映画「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」ぬらりひょんの迫力
千年の時を隔てて繰り広げられる、「信頼」と「赦し」の物語。なかなかの佳作だ。
昨年公開された前作は、田中麗奈の猫娘や大泉洋のねずみ男など、反則技レベルのキャスティングの妙で妖怪の世界を描き出し、それはそれで楽しい映画になっていた。
しかし、今回は妖怪の世界を実現しただけでなく、その世界観を背景に見事なドラマを展開し、心に響く作品に仕上がっている。寺島しのぶが演じる妖怪・濡れ女の悲しい物語を軸に、「音」「時間」といったモチーフがきれいに絡んでいく脚本が実にいい出来だ。
演出の雰囲気も映像の色調も、前作に比べるとぐっとダークな雰囲気だ。「墓場鬼太郎」のヒットにも影響されたか、幽霊族の過去や鬼太郎の生い立ちなどについても触れている。前作とは異なる映画を作ろうという本木克英の意気込みが伝わってくる。
そしてそのドラマを支えるキャスト陣も、前回同様の豪華な顔ぶれ。そこに、超弩級のゲストが加わった。緒形拳が演じるぬらりひょんである。
世俗的な欲望に駆られた悪玉妖怪の元締めとして、あまたの妖怪を統率するぬらりひょん。前作を観たとき、もしぬらりひょんを出すなら山崎努か緒形拳だと思っていた。だから本作のニュースを聞いたときは飛び上がるほど嬉しかった。
その緒形ぬらりひょんは、出番は決して多くはないが、期待をはるかに上回る素晴らしいものだった。自らの手を汚すよりも、言葉によって妖怪の心をつかみコントロールする。それは舌先三寸の軽い言葉ではなく、魂の底から繰り出されてくるまさしく言霊だ。妖怪ならずとも、その言葉の魔力には抗うことはできないだろう。
そのあまりにも強烈な悪役を迎えながら、あくまでその存在は脇に置き、濡れ女の物語を中心に据えたところが、この作品の成功の要因だろう。
キャストといえば、田中麗奈の猫娘は、前作ではやや年齢的にキツいコスプレをさせられていたが、今回は衣装も一新、キャラ的にもはすっぱなツンデレ姉さんに変わっていて、これがまた萌える。
ダークではあるが、別に残酷なシーンがあるわけではないし、妖怪たちの派手な立ち回り(砂かけ婆や子なき爺の戦闘力の高さは意外)も楽しい。その点は安心して観られる作品だが、子供と一緒に観ると、たぶん寝てしまうと思う。大人の映画としてどうぞ。
ところで「小説こちら葛飾区亀有公園前派出所」という、人気作家が自分たちの作品に両津を登場させた豪華にしてキテレツな連作集があるが、その中で京極夏彦が、「京極堂シリーズ」のパロディーとして「ぬらりひょんの褌」を寄稿している。これがまた面白い。
「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」公式WEBサイト
http://www.gegege.jp/
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コメント
あと原作もの映画でこの夏期待と言えば「デトロイト・メタル・シティ」ですかねぇ。コイツは一緒に見に行きませんか?
投稿: kunedog | 2008年7月14日 (月) 18時12分
公開は23日?その日は野音でライブであるわー!
http://ameblo.jp/akihabara48/entry-10115997855.html
けど時間次第で大丈夫でしょ。舞台挨拶とかあるかな。
観るのはやはりクラウザーさんが東京タワーを孕ませてできた六本木ヒルズか?
投稿: ヤボオ | 2008年7月14日 (月) 23時35分
ヤボオさん、また事件です!
四季のサイトが異常な状態になっています。
55周年の記念式典のアトラクションをyou-tubeで晒したりしています。
四季って
こんなに、CSに熱心な企業ではないはずなんですけど、何が起きたんでしょうか?
とりあえず、私は3回聞きました。だいぶデレデレです。
師匠はどのように評価されますか?
投稿: ヨシボウ | 2008年7月15日 (火) 23時59分
ヨシボウさんこんにちは。
ははは、いいことではないですか。
四季はもともとCSに積極的な会社だったと思います。ただネットを中心とした今風のCRMに乗り遅れたのと、もともと社員の人数が少ないのと、なんといっても代表様のご乱心に振り回されっぱなしなのとで、顧客軽視のイメージになっちゃってるんだと思います。
この調子で頑張ってもらいましょう!
投稿: ヤボオ | 2008年7月16日 (水) 00時23分