザスに沢木ユダに市村ヘロデ、また観たい観たい!

投稿: ヤボオ | 2009年12月13日 (日) 06時48分

こんばんわ。帝劇で甲高い声を聞いてきましたよ(笑)ものすごく不自然だった~なぜなんでしょ?あれでいいの?後は文句なく楽しめたひと時でした。知寿さん、素敵!ドナは彼女しかいない(引きずってます)涼風さんも歳とらないわぁ~~。ところで、来年のエビータはどなただと思いますか?

投稿: かず | 2009年12月13日 (日) 23時02分

かずさんこんにちは。

そうですよねえ、やっぱり不自然ですよねえ。

でも自然に馴染んでる山口祐一郎ってのも、それはそれで不自然な気がします。
エビータどうなるんでしょ。四季のキャスティングには予想も期待もしないほうが良いです。

投稿: ヤボオ | 2009年12月15日 (火) 08時52分

観てまいりました!
仰る通り、やはり知寿さんには大舞台が似合いますね。
アイリッシュダンスも迫力満点。カーテンコールで約1名踊れていない方がいましたが…。

その踊れていない方の、所々集中力を削ぐようなニヤっとしてしまうニクイ演出・演技(?)にヤツを感じてしまい…一瞬ですよ、一瞬だけ。汐留にいるような錯覚すら感じてしまいました。
私の病はかなり進行しています。とはいえ二人の歌声は最高です。日生劇場でのジーザスを彷彿とさせてくれます。

投稿: らべたん | 2009年12月26日 (土) 03時26分

らべたんさんこんにちは。

思い出しますね、日生劇場のジーザス・クライスト=スーパースター。

ナポレオン・オブ・変な奴に比べれば、渡辺正なんてまだ小物です。

投稿: ヤボオ | 2009年12月28日 (月) 01時50分

渡辺正の情報を探していて出会ってしまったこの文章。
山口雄一郎について私が感じていた感情を皆様が感じていたと知り、うれしくて書き込みをしてしまいました。
我が家では彼のことを閣下と呼んでいて、というのも初めて観た「エリザベート」でもしや、彼のお手は不自由では?40肩?(50肩かしら)という演技に驚き、ミュージカル界の帝王ってこんなもの?じゃあ鹿賀丈史や市村正親は何?って思ってしまって。
パイレート・クィーン観ましたけど、閣下はひたすら観なかったことにしていました。
演技の引き出しが無い!確かに。目をつぶって観る分にはどうにかなるんですぅが、エリザベートを最後に観たとき、オペラグラスの端で貧乏ゆすりをしているのでどうしたのかとオペラグラスをはずして観てみると、ダンスを踊っていたのには驚いてしまいました。
ただ、弁護するわけじゃありませんが、ひとたび歌うと他を圧するその歌声はさすがですよね。(目を閉じていれば。)存在感というか、やはり只者ではない。
まあ、できれば周りの役者さんと合わせてくだされば観るほうも疲れないんですけどね。
くだらないことを書き綴ってしまいました。
ときどき寄せてください。

投稿: 芝居貧乏 | 2010年1月 8日 (金) 08時38分

失礼しました。
山口『祐一郎』でしたね;
あまりに楽しくて、いつも一緒に観劇に行く娘に書き込みを読ませたところ、
「閣下に引き出し!?そもそも閣下はタンスすら持ってないでしょ??」
と申しておりました。
でも、あれだけのネームバリューのある役者なのになぜ私たちだけにヘボ(失礼!)に見えるのか不思議に思っておりましたが、私たちだけではなかったと知ってほっとしております。

投稿: 芝居貧乏 | 2010年1月 9日 (土) 01時24分

芝居貧乏さんこんにちは。

それでも彼こそがミュージカル界のキングであることは間違いありません。鹿賀丈史や市村正親はストレートプレイやテレビの仕事でもやっていけますが、彼にはミュージカルしかないのですから・・・。

山口祐一郎は明訓高校の岩鬼みたいなもので、困ったやつですがこの世界に欠かせない存在でもあります。

投稿: ヤボオ | 2010年1月10日 (日) 02時44分

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