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2008年11月 8日 (土)

映画「櫻の園―さくらのその―」初日舞台あいさつ

1990年に著しく高い評価を得た映画「櫻の園」。それを同じ中原俊監督が再度映画化し話題を呼んでいる「櫻の園―さくらのその―」が初日を迎えた。舞台あいさつがあるというので、大島優子(チームK)目当てにマリオンへ足を運ぶ。

1990年、自分はこの映画を新宿の小さな映画館で見ている。当時は自分もフレッシュな大学生だったものだ。舞台はやや保守的な校風の名門女子高・桜華学園の演劇部。創立記念日の恒例行事としてチェーホフの「櫻の園」を上演する日の朝の数時間のみにスポットを当て、その中で部員それぞれの悩みや心情を描いていくという実験的な性格の強い意欲作だった。その印象の鮮烈さは今なお記憶に深く刻み込まれている。

今回の映画は、そのリメイクではない。舞台は同じ桜華学園の演劇部、そして創立記念日にチェーホフの「櫻の園」を上演する少女たちの物語、という設定は同じだが、ストーリーは全く異なる。そして前作の、中原自身が「演劇的な手法」と称する、時間の省略や場所の移動が少ない実験的なアプローチは封印され、ストレートな青春群像劇として生まれ変わった。

しかし、映画の随所に前作を思い出させるセリフや設定、セットや小道具などが登場し、傑作の呼び声高い1990年版「櫻の園」へのオマージュをささげる。そのなぞり方が絶妙で、前作を観た人間にとっては非常に心地よくストーリーが進んでいく。この映画は、結局前作を懐かしむために作られたのか。それならそれで文句はない。

だが後半、ストーリー的には予測できたものの、テイストが突然スポ根風になって愕然とする。まるで前作を否定するかのうような、意表を突く展開だ。

それでも最後は、ふたたび前作の印象的なシーンを思わせる場面が続き、そして前作同様、「櫻の園」の上演前で映画は終わる。

この2008年版「櫻の園」には、1990年版「櫻の園」に対する否定とリスペクトが、共存しているのだ。

中原監督は、なぜそんなことをしたのだろう。

まこと勝手な想像ではあるけれど、中原監督としては前作の評価が高ければ高いほど、こそばゆい感覚があったのではないか。確かに鮮烈ではあったが、前作は映画的な手法を大きく逸脱して作られた。それを評価されるのは、映画人としての矜持を鑑みるに、やや複雑な思いがあったのではないだろうか。「ドカベン」で、八艘飛びでホームを奪い無敗の明訓高校を破った弁慶高校の義経は、その後自分のプレーを「あれは野球じゃない」と悔やんでいたという(「スーパースターズ編」第1巻)。同じような気持ちを中原監督も抱いていたのではないか。

だから、今回は驚くほどの正攻法で、映画的な時間の流れの中で、美しい日本の四季を舞台として、再度同じテーマに取り組んだのだと思う。しかし、前作は決して実験的な手法のみが評価されたのではない。つみきみほや中島ひろ子といった、天才肌の若手女優の演技にも助けられたが、静かに心を打つ珠玉の名場面がぎっしり詰まった密度の濃さが高い評価につながっていったのだ。それらについては、オマージュという形でこの映画の重要な核として残しているのである。

恐らく、本作の出来は、決して前作のような評価を得るものではないだろう。しかし、そんなことは分かりきっている、とばかりに、ベテラン監督が微塵のてらいもなく、決して「天才肌」ではない若手女優とともに取り組んだ青春映画。その姿勢のすがすがしさは、そのまま映画のメッセージとして伝わってくる。

もっとも、前作を観ずにこの映画だけ観たとき、どこまで感動を呼ぶかは自分にはよく分からない。最終的にはこの映画への評価はそこで決まるべきだと思う。

上映後、舞台あいさつが行われ、メインの出演者たちが作品についてコメントした。われらが大島優子は、「この映画をスクリーンで観たとき、桜がとってもきれいだな、と印象に残りました。ぜひそれを思い出しながら、周りのみんなに『櫻の園よかったよ』って伝えてくれたら嬉しいです」と語った。一見ノウテンキに見えるコメントだが、ロケに使われたリアルな桜は、この映画が実験的手法ではなく、正攻法で撮られた映画であることを象徴的に示す重要なアイテムだ。さすが優子、本質を見抜いている。演技の面でも、百面相ともいえる豊かな表情を駆使し、大きな存在感を発揮していた。

舞台あいさつというと、普通は役者と監督がゆるい話をしてなんとなく終わるものだが、この日は演出として、先生役の菊川怜がひとりひとりにこの映画からの「卒業証書」を渡すというイベントがあった。読み上げられるコメントも一人一人異なっておりなかなか感動的で、実はちょっと泣きそうになったのは内緒だ。

映画に登場する制服のレプリカ。53000円。高いなあ、と感じたのは、もし安かったら真剣に購入を検討していただろう、ということだ。

「櫻の園―さくらのその―」WEBサイト
http://www.sakuranosono-movie.jp/

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