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2009年2月 8日 (日)

宝塚歌劇 宙組バウホール公演「逆転裁判 蘇る真実」

フェニックス・ライト(成歩堂 龍一) 蘭寿 とむ
ミラー・アーサー 寿 つかさ
ロッタ・ハート(大沢木 ナツミ) 美風 舞良
裁判長(裁判長) 風莉 じん
レオナ・クライド 美羽 あさひ
マイルズ・エッジワース(御剣 怜侍) 七帆 ひかる
ディック・ガムシュー(糸鋸 圭介) 春風 弥里
ラリー・バッツ(矢張 政志) 鳳翔 大
モニカ・クライド 純矢 ちとせ
モエノ・クリステル 萌野 りりあ
ロバート 風羽 玲亜
サラ・シェリー 綾瀬 あきな
マヤ・フェイ(綾里 真宵) すみれ乃 麗
ルイス 蒼羽 りく
ネウス・インビット 瀬音 リサ

※カッコ内はゲームでの名前

宝塚とカプコンという異色のコラボレーションで実現した、法廷アドベンチャーゲーム「逆転裁判」の舞台版が5日、宝塚バウホールで幕を開けた。

宝塚歌劇団は、結構「えっ」と驚くような原作に果敢に取り組んでいる。例えば94年には宝塚市立手塚治虫記念館の開館に合わせ、「ブラック・ジャック」を舞台化した。これは噂を聞いて観たいなあ、と思ったが結局行けずじまい。また、その2年後にはつかこうへいの「蒲田行進曲」をタカラヅカ風にアレンジした「銀ちゃんの恋」も上演された。この作品は昨年も日本青年館で上演されていたので、チケットを確保したが体調悪く行けなかった。

タカラヅカのコラボレーション作品といえば、モーニング娘。ミュージカルも忘れてはならない。昨年の「シンデレラ」はちょっとイマイチだったが、2006年の「リボンの騎士」は歴史に残る素晴らしい出来栄えだった。だから、モーニング娘。に限らず、またそうした試みがあればまた足を運びたいと考えていた。

そこに入ってきた「逆転裁判」のニュース。「えっ」どころではない衝撃度だ。なんでも宝塚歌劇がゲームを題材にするのは初めてなのだそうだが、何でまた「逆転」なのか。「アンジェリーク」とかなら想像もつくし、もうちょっとファンタジーな作品ならまだしも、逆転裁判は魔法も妖精も登場しない推理アドベンチャーゲームである。強いて言えば霊媒師は登場するが・・・。その世界観とタカラヅカ、あるいはミュージカルという組み合わせは、想像の域を超越しまくりだ。

だからその報に接したとき、これは観なくてはと思った。その後、忘れてしまっていたのだが、初日の模様は宝塚の異色作、ということでテレビなどにも取り上げられ、思い出させてくれた。東京公演もあるが、一日も早く見たかったのと、ちょうど関西に出向く用事ができたのとで、ここはひとつ宝塚の本拠地に乗り込むことにした。チケットは完売しているので、Yahoo!オークションで確保。

そんなわけで、やってきました宝塚大劇場。

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宝塚駅から劇場までは10分ほど歩くが、劇場の雰囲気に合わせた街づくりがなされているので苦にならない。むしろ舞台を観るぞ、という気分がどんどん高まってくる。

今回「逆転裁判」が上演されるのは、大劇場と隣接している小劇場「バウホール」。小劇場といっても500以上のキャパシティーがあり、公式ホームページによれば「『時代の先端を行く作品を作り出していきたい』という思いを込め、1978年に開場した」とある。なるほどこういう実験的な取り組みも視野に入れた劇場というわけか。

場内に入ると、緞帳に大きく「逆転裁判」のロゴマーク。みんな平気で写真を撮っているので、公演中でなければいいのだろう、と思い俺も1枚。

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そしていよいよ幕が上がる。始まってすぐ分かったが、舞台はアメリカに置き換えられており、主人公の名前も「成歩堂龍一」ではなく「フェニックス・ライト」になっている。この時点で、なんだか「ハリウッド版北斗の拳」のような妙ちくりんなものになるのでは、という嫌な(半分楽しみな)予感がした。

だが、その予感は大きくはずれた。続々登場してくる「逆転」の登場人物たちは、衣装や髪型、言葉遣いにいたるまで、極めてゲームに忠実だ。成歩堂や御剣怜侍の、三次元では表現不可能と思われた髪形も、ちゃんと再現されている。違っているのは裁判長がハゲていないということぐらいか。しかしその裁判長は、厳格に見えるが人情家な側面もあり、ときどきすっとぼけたことを言う、というキャラクターを見事に受け継いでおり、ゲームで音声はなかったはずなのに「そうそう、こんなしゃべり方だったな」と錯覚させるほどソックリな雰囲気だった。

あとで知ったのだが、「フェニックス・ライト」などの役名は、「逆転裁判」海外版で使われていたものなのだそうだ。

ストーリーはオリジナルで、成歩堂がかつての恋人の嫌疑を晴らすために奔走するというもの。自分は「逆転」のゲームはシリーズ3作目の途中でつっかかってそのままになっているので、それ以降にこういうエピソードがあったのかと思って観ていた。それほど、違和感のないストーリー展開だったのだ。

そして、法廷シーンでは「異議あり!」の応酬、捜査時点で得た証拠の写真を「くらえ!」とつきつけるなど、「逆転」そのままの雰囲気で進行する。

原作となったゲームを全く知らなくても問題はないが、尋問の際に「サイコ・ロック」の効果音が使われたり、マヨイちゃんがさりげなく原作に登場するキャラクターの名前を口にしたり、と、プレーしたことのある人を軽くくすぐる仕掛けは用意されている。

音楽も、ゲームのBGMがアレンジされて使われている。「逆転」のBGMは、オーケストラバージョンのコンサートが行われたこともあるそうで、評価も高いようだ。そういえば確かに、BGMが印象的だったように記憶している。

こうして忠実に3次元化された「逆転裁判」だが、もちろんそれだけではない。タカラヅカらしく恋愛ドラマの要素が高い比重で盛り込まれているし、ミュージカルシーンは圧倒的な歌とダンスで魅了する。そしてそれがゲームの世界観を壊すことなく、むしろ強調するような形で相乗効果を生んでいるのが素晴らしい。御剣怜侍がミツルギダンサーズを従えて登場してきたときには思わずひざを打った。展開ももたつかず、観客を引き込んだまま一気にクライマックスになだれこんでいくテンポの良さもあり、実に楽しい2時間半となった。

「リボンの騎士」を見たときは、タカラヅカをメソッドとしてとらえ、それが本体から分離可能であることを知ったが、この「逆転裁判」を観て感じたのは、タカラヅカがプラットフォームとして機能している、ということだ。タカラヅカというプラットフォームに乗せることで、どんな非現実的なものも実体化される。「女が男を演じる」という、ある意味究極のウソを内在する世界では、どんなウソもまかり通ってしまうのだ。それはある意味で、東京ディズニーリゾートが、誰がどう見てもぬいぐるみなのに「中に人などいない!」と強弁することで、「非現実感」を麻痺させてしまうのにも似ている。タカラヅカプラットフォームの上で、「逆転」特有の、デフォルメされ過ぎ感のあるキャラクターがいきいきと動き始めるのだ。

「タカラヅカというプラットフォームと、ゲームのコンテンツ」という垂直方向のレイヤー間融合も見事だが、「推理アドベンチャーというゲームのコンテンツと、ラブロマンスというタカラヅカのコンテンツ」という水平方向のコンテンツ融合もそこにある。この立体的な融合構造によって、今回のコラボレーションが成功に導かれているのだ。もっとも、推理と恋愛、という融合はちょっと消化不良だったかもしれない。しかしそれはこの試みが実験的であることの証左でもある。

宝塚歌劇というと、歴史と伝統を重んじる保守的なカンパニー、という印象を持っている人も多いと思う。しかし、一方でこうした野心的な取り組みを繰り返すことによって、その生命力が維持され、高められているのだということを、本作は感じさせてくれる。この作品自体、このあと東京公演があるのでまた観たいと思うが、今後もタカラヅカの挑戦には注目していきたい。

それにしても、実験の舞台としてバウホールという専用空間を持っていることは素晴らしい。どっかの劇団のように「自由劇場」というたいそうな名前の専用劇場を造りながら、実際には懐古趣味の場にしてしまっているのとは大違いだ。ちったあ見習ってほしいものである。

「逆転裁判」宝塚歌劇団ホームページ
http://www.capcom.co.jp/gyakutensaiban/takarazuka_index.html

カプコン特設ページ
http://www.capcom.co.jp/gyakutensaiban/takarazuka_index.html

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コメント

私にとってはやっぱりナルホド君&ミツルギかな~~~。名前に違和感を感じますが、あちこちですごく評判が良い舞台ですね。見たい!

投稿: ぽぽん | 2009年2月 8日 (日) 22時18分

ぽぽんさんこんにちは。

あのゲーム内ですら浮き上がっていた御剣怜侍の衣装が許されるのは、タカラヅカの世界だけでしょう。

名前は違っていても、キャラクターはそのまんまなので、脳内で勝手に変換して話を追うことができます。

投稿: ヤボオ | 2009年2月 8日 (日) 23時41分

おおー!バウデビュー!?
いきなり何でまた?と思いましたが、そうでしたか、そういうことでしたか。
自分も昨年しゅんくん主演「アンナ・カレーニア」を観にバウ行きを企んでいたのですが不発に終わり。。先を越されました(笑)
宙組はあまり詳しくないのですがおそらく次を担うであろう蘭とむさん主演ならかなりよかったのでは。

>その2年後にはつかこうへいの「蒲田行進曲」をタカラヅカ風にアレンジした「銀ちゃんの恋」も上演された
お名前が出てきたのであれですが(もしかしたらもうご存知かもしれませんが)、つかこうへいさんの娘=愛原実花さんが雪組次期主演娘役に大大抜擢です。おそらく誰も予想してなかったと思われ。。

投稿: Fudoh | 2009年2月14日 (土) 10時45分

Fudohさんこんにちは。

そうそう、そのニュース聞いてびっくりしました。
昔、よくインタビューでつか先生が「自分はこんな芝居をやっているが、奥さんと娘は四季の会会員だ」とかネタにしていましたが、その娘さんがタカラジェンヌになって、ついにトップになってしまうとは。

でも、つか芝居と四季や宝塚は、意外に共通する部分も多いと私は感じています。

投稿: ヤボオ | 2009年2月15日 (日) 03時20分

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