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2009年3月22日 (日)

劇団☆新感線2009春興行「いのうえ歌舞伎・壊(PUNK) 蜉蝣峠」

作・宮藤官九郎
演出・いのうえひでのり

闇太郎 古田新太
天晴 堤 真一
お泪 高岡早紀
銀之助 勝地 涼
サルキジ、おるい 木村 了
がめ吉 梶原 善
流石先生 粟根まこと
お寸 高田聖子
立派の親分 橋本じゅん
お菓子、やみ太郎 右近健一
善兵衛、アンパンの旦那ほか 逆木圭一郎
牛角ほか 河野まさと
お蓮ほか 村木よし子
うずらの親分ほか インディ高橋
お葉ほか 山本カナコ
ぶた彦ほか 礒野慎吾
関東取締出役・吉田ほか 吉田メタル
やみ太、女郎ほか 中谷さとみ
お光、女郎ほか 保坂エマ
蟹衛門ほか 村木 仁
平太ほか 少路勇介
猪公ほか 川原正嗣
十始末ほか 前田 悟
流しの太鼓たたき 教祖イコマノリユキ

「いのうえ歌舞伎」を宮藤官九郎が書く。2006年の「メタル マクベス」でもすさまじい火花を散らした新感線+宮藤のタッグ。あのときはシェイクスピアという巨人を介して真正面からぶつかった2人だが、今度は「いのうえ歌舞伎」という新感線のホームグラウンドに宮藤が乗り込む格好だ。

2005年の「吉原御免状」以来、本公演の柱である「いのうえ歌舞伎」を「いのうえ歌舞伎第二章」としてさまざまな試みを続けている新感線だが、今回は座付き作家の中島かずきでなく宮藤が書くわけだから、これはまた大きな挑戦だ。

いのうえ歌舞伎というより、ギャグ満載の「ネタもの」のようにコントタッチで始まった舞台。しかし、その舞台にはこれまでのいのうえ歌舞伎にはない、血なまぐさい匂いが漂う。中心的な場面となる「ろまん街」は、まるで「座頭市」に出てくる宿場町のように死と絶望が満ちていた。

そこで描かれるのは、宮藤官九郎いわく「説得力のある嘘とリアリティのない真実」だという。それを背負い込んで生きる男・闇太郎を古田新太が演じる。闇太郎には過去の記憶がなく、今の現実にもこだわりがない。ただただ未来を信じて生きようとする。そこに、過去の執着を捨て切れず、今を否定し、野心に生きようとする男・天晴を演じる堤真一と、今を固定するために百回を超える結婚式を繰り返す男・立派の親分を演じる橋本じゅんがからむ。この男3人に、一癖も二癖もある老若男女がかかわってくるその構造はかなり複雑だ。キャラクター同士がどういう角度で交わっているのかを読み解くのは困難を極める。

正直なところ、まだ自分はその解が見つけられていない。だが、もう考えるのはやめた。それぞれの登場人物の生き様をじっと眺めているうちに、そのキャラクターが背負ったものがうすぼんやりと、さながら「かげろう」のように見えてくる。それでいいような気がしている。

これは中島かずき版いのうえ歌舞伎とは対極的だ。中島版では、キャラクターの対立や連携の構図が極めて明確であり、その構図をくるくると展開させて観客を楽しませる。

これに対し、今回サブタイトルには「いのうえ歌舞伎・壊(PUNK)」という文句が掲げられた。

宮藤は、「メタル マクベス」のパンフレットの中で、「自分はパンクバンドの人なので、メタルには思い入れがない」と言っていた。パンクとメタルとの違い、これが中島かずきと宮藤官九郎の違いになぞらえられそうだ。ハードロックの進化系として、さまざまな理論やこだわりによって築き上げられたヘヴィメタルと、そうした音楽だけでなく、時代や社会への反抗がベースにあるパンク。これまでのいのうえ歌舞伎は、まさしくメタルだった。精緻に計算された美しい脚本をベースに繰り広げられる、安心感をもって観ることができる、それがいのうえ歌舞伎だった。しかし今回のいのうえ歌舞伎はパンクである。観客に安心して観ることを許さない、アンチテーゼに満ちた極めて不安定な世界。それがこの「蜉蝣峠」である。

宮藤のパンクな感覚、人や社会の汚さ、残酷さに目を背けず、それでも前向きに生きていこうとするその姿勢を、虚構の面白さを徹底的に追求するいのうえ演出が覆い隠したり隠さなかったり、それにはらはらしているうちについついのめりこんでしまう、そんな作品だ。

ネタもの一番、歌舞伎は二番、という邪道な新感線ファンとしては、暗さ、重さに耐え切れないところも正直ある。観ておくべき作品ではあるが、こういう血なまぐさいテイストが苦手な人は、無理して観なくてもいいんじゃないか、という気がしないでもない。

いのうえ歌舞伎第二章の冒険は今後も続いていくだろう。でもネタものもよろしくお願いしたい。そういえば、なんで「犬顔家の一族」のDVDは出ないんだろう。確かにいろいろやばいネタ満載ではあったが、ぜひとも手に入れたいものである。

Kagerou

「蜉蝣峠」公式サイト

http://www.kageroutouge.com/

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