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2008年9月28日 (日)

映画「おくりびと」

葬儀の中でも、遺体を棺に納めるというプロセスを専門的に担当する比較的新しい職業「納棺師」を本木雅弘が演じるという映画。

監督は滝田洋二郎。特にファンというわけでもなく、いつも満足度が高いわけではないが、「コミック雑誌なんかいらない!」以来、そのほとんどを劇場で見ているという、自分にとってなじみのある監督だ。あまりひとつのスタイルにこだわることなく、貪欲に様々な演出に取り組むのがこの人の特徴とも言えるが、中井貴一主演の「壬生義士伝」あたりから、巨匠の風格が出てきたようにも感じる。

とにかく、この映画の最大の見所は、モッくんが手がける納棺の儀式、その様式美である。まさしく至高の美しさで、その前では胸を打つエピソードを綴るなかなかよく出来たストーリーも、どこか陳腐に見えてきてしまうほどだ。同じ滝田監督の「陰陽師」のラストシーンで、野村萬斎の舞姿を思い出させるな、と思っていたら、ラストではやっぱり、という展開だった。

だから滝田監督も、笑いも涙も盛り込みながらあまりそれらを強調せず、山形は庄内地方の空気感を生かし、静かに、本当に静かに、それこそなきがらをそっと棺に納めるように、映画全体を丁寧に包み込むように演出している。これが非常に観ていて心地いい。

モッくんのうまさはもちろんだが、競演者も見ごたえがある。何といっても「師匠」役である山崎務。名優との呼び声をほしいままにしている山崎務だが、やっぱりすごい。スクリーンに出ているだけで、息を呑む存在感だ。

ところで山崎務と葬儀の仕事、といえば誰もが伊丹十三の「お葬式」を思い出す。それをちゃあんと意識して用意されたシーンもある。これは今はなき伊丹十三へのオマージュだろう。

また妻役の広末涼子もいい。涼子ちゃんは「生」を感じさせることにかけては屈指の女優だ。これが「喪」をモチーフとした映画の中で強烈な印象を残し、モチーフの輪郭をより明確に際立たせて見せるのである。

もうひとり、峰岸徹の演技も特筆に価する。序盤、彼は背中だけの演技を見せるが、それだけで峰岸と分かる圧倒的なオーラを放っていた。それが終盤に大きな影響を与え、映画全体の感動を膨らませている。

一流のキャスト、スタッフの丁寧な仕事ぶりが生きた快作。すでにモントリオール世界映画祭でグランプリを受賞したが、今後国内でも多くの賞を獲得するのは間違いないだろう。

Hyoushi

「おくりびと」公式サイト
http://www.okuribito.jp/

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