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2008年6月 1日 (日)

四季「ミュージカル異国の丘」意外に無難?荒川ボチ閣下

石丸幹二も、下村尊則もいない「異国の丘」。過去、この作品で主役を演じていた二人の俳優は相次いで四季の舞台を降りてしまった。四季は退団(事実上の退団も含む)した人間の写真はポスターやパンフレットに使用することをかたくなに拒むため、この公演のポスターは過去の公演写真をPhotoshopか何かで絵画処理したものだし、WEBサイトではその画像の主役の顔のところに文字を重ねてしまうという徹底ぶり。建前としては肖像権だとか何とか言うだろうが、おそらくは単なる嫌がらせだ。まったく大人げない。

それはともかく、果たして誰がこの役を受け継ぐのか。注目を集めていた中、ウワサに上がったのはベテラン・荒川務。てっきり若手にバトンタッチをするものと思っていたから、裏をかかれた感じだ。

その話を聞いても、あまり観ようという気はしなかったためチケットは確保していなかった。しかしながら、初日を迎え、実際に荒川務の名前がキャスト表に載ってくると、やはりちょっと観たくなってきた。つい、ふらふらと前日予約して四季劇場・秋へ。

九重秀隆(ボチ) 荒川 務
宋愛玲 佐渡寧子
吉田 中嶋 徹
神田 深水彰彦
西沢 深見正博
大森 田中廣臣
杉浦 香川大輔
平井 維田修二
宋美齢 中野今日子
李花蓮 岡本結花
劉玄 青山祐士
宋子明 山口嘉三
蒋賢忠 中村 伝
九重菊麿 武見龍磨
アグネス・フォーゲル夫人 武 木綿子
クリストファー・ワトソン 志村 要
メイ総領事 高林幸兵
ナターシャ 西田有希

さて、その荒川ボチ。この作品はシベリア抑留のシーンと、九重の回想シーンを交互に綴っていく。シベリアのシーンはともかく、学生時代を過ごしたニューヨークのシーンはさすがに年齢的に無理があるか……と懸念していたが、そこはさすが永遠の70年代アイドル、顔はちょっと皺が目立つものの、軽やかなダンスで「若いオーラ」を存分に発揮。少なくとも、下村尊則の時ほどの違和感はない。

その“若さ”と、ベテランらしい深みのある演技で観客の心をとらえており、なかなか魅力的だ。そしてあの特徴ある声が、重くなりがちなこの作品にまろやかな味わいをもたらしている。

石丸ボチは実直さが体中から満ちあふれる好青年であり、下村ボチはどこか浮世離れした雰囲気がいかにも名家の出、という雰囲気だった。それぞれ魅力はあるが、この荒川ボチは、ひょうひょうとした中に真の強さを秘めているという、この脚本で描かれた規格どおりの、九重秀隆という感じがする。

そういう意味では、ナイスなキャスティングだと言っていいだろう。ただ、どうも物足りなさが残ってしまうのは、石丸ほど歌声に伸びがないせいでも、あまりに無難すぎて下村ほどインパクトがないせいでもない。やはりこういうときこそ、若手を起用してほしい、という期待感があるからだ。キャストブックを見ると、今回の九重は荒川務のシングルキャストだ。せめてダブルでも「おっ」と思えるキャスティングを見せてほしかった。

ほかのキャストは、まず宋愛玲に佐渡寧子。過去、この作品を2回観たときは両方とも木村花代だったため、佐渡愛玲は初見。これまた非常に無難な感じの愛玲で、全く非の打ちどころはないが、ボチが一瞬で一目惚れするほどの華やかさにはちょっと欠けるように思う。俺だったら、一緒にいたミニスカ花蓮のほうに目が行きそうだ。岡本結花は完全にコスプレ枠になっており、浅利慶太が面白がって「ちょっとチャイナドレスでも着せてみるか」とキャスティングしたのに違いない。あまりチャイナドレス姿を披露する場面はなかったが。武木綿子のアグネス・フォーゲル夫人はいかにも食えない策謀家という雰囲気で非常に良かった。深水彰彦、青山祐士らは前回観たときと同じだが、実にこの役にはまっていると思う。

いわゆる「昭和三部作」は、そんなに観てはいないものの、それなりに評価はしている。戦争をテーマにしつつも、きちんとエンターテインメントとして見せよう、という姿勢があるのがいい。だが、この「異国の丘」や「南十字星」は、脚本や演出が、まだまだ未完成のような気がしている。上演時間も、もう少しコンパクトにしてはどうか。それでは戦争のさまざまな事実を伝えきれない、と言われるかもしれないが、しょせん2時間や3時間で伝えきれることではないのだ。エンターテインメントとして、その歴史に興味を持つきっかけになれば十分だと思う。それこそが「風化させない」ということにつながる。俳優だけでなく、演出も若手にバトンタッチして、フレッシュな感覚で完成度を高めていってほしい。

ひと月ほどの公演だか、木村花代愛玲が登場したらまた行ってしまうかどうか、思案のしどころだ。

「異国の丘」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/ikoku/index.html

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コメント

早速「異国の丘」観られたのですね
お疲れさまです。

昨日「レベッカ」で遭遇した友人に、荒川さんが~と聞かされ2人でびっくりしていたところでした。
以前は石丸さん&知寿さんで観ましたが、荒川さんのアイドルボイスがこの作品に合うのか?ちょっぴり心配していました。
評判悪くないようでよかったです

この作品は重いのわかっているので観ようかどうか悩んでいましたが、ヤボオさんレポで観たくなってしまいました。

といっても、レベッカ10回目突入の私・・・
こちらも3か月め突入で、どんどんよくなってきてます。

投稿: ルナルナ | 2008年6月 2日 (月) 00時32分

ルナルナさんこんにちは。

わたしも聞いたときはびっくりしましたが、実際に観ると納得、という感じでした。いい役者さんです。

レベッカよくなってますか?また観たくなってきました!

投稿: ヤボオ | 2008年6月 2日 (月) 22時46分

ヤボオさん、はじめまして
「異国の丘」早く観たくなりました
私は今現在札幌に住んでおりましてなかなか難しい・・・
石丸さん&知寿さんバージョンは拝見してますが
務さんファン歴、四季ファン歴共に30数年の私は
一刻も早く観たい
そんな気持ちにさせていただきました
去年の「CATS」のレポも拝見させていただきましたが彼のマンカストラップが私の脳裏にハッキリと甦ってきて
まるでついさっき観劇してきたかのような錯覚を覚えました。
だから今私はここで務さんの「異国の丘」を観ています
遠い札幌で年に数回上京し時間の許す限り四季三昧の私にとってヤボオさんは神様のような存在になりました
ありがとうございます
そしてこれからも楽しみにしています

投稿: みみ | 2008年6月 3日 (火) 21時17分

私も観てきました!
若手に期待していたものの、
荒川ボチさんは想像よりはるかに良かったです。
彼、真面目な役もできるんですね。笑
アルプにも書いてありましたが、新境地を開いた感じですね。
もし四季でサウンド・オブ・ミュージックをやることになったら
トラップ大佐なんてありえるかも…?
なんて思いました。

投稿: 凛 | 2008年6月 3日 (火) 23時22分

みみさん、はじめまして。こんな間抜けなブログを読んでいただき、恐縮です。

30年来の荒川ファンとは素晴らしい!そして四季ファンの先輩に敬意を表します。

札幌の劇場にもぜひ復活してほしいです。キャッツやエビータを観たことが懐かしく思い出されます。考えたらすっかり北海道もご無沙汰になっており、久しぶりに北の大地を踏みたくなってきました!

投稿: ヤボオ | 2008年6月 4日 (水) 00時03分

稟さん、こんにちは。

若いころはアクが強すぎたけど、歳を重ねていい感じにカッコよくなってくる俳優っているじゃないですか。荒川氏もそのタイプかも?ちょっと酷使されすぎな感じもしますが、四季だけでなく、日本の演劇界に得難い存在になりつつあるような気がします。

「サウンド・オブ・ミュージック」のキャスト予想、鋭い!

投稿: ヤボオ | 2008年6月 4日 (水) 00時07分

そんなご謙遜を・・・
本当に楽しくそして本当に今私は劇場にいるんじゃないか?と錯覚してしまうような
リアルなブログには脱帽です
今までどれだけ四季の舞台を観てきたのか、その中でどれだけ務さんの舞台を観たのか
想像もつかない回数なはず
だからこそPCに向かっているにも関わらず妄想
ヤボオさん、是非札幌に来て下さいませ
大歓迎いたします
そして私が上京しても歓迎していただけると嬉しいな
最近、生舞台を観れない私に欲求を満たしてくれるような楽しいなブログをお願いします

投稿: みみ | 2008年6月 6日 (金) 16時08分

みみさん

そのように長くひとりの俳優を応援しているファンが、結果的に四季を、ひいては日本の演劇界を支えているのだと思います。

そう考えると、どっかの代表のいう「役者ではなく作品を観ろ」というメッセージが実にトンチンカンに聞こえますね!

投稿: ヤボオ | 2008年6月 7日 (土) 00時30分

ヤボオさん。こんばんは

支えてるなんて大袈裟です・・・
「好きな物は好き、いい物はいい」ただそれだけです。
でも、一ファンとして「?」と納得いかない事も多々ありますよ
確かに観る側は作品を観て評価するというのは当り前ですし
全てを否定する訳ではありませんが私達ファンは同じ作品を何度も観ているのも事実ですし
そうしてるうちに「○○さんのが観たい」と思うのも当然な気がします。
だから決して初めから「誰かが目的」なんて気持ちで観ているのではない事も理解して欲しいですよね・・・
(初めから好きな役者さんを観たいと思うのも仕方ない事ですけど)
これだけ看板役者が去っていく中で色んな考え方のリピーターがいても
いいんじゃないかと思ったりもしています。
これは私の独り言と思って欲しいんですが・・・
長年、ファンでいる私は
最近「昔は良かった」と少し感じる時があり、そう思う事がとても悲しいんです
(これはあくまでも私の個人的な気持ちですから気にしないで下さい)
ミュージカル・お芝居は観る者が楽しむ為にあるはずだし私達が感動し涙し笑顔になるのは
役者さんにとっても「役者冥利につきる」という事なんじゃないのかな・・・
何だかんだ言ってもファンあっての商売。
もう少し私達の声に耳を傾けてくれても・・・と勝手に思ってます。
何だか長々と生意気なことばかりでごめんなさい・・・

投稿: みみ | 2008年6月 7日 (土) 23時19分

みみさん、

「昔はよかった」とつぶやきたくなる人は多いと思います。

でも、せめてアスパラガスのように「今の芝居もいいけれど…」と言いたくなるぐらいには、四季にもがんばってほしいですね。

投稿: ヤボオ | 2008年6月 8日 (日) 23時03分

ヤボオさん。。。

本当にそうですね・・・
まぁ、色々思う所はありますが「好きな物は好き」それは変わらないと思います。
私自身も歳を重ねて観劇回数が増えるにつれ知らず知らずのうちに
望むものも大きくなっているのかもしれません。
長年拝見させていただいてきた方が次々と去っていく中で淋しさを感じながら
「歌やお芝居がが上手いだけじゃなく味のある舞台が観たい!」そう思ってるんですが 
今までの30数年とは違って当り前なのかな?と悲しいけど諦めもあるんです。

投稿: みみ | 2008年6月 9日 (月) 00時11分

みみさん

まあ私は不満を言いつつ今の四季も結構好きだったりします。

それは女優さん目当てだろ、と言われれば返す言葉もないですが。

投稿: ヤボオ | 2008年6月 9日 (月) 22時01分

ヤボオさん。。。

それはある意味仕方ない
自然の摂理というヤツですよ。気にしない、気にしない
例に洩れず私も好きな方は男優さんが多いし

何れにしても今しばらく生舞台を観る事の出来ない私にとって
ここは至福の場所になりました

投稿: みみ | 2008年6月10日 (火) 14時37分

みみさん

あまり舞台のことばかりも書けませんが、これからもときどきレポートしていきます。ありがとうございます。

投稿: ヤボオ | 2008年6月10日 (火) 23時12分

ありがとうございます
楽しみにしていますので観劇された際は
報告&感想をお聞かせ下さいませ

投稿: みみ | 2008年6月11日 (水) 00時59分

みみさん

はい、わかりました。

投稿: ヤボオ | 2008年6月11日 (水) 01時08分

こんにちわ、ヤボオさん
下村さんの記事を見つけて、またまたここにたどり着きました。
みみさんとのお話に割り込んでしまい、すみません。
みみさんのお話、興味深く読ませていただきました。
そうなんですよね、俳優さんのファンでいることが舞台でお芝居をみることが「好き」につながっているような気がしてます。
下村さん、やっぱり退団なのですね。
あんまりショックだったので、「夢から醒めた夢」の下村バージョンと
保坂バージョンを交互に聞いて気を紛らわせています。
「異国の丘」、見たい気分はあるのですが
「この人のこれが見たい!」と思う今の自分の気持ちをほったらかしにされているようでまだ整理がつきません。
ソング&ダンス、どうなるんでしょう???
読んでいただいてありがとございました。

投稿: tizu | 2008年6月17日 (火) 18時26分

tizuさんこんにちは。

シモ様の生命力なら、またどっかで拝見できるでしょう。今から楽しみにしています。

投稿: ヤボオ | 2008年6月17日 (火) 22時23分

おっしゃる通りですね。
きっとまたいつか、どこかで…
もしできるなら、
下村さん、石丸さんと保坂さんと、光枝さんと…
そんな夢みたいなステージを楽しみにして見たいと思いました。
またお邪魔させてください。ありがとうございました。

投稿: tizu | 2008年6月19日 (木) 21時35分

tizuさん

はい、よろしくおねがいします。

投稿: ヤボオ | 2008年6月19日 (木) 23時02分

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