四季「ウェストサイド物語」俺がトニーだ!福井晶一上洛
ジェット団(The Jets)
リフ | 松島勇気 |
トニー | 福井晶一 |
アクション | 西尾健治 |
A-ラブ | 澤村明仁 |
ベイビー・ジョーン | 大空卓鵬 |
グラジェラ | 恒川 愛 |
エニイ・ボディズ | 室井 優 |
シャーク団(The Sharks)
マリア | 花田えりか |
アニタ | 団 こと葉 |
ロザリア | 玉井明美 |
ベルナルド | 望月龍平 |
チノ | 畠山典之 |
おとなたち(The Adults)
ドック | 岡田吉弘(劇団昴) |
シュランク | 勅使瓦武志 |
クラプキ | 石原義文 |
京都で続く「ウェストサイド物語」のロングラン。このまま新キャストもなく終了かと思っていたが、トニー役に福井晶一が登場だ。
自分は女優さん目当てで劇場に通っているが、実は男優も結構好きだ。そういう男性ファンはわりと多いのではないかと思う。別に四季の会にはバイセクシャルが多いというわけではない。男はそもそも男が好きなのだ。だから任侠映画というジャンルが存在する。最近任侠映画がウケないのは、男が素直に男を好きと言えない世の中になっているからだろう。
四季で男に人気のある俳優といえば、芝清道やキムスンラといった名前がまず出てくるだろうが、福井晶一もかなり上位に食い込むのではないかと思う。最近の当たり役といえば何といっても「キャッツ」のマンカストラップだ。ご存知「ジェリクル武闘会」を主催している、硬派度200%のリーダー猫だ。終演後、キャッツでは猫たちが客席をまわって観客と握手をするが、福井マンカストラップとの握手は「ブラック・レイン」のラストシーンで高倉健とマイケル・ダグラスが交わしたような、熱い力のこもった握手だった。
そんな福井が演じるトニーは一体?それを自分の目で確かめるために、京都劇場に向かった。
オープニングの街のシーンが終わり、リフがトニーの職場を訪ねる場面。そこにいたのは、実に大人っぽい感じのトニーだった。声も物腰も落ち着いており、リフに対しても弟のような視線で語りかける。この場面のリフは、仲間達に冷静に指示を出す不良グループのリーダーの顔ではない、どこかトニーに甘えているような仕草を見せるが、このトニーとの組み合わせだとそれが妙にしっくりする。思わずアニキィィィィィ!と叫びたくなるような、ちょっとマンカストラップの入った頼れる兄貴分といった雰囲気だ。
続いてのソロナンバーでは、高いキーがやや苦しそうだったが、艶と張りがある福井ボイスを披露し、女性ファンのみならず、男性ファンも魅了しまくりだ。
そしてきりっとした眉毛が印象に残る、まさしく役者、という端正な顔立ち。うーんいいオトコだ。いろんな意味で気になる髪は地毛を染めて勝負。だからちょっと…いや、なんでもない。
福井トニーは、阿久津陽一郎演じるつかみどころのない変人トニーとも、鈴木涼太演じる青年と少年の間で揺れる危ういトニーとも異なる。うまく言えないが、あえて言えばそれは実に男らしいトニーだ。
その男らしさとは、任侠映画っぽい雰囲気ももちろんだが、それだけではない。自分に訪れる運命から決して逃げることなく、正面から受け止め、あくまで前向きに生きていこうという「生きる姿勢」に大いに男を感じるのだ。
移民の子として生まれたこと、そこから来るいわれなき差別、仲間たち、働くということ、そしてマリアとの出会いと突然の悲劇………。いいことも、悪いことも、楽しいことも、つらいことも、トニーは全て受け入れて生きている。ガッツな純粋さ、とでも言おうか。そんな人間的な魅力を感じさせるのだ。
しかし、それは度量の大きさとイコールではない。もしそうだったらあの悲劇は起きなかった。数々のつらい運命を受け入れてきたと言っても、決してそれを忘れているわけではない。そうした運命への怒りや嘆きも、感じないのではなく、ぐっと呑みこみ、押さえているのだ。それが、リフの死を前にして爆発し、悲劇は起きたのだ。福井の演技を見て、そんなことを考えていた。ほかの2人が演じたトニーでは、このシーンはまさに「衝動」であり、若さゆえの不安定さが悲劇の引き金となっていた。しかし、福井の場合、ほんの一瞬ではあるが体全体から明確な「殺意」が感じられた。トニーの中で眠っていた何かが覚醒したのだ。
ラストで「俺を撃て!」とシャーク団に叫ぶシーンも、ほかのトニーは悲嘆に暮れて、自らの命を投げ出そうとしているように見えるが、福井トニーだと少し異なって見える。このトニーは、マリアに関する誤った情報を得て、それをそのまま受け入れ、その結果、自分がそうするべきだと考えたからこそ敵の前に姿を現しているのだ。それはまるで、「独眼竜政宗」で人質となった輝宗(北大路欣也)が、政宗(渡辺謙)に対し「そうだ、わしを撃てい!」と叫んだときのような、覚悟を決めた一種のすがすがしさえ漂わせていた。
このトニー、千秋楽までの間にどれほど登板するのか分からないが、この後どのように変わっていくのか、あるいは変わらないのか、注目してみたいキャストだ。機会あったらもう一度観たいものである。すでに観る予定のある人は、ぜひ期待して劇場に足を運んでほしい。髪は薄いが演技は濃いぞ!あっ言っちゃった。
マンカストラップのイメージからすると、ぜひ福井のリフも観てみたい気がする。福井リフに阿久津トニーなんて、なんかBLっぽいデンジャラスさだがそれもまたいいだろう。そうだ、いっそリフはスキンヘッドにしてしまったらどうだ。いろいろ気にならないで済むし。ベルナルドに「黙れこのハゲ!」って言われて「これはハゲじゃない。剃ってるんだ!」と言い返したら神なんだが。スキンヘッドにしたら、そのまま「王様と私」とかにも出られそう(退団前提だけど)。ユル・ブリナーのような凛々しい王様になりそうだ。そういえばユル・ブリナーと大葉健二って似てるよな。
「ウェストサイド物語」ウェブサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/wss/index.html
この日はライトダウン2008の一環で、醜悪な京都タワーのライトアップが消灯されていた。
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コメント
福井トニーなんだかとてもよさそうですね!
でもヤボオさんの解釈はいつもすごいです。
私は8月に遠征する予定なのでそれまでに代わらないことを祈ってます。
なんかすごく楽しみになってきました!
でももう1人キャスティングされているまさとぅが出てきたりしたらどうしようw
また180度違うトニーでしょうね。
まあそれもそれでいいですけど…。兄貴な感じはしないかなw
投稿: 凛 | 2008年6月23日 (月) 01時28分
いやいや、これは見事にやばい記事です。。。
この演目は苦手で、まさに、
》阿久津陽一郎演じるつかみどころのない変人トニー
との反りも合わず、京都に行くなんて考えられなかったのですが。。。
うーん、、、「野郎目線」での福井トニーレポ、感服です。
私のレポではありませんが、TB失礼します。
投稿: みかん星人 | 2008年6月23日 (月) 19時01分
ヤボオさんは、やっぱりすんごいですね
福井トニー気になってたんですが、リフにしてしまい最後はまさかのスキンヘッドにしてしまうとは、、、、
阿久津トニーと福井リフなら望月ベルナルドは弱いなぁ
加藤さんに戻ってもらって対決してもらいたいなぁ 熱い男のミュージカルになりそう
投稿: kuffskuffs | 2008年6月23日 (月) 20時08分
お久しぶりでございます。
……妻が「京都行く!」って息巻いてます。どうしてくれるんですか(笑)
てのはさておき、私も一度見てみたいですね福井トニー。これは私も行くしかないだろうかw
投稿: ほしよ | 2008年6月23日 (月) 23時46分
凛さんこんにちは。
石井トニーも控えてるんですか!パンフレット買わなかったので知りませんでした。ありがとうございます。
これまた対極的なトニーになりそうですねえ。でも観たいや。やけに層が厚い布陣です。
投稿: ヤボオ | 2008年6月24日 (火) 00時47分
みかん星人さんこんにちは。
いやー、ひいき目かもしれませんが、トニーだけで作品の雰囲気がずいぶん変わってみえました。
変人トニーは変人トニーで好きなんですけどね!
投稿: ヤボオ | 2008年6月24日 (火) 00時51分
kuffskuffsさんこんにちは。
うーむ、その戦い観たい!もはや「不良」でなくモノホンの・・・。「仁義なき戦い 頂上作戦」の菅原文太+梅宮辰夫vs小林旭に匹敵しそうです。
言われて気づきましたが、福井トニーの前だとラッツ&スターな望月ベルナルドが確かに弱く感じられました。
投稿: ヤボオ | 2008年6月24日 (火) 00時56分
ほしよさんこんにちは。
だはは、例によってテキトーに書いてますから、観たらぜんぜん違うかもですよ?
でも少なくともラダメス将軍よりは「福井晶一」を味わえる役かと。マンカストラップ人間バージョン、というほどの武闘派ではないですが、何せあの美声ですしねえ。
投稿: ヤボオ | 2008年6月24日 (火) 01時00分
ヤボオ先生、おはようございます。
余談ではありますが、マリアには苫田さんも控えておられます。
苫田マリア登場の際は、襟ぐりを1インチと言わず2インチぐらい下げてもらえないか、アニタにお願いしなければっ!!
ヤボオ先生もご協力の程よろしくお願い致します!!(^^)
投稿: らうる | 2008年6月24日 (火) 09時01分
らうるさんこんにちは。
ウホッ それ観たいであります! 盛大に苫田専用ドレスをお願いしましょう!
樋口アニタなら聞き届けてくれそうな気がします(根拠のない確信)。
しかしそんなカッコでダンスパーティーに行ったら、トニーより先に西尾アクションが飛びかかってきそう(根拠のない予想)。
投稿: ヤボオ | 2008年6月24日 (火) 22時58分
四季で人気がある男優の2人目の名前に
どうしても首が上下運動をしてくれません
・・・女子目線と男子目線は違うのでしょうか。
そして福井さんのはえぎ○の件も大変気になります・・・。
阿久津君はダンスパーティーの衣装を上手に着ていたと思いますが
涼太君は・・・「ママに着せられちゃった・・・てへ」って感じでした。
福井トニーの着こなし評価を是非
投稿: 巻き髪(yukko) | 2008年6月24日 (火) 23時55分
巻き髪(yukko)さんこんにちは。
着こなしですか?うーん、どうだったかなあ。毛髪が気になって、ほとんど記憶にありません。やはりスキンヘッドか、いっそモヒカンにでも…
着流しとかが似合いそうなトニーでした。
投稿: ヤボオ | 2008年6月25日 (水) 00時06分
ヤボオさん、こんにちは。初めてコメさせていただきます。
「阿久津さん演じる変人トニー」が私的に壷でした。とは言いつつその変人トニーが今の所お気に入りなんですが・・・。結構あちこちで歌が下手だの芝居が下手だのたたかれている変人トニーですが、声量があって迫ってくる感じですきなんです、私。役柄的にソフトな歌声が求められている?から、たたかれるのかしら?ヤボオさんは、どう思われますか。
福井さんも聞いてみたいですが、地方在住なのでそうそうは行けないんです。でも、今日頑張って千秋楽取りました。楽のキャスト予想しつつ、またお邪魔させていただきます。
投稿: umi | 2008年6月29日 (日) 15時52分
umiさんこんにちは、初めまして。
他の人はどうか知りませんが、私は阿久津陽一郎という役者はおちょくりながら観るのが楽しいと感じているので、そうしています。そういう意味で、自分の中では山口祐一郎の後継者は彼です。
ぶつぶつ言いながらも、シンバもスカイもタガーも保科もラダメスもそれぞれ何回も観ています。
投稿: ヤボオ | 2008年6月29日 (日) 22時42分
ヤボオさん、おはようございます。
そういえば私も役者さんをいじりながら?観るのが好きな性質です。でも、他のブログを見てると悲しくなってしまう様ないじり方なので・・・。ヤボオさんのコメントは頷きながら読ませてもらってます。
これからも辛口?のコメント、楽しみにしてます。
投稿: umi | 2008年6月30日 (月) 08時21分
umiさんこんにちは。
感じ方は人それぞれですよ!これからもよろしくお願いします。
投稿: ヤボオ | 2008年6月30日 (月) 23時25分
はじめまして!ヤボオさん
あっくんトニーを観てからから、貴方のお話を楽しみに!待ちに待った今夜!福井トニーを観ました〜
ホント!いつもより、面白い観劇となりました
ありがとうございました
これからも、読みに来ますので、よろしくね!
投稿: ハクション!? | 2008年7月 5日 (土) 23時57分
ハクション!?さんこんにちは、はじめまして!
福井トニー、笑っちゃいけないんですが観ていると何だかわからない嬉しさがこみあげてきて、ついニヤけてしまいます。
京都にまた行きたくなってきました。
投稿: ヤボオ | 2008年7月 6日 (日) 23時08分