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2009年10月10日 (土)

四季「ドリーミング」秋のパンまつり

チルチル 大徳朋子
ミチル 岸本美香
犬のチロー 田中彰孝
猫のチレット 林 香純
パン 白瀬英典
本城裕二
柏谷巴絵
牛乳 市村涼子
砂糖 塩地 仁
光/隣の娘 沼尾みゆき
ベリリューヌ/ベランゴー 光川 愛
母親チル/夜の女王/母の愛 白木美貴子
父親チル 田代隆秀
祖母 斉藤昭子
祖父/カシの大王/時の老人 田島亨祐

メーテルリンクの「青い鳥」をベースにした劇団四季のオリジナルミュージカル「ドリーミング」が開幕した。1969年にファミリーミュージカル「青い鳥」として誕生し、その後「ドリーミング」と改称。しかし2003年にはまた「青い鳥」として東京・大阪ほかで上演されている。どうも「青い鳥」という場合にはファミリーミュージカルとして、「ドリーミング」という場合には一般作品という位置づけになるらしい。演出も違うのだろう。

いずれにしても、自分は未見だ。98年に大阪MBS劇場で上演したとき、なんとなく観に行こうかな、と思った記憶はうっすらとある。下村尊則の「夜の女王」がすごいらしい、と聞いたからだった。なぜ実現しなかったのかは思い出せないが、すでにこの段階で俺はひょいひょい遠征するようなダメ人間になっていたということだ。

今回も、当初はまあ観たことないから一度ぐらいは、という軽い気持ちだったが、開幕の数日前に公開された舞台稽古写真には、ほとんど誰が誰だか分からない写真ばかりの中、沼尾みゆきだけがハッキリと写っていた。キャスティングには気合が入っている、というメッセージだ。もとより四季は輸入の大型作品より、オリジナル作品に一線級を投入する傾向があるのはご存知の通りだ。がぜん、正常ではない観劇姿勢のモチベーションが上がってきた。

そして迎えた初日、秋劇場のキャスティングボードには上記のような配役が表示された。

果たせるかな、面白いキャスティングだ。

チルチルとミチルに、大徳朋子と岸本美香。どっちも小柄さが売りの、ファミリー系作品に欠かせない2人だ。特に岸本は、長く「美女と野獣」のチップとして食器棚に縛られていたが、近年はさまざまな役でその芸達者ぶりを披露している。「春のめざめ」ではテーアや舞台上の隠れアンサンブルで大活躍しており、個人的にますます注目している女優さんのひとりだ。もうこのコンビだけで、劇場に来たかいがあったというものだ。

わくわくしながら席につき、やがて開幕。もともとがファミリーミュージカルなので、正直だるい場面もある。だがそもそもメーテルリンクの「青い鳥」は、童話劇の体裁を取りながらも当時の社会風潮への痛烈な批判と、人として生きることへの哲学的な考察を含んだ重厚な内容だ。この舞台は十分に大人の鑑賞に堪えうるものになっている。まして自分のようにファミリーミュージカル出身の「夢から醒めた夢」や、「魔法を捨てたマジョリン」「エルコスの祈り」といった現役ファミリーミュージカルが大好きな人間にとっては全く抵抗がない。

ダイヤモンドをあしらった帽子を身に着けることで、普段は見えない、気付かない「本質」に目を向ける能力を得たチルチルとミチル。2人の冒険は、そのまま人生のダイジェストとなり、観客の心を打つ。

が、自分の目はチルチルとミチルどころか、平均的な成人男性の持つ瞳のレベルと比較しても数十倍曇っている。曇っているというより、濁っている。いや、腐っているといってもいい。

だから、ここでその作品の「本質」についてあれこれ言うのはやめておく。

ダメ人間はダメ人間らしく、正常ではない観劇姿勢で、印象に残った点を書き留めておこう。

まず目につくのが、白瀬英典の登場である。そう、「春のめざめ」で、張りのある最高に美しい声で「どうしても揉みたいあのオッパイを~♪」と歌い上げ、主役を食うほどの存在感を発揮し一躍四季の若手注目株に躍り出た(か?)あのゲオルグである。彼が演じるのはパンの精。たいそうらしく演説するが、言うことがころころ変わる、政治家タイプの妖精だ。その声は相変わらず舞台の空気を変えてしまうほどの影響力を維持しており、聞いていて実に心地いい。彼はまたここでキャリアを積み重ねることに成功した。次はどんな役を狙うのだろう?今から楽しみだ。

そして、林香純のチレット。言わずとしれた、「春のめざめ」のベンドラである。正直、自分は彼女のベンドラが苦手だった。しかし、このチレットは、いい。すごくいい。歌は春のめざめでもその実力を発揮していたが、ダンスも演技も、登場人物の多いこの舞台で常に観客の目を引きつける魅力がある。明らかにそれキャッツだろう、という猫メイクもばっちり決まっており、今すぐにゴミ捨て場に直行しても違和感がなさそうだ。見た目も、キャラクターも、どことなくボンバルリーナをほうふつとさせる。いや、ボンバルリーナの女子高生時代を見ているようだ。キャッツでボンバルリーナについては詳しく描かれていないが、チレットを見ていると、きっと若いころはあんなヤツだったんだぜ、と思えてくる。ちょっとはすっぱな物腰で、意地悪もするが、根っからの悪党というわけでもなく、どことなく憎めない。勝手にボンバルリーナのキャラ設定を考え、まるでキャッツのスピンオフ作品だな、とか痛い妄想を広げているうちに、11月のキャッツ開幕が待ち遠しくなってきた。

また何といっても、(自分にとって)この公演最大の目玉は、沼尾みゆきの「光の精」だ。グリンダ様といい、姫様キャラが完全に定着した沼尾みゆきの真骨頂である。光は、妖精たちのカシラとして、テキパキと指示を出す。まるで「追跡者」で部下を指図するトミー・リー・ジョーンズみたいにだ。それが実にカッコいい。俺も指図されてええ!「おだまりなさい」とか言われてみてえええ!きっとグリンダ様が良い魔女としてオズの実権を握ったあと、数年もするとこういう感じになるんだろうなあ。今度はウィキッドのスピンオフを見ているような錯覚に……。そして二役の「隣りの娘」の装いがまたいい。ぱっと見、アラサーのイタいコスプレイヤーのようだ。だがそれがいい。とてつもなく萌える。稽古場写真でないプログラムをもし作るなら、絶対にあの衣装の沼尾の写真を掲載してほしい。あるいは携帯サイトで待ち受け画像として提供してくれ。しかし稽古着姿も、重ね着のために体操服みたいに見えて、これがまた何とも。正直、たまりません。

他にも見所は盛りだくさん。主に東宝で活躍し、今年の「夢から醒めた夢」東京公演から四季に参加し、マコの母を演じた白木美貴子が圧倒的な存在感の夜の女王を熱演。こういういい人材が外部から来てくれるのは四季の未来を語るうえで実に重要なことだ。もうちっと退団者もと仲良くしてくれりゃあ、いろいろ面白いキャスティングが実現するのに。そして韓国出身の歌姫、光川愛の演じるベアトリーチェ、じゃなかったベリリューヌがどえらく美人である。声も素晴らしく、彼女のラフィキをぜひ体験したくなってきた。田島亨祐は老け役に挑戦だが、実に堂々と、重厚感ある歌声で魅了していた。田中彰孝は持ち前の、というかそれしかない(のかもしれない)元気ハツラツさと、ちょっとお馬鹿な演技で、舞台全体のムードをうまく作っていた。さらに、女性アンサンブルがわんさか出てくるのもこの舞台の魅力(個人的にだが)。中でも「マジョリン」でおなじみ、背はちっちゃいけれど実はとっても美人さんの関根麻帆にゃんが「健康の幸福」を好演しているので、ここもぜひ注目してほしい。

てなわけで、俺は完全に作品ではなく役者を観ていたわけだが、それで十分お腹いっぱいになることうけあいの舞台だ。

Dream

「ドリーミング」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/dreaming/index.html

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コメント

こんばんは。
こう書かれてしまうと、たまらなくドリーミングみたくなりますね。
それにこのキャスティングには食指が動きます(笑)

以前観たとき、猫のチレットは堀内敬子さんでした。(ちなみにミチルは青山弥生さんでちょいとイタい感じでした)

本日も汐留の帰りです。来週は浜松町にしようかと思います。

ところで、カレッタに『鍋、年中無休』という看板があるのご存知ですか?

投稿: らべたん | 2009年10月12日 (月) 18時41分

連続コメ失礼します♪
どの役者さんも役にマッチして充分お腹いっぱいになれそうなのでとっても楽しみです。
めざめ組の活躍もこれから楽しみですね。
個人的に柏谷巴絵さんのファンですが、水の精はいかがでしたか?
今週予定しているのでレポとっても参考になりました。関根麻帆さん、注目して観ますね。

投稿: あおば | 2009年10月12日 (月) 22時41分

らべたんさんこんにちは。

おおっ堀内チレット、見たい見たい!ラダメスじゃないけど、「今からでも遅くはありませんよ」と言いたい役がいっぱいあります。

あはは鍋、年中無休ですか!完走するつもりでしょうか。ひょっとして年中無給で働くから重用されるのかな。

投稿: ヤボオ | 2009年10月12日 (月) 23時00分

あおばさんこんにちは。

柏谷巴絵さんウィキッドのアンサンブルで見てるかもですが、たぶん初見でした。ルックスも声もとってもキレイで、目を引く女優さんですね。これから注目してみます!

投稿: ヤボオ | 2009年10月12日 (月) 23時01分

こんにちわ。「ドリーミング」、当初、観る予定はなかったのですが、ここのブログを読んで、むしょうに観たくなりました。大徳さんと、沼尾さん割と好きな役者さんなのです。他にも、実力ある役者さんが揃っているみたいなので、早速、チケを取ろうかと思ってます。

投稿: ろん | 2009年10月19日 (月) 12時02分

ろんさんこんにちは。

このブログの言うことはあまり信用しないほうがいいと思いますが、役者目当てで観に行くならまず間違いのない作品かと思われます。

投稿: ヤボオ | 2009年10月20日 (火) 00時09分

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