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2009年8月 1日 (土)

WEST SIDE STORY 50周年記念ツアー来日公演

今年は来日公演のラッシュである。年々増えてきているのは確かだが、今年は異常なほどだ。その中でもひとつの注目公演はやはりこの「WEST SIDE STROY」。四季が2007年に久しぶりに公演してから、日本でのファン層も再び広がり始めた。そしてその「ウェストサイド物語」は現在全国公演の最中であり、9月には福岡公演も始まる。

また、ブロードウェーでもブームが再燃している。今年に入ってリバイバル公演が始まり、先日発表された63回トニー賞のリバイバル作品賞候補にも上がった。自分が昨年末ニューヨークに行ったときはまだプレビューも始まっていなかったので、観ることができず残念だった。

そうした中のツアー来日。どうもツアーというと、いまだに4軍、5軍というイメージが自分の中で払拭できない。実際、良かったと思える機会は非常に少ない。「We Will Rock You」は良かったが、あれはオーストラリアでロングランしていたカンパニーがまるごと引っ越してきたので、厳密に言うとツアー公演ではない。

今回の「WEST SIDE STROY」はどうか。結論から言うと、なかなかのヒットである。

冒頭、実はがっかりした。まずはミュージカルの古き良き伝統である、指揮者が客席にむかって一礼するセレモニー。客席も拍手で答え、さあ舞台を観るぞ、という気持ちが大いに高まった。それなのに、いきなり幕が開いて、役者たちが踊り始めてしまったからだ。

つまり、オーバーチュアがなかったのだ。

映画でもきちんとこのオーバーチュアを再現している。その間、画面は単色の背景画面だけになってしまうので、テレビで放送するときは(前奏曲)などの字幕を出して放送事故でないことをアピールしているぐらいだ。この序曲を聴いているうちに、だんだんと気持ちがニューヨークになっていくのだ。それがカットされてしまうとは残念。向こうの上演ではそれがスタンダードなのだろうか?せっかくの生オケ、それも結構な編成だったので、ぜひオーバーチュアは聴きたかった。

そしてジェット団、シャーク団登場。リフやベルナルドの動きに、四季の松島勇気のような軽やかさや、加藤敬二のようなキレがない。うーん、こりゃ「しょせんツアーはこんなもの」レベルに終わるのか、と思っていた。

しかし、トニー登場から印象ががらっと変わる。このトニー、歌がうまいのだ。いや、ミュージカルに出るんだからそりゃ歌はうまいだろう、と言うかもしれないが(そうでもなかったりするのも事実なのはみなさんご承知のとおり)、「Something's Coming」をのびのある豊かな声で、実に情感たっぷりに歌い上げたのである。この曲は素人目(耳?)にも非常に難しい曲で、四季では阿久津陽一郎が歌ったのを聴いたとき、どんなメロディーなのかサッパリ分からなかったほどだ。その後福井晶一トニーで聴いたとき、ああこんな曲なのかと分かったが高音がきつそうだった。

そしてマリア。なんか見た事あるな、と思っていたら、見た事あった。2006年にブロードウェーで「レ・ミゼラブル」リバイバル公演を観た時のコゼットだ。そう、あのエントリーに俺は「今まで見たコゼットの中で、最も歌唱力が高い」と記載している。あの歌声に、また出会うことができるとは。しかも、コゼットのソロはキーが高くて歌いこなすのが難しいのだが、その数が非常に少ない。今度はマリアだ。存分にその美声を堪能できた。なんとも幸せな再会である。

最初はなんだかまとまりがないな、と思ったダンスにも、次第に引き込まれてきた。別にツアー役者は4流、5流というわけではなく、ブロードウェーに立ち続けている役者と、実力的にはさほど差はないのだと思う。ただ、ツアーだとどうしてもカンパニーとしてのまとまりに欠けてしまいがちなこと、そして口うるさい評論家やリピーターの目にさらされないこと、そのぐらいの違いが、公演の印象に跳ね返ってくるのだろう。

なので、さほどまとまりを必要としない場面、例えば体育館のダンスや、「America」などは、圧倒的な迫力が生まれるのだ。これは楽しい。

迫力といえば出色の出来なのがアニタ役で、全力投球な歌と演技で、独特の存在感を放っていた。アメリカへの思い、ベルナルドへの思い、マリアへの思い、それらがひしひしと伝わってくる。それだけに、ドックの店で辱められたときの激しい怒りは観客の脳髄を直撃してくる。カーテンコールでも彼女への拍手はひときわ大きかった。

そんなわけで、終わってみれば相当な満足感が残った。四季の舞台では、アクの強い役者が演じるからか、どうしてもリフとベルナルドの比重が高い印象があるが、やはりこの作品はトニーとマリアの話なのだと実感した。この2人が良ければ、この作品は成功するのだ。

帰りの電車でプログラムを読んでみると、この日トニーを演じたスコット・サスマンはやはり声楽出身の人のようだ。なるほどである。そしてリフを演じたアレックス・ストールはプログラムではディーゼル役として掲載されている。アンダーということだ。どうもリフの存在感が弱いな、と思ったのも気のせいではなかったわけだ。再会したマリア役は、アリ・エウォルト。彼女の名はよく覚えておこう。きっと二度あることは三度ある。なにかとてつもなく大きな役で三度目の邂逅を果たせそうな気がする。存在感バツグンのアニタ役はオネイカ・フィリップス。そしてリフと並んでどうも印象が薄かったベルナルドはエマニュエル・デ・ヘスース。実際にプエルトリコの生まれで、ばりばりのバレエダンサーだ。素人のくせに動きが悪いとか言っちゃいけなかったのだ。すいません。なんでもミスター・プエルトリコにも選ばれたそうで、確かにハンサムさんではあった。

ツアー公演だからなあ、とあまり期待せずにいたのだが、とても楽しい時間を過ごすことができて感謝。この日から、自分の中でも何か変化が起きる(Something's Coming)だろうか?

会場に、キャストが控えめに張り出されていた。下記ウェブサイトでも、前日ぐらいに発表されるようだ。そのウェブサイトを見ていてびっくり。なんとアリ・エウォルトは4年ほど前、東京ディズニーシーのブロードウェイ・ミュージックシアターの「アンコール!」に出演していたというのだ。見てるかもしれない。いや、絶対見てるだろう。4年前だと、2月に1度ぐらいのペースで「アンコール!」観に行ってたし。このときとか。次に出会うのはどんな形なのか。オラ、なんだかわくわくしてきたぞ!

WEST SIDE STORY 公演ウェブサイト
http://www.westsidestory.jp/

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コメント

ヤボオさん、こんばんは。

West Side Story、実は序曲無しが作曲者バーンスタインの本来意図した形だそうですよ。

あの序曲は映画版にあたって新たに編曲されたもので、それを四季で上演する際に浅利氏が取り入れた…という事だと思います。
(もしかしたら、他のカンパニーでもやっている所があるかもしれませんが)

投稿: Ju | 2009年8月 1日 (土) 23時30分

Juさんこんにちは。

オーバーチュアの件、そうだったんですか!これは勉強になりました。教えていただき、ありがとうございます。

あの序曲けっこう気に入ってたので、いきなり始まってなんだかさびしい感じがしてしまいました。

映画と舞台の相乗効果で、どんどん面白いものになっていくような関係ができるといいですね。

投稿: ヤボオ | 2009年8月 1日 (土) 23時44分

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