« 2009年9月 | トップページ | 2009年11月 »

2009年10月24日 (土)

四季「アイーダ」金田ラダメス颯爽と登場

アイーダ 濱田めぐみ
アムネリス 五東由衣
ラダメス 金田俊秀
メレブ 中嶋 徹
ゾーザー 飯野 おさみ
アモナスロ 川原 洋一郎
ファラオ 前田 貞一郎
ネヘブカ 松本 昌子

開幕から3週間、早くもキャストが動き出した東京アイーダ。待望の新ラダメス登場だ。

金田俊秀といえば、韓国出身の若手成長株。「キャッツ」のラム・タム・タガーや「エビータ」のチェなど、重要な役を次々こなし、「ジーザス・クライスト=スーパースター」ではジーザス役に。自分はこのジーザス役をひたちなかで見ており、カッコよく、伸びのある歌声には大いに好感を持った記憶がある。

その金田ラダメス、冒頭から大いに存在感を発揮する。鼻筋の通った濃い目の顔は、エジプトの青年将校という役どころにぴったりだ。「勝利ほほえむ」をはつらつと歌うその姿には若さと、未来への希望が満ち溢れている。「♪心躍る 我らの夢~」という歌詞がばっちり似合っている。大国を支える誇りに満ちた若き提督。銀河英雄伝説で言うならばウォルフガング・ミッターマイヤーかナイトハルト・ミュラーか、といったところだ。これはいい。

だが、そうした男性的な歌い方が、アイーダへの思いを込めたロマンチックな歌では、ぐっと甘い声になる。このため、アイーダとのデュエットになると、力強い濱田めぐみの歌声に負けてしまう。だからだろうか、どうも全体的にはやや印象が薄いという感じも残る。たとえ悪目立ちでも、自分のカラーを出している渡辺正のほうが、少なくとも印象には残る。

そして「この父親にしてこの息子あり」では、再び若さを爆発させる魅力的なラダメスに戻る。この親子ゲンカは、実に見ごたえがあった。野心と、自由への渇望とが、お互いにむき出しでぶつかり合う。これは今までに観たゾーザー・ラダメスの組み合わせの中では最高である。

こう考えると、金田俊秀という役者は、すでに実績のあるジーザス・クライスト=スーパースターや、「ウェストサイド物語」のような、男くさい作品に合っているのかもしれない。想像だけど、いいリフやトニーになりそうだ。彼のチェは未見だが、大いに見たくなってきた。

またラダメスは、これまで彼が演じてきた役に比べセリフ部分が多い。そうなると、日本語の発音が心配されるが、問題になるレベルではなかった。彼が海外出身だということを知らなければ、話し方がちょっと変わっているな、と感じるぐらいだと思う。若いころの田村正和のような、どこかスカした感じの喋り方だ。これが青年将校のはつらつとした雰囲気とまるでミスマッチで、ちょっと面白い。

ただ、やはりセリフに気持ちが乗りきってない、という場面も散見された。日本語のセリフを話すのに頭脳のメモリ容量を相当食われているのだろう。たとえ発音が不自然でも、気持ちが乗っていれば観客には伝わる。「ウィキッド」のフィエロを演じた李涛がそうだったように。だから金田も多少の発音など気にせず、堂々と演技をしてほしいと思う。

金田ラダメスの第一印象はこんなところだ。ぜひ「勝利ほほえむ」「この父親にしてこの息子あり」で見せた、男っぽさと若さを前面に出した青年提督の顔を全体に貫いてほしいところだが、観る人によっては、甘い歌声のほうに軸足を置くことを望むかもしれない。どっちに動くのか、あるいはまた別の方向に行くのか。楽しみに見守りたいと思う。

さて3週足らずでお役御免になってしまった渡辺正はどうなるのだろう。初日に出すのはどうかとは思うが、ある意味面白いラダメスで、個人的には時々出てほしいものだ。それに周りのアイーダ観劇者の声を聞いたところ、渡辺ラダメスは男性にはおおむね好評のようである。うーん、しかし出てくるとまた叩かれるだろうしなあ。ここはひとつ、渡辺正にはゾーザーを演じてもらってはどうだろう。金田ラダメスとのコンビなら、なかなかいい親子ゲンカが見られそうである。

次はいよいよ、新アムネリス誕生か?こちらも大いに期待したいところだ。

四季「アイーダ」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/aida/index.html

| | コメント (23) | トラックバック (0)

2009年10月17日 (土)

「マクロス クロスオーバーライブ」ミンメイ降臨

2009年は、「超時空要塞マクロス」の設定ではマクロスが進宙式を行った年である。これを記念して、マクロスシリーズの「超時空要塞マクロス」「マクロス7」「マクロスF」の劇中曲を歌うアーティストが結集したクロスオーバーライブが幕張メッセで開催された。

200910171633000

マクロスFのライブ人気はとどまるところを知らず、チケットは入手困難だったが、職場の暗黒卿が首尾よく獲得してくれた。

今回の目玉は、何といっても初代マクロスヒロイン、リン・ミンメイを演じた、茨城県の生んだ銀河系最大のスーパーアイドル、飯島真理の参戦である。郷土に錦を飾る意味もあって、彼女は早々に茨城県民文化センターでコンサートを行っており、当時中学生だった自分も観に行きたかったが叶わなかった。あの夢がついに実現するのだ。いやがおうにも気合が入ってくる。

予定より少し遅れて開演。まずは「マクロスF」で銀河の妖精シェリル・ノームの歌を担当するMay'nが登場だ。私の歌を聴けええええええええええええっ!「ノーザンクロス」「射手座」で大盛り上がりのあと、11月公開の劇場版に登場する新曲「Pink Monsoon 」を披露。そして代役からチャンスをつかみ、スターの座を駆け上がっていく超時空シンデレラ、ランカ・リー=中島愛にバトンタッチ。まずは劇場版用の「そうだよ」から入り、「アナタノオト」でどくんどくん盛り上がってから「あの曲、歌っちゃうよ?」と「星間飛行」に突入。「キラッ☆」を連発し、会場はガリア4の第33海兵部隊状態に。

さらにMay'n再登場、「トライアングラー」のシェリル&ランカバージョン、そして2人がデュエットしたオープニング曲「ライオン」で会場の熱気は最高潮である。

その興奮冷めやらぬ間に、ステージに一人、飯島真理が登場した。

そりゃもう40代後半に差し掛かってるわけだから年齢は隠せないが、チャーミングな丸顔と透明感のある歌声は健在だ。

オリジナル曲3曲ほどを歌い、舞台袖に下がる。ミンメイの歌は歌わないのか?しかし、それもやむをえないのかもしれない。飯島はミンメイ役のイメージが強すぎることで悩み、マクロスと決別していた時期もある。渡米、結婚、離婚を経て、今では今回のライブに参加したように、マクロス関連の仕事にも顔を出すようになったとはいえ、当時の歌をそのまま歌うのは潔しとはしないのか。しかし俺はそれでもいい、と思った。このマクロスの祭典に、飯島が顔を見せる。それだけで歴史的なことだ、と、厳粛な気持ちで受け止めていた。

しかし、衣装を変えて再登場した飯島真理は、独自のアレンジを加えた「私の彼はパイロット」を歌ってくれた。原型をとどめていないほどのアレンジだが、問題ない。飯島の声で「私の彼はパイロット」を聞ける。そんな日がまた来るとは思わなかったから、嬉しかった。そしてピアノの弾き語りで、「0-G Love」アレンジバージョンを歌う。劇場版「愛・おぼえていますか」で、エンジンブロックに閉じ込められた一条輝との3日間を描く場面(シャワーシーンあり)での使われ方が印象的な一曲である。「シルバームーン・レッドムーン」と並ぶ、隠れた名曲だ。もうこうなってくると高揚感が押えきれない。続いてのナンバーは「シンデレラ」。飯島自身の作詞・作曲で、劇場版でゼントラーディに捕らわれたミンメイが口ずさむ曲だ。これはほぼオリジナル通り。さらに「ランナー」。テレビシリーズのエンディング曲で、通常はオープニングと同じ藤原誠が歌っているが、最終回の時に、ミンメイバージョンで放送された。これには中学3年生当時、テレビの前でビックリした記憶がある。そのミンメイバージョンのランナーを生歌で聞けるなんて!

「この曲は、私の中に潜むミンメイにささげたいと思います」と告げ、ピアノが耳に覚えのある旋律を奏で始めた。そう、「愛・おぼえていますか」だ。

「みんなも一緒に歌ってください」と聴衆に手を差し出す。その姿が、劇場版でミンメイがこの曲を歌うシーンの前奏で、左手を大きく差し出す姿にオーバーラップする。

この瞬間、確かにリン・ミンメイがそこにいた。

「不思議だ、この歌……ずっと昔に聴いたような気がする……」(ブリタイ)

俺の遺伝子に存在する、カールチューンが呼び覚まされていく。25年の時を越えて、俺にも文化がよみがえったのだ。

気付いたら周りの人も、俺も、大声で一緒に歌っていた。まるで、ミンメイの歌に感化されてマクロスの援護に回った7018アドクラス艦隊に所属するゼントラーディ人のようではないか。

「愛・おぼえていますか」、そしてマクロスシリーズ全体を貫くテーマを、全身で感じ取ることができた一瞬だった。

この感動に恍惚としていたところ、サプライズゲストとして、「超時空要塞マクロスⅡ LOVERS AGAIN」のイシュタル役、笠原弘子が登場。1曲だけ歌ってMCもなく引っ込んでいく。やはり外伝扱い(≒黒歴史)の「Ⅱ」は、笠原のキャリアとして触れられたくないのか。

ライブ後半は、「マクロス7」に登場するロックバンド「FIRE BOMBER」の熱気バサラ、ミレーヌ・ジーナスの歌を担当する福山芳樹とチエ・カジウラが盛り上げる。「7」は断片的にしか見ていなかったので、曲はほとんど知らなかったのだが、いずれ劣らぬ名曲ぞろいで、聴いていて楽しかった。さらにはスペシャルゲストとしてバサラとミレーヌの「声」を担当していた神奈延年(当時の名前は林延年)と櫻井智(同・桜井智)が登場。生櫻井智を見たのは初めてだ。「レモンエンジェル」のイベントに行こうと思ったことがあったが、結局実現しなかった。その夢も実現してしまった。すでに38歳、出産も経験しているというのに、あの可愛さとスタイルの良さは一体何なのだ。やはりアイドルって偉大だ。

アンコール1曲目はシェリル・ノーム&FIRE BOMBE。もともと「7」の歌で、「F」の中でも流れている「突撃ラブハート」だ。そして2曲目がリン・ミンメイ&ランカ・リーによる「天使の絵の具」。飯島真理の作詞・作曲のこの曲は、「愛・おぼえていますか」のエンディング曲であるのは言うまでもないが、俺にとっては高校1年のとき、文化祭のためにクラスで作った映画のエンディングでも勝手に使っていた曲である。カールチューンだけでなく、当時の記憶が鮮明に蘇ってきて、また別の感動が全身に満ちてきた。

最後は、マクロス・イヤーである今年を記念して「超時空アンセム」として飯島真理、FIRE BOMBER、May'n、中島愛が歌って発売した「息をしてる 感じている」(作詞作曲:飯島真理)を全員で。

3時間以上の長いライブだったが、非常に充実した体験となった。「マクロス」世代、「7」世代、「F」世代と、3つの時間軸の合同ライブのため、部分的にノれないパートがある人も多かったと思うが、それはいたしかたのないところだ。特に、「F」世代の人にとって、ミンメイは物語の中でもリアルでも教科書の中の人に過ぎない。それを演じた飯島真理が出てきて、マクロスと無縁のオリジナル曲や、大きくアレンジしたマクロスの曲を歌うのは、我慢ができなかったかもしれない。それは否定しない。

しかし、まさに1982年から84年にかけて、リアルタイムで「超時空要塞マクロス」を見ていた人間にとって、リン・ミンメイの存在は特別すぎるものだ。そして、もし飯島真理が演じていなければミンメイはこれほどの存在感を発揮しなかっただろうし、マクロスの人気もそれほどまでには至らなかった可能性が高い。飯島が存在したからこそ、マクロスのシリーズ化もなし得たのだ。そして、マクロスは宇宙船やロボットが飛び回るSFアニメと、アイドルの世界とを融合させ、新しいエンターテインメントを作り出した。当時、その未体験の感覚に自分たちは熱狂していたが、今となってはそれはアニメの世界ではごくアタリマエの話である。グローバルに広がる日本のコンテンツ産業を大きく方向付けた「マクロス」。その中心にいるのがミンメイなのだ。リン・ミンメイとはまさしく「プロトカルチャー」である。

幕張からの帰りの電車で携帯を見ていると、「愛・おぼえていますか」を作曲した加藤和彦の死を伝えるニュースが流れていた。藤原誠、羽田健太郎、長谷有洋、鈴置洋孝らに続き、また初代マクロスに大きくかかわった一人がこの世を去った。

時間は確実に流れている。しかし、その中で決して変わることなく、受け継がれていくものがある。それが何かを、「マクロス」は教えてくれる。そして今回のライブはその証明となった。今後も折に触れて、こうした企画を実現してほしいものだ。

200910181225001

4000円という超時空価格のパンフレットと、会場で空から降ってきた星。

「マクロス」公式WEBサイト(大きい音出ます)
http://macross.jp/pc/index.html

| | コメント (8) | トラックバック (0)

2009年10月10日 (土)

四季「ドリーミング」秋のパンまつり

チルチル 大徳朋子
ミチル 岸本美香
犬のチロー 田中彰孝
猫のチレット 林 香純
パン 白瀬英典
本城裕二
柏谷巴絵
牛乳 市村涼子
砂糖 塩地 仁
光/隣の娘 沼尾みゆき
ベリリューヌ/ベランゴー 光川 愛
母親チル/夜の女王/母の愛 白木美貴子
父親チル 田代隆秀
祖母 斉藤昭子
祖父/カシの大王/時の老人 田島亨祐

メーテルリンクの「青い鳥」をベースにした劇団四季のオリジナルミュージカル「ドリーミング」が開幕した。1969年にファミリーミュージカル「青い鳥」として誕生し、その後「ドリーミング」と改称。しかし2003年にはまた「青い鳥」として東京・大阪ほかで上演されている。どうも「青い鳥」という場合にはファミリーミュージカルとして、「ドリーミング」という場合には一般作品という位置づけになるらしい。演出も違うのだろう。

いずれにしても、自分は未見だ。98年に大阪MBS劇場で上演したとき、なんとなく観に行こうかな、と思った記憶はうっすらとある。下村尊則の「夜の女王」がすごいらしい、と聞いたからだった。なぜ実現しなかったのかは思い出せないが、すでにこの段階で俺はひょいひょい遠征するようなダメ人間になっていたということだ。

今回も、当初はまあ観たことないから一度ぐらいは、という軽い気持ちだったが、開幕の数日前に公開された舞台稽古写真には、ほとんど誰が誰だか分からない写真ばかりの中、沼尾みゆきだけがハッキリと写っていた。キャスティングには気合が入っている、というメッセージだ。もとより四季は輸入の大型作品より、オリジナル作品に一線級を投入する傾向があるのはご存知の通りだ。がぜん、正常ではない観劇姿勢のモチベーションが上がってきた。

そして迎えた初日、秋劇場のキャスティングボードには上記のような配役が表示された。

果たせるかな、面白いキャスティングだ。

チルチルとミチルに、大徳朋子と岸本美香。どっちも小柄さが売りの、ファミリー系作品に欠かせない2人だ。特に岸本は、長く「美女と野獣」のチップとして食器棚に縛られていたが、近年はさまざまな役でその芸達者ぶりを披露している。「春のめざめ」ではテーアや舞台上の隠れアンサンブルで大活躍しており、個人的にますます注目している女優さんのひとりだ。もうこのコンビだけで、劇場に来たかいがあったというものだ。

わくわくしながら席につき、やがて開幕。もともとがファミリーミュージカルなので、正直だるい場面もある。だがそもそもメーテルリンクの「青い鳥」は、童話劇の体裁を取りながらも当時の社会風潮への痛烈な批判と、人として生きることへの哲学的な考察を含んだ重厚な内容だ。この舞台は十分に大人の鑑賞に堪えうるものになっている。まして自分のようにファミリーミュージカル出身の「夢から醒めた夢」や、「魔法を捨てたマジョリン」「エルコスの祈り」といった現役ファミリーミュージカルが大好きな人間にとっては全く抵抗がない。

ダイヤモンドをあしらった帽子を身に着けることで、普段は見えない、気付かない「本質」に目を向ける能力を得たチルチルとミチル。2人の冒険は、そのまま人生のダイジェストとなり、観客の心を打つ。

が、自分の目はチルチルとミチルどころか、平均的な成人男性の持つ瞳のレベルと比較しても数十倍曇っている。曇っているというより、濁っている。いや、腐っているといってもいい。

だから、ここでその作品の「本質」についてあれこれ言うのはやめておく。

ダメ人間はダメ人間らしく、正常ではない観劇姿勢で、印象に残った点を書き留めておこう。

まず目につくのが、白瀬英典の登場である。そう、「春のめざめ」で、張りのある最高に美しい声で「どうしても揉みたいあのオッパイを~♪」と歌い上げ、主役を食うほどの存在感を発揮し一躍四季の若手注目株に躍り出た(か?)あのゲオルグである。彼が演じるのはパンの精。たいそうらしく演説するが、言うことがころころ変わる、政治家タイプの妖精だ。その声は相変わらず舞台の空気を変えてしまうほどの影響力を維持しており、聞いていて実に心地いい。彼はまたここでキャリアを積み重ねることに成功した。次はどんな役を狙うのだろう?今から楽しみだ。

そして、林香純のチレット。言わずとしれた、「春のめざめ」のベンドラである。正直、自分は彼女のベンドラが苦手だった。しかし、このチレットは、いい。すごくいい。歌は春のめざめでもその実力を発揮していたが、ダンスも演技も、登場人物の多いこの舞台で常に観客の目を引きつける魅力がある。明らかにそれキャッツだろう、という猫メイクもばっちり決まっており、今すぐにゴミ捨て場に直行しても違和感がなさそうだ。見た目も、キャラクターも、どことなくボンバルリーナをほうふつとさせる。いや、ボンバルリーナの女子高生時代を見ているようだ。キャッツでボンバルリーナについては詳しく描かれていないが、チレットを見ていると、きっと若いころはあんなヤツだったんだぜ、と思えてくる。ちょっとはすっぱな物腰で、意地悪もするが、根っからの悪党というわけでもなく、どことなく憎めない。勝手にボンバルリーナのキャラ設定を考え、まるでキャッツのスピンオフ作品だな、とか痛い妄想を広げているうちに、11月のキャッツ開幕が待ち遠しくなってきた。

また何といっても、(自分にとって)この公演最大の目玉は、沼尾みゆきの「光の精」だ。グリンダ様といい、姫様キャラが完全に定着した沼尾みゆきの真骨頂である。光は、妖精たちのカシラとして、テキパキと指示を出す。まるで「追跡者」で部下を指図するトミー・リー・ジョーンズみたいにだ。それが実にカッコいい。俺も指図されてええ!「おだまりなさい」とか言われてみてえええ!きっとグリンダ様が良い魔女としてオズの実権を握ったあと、数年もするとこういう感じになるんだろうなあ。今度はウィキッドのスピンオフを見ているような錯覚に……。そして二役の「隣りの娘」の装いがまたいい。ぱっと見、アラサーのイタいコスプレイヤーのようだ。だがそれがいい。とてつもなく萌える。稽古場写真でないプログラムをもし作るなら、絶対にあの衣装の沼尾の写真を掲載してほしい。あるいは携帯サイトで待ち受け画像として提供してくれ。しかし稽古着姿も、重ね着のために体操服みたいに見えて、これがまた何とも。正直、たまりません。

他にも見所は盛りだくさん。主に東宝で活躍し、今年の「夢から醒めた夢」東京公演から四季に参加し、マコの母を演じた白木美貴子が圧倒的な存在感の夜の女王を熱演。こういういい人材が外部から来てくれるのは四季の未来を語るうえで実に重要なことだ。もうちっと退団者もと仲良くしてくれりゃあ、いろいろ面白いキャスティングが実現するのに。そして韓国出身の歌姫、光川愛の演じるベアトリーチェ、じゃなかったベリリューヌがどえらく美人である。声も素晴らしく、彼女のラフィキをぜひ体験したくなってきた。田島亨祐は老け役に挑戦だが、実に堂々と、重厚感ある歌声で魅了していた。田中彰孝は持ち前の、というかそれしかない(のかもしれない)元気ハツラツさと、ちょっとお馬鹿な演技で、舞台全体のムードをうまく作っていた。さらに、女性アンサンブルがわんさか出てくるのもこの舞台の魅力(個人的にだが)。中でも「マジョリン」でおなじみ、背はちっちゃいけれど実はとっても美人さんの関根麻帆にゃんが「健康の幸福」を好演しているので、ここもぜひ注目してほしい。

てなわけで、俺は完全に作品ではなく役者を観ていたわけだが、それで十分お腹いっぱいになることうけあいの舞台だ。

Dream

「ドリーミング」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/dreaming/index.html

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2009年10月 3日 (土)

四季「アイーダ」もうめぐ様しか見えない

アイーダ 濱田めぐみ
アムネリス 五東由衣
ラダメス 渡辺 正
メレブ 中嶋 徹
ゾーザー 飯野 おさみ
アモナスロ 川原 洋一郎
ファラオ 前田 貞一郎
ネヘブカ 松本 昌子

ついに東京にやってきた、アイーダ。オペラ版の「凱旋行進曲」でも奏でて盛大にその初日を祝いたいところだ。

この作品は、派手で明るくて楽しいミュージカルが好きな(馬鹿だから)自分にとって、必ずしもお気に入りというわけではないかもしれない。最初観たときは、ちょっと眠くなった。しかし、エルトン・ジョンの音楽の威力だろうか、CDを聞いているうちにだんだんまた観たくなり、劇場に行くとその魅力に気づかされ、また観たいと思うようになった。そうして何度も観ているうちに、すっかりその魅力に絡め取られてしまった感じである。

だから、この東京公演は実に楽しみだった。それに海劇場は、ちょっと大人なムードのこの作品にとってぴったりの雰囲気だと思う。ウィキッドの終了は寂しかったが、次に来るのがアイーダとなれば、寂しさも中くらいなりおらが秋といったところだ。

そして、記念すべきこの公演の開幕キャスト。アイーダには濱田めぐみが来てくれた。いろんなアイーダも見たいが、やはりまずはめぐ様アイーダの素晴らしさを、東京のファンの目の前にたたきつけてほしい。そう考えていたから、これは嬉しい。

そして観劇後の感想。

出てくる言葉は「濱田めぐみ」。

その一言だけだ。

良かったとか素晴らしいとか、そんな言葉ではとうてい表現できない。彼女がこの役を演じるその空間に立ち会えたことが、途方もない幸せに感じられた。

自分がめぐ信者であることは否定しない。少なくとも、「美女と野獣」のときからずっとファンだった。しかし、それを差し引いて考えても、この濱田アイーダの完成度は世界に誇る出来だと言っていいのではないか。

彼女のアイーダがいいのは前からだ、というかもしれない。確かにそうだ。しかし考えて欲しい。濱田めぐみという女優は、同じ役を演じていても、演技をどんどん変えていく。「ウィキッド」のエルファバは、初日と終盤ではぜんぜん違うキャラクターになっていた。もともと、彼女は内面から役を作っていくタイプらしい。このイベントのときに、役作りは今までの人生や、演じた役を思い出しながら進めていく、と述べている。

となれば、今回のアイーダには、エルファバが混じっているのではないか?という予想があった。

そういう先入観があったからかもしれないが、確実に、アイーダの中にエルファバがいると感じた。これは個人的な印象だから、異論もあると思うが、以前の濱田アイーダは、王女としての自覚に裏打ちされた、凛としたたたずまいが強く前面に出ていたと印象がある。

しかし、久しぶりに見た濱田アイーダは、その王女オーラは健在なのに、どこか女の子っぽさというか、フェミニンな雰囲気をものすごく感じるのである。

これは、やばい。

以前は、どこか近寄りがたい神々しさに接して「さすがはめぐ様」と心の中でひざまずいていた。だが今回は、見ているうちにどんどん、本気でアイーダが好きになってきてしまう。痛い話ではあるが。

それを象徴するのが「迷いつつ」のあとの「愛してるわ」というセリフ。「ウィキッド」の、「生まれて初めて…幸せ」のセリフをちょっと思い出す。ブロードウェー版で、イディーナ・メンゼルが「I feel wicked」と言っているところだ。あの言い方に非常に近い。

このセリフを聞いたとき、背中がゾクゾクッとした。そしてそのあとの、口をふさぐ仕草。だめだ、可愛いすぎる…。自分の中で、また何かがぶっこわれた音がした。

一段とパワーアップしためぐ様アイーダに会うために、しばらく海劇場通いが続きそうだ。この作品が未見の人、あるいは濱田アイーダを見ていない人は、この「海のエジプト」を訪れてほしい。

 

……というところで、このエントリーを終えるわけにはいかんのだろうな、やっぱり。

 

開けてびっくりの冗談キャスト、初日に渡辺ラダメス。一体何を考えているんだ劇団四季。つうか浅利代表。

最初に言っとくが、俺は渡辺正という役者は結構好きである。没個性的で印象に残らない役者よりも、たとえグリンダ様に「悪目立ちじゃない?」と言われようが、個性がある役者のほうがいい。

だから、名古屋で渡辺ラダメスが登場したと聞いて、すぐに観に行った

そして期待通りの悪目立ちっぷりに快哉を叫んできた。聞き苦しい歌声と、抑揚のない演技。しかし、それによって、どこかお坊ちゃまで世間知らずなラダメス像を作り出しており、これはこれでアリかな、とも思えた。客観的に見れば、ぜんぜんダメなのだけれど。

あれから2年近く経っている。普通なら「きっと劇的に成長したに違いない」と期待するところだが、俺にはそれは絶対ない、という自信があった。果たせるかな、渡辺ラダメスは2年前と全く同じだった。ただメイクが、前回見たときには「ラッツ&スターかよ!」と突っ込みたくなるほど濃いメイクだったのが、だいぶ薄くなっていた。

まあ、全く成長がないというのは言いすぎか。いくつか、演技面で変化もあった。ところどころ、ラダメスの「情熱家」の側面を感じさせるようになっている。「迷いつつ」のナンバーでは「ついに キターーーーーーーー!」と叫ぶように歌っていた。それがいいかどうかはともかく。そして前回見たときにココだけはいい、と思えた、地下牢の暗闇の中でアイーダに向ける笑顔は健在だ。

そんなわけで、マニアックに見ればなかなか面白いラダメスなのであるが、初めて彼を見た人は「なんだコリャ」と思うだろう。少なくとも、注目の集まる初日に出すキャストじゃない。

この作品では、アイーダ、ラダメス、アムネリスのバランスが極めて重要だ。そのトライアングルがきれいに決まらないと、この舞台の構造が見えなくなってしまう。しかし、この日はラダメスがどーんと落ちている。この時点でバランスなどあったものではない。そして五東アムネリスは、さすがの安定感で、歌唱力と演技力によって姫様オーラを高レベルでキープしている。しかし彼女のアムネリスは、どちらかというと受けて輝くタイプのもので、自ら強引に光り輝くものではない。この結果、もうトライアングルは全く成立せず、ただただアイーダという恒星の周りを、ラダメスやアムネリスが、ゾーザーやメレブたちと一緒になってぐるぐる回っている、という構図になってしまった。

だから、この公演は正直、作品的に見れば失敗である。しかし、それを埋めて余りあるほど、濱田アイーダが素晴らしい。だから、「ラダメスがちょっと…」と二の足を踏んでいる人も、勇気を出して海劇場に足を運ぶべきだ。大丈夫、そんなにひどくはないから(というレベルでいいのか?)。

ま、新ラダメスと新アムネリスの早期投入を期待したいところです。

四季「アイーダ」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/aida/index.html

| | コメント (69) | トラックバック (1)

« 2009年9月 | トップページ | 2009年11月 »