与那国島・自衛隊誘致問題
現在、与那国には島を二分する大きな議論がある。
自衛隊の誘致問題だ。
ホテル近くにあった横断幕
昨年9月、与那国町議会は自衛隊の誘致要請を決議。国境の島であり、安全保障上の理由と、台風をはじめとする防災上の理由からだ。しかし、もちろんその本音は島の振興だ。現在島の人口は1600人あまり。年々減り続け、島の財政は厳しさを増している。
ちょうど自分が西表に着いた日、NHK九州がこの問題を特集しており、この島の決定を「苦渋の決断」と表現していた。
しかし、自衛隊の誘致というのは沖縄では特にナーバスな問題だ。当然、賛否両論がある。加えて、台湾との交流を重視する立場からも反対する声が上がっている。
町議会が決議したのだから民意は決まっているだろう、という見方もあるが、与那国町議会の定員は6でしかない。4対1という明らかな結果とはいえ、それで島がひとつにまとまったとは言いがたい。
このため、外間守吉町長は昨年の決議後も、基本的に賛成の立場をとりつつも、反対派の意見を十分尊重する姿勢を見せていた。次の町長選への計算もあったのだろう。
今年に入り、次の選挙で再選を果たす意思を示してから、外間町長は積極的な行動に出る。6月には防衛省に直接赴き、自衛隊の配備を要請。7月には浜田靖一防衛相(当時)が与那国島を訪問、配備に前向きな発言をしている。
比川集落にあった横断幕
そして、8月2日の町長選で、外間町長は自衛隊誘致反対派の田里千代基を破って再選を果たす。612票対516票。J-CASTの記事によれば、与那国町長選では100票差がつくことは「大差」なのだというが、島を二分している現状が明らかになってしまった。無論、争点は自衛隊だけではなかっただろうが。
この問題、島民以外が口を挟む問題ではないが、島を訪れた身としても気がかりなところではある。
島の過疎化は緊急かつ効果的な対策を要するだろう。また、「国境の島」であるこの地に自衛隊が駐屯することに違和感はない。そして、昨年ちょうど自分がこの地を訪れようとしていたとき、与那国は台風13号によって45時間もの間暴風域にさらされ、断水、停電、農業への打撃、その被害額は3億円を超えたとされる。防災視点での誘致にも筋は通る。
だから、個人的には自衛隊誘致もありなのではないかと感じるが、自衛隊以外に活路を見出すことはできるだろうか。まず思いつくのは観光だ。この島を巡り、観光資源が非常に豊富な島であると感じた。しかし恐らく人的・予算的な問題からその資源を生かしきれていない。民間の資金によってそれらが整備されれば、沖縄観光の大きな目玉になりうるように思う。立派な空港もある。
もちろん、それはそれで反対意見もあるだろう。だが、なんらかの手を打たなければ、島の未来は決して明るくない。島の人々は、いま決断を迫られている。
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