« 四季「春のめざめ」千秋楽公演 | トップページ | 四季「南十字星」夢子のリナが秋で舞う  »

2009年9月 6日 (日)

ミラノ・スカラ座withバレンボイム「アイーダ」

10月の「アイーダ」東京公演に向け、世間はアイーダ流行りである。東京国際フォーラムでは宝塚版アイーダ「王家に捧ぐ歌」をアレンジした公演を、沢木順や光枝明彦ら四季OBを迎えて上演しているし、来日中のミラノ・スカラ座による、本家本元のオペラ「アイーダ」もある。オペラ「アイーダ」は、数年前に来日公演があった際、観ようと思っていたが実現しなかった。なのでここでぜひ観ておこう、とNHKホールへ。

芸術を解しない自分は、オペラは数えるほどしか観ていない。この前観たのはいつだろう。たぶん2000年の「ウィーン国立歌劇場」で当代髄一のコロラトゥーラ・ソプラノであるエディタ・グルベローヴァが出演した「シャモニーのリンダ」だ。それもNHKホールだった。そして、自分が初めてオペラを観たのもこのNHKホール。1997年11月のことだ。ベルリン国立歌劇場の「ワルキューレ」。あれは一生忘れない思い出だ。そのとき、指揮をしていたダニエル・バレンボイムが、きょうこのアイーダでも指揮を振る。

オペラに限らずクラッシックに限らず、音楽全般において頭にドが3つぐらいつく素人なので、その出来についてここに述べるのは無理である。でも、久しぶりに味わうオペラ会場の空気、フルオーケストラの重厚な音楽とホールの隅々まで響き渡る澄んだ歌声、そして冗談みたいに豪華で立派な舞台装置にはすっかり酔いしれた。またオペラにも通いたいものだ。予定されていたアムネリス役の人が喉を痛めたそうで、この日は代役が舞台に立った。もちろん実力は十分であり、遜色はなかったが、アイーダ、アムネリスが典型的なオペラ歌手体型であるのに対し、このアムネリス役の人が小柄だったせいもあってか、やや2人に迫力負けしている感はあった。あくまで素人目ですが。

さて、このヴェルディの「アイーダ」と、ディズニー版「アイーダ」とは、具体的にどこがどう違うのか。当然自分の興味はそこに向く。現在、ミュージカル「アイーダ」にはヴェルディのオペラを下敷きにしているというクレジットはないが、もちろん事実はそうだ。オペラ「アイーダ」のあらすじを以前読んで、登場人物や大まかな物語はほぼ一緒だが、きっとその関係性とか、描き方が違うのだろうな、と想像していた。

だが、予想に反して、この2つの「アイーダ」はかなり「同じもの」という印象だった。アイーダ、アムネリス、ラダメスの関係はオペラでもきれいなトライアングルを構成しており、下手をすると安っぽい芝居になってしまいそうなほど、純粋すぎる3人の想いが正面からぶつかり合い、観客の心を打つ。

ミュージカルでは、そこに若干の趣向を凝らし、アイーダ、アムネリスという2人の王女が、王女という立場をどう捉えるか、という命題に挑むことになり、その文脈で二人の間に友情めいたものが芽生える。結果、ラダメスの比重が少し下がるが、彼にはゾーザーというラダメスの父を登場させ、親子の対立というまた違った軸を与えることでその存在にアクセントを加え、作品全体におけるアイーダ、アムネリス、ラダメスの存在感のバランスを保っている。

「のまネコ」は「モナー」からインスパイアされて作られた別物らしいが、オペラ「アイーダ」とミュージカル「アイーダ」は、物語の面から言えば、同じものである。そしてミュージカルのいくつかの曲や演出は、直接的にオペラへのオマージュとなっていることも分かった。

そして、同じである以上、改めてミュージカル「アイーダ」においても、主役3人のバランスがいかに大事かということを再確認した。東京公演のスターティングメンバーはどうなるのか。心配なのはアムネリスである。五東由衣も悪くはないけど、華やかで力強い意思を秘めた新アムネリスの誕生を待望したい。もっともアイーダやラダメスもいつまでも濱田めぐみと阿久津陽一郎に頼るわけにはいかないだろう。渡辺正ラダメスといった冗談キャストは脇に置くとして、新キャストがどこまで伸びてくるかも東京公演の楽しみのひとつだ。

何だかますます観たくなってきたぞ。もともと「観れば観るほど」タイプの作品でもあり、キャストによってはまた海劇場に足しげく通ってしまいそうだ。

「ミラノ・スカラ座」来日公演ホームページ
http://www.nbs.or.jp/09scala/index.html

|

« 四季「春のめざめ」千秋楽公演 | トップページ | 四季「南十字星」夢子のリナが秋で舞う  »

コメント

こんばんは。

東京公演楽しみです!久々に正統派キャストで観たいな…なんて。
そして濱田&阿久津のパワーにがっつり食らいつく新アムネの登場も期待しています。金平真弥さんとかどうですかね?

…冗談いや、勘弁ラダメス。出会いは一度で十分です。でもきっとお出ましになるんでしょうね。
『誰かにあげちゃいたいけど、そんな嫌いな人もいないし…』

そんな言葉が脳裏をかすめます。


投稿: らべたん | 2009年9月 8日 (火) 01時52分

こんばんは。
てっきりウィキッド千秋楽に行ったのかと思ってましたけど、こちらの方でしたか。
ミュージカルに目覚める前は専らクラシック派だったので、バレンボイムのCDやDVDも幾つか所有しております。
モーツァルトのピアノ協奏曲集や、トリスタンとイゾルデのDVDあたりは個人的にお薦めですね。
後者は少々値が張りますけど、ご興味あれば是非どうぞ。

投稿: Jun | 2009年9月 8日 (火) 03時00分

junさんこんにちは。

ウィキッドの千秋楽はハズレてしまいましたので。まあ大阪でまた観られますし。

やっぱりバレンボイム先生はワーグナーですかね?クラシックは詳しくないので、またいろいろ教えてください!

投稿: ヤボオ | 2009年9月 9日 (水) 02時01分

らべたんさんこんにちは。

おお金平アムネ!演技の幅が必要な役ですから、いいかもしれないです。アムネリスもグリンダと並んで大好きなキャラクターです。

渡辺正を東宝へ返して、代わりに誰か呼び戻しますか?渡辺ジャベールとか、情けなくて面白そうだなあ。

投稿: ヤボオ | 2009年9月 9日 (水) 02時05分

初めまして。いつも楽しく読ませていて居ます。

金平アムネいいですね~。顔立ちが真逆な感じの秋アイーダとのコンビとか良さげです。
個人的に沼尾アムネリスとか見てみたいです。アイーダが濱田さんなら声のバランスも良いですし。
きっと必ずアムネリスは新キャストですよね。とても楽しみです。

投稿: 理登。 | 2009年9月10日 (木) 22時26分

理登。さんこんにちは。こんな適当なブログですいません。

アイーダとウィキッドは本当にキャラクターかぶりまくりですね。李ラダメスとかぜんぜん違和感ないですし。

意表を突いた新キャストの登場を期待したいところです。意表突きすぎてわけわかんないキャストが出てくるかもしれませんが、それはそれで面白ければ・・・

投稿: ヤボオ | 2009年9月11日 (金) 01時49分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ミラノ・スカラ座withバレンボイム「アイーダ」:

» 『アイーダ』 by ミラノ・スカラ座 [みかん星人の幻覚]
とうとう「ミラノ・スカラ座」の舞台にやってきた。マリアテレジアが設立した、イタリ [続きを読む]

受信: 2009年9月 9日 (水) 08時16分

« 四季「春のめざめ」千秋楽公演 | トップページ | 四季「南十字星」夢子のリナが秋で舞う  »