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2008年7月21日 (月)

劇団☆新感線二〇〇八夏興行   SHINKANSEN☆RX「五右衛門ロック」

作・中島かずき
演出・いのうえひでのり

石川五右衛門 古田新太
真砂のお竜 松雪泰子
カルマ王子 森山未來
岩倉左門字 江口洋介
ペドロ・モッカ 川平慈英
シュザク夫人 濱田マリ
ボノー将軍 橋本じゅん
インガ 高田聖子
ガモー将軍 粟根まこと
アビラ・リマーニャ 右近健一
前田玄以 逆木圭一郎
ザン 河野まさと
バーヤ/ラウ 村木よし子
ウレ 山本カナコ
モグラの壱助 礒野慎吾
グルー 吉田メタル
バナナを食う子供 中谷さとみ
ロコ 保坂エマ
ロック 冠 徹弥
発破の灸六 村木 仁
ガナル 前田 悟
ズゴン 川原正嗣
クガイ 北大路欣也

※ちょっとばれますので、これから観る人は読まないでください。

今年の新感線夏公演は、「メタル マクベス」以来2年ぶりとなる「R」シリーズだ。Rがついている作品では、新感線に欠かせない音楽の要素がさらに強調される。そしてその舞台は閉館へのカウントダウンが始まった、歌謡ショーの殿堂・新宿コマ劇場だ。久しぶりに主役を張る古田新太のほか新感線のおなじみの面々がそろい踏み、松雪泰子に江口洋介、そして大御所・北大路欣也ら超豪華キャストを迎えて送る真夏の祭典。それがこの「五右衛門ロック」だ。

どうやらいのうえひでのりにとって、夏祭りといえば「東宝チャンピオンまつり」「東映まんがまつり」であるようだ。これまでも、新感線は公演のサブタイトルに「チャンピオンまつり」という言葉を堂々と折り込んできたが、今回は内容もかなりソレっぽい。まず、物語の舞台となる南海の孤島「タタラ島」。これは「もののけ姫」のたたら場から取ったのではないだろう。間違いなく、ウルトラマン第8話「怪獣無法地帯」(レッドキング、チャンドラー、マグラー、スフラン、ピグモン登場)に出てきた「多々良島」から取っているものと思われる。そして舞台が南海の孤島というのが、いかにも夏休み映画な雰囲気だ。チャンピオンまつりで上映された怪獣映画には、そのものずばり「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」をはじめ、南の島が出てくる作品がいくつかある。また「東映まんがまつり」の目玉となる、テレビシリーズの劇場特別版では、たいてい夏休みっぽい舞台が用意されている。

だから、いのうえひでのり世代の野郎どもにとっては、序盤からお祭りムード一色な作品なのである。

南海の王・クガイが率いる強固な兵団、クガイに反旗を翻した野心的な将軍と王子、ふしぎな力を持つ謎の原住民族、陰謀をたくらむイスパニアの武器商人、そこに日本から流れ着いた五右衛門一味が絡んでいき、おまけに五右衛門を追跡する役人・岩倉も巻き込まれ、世界を変えるほどの力をもつという秘宝をめぐり敵味方入り乱れての一大争奪戦を繰り広げる……という展開だから、まさしく新感線の真骨頂だ。

テイストとしては「いのうえ歌舞伎」路線に近い。最近のいのうえ歌舞伎はややシリアス路線にシフトしていたが、今回はもっと気楽に観られる、笑いの要素もそこそこ充実した、少し前のいのうえ歌舞伎、といったところか。

新感線にとっての十八番とも言える素材ながら、全体的にやや展開がもたつくきらいがある。いつもなら終盤になるとめまぐるしく状況が変化し観客をぐいぐいと引き込んでいくのだが、そういう力強いスピード感が見られなかった。

これは、おそらくいのうえひでのりが、今回の舞台である新宿コマ劇場に敬意を表した結果だろう。すなわち「大衆演劇へのリスペクト」だ。

大衆演劇、というと最近では小規模の旅回り一座のことを指すようになっているので、コマ劇場のような大型の劇場とは関係ないと思われるかもしれないが、ご存知のようにコマといえばサブちゃん特別公演に代表される歌謡ショーが売り物だ。その形式は大衆演劇そのものであり、規模は違えどコマは「最も大きい大衆演劇の劇場」と言ってよいのではないかと思う。

大衆演劇を意識したことで、ひとりひとりの役者に多くの見せ場をつくり、そして曲をじっくり聴かせるというスタイルになった。そのために、スピード感が犠牲にされたのである。

だがもちろん、もたらされたのは犠牲ばかりではない。その大衆演劇的手法によって、役者の魅力が十二分に引き出されることになった。

松雪泰子は初めて新感線に参加した「吉原御免状」の時よりも妖艶度が5割増しで、実に魅力的な女盗賊となった。歌も十分に声が出ていたので、今後ミュージカルの仕事も増えるんじゃないかと。そして江口洋介はちょっとアホな演技で新境地を開拓。「ルパン三世」の銭形警部をモデルにした(としか思えない)、憎めない、そしてちょっと頼りにもなる愛すべき敵役を演じていた。ラストシーン、まんま「カリオストロの城」ですって。

個人的にゲスト陣のMVPをあげたいのは川平慈英。右近健一の当たり役である「インチキ外人」を、その右近とコンビを組んで、右近以上のハイテンションで演じ、超強力なハイパーインチキぶりを発揮した。彼を舞台で観るのは「オケピ!」以来だが、ここまですっ飛んだキャラクターもできる幅を持った役者だとは知らなかった。また、これまで舞台で観たことがなく、いまだモダンチョキチョキズのイメージがあった濱田マリは、持ち前の滑舌の良さが極めて演劇向きであることを知った。「メタル マクベス」にも出演した森山未來は、いまや井上芳雄と並ぶミュージカル界のホープだ。そのスター性は客席の大多数を占めた女性客の熱い視線が物語っている。身体的能力がずば抜けているので、声楽系出身の多い日本のミュージカル界では貴重な存在だ。

そして何といっても北大路欣也。役者の格が違う、というのはこういうものかと痛感する。出てくるだけで舞台の空気が一変し、さらにその一挙手一投足で次々と空気を変えていく。しかしそれだけ強い存在感を発揮しながら、決して若い役者たちの中で浮かび上がってしまうことがない。しっかりと演出家の意図を汲み、それを自分のスキルによって昇華させて演技というアウトプットを送り出す。これぞ役者というプロの仕事を見た気がする。緒形拳がゲゲゲの鬼太郎に出演し、北大路欣也が新感線に参加する。日本のエンターテイメントは、なかなか面白い時代になってきた。

高いポテンシャルと強い個性を誇る新感線のメンバーは相変わらずみな素晴らしいが、特に素晴らしかったのは、といってもいつものことだが、高田聖子だろう。この人は本当に日本演劇界の至宝だ。北大路欣也と2人の場面になっても、その存在感は全く負けない。しかも、それが北大路同様、その役の上での関係性を壊すことはない。ラスト近くで、2人がセリフでも、演技でもなく、あえて言えばそのオーラだけで舞台の色を染め抜いてくるシーンがある。これはもう圧巻という他はない。

自分にとっては、やっぱりバカな芝居をする新感線が好きなので、昨年の「犬顔家の一族」のほうが忘れられない作品ではあるが、客観的に見てこの完成度は「メタル マクベス」に匹敵するものだろうと思う。チケット代はちょっと高いけど、観ておいて損のない傑作だ。

ロックコンサート、SF、コメディ、ミュージカル、歌舞伎、そして今回は大衆演劇と、さまざまな要素をどん欲に取り込んで成長し続ける新感線。次にその餌食となるのは何だろう?

青山劇場やキャッツ・シアターでも客席数は1200ほどなのに、コマ劇場の座席は2000を越える。これを満員にするのは容易ではないが、今回の公演はそれを見事に満員にしている。今までコマ劇場で観た作品で満員になったものはなかったので、2000人が埋め尽くした客席は実に壮観だった。もはや、新感線の動員力は四季や宝塚に匹敵するといっていい。日本演劇界の一大勢力となることも現実性を帯びてきたが、自分はそんな期待はしていない。唯一期待しているのは、これからもきっとバカな芝居を作ってくれるだろう、という一点だけである。

「五右衛門ロック」公式WEBサイト
http://www.goemon-rock.com/

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