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2009年5月 5日 (火)

ミュージカル「シラノ」世界初演の初日

シラノ・ド・ベルジュラック 鹿賀丈史
ロクサーヌ 朝海ひかる
クリスチャン・ド・ヌーヴィレット 浦井健治
ル・ブレ 戸井勝海
ラグノー 光枝明彦
ド・ギッシュ伯爵 鈴木綜馬
観客/カルボン 佐山陽規
観客/修道士/青年隊 林アキラ
リニエール 大須賀ひでき
でしゃばり男/青年隊 中西勝之
モンフルーリー/士官/青年隊 金澤博
ロクサーヌの付き添い/修道女 岡田静

長年にわたり、さまざまな演出やストーリーで上演されてきた演劇界のスーパーヒーロー、シラノ・ド・ベルジュラック。映像化も何度もなされ、藤子不二雄の自伝マンガ「まんが道」では、映画「シラノ・ド・ベルジュラック」を観た満賀道雄(=安孫子 素雄)が西部劇版シラノを描いたりもした(あれは面白くなかった)。

そのシラノの新作ミュージカルが作られ、日本で初演を迎えるという。作はジキル&ハイドのレスリー・ブリッカスとフランク・ワイルドホーンのコンビ。日本の興行主が出資して新作を書かせた、というのが真相なのかもしれないが、いずれにせよ日本演劇界もたいしたものである。主演は「ジキル&ハイド」の縁で鹿賀丈史が務める。

企画も面白そうだし、助演も光枝明彦に鈴木綜馬(=芥川英司)と四季退団者が顔をそろえている。広い意味では鹿賀もそうだ。レ・ミゼラブルでおなじみの戸井勝海、林アキラ、大須賀ひできの名前もある。初演でジャベールを演じた佐山陽規もいる。これは観ておかんと、と初日に足を運んだ。

序盤はシラノの皮肉屋としての一面が強調される展開。派手な喧嘩のシーンから始まるものの、役者が何を言っているのかよくわからない。なんだかガチャガチャした芝居だなあ、と思いつつ観ていたが、シラノが自らの思いを隠し、ロクサーヌとクリスチャンの仲を取り持とうとするあたりからがぜん面白くなってくる。そして二幕は緊迫感のある戦場のシーンと、それと対称的に静かで優しさに満ちた修道院のシーンとで構成され、最後まで飽きさせず観客を魅了するいい作品に仕上がっていた。

パンフレットの中のインタビューにも語られているが、この作品は冒険活劇というよりも、シラノという男の心栄えを丁寧に描こうとしているのが特徴だ。しかし、喧嘩や戦場など、見せ場もふんだんに用意されており、笑いあり涙ありの活劇的要素も十分である。

鹿賀丈史の演技はさすが。シラノのせつなすぎる内面を、皮肉なセリフにたっぷりと乗せた情感と、全身の細やかな動きによって満員の観衆に伝えていた。惜しむらくは歌の場面で歌詞が聞き取りづらいことだが、演技でそれを十分にカバーしている。

もっとも四季の舞台に慣れてしまうと、歌詞が往々にして聞き取りづらく感じるものだ。最初、雑な印象を持ったのもそれが理由のひとつだった。しかし、この日は光枝・鈴木コンビはもちろん、戸井勝海や浦井健治も実にはきはきとした発声で非常に聞き取りやすかったため、全体としてはそういう印象を持たずに済んだ。

光枝は変幻自在の役どころで、笑わせるシーンが多い。ちょっとだけデビルな動きもまじえ、舞台の空気を大いに和ませていた。力のある美声も健在だ。鈴木も光枝とは違った、どちらかというと天然っぽい笑いのセンスを持っているが、それをいかんなく発揮。しかし決めるところはビシッとカッコよく決めてくれて、ファンにとっては嬉しい限りだ。

久しぶりに見た戸井勝海がこれまたいい男で、演技にも歌にもメリハリがあって強い存在感を発揮していた。そして恐らく初めて見た浦井健治が実に良かった。演技も発声も歌も申し分なく、スター性も十分だ。これからのミュージカル界を引っ張る逸材と感じた。ヒロイン・朝海ひかるは演技はやや単調だったものの、その美しさと歌声のきれいさでカバーしていた。

総じて、強烈な何かがあるわけではないが、重くない形で心に訴えかけるものを持ったいい舞台だと思う。うまく育てていけば、東宝の新しいレパートリーとして、長く愛される作品になるのではないか。鹿賀だけでなく、戸井や鈴木のシラノも見てみたいと思った。

初日ということで、終了後、演出家の山田和也や作曲のフランク・ワイルドホーンらによるあいさつもあった。海外でヒットして輸入されたものではなく、正真正銘世界で始めて上演された初日である。作品が誕生した瞬間に立ち会えるというのは、観客冥利につきるだというものだ。

Nissei0505

「シラノ」WEBサイト
http://www.tohostage.com/cyrano/index.html

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