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2009年6月20日 (土)

四季「春のめざめ」谷口ベンドラ いいんじゃなーい?

ベンドラ 谷口あかり
マルタ 撫佐仁美
テーア 岸本美香
アンナ 松田佑子
イルゼ 石塚智子
メルヒオール 柿澤勇人
モリッツ 三雲 肇
ハンシェン 一和洋輔
エルンスト 竹内一樹
ゲオルグ 白瀬英典
オットー 玉井晴章
大人の女性 都築香弥子
大人の男性 田代隆秀
女性アンサンブル 玉石まどか、勝間千明
男性アンサンブル 加藤 迪、南 晶人

開幕から1月以上経過し、ついに新ベンドラ登場だ。

「春のめざめ」四季版にはおおむね満足しているものの、初回に見たとき感じた「女優陣が弱い」という点は、なかなか改善されなかった。前回観たとき、岸本テーアの投入でちょっと雰囲気が変わったと感じたが、やはり問題はベンドラだ。林香純のベンドラは、歌はうまいが見た目の雰囲気がベンドラらしくない。何べんも言うけど、俺のベンドラ基準はこの子だからね。ハードルはむちゃくちゃ高いのだ。

谷口あかりは、前回ロビーで目撃して、雰囲気はバッチリだなあ、と思っていた。しかしベンドラやその同級生の、ノーメーク(に見えるメーク)とあの古臭い衣装を着たときどう見えるかは未知数だった。

開幕とともに舞台に登場し、椅子に下着姿で立った谷口ベンドラ。

「ほおーう・・・」

俺だけでなく、客席全体からため息が漏れた(ように感じた)。いける。こいつはヒットだ。

正直なところ、女子高生に見えるかっつったらそりゃ疑問で、林同様ちょっと大人っぽい印象はある。しかし、顔つき、体つきがベンドラの危うさ、はかなさを伝えるのにぴったりだ。

舞台が進むにつれ、ついベンドラを視線で追ってしまう。そうそう、この感覚。男なら中学生ぐらいのとき、学校ではだいたいクラスの女子を目で追っていたと思うが、その感覚が蘇ってきた。まあ他の作品を見るときは当たり前なんだけどね、俺の場合。何しろ正常ではない観劇姿勢ですから。

歌は林に一歩譲る。意外に低音が響くので、歌い方はあまりベンドラっぽくないかもしれない。演技はまだ硬いが、序盤の母親とのやりとりではそれなりに笑いも取れていたので、今後の伸びは期待できそうだ。

ということは、今のところ評価すべきは見た目だけ、ということか?

あえて言おう。その通りである。そして、それはこの作品では重要なことなのだ。

この「春のめざめ」は、「A Rock & Roll Fable(ロックンロールの寓話)」だと思う。この言葉は、ウォルター・ヒル監督の1984年のヒット映画「ストリート・オブ・ファイヤー」の冒頭にかかげられる言葉だ。

この作品は寓話にすぎない。19世紀末時点では、これはリアリティーあふれる物語だったのかもしれない。しかし21世紀の今となっては、10代の性の目覚めであそこまで悩む子供も大人もいないだろう。児童虐待や若者の自殺には悲しいことに今もリアリティーがあるが、そこはこの作品の主たるテーマではない。

この作品のテーマはあくまで10代の性の悩みであり、そしてそれはもはや都市伝説化している。そう考えると、この作品にはそもそもテーマがない。あるのはただ、カッコよく歌い踊る若者たちだけだ。それを素直に楽しむのが、「春のめざめ」の正しい鑑賞法であると自分は考える。

四季は、記者会見や宣伝で「命の大切さを訴えるという意味では、『こころの劇場』と同じ」とか言っていた。大ウソだ。恐らく、この作品を上演したいと考えた劇団内の一派が、上層部を説得するためにでっちあげたものだろう。そしてそれがそのまま、エンターテインメントより芸術性・文学性を求める日本の演劇界に対する言い訳にもなる。

寓話である以上、その登場人物は見た目からして分かりやすいほうがいい。メルヒオールとベンドラは美男美女であるべきだ。モリッツはダメさ加減がにじみ出ているべきだし、ハンシェンは怪しくなくてはいけないのだ。

そういう意味で、今回の舞台はやっと「役者がそろった」という印象を受けた。舞台自体の吸引力が、さらに増したと感じた。いつもは途中ちょっと眠くなるシーンもないではないのだが、ずっと集中力を維持することができた。

ベンドラ以外にも初見キャストが。石塚イルゼはどうだろう。石塚智子って、昔「コーラスライン」とかに出てた石塚智子だろうか?さらに、昨年の「CHICAGO」日本人キャスト公演にもその名前があるけど、同一人物か?いずれにしても、あまり強い印象がないのである。この舞台では、歌もうまいし、演技にも熱が入っていた。しかし、やはり金平真弥があまりにも強烈すぎたため、どうも物足りない感が残ってしまう。金平の声と演技には、あばずれた中にも慈母の情が感じられ、それがモリッツとの最後の会話のシーンで観客の胸を打つのだ。

大人の女性は都築香弥子、大人の男性は田代隆秀にそれぞれ交代。中野今日子・志村要コンビ同様、ベテランの技が冴え渡る。田代は演じる役によって本当に別人のように見えた。さすがである。

新ベンドラを迎え、舞台全体が活性化していたように思えた。岸本テーアは子供おばちゃんぶりに磨きがかかり、ハンシェン・エルンストのディープキスはさらに激しさを増してきた。この日はほぼ満席だったが、平日は空席も多いと聞く。ぜひここでもう一度加速度をつけて、この自由劇場での公演を大成功させてほしいものだ。それが四季の未来を開くことになるはずだから。

200906201246000

春のめざめ ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/springawakening/index.html

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コメント

慧眼!いつも説得力ある劇評を参考にさせて頂い
ております。まだ、この組み合わせでは観ていな
いので観劇意欲が高まりました。これで、金平の
いる舞台に行ってみたいものです。

投稿: SASA | 2009年6月21日 (日) 06時46分

SASAさんこんにちは!いつも適当な感想で申し訳ありません。

そうですね、このキャストに金平イルゼが加わると、かなり完成度が高くなるのではないでしょうか?

ゲオルグ、ハンシェン、エルンストはこのまま固定でバンガッテもらいましょう!

投稿: ヤボオ | 2009年6月21日 (日) 18時38分

最近よくお邪魔させてもらってます
するどい批評や説得力ある面白い文章を楽しませてもらっています☆
私はお目当てのキャストじゃなかったら、がっかりするタイプだったんですが、このブログを読んで、視点が変わりました(・∀・)
これからも楽しみにしています

投稿: belle | 2009年6月22日 (月) 00時06分

belleさんこんにちは。こんなへたっぴブログを読んでいただきすいません。

まあ、私の場合本格的にがっかりなキャストのときは最初から観に行かないケースが多いわけで・・・

本当にいいキャストがそろった公演は、なかなかないものですなあ。

投稿: ヤボオ | 2009年6月23日 (火) 01時32分

ヤボオ様、ご無沙汰しております
先週金曜日に初めて観ました。谷口ベンドラ良かったです。
確かにヤボオ様の「素直に楽しむ」は一理あると思います。
自分はステージシートだったせいか、演者のノリが良く伝わり、ノリノリなところはある意味ライブ感覚で観客ももっと楽しんでもよいかと思いました。でもみんな静か・・・(-_-;)
バックバンド(?)のドラムとウッドベースの方が開幕前からビートあわせて練習しているのカッコよすぎでした

投稿: にょん | 2009年6月26日 (金) 20時22分

ヤボヲさん、こんにちわ!
ロックンロールの寓話 いい表現ですね
この作品スゴク好きなんですが、受け取るメッセージが少ないように感じてました。現代ではリアリティが少ない それは四季の売り込み方があまりにも含みを持たすような宣伝だったから、そう感じてしまったのかもしれないです。単にかっこいい舞台を観に行く!! で良いんですね
谷口ベンドラ綺麗ですよねぇ でもボクは蒼井優チックな林ベンドラの「ダイジョウブ」の言い方がスッゴイ好きです

投稿: kuffskuffs | 2009年6月26日 (金) 21時01分

初めてコメントなんて大それたものをしてしまいます。でも、どうしても伝えたくて…
かなり長い間こちらにお邪魔していますが…
ヤボオ様、素晴らしいです。観劇の批評はもちろんのこと、コメントに対する返事の仕方…決して、偏ることなくベタベタしていない。
とても清々しいです。素直に笑っちゃいます。
どうか、この調子でこれからも続けていって下さい。
週末が楽しみです。

投稿: Alc.7% | 2009年6月27日 (土) 00時37分

にょんさんこんにちは。

ステージシート座られましたか!私もいちど体験してみたいとは思うものの、胃腸が弱いのであの緊張感に耐えられるかどうか心配です。

この作品では、劇場に入った瞬間から「おおかっこいいー」と感じられるのが気持ちいいです。高校生時代に地下のライブハウスに潜りこんだみたいな。まあそんな体験はないんですけれども。

投稿: ヤボオ | 2009年6月27日 (土) 03時14分

kuffskuffsさん、こんにちは。

多感な青春時代を送った人には、いろいろ胸に迫るものもあるのかな、と思ったりもするんですが、私のように田舎でノビノビ過ごしちゃった身としては、なんか遠い話に感じてしまいます。

林ベンドラ、またマニアックなツボですな。私はまだまだ修行が足りないです。

投稿: ヤボオ | 2009年6月27日 (土) 03時18分

Alc.7%さんこんにちは。こんなお粗末なブログを長く読んでいただいたとは恐悦至極です。

お褒めに預かり光栄のいたりですが、ハードルを上げられると、跳ぶのをあきらめるか、下をくぐろうとしてしまうので、更新が途絶えたり(すでに間隔あいてますが)、下ネタに走ったりします。中学生男子か俺は。

面白いこともいえずごめんなさいですが、ひとつ今後ともよろしくお願いします。

投稿: ヤボオ | 2009年6月27日 (土) 03時27分

はじめまして~☆
ブログ一気に読んでしまいましたが、すっごく面白いです♪1つ1つの考察が深いですね…
これからも更新たのしみにしてますo(^▽^)o

あと、厚かましいとは思いますが、質問させてください。今年で学生生活も最後ということで、夏休みにブロードウェイに観劇に行こうと計画してます。25才の兄と行くのですが、これは観ておくべきという作品を教えてくださいm(_ _)m

ちなみに私も兄も英語はあまりできません…作品の好みは、四季では「ウィキッド」「春のめざめ」「オペラ座の怪人」「夢から醒めた夢」です。特に「ウィキッド」は音楽とストーリーの深さに号泣ものでした。

単純なストーリーの中に深いテーマが隠れている……みたいなお話が好きです。また、圧倒的な歌唱力を感じられる作品を観てみたいです。

アドバイスお願いします(>_<)

投稿: みぃさ | 2009年6月29日 (月) 14時28分

みぃささんこんにちは。なんの考察もない思いつきブログなのに読んでいただき恐縮です。

ブロードウェーにいらっしゃいますか!いいですねえ。

私は人におすすめできるほどの知識もなく、ブロードウェー行っても偏った見方をしているので参考になることもいえませんが、とりあえず昨年とその2年前の記録はこんな感じです。

http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/cat6540788/index.html

四季その他が日本でやっているものを向こうでも見る、ということでもぜんぜんOKだと思います。私も半分以上そうです。四季のやっていないものでは、「メリーポピンズ」とかよかったです。映画のDVDで予習もできますすし。

旅行ガイドとか、「月刊シアターガイド」に載ってる作品の解説とか、結構参考になります。

ちなみにブロードウェー上演中(売り出し中)作品はおおむねこんな感じ。

http://www.ticketmaster.com/broadway/showlistings?tm_link=tm_bdwy_moreshowslink1

残念ながら「スパイダーマン」は来年2月オープンですっ

投稿: ヤボオ | 2009年6月29日 (月) 23時31分

ヤボオさん

ご丁寧に回答頂き、ありがとうございます!なんだかコメント欄をヤフー知恵袋化して申し訳ないです。。

話あった結果、予習の出来る「メリーポピンズ」と王道の「オペラ座」に決めました~☆時間とお金に余裕があれば「リトルマーメイド」も観ようということになりました。

1ヶ月以上も先の事なのに今から楽しみです~(≧▽≦)

これからも楽しくブログ拝見させて頂きます♪どうぞよろしくお願いします(^-^)

投稿: みぃさ | 2009年6月30日 (火) 07時40分

みぃささんこんにちは。

トニー賞は予想どおり「ビリー・エリオット」が独占でしたね!

NYはたのしいです。また行きたいです。

投稿: ヤボオ | 2009年7月 1日 (水) 01時09分

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