博多座「ミス・サイゴン」ソニン@キムやいかに
エンジニア | 市村正親 |
キム | ソニン |
クリス | 藤岡正明 |
ジョン | 岸 祐二 |
エレン | 鈴木ほのか |
トゥイ | 神田恭平 |
ジジ | 池谷祐子 |
さて博多に来たのだ、何か1本観ていこう、ということに。田村圭ちゃん出演中のライオンキング博多ver.も捨てがたいが、ここは東京で見逃したミス・サイゴンに。ちょうど観たいと思っていたソニンがキム役で出演している。
直前に思い立ったので買えたのは2階席の端。通常のS席に当たるA席だが、価格が16000円って一体何の値段だよ。どういう金の流れになっているのか分からないが、東宝が制作して博多座に卸す形なんだろうか?まんまマージンを乗っけてチケット代に反映させるのもどうかと思う。まあ地方で公演をすればコストがかかるのは分かるが、四季の「全国一律価格」に慣れてしまうと、素直に受け入れられない。もっとも、地元の方々にしてみれば、オケや舞台装置をカットしてでもチケット代を据え置くより、多少高くなっても東京と同じ演出を見られたほうがいいのだろうか?
だが博多座はなかなか立派な劇場だ。座席は舞台から遠く、座席間は狭いという古い設計ではあるが、コスト重視の四季の劇場にはない華やいだ雰囲気の立派な内装は、サア芝居を見るぞという気にさせてくれる。舞台がえらく広く、天井も高い。巨大セットが売りのミス・サイゴンにはうってつけだ。真偽のほどは定かではないが、設計段階でこの演目の上演を考慮したのだという。
さて久しぶりのミス・サイゴン。明るくノウテンキな舞台が好きな自分にとっては、ハッピーエンドではないこの作品はどうしても足が遠のいてしまう。しかし、上演していればやはり観たくなる。不思議な縁を感じる作品だ。
どうもステレオタイプのアジア観に拒絶反応を示す人も多いかもしれない。確かにそれは否めない。だがよく見ると、この作品はそうした「守るべき小さなアジア人」という西洋人の固定観念を打ち崩し、強く凛としたアジア人を描こうとしている姿勢も見え隠れする。さらに、アメリカ人のお馬鹿さ加減も前面に出そうとしていることも分かる。
ただ、やはり暗い展開と、いまひとつ耳に残りにくい音楽で、なかなか世界中で大ヒット、というわけにはいかないようだ。俺の場合いちばん耳に残っている曲といったら♪ジョン聞いてーくれこの声ー♪だし。
注目のソニン@キムは、これまで見たどのキムとも違う。キムははかなさの中にも芯の強さを感じさせる女性だが、このソニン版キムは、全身からバイタリティーがあふれ出る、ワイルドさが魅力だ。最初は少女っぽさを出してそういう演技をしているのかと思ったがそうではなかった。周りの人に対し、好意なら好意、敵意なら敵意を200%ぶつけていく。そんな全力必死系のキムである。だから、怒った顔がちと怖い。俺がエレンなら、とてもまともに対峙できない。
そのエレンを演じるのは鈴木ほのか様。しかし何で今さらほのか様がエレン?初演以来のはずだ。しばらく干しといて、四季の「マンマ・ミーア!」ドナ役で知名度が上がったら無理やり役をつけて引き止めにかかるなんて、四季も四季だが東宝もやることが大人気ない。だいたい初演以来ってことは、年齢的に無理が生じるということだ。ほのか様は1965年生まれ。この日その夫となるクリスを演じた藤岡正明は1982年生まれ。最近はマリウスを好演している。そういえば、藤岡のちょっと前にマリウスを演じていた津田英佑は四季でスカイを演じた。年齢的にはドナとスカイのカップルか。んーそれはそれでリサ、いんやアリだとは思うが……。
もっとも、ほのか様はアイドル顔なので、年をとっても「昔のまま」を保っている。だから彼女のキャリアを知らない人にはさほど違和感はないだろうと思う。それに、以前のエントリーでも紹介したように、彼女はかなりのナイスバディだ。そしてエレンの衣装は結構体のラインがくっきり出る。胸元も広め。カーテンコールでおじぎをした瞬間、思わずオペラグラスに手が伸びた最低な客は俺だけではあるまい。
市村エンジニアは言うまでもなく素晴らしい。四季退団後、市村正親ここにあり、と世間に知らしめた当たり役。いくつになってもこの役を演じてほしいものだ。筧利夫のエンジニアも少し見たかったけどね。
博多座にも一度来てみたかったし、満足した観劇となった。
ひとつ、ずっとこのブログにしたためておこうと思って、まだ書いていなかったことがある。自分がミュージカルにのめりこんだのにはいくつか要因があるが、その中でも大きな比重を占めたのが、仕事でロンドンに行ったとき、この「ミス・サイゴン」を観たという経験だ。すでに学生時代からレ・ミゼラブルやジーザス・クライスト=スーパースターなどを観ていたものの、社会人になって少し演劇から遠ざかっていた。それをぐっと引き戻したのがあのロンドンでの観劇だった。
そのロンドン出張は自分にとって初めての海外で、右も左も分からず、とても観劇の手配などできる状態ではなかったのだが、一緒に行っていた会社の大先輩、Tさんが「せっかくロンドンに来ているのだから演劇ぐらい観て行こう」とチケットを手配してくれた。自分の直接の上司ではないが、物腰のやわらかく、温厚な面倒見のいい人で、とても頼りにしていた。このミス・サイゴンで「やっぱり本場のミュージカルはイイ!」とテンションを上げていたら、「じゃあ、明日も行こう」と、翌日の夜はダフ屋に駆け込んでチケットを購入し、2人で「オペラ座の怪人」に足を運んだ。
海外でミュージカルを観る楽しさ、チケットは国内代理店を通さず手配すること、連日でも気にせず劇場へ行くという姿勢、考えてみれば今の自分の行動はTさんに大きな影響を受けているのだと思う。そういう意味では、Tさんは自分の恩師であり、この悪い遊びを教えてくれたイケナイ悪友でもある。
そのTさんは、昨年がんでこの世を去った。
Tさんが教えてくれたのは、観劇だけにとどまらず、もっと人生楽しんで過ごそう、という基本的な姿勢だったのかもしれない。困ったことに、この不肖の弟子はそれを完璧なまでに受け継いでいる。これからも、師匠があの世で「おいおいもうそのぐらいにしとけよ」と止めに入りたくなるほど、ガッツに楽しんでいきたいと思う。Tさん、ありがとうございました。
考えてみると、前回ミス・サイゴンを観たときは、市村氏と親交のあったある劇場関係者、Iさんを思い出した。Iさんも温厚な人で皆に好かれていたが、突然この世を去ってしまった。Iさんにも公私にわたりずいぶんとお世話になった。あらためて、感謝の気持ちを伝えたい。
ふと亡き人を思い出させてくれるミス・サイゴン。やっぱり、何か不思議な縁を感じる作品だ。
ミス・サイゴン博多座公演のWEBサイト
http://www.hakataza.co.jp/miss_saigon/
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コメント
ヤボオ様
いつも楽しく拝見しています。
人生を楽しんでいこう。
ほんとそうですね。
私も最近しみじみそう思います。
Tさんもヤボオさんと楽しい観劇は
良い思い出になったことでしょうね。
私は今専業主婦なので
たまに行く四季で芝さんみては
アー同年代頑張っている(>_<)と
ハッパかけられてます。
又今日も
芝ファントム見てきます。
ヤボオ様もお仕事に忙しい年代だと思いますが
お体ご自愛くださいませ。
投稿: もことんとん | 2009年2月26日 (木) 10時47分
もことんとんさんこんにちは。こんな低俗なブログを読んでいただき恐縮です。
私は遊んでばかりで仕事もいい加減だし、家庭も持っていないので師匠にももことんとんさんにも怒られてしまいそうです。
芝ファントムもいいですが、福井晶一登場がとっても気になってます!
投稿: ヤボオ | 2009年2月26日 (木) 23時25分
「んーそれはそれでリサ、いんやアリだとは思うが……。」
うまいですねーー!思わず声をあげて笑ってしまいましたw
投稿: 凛 | 2009年3月 1日 (日) 01時26分
凛さんおはようございます。
すいません、オヤジギャグで・・・
マンマ千秋楽記念、っつうことで勘弁してください!
投稿: ヤボオ | 2009年3月 1日 (日) 10時26分
はじめまして。
時々観劇記を楽しく&参考にしながら拝見しています。
私も抜けられない世界に足を踏み込んでいるひとりです。
自分自身のきっかけを考えるとやはりいい作品やそれに纏わる人との出会いだったと思います。
いつまでこういう生活が続けられるのかは分かりませんが、
それぞれの出会いもひっくるめて大切にしていたいと思っています。
大切な方との思い出のお話で書き込みさせていただきました。
投稿: tayutayu | 2009年3月 2日 (月) 15時01分
tayutayuさんこんにちは。こんなうさんくさいブログを読んでいただき恐縮です。
あっちこっちの世界から足が抜けないのに、この不況で給料減りまくりでタイヘンです!
なのにソフィーのように、もっと世界を見ましょうよ、とか考えているのでどこかで破綻すると思います。
投稿: ヤボオ | 2009年3月 3日 (火) 00時06分
>福井晶一登場がとっても気になってます!
彼が唄うスーパースターは、きっといろんな意味で眩しいんでしょうねw
早くこの目で確かめなければと思っています。
投稿: らうる | 2009年3月 3日 (火) 00時32分
らうるさんこんにちは。
アレが目立たない役はキャッツ以外にないものでしょうか?
ビースト役をぜひ見たいですが・・・
王子に戻ったとき、一緒にヅラが取れてしまったらヤヴァイですけど。
投稿: ヤボオ | 2009年3月 3日 (火) 01時13分
福井さんまぶしかったです。
でもボーカル三人衆
阿久津さんで見慣れちゃうと
ちょっと刺激が足りないというか、うさんくささはなくなりますね。・・・
芝さんの変さ加減目立ってそれはそれでファンとしてはうれしいんですけど
私も変な趣味なんでしょうか
投稿: もことんとん | 2009年3月 3日 (火) 14時49分
もことんとんさんこんにちは。
確かに阿久津陽一郎のインチキな感じは得がたいものです。ぜひ「夢の配達人」を見てみたいです!
投稿: ヤボオ | 2009年3月 4日 (水) 00時22分
はじめまして。マイクと申します。
ブログ記事を一気に読みながら、どこにコメントしようかと
思いましたが、読んでいて思わず声を出してしまったこの
回にコメントさせて頂きます。
僕もHANSを地方公演で見て、その後、青山劇場で同じ年に見ました。ちなみにマニアックですが、地方公演は、味方&荒川&八重沢トリオでしたが・・・。
博多チケットの構造考察は素晴らしいです。大笑いしてしまいました。また先輩のお話は本当によかったです。
ブログを拝読しながら美味しいお酒を飲めましたので、お礼を兼ねましてコメントさせて頂きました。
これからも楽しみにしています。
投稿: マイク | 2009年4月22日 (水) 00時14分
マイクさんはじめまして。こんな適当なブログを読んでいただき恐縮です。
味方さんはそのころからハンスを演じているのですか。それではますます味方ハンスも観に行かなくては・・・!
あほなブログですがよろしくお願いいたします。
投稿: ヤボオ | 2009年4月22日 (水) 02時10分