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2008年12月30日 (火)

EQUUS(エクウス)

30日 19時~21時40分
Broadhurst Theatre

Equus

「ハリー・ポッター」の主演でおなじみ、ダニエル・ラドクリフの主演で話題を呼んだ「エクウス」が、ロンドン公演成功を受けてブロードウエーに登場だ。有名人が出ているからといって、わざわざ米国まで来てであの重い話を観るのもなあ、とも思ったが、ハリウッド・スターの演技を生で観るなんてそう経験できることではない。ストレート・プレイではあるが四季の舞台でストーリーは分かっていることだし、ミーハー根性丸出しで前回「レ・ミゼラブル」を観たブロードハースト劇場へ。

劇場に入ると、四角いリング上の舞台が用意され、それをステージシートの観客が取り囲む、という四季の公演とほぼ同じようなセットが目に入る。ただ、ステージシートは役者と同じ目線ではなく、ずっと高いところに設置されており、舞台や観客席を覗き込む、というような格好だった。

精神科医・ダイサートが、六頭もの馬を失明させるという異常な行為に出た少年・アラン(ラドクリフ)との対話を通じ、次第に自分も含めた人の心にある、どうしようもできない深い闇に直面していく、という、非常に乾いた物語の「エクウス」。しかし、それがラドクリフと、ダイサート役のやはりハリウッド映画でおなじみ、リチャード・グリフィスの演技によって、瑞々しく展開していく。

今をときめくハリウッド・スターの登場とあって、観客席は圧倒的に女性が多かった。これは日本の演劇では日常的な光景だけど、米国では決して自然なことではない。

ハリー・ポッターシリーズでも、回を重ねるごとに男らしく成長しているラドクリフ。この舞台でも、精悍な顔つきと引き締まった肉体を披露し、女性のみならずその視線を釘付けにさせていた。しかしときおり見せる子供っぽい表情も健在で、これが少年と大人の間で揺れ動く、アランという役どころにぴったりである。

四季でアランを演じた望月龍平は、どこか人を食ったようなところもあるつかみどころのなさを冒頭で漂わせていたが、ラドクリフのアランはのっけから全力投球で、必死感があふれている。連日マイクなしの肉声で舞台を務めているせいか、声はかすれていた。上半身裸でかすれた声で必死に演じる、ということで、なんだかつかこうへいの舞台を思い出してしまった。つかは、テレビや映画で人気者になった役者を、舞台を通じて「叩きなおす」ことを得意としており、阿部寛などがその教え子なわけだが、ラドクリフもこの舞台を経験してより大きな役者に育っていくに違いない。表情のパターンが単調な気もしたが、それが直線的に観客の心を打つ力にもなっている。一幕最後で、馬と一体となり恍惚とする表情にははっとさせられた。

対するリチャード・グリフィス。ハリー・ポッターシリーズにも出演しているが、「スリーピー・ホロウ」なんかでも存在感を発揮していた個性的な役者だ。力士のように太っており、見た目も個性的だが。その演技は、ラドクリフと対照的に、実にひょうひょうとしたもの。軽妙な語り口で、時おり客席に笑いをもたらす。しかし、表情を微妙に変えるだけで、客席の空気を一変させてしまうほどの威圧感がある。そして、その英語のなんと聞き取りやすいこと(理解はできないんだけど)!他の役者の発声とは明らかに異なっていた。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの一員、という肩書きが、これほど重く感じられたことはない。

必死なアランと、受け流すグリフィス。その絡み合いによって、重い話がテンポよく感じられてくるから不思議だ。1時間半もある1幕が終わり(こんなに長かったっけ?)、ロビーもトイレも狭いために大混乱の休憩を挟んで、いよいよ第2幕。いよいよ、というのは「春のめざめ」同様、問題のアレのシーンがあるからだ。なんか今回はこんなのばっかりですいません。

というわけで、Spring Awakeningでもそうしたように、四季版との比較で説明しよう。まず、四季版より照明が明るい。これ重要。女の子(ジル)も、アランも、全裸になる。本当に全裸だ。何にも身に着けていない。丸出しである。これ以上繰り返すとますます有害サイトとしてフィルタリングされてしまうからやめておくが、距離を保った状態で全裸になり、それから舞台中央で抱き合うことになる。

「春のめざめ」よりはるかに露出度は高い。だって全裸だから。そういう意味では衝撃的だったから。しかし、不思議に猥褻さは感じることがなく、演出の中で自然に受け入れられる。むしろ、中途半端に服を着たままの「春のめざめ」のほうがずっとドキドキしてしまうのは、俺が変態だというだけの理由ではないだろう。

ちなみに、「シネマトゥデイ」によれば、ラドクリフ自身が、トーク番組でこのシーンについてこんなふうに語っているそうだ(http://cinematoday.jp/page/N0016253)。

話は盛り上がりダニエルの舞台劇「エクウス」で披露したヌードシーンの話題に。「あちこちで話のネタにされることでしょうね」というリプトン氏の問いに答えて、ダニエルは、「(ヌードシーンの)僕は……ミケランジェロのダビデの彫像と同じで……ほら、彫像のダビデは、巨人のゴリアテと対戦する直前の姿でしょう。だから当然アソコの状態も最高とは言えないわけで……」と失笑。さらにダニエルの話は止まらない。「よく友達に聞かれるんです。『もし、舞台でタッちゃったらどうするんだ!?』ってね。だからボクは、『それは願ったりだね!』って言うんですよ。だって、舞台上ではいつも逆状態だから」と笑う。

なかなか男らしい、ナイスガイじゃないか。ハリー・ポッターシリーズの続編も楽しみだけど、早くそれが完結した後の、新しい境地への取り組みを見たい気がする。

それにしても、日本でも舞台演出の一環としてはアレOKにしてくれないかな…。こういうときこそ代表様の政治力で、汐留~浜松町を「演劇特区」とかにしちゃえばいいのに!

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