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2008年6月29日 (日)

美勇伝コンサートツアー2008初夏 美勇伝説Ⅴ~最終伝説~

美勇伝のラストツアーがファイナルを迎えた。解散しても、3人ともハロー!プロジェクトには残るが、石川梨華をライブで見られるのはしばらく先になってしまうかもしれない。まして三好絵梨香や岡田唯を見られるのはいつになることか。というわけで新宿の厚生年金会館へ。

自分が参加したのは2daysの1日目のほうだったが、客席は十分な盛り上がりを見せていた。美勇伝単独ライブを観るのは始めてだったが、石川の話芸や噂の人形劇など、楽しい要素は満載だ。

4年間でに及ぶ美勇伝の活動は、コンスタントにシングルをリリースしながらも、あまりぱっとしたものではなかった。途中からセクシーコスプレ路線に走ったりもしたが、そういうなりふり構わない手法も空振りに終わった。

三好や岡田もいいキャラクターで大好きだが、やはり美勇伝は石川のためのユニットである。どうしても「石川+2」という見方になってしまうことに、このユニットの限界があったのだ、と考えていた。しかし、実際にこうしてライブを観ると、少し考え方が変わった。

石川は、モーニング娘。加入当時から「私だけを見て」オーラを強烈に放つ存在だった。しかし同時に、モーニング娘。の活動を通じて、グループ全体のムードや、その場の空気をつくるということに長けるようにもなっていった。「ハロー!モーニング」の歴代司会者の中でも、石川の司会が最も安定していた。

そのために、石川は美勇伝として活動するときは、あくまでグループをどう盛り上げるか、という姿勢を貫くことになり、石川の華と毒のある独特なオーラがストレートに外に出て行かなかった。これが結果的に美勇伝の活動に枠をはめることになったのだと思う。むしろ石川がもっと前に出て、2人がそれに続くという構図を描いていたら、状況は変わっていたのかもしれない。

今後、石川梨華はどうなるのだろう。彼女の女優としての才能はもっと評価されるべきだ。映画「スケバン」刑事の演技も見事だったし、2006年の「リボンの騎士」では、カンパニーのまとめ役として獅子奮迅の活躍を見せていた。そうだ、もっと舞台に出て欲しい。歌をもっと鍛えればミュージカルだって…。歌下手でもいいから、石川梨華のグリンダなんて観たいぞ。東宝なら下手でも出してくれるから、いっそコゼットでも。三好絵梨香・岡田唯もこのまま消えるには惜しい存在だ。グラビアでもなんでもこなして、生き残ってほしい。

久しくエルダークラブのイベントには足を運んでいなかったが、今度は行ってみよう。しかし、夏コンはワンダフルハーツしか発表されていないようだ。

ハロー!プロジェクトのWEBサイト

http://www.helloproject.com/index.html

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2008年6月22日 (日)

四季「ウェストサイド物語」俺がトニーだ!福井晶一上洛

ジェット団(The Jets)

リフ 松島勇気
トニー 福井晶一
アクション 西尾健治
A-ラブ 澤村明仁
ベイビー・ジョーン 大空卓鵬
グラジェラ 恒川 愛
エニイ・ボディズ 室井 優

シャーク団(The Sharks)

マリア 花田えりか
アニタ 団 こと葉
ロザリア 玉井明美
ベルナルド 望月龍平
チノ 畠山典之

おとなたち(The Adults)

ドック 岡田吉弘(劇団昴)
シュランク 勅使瓦武志
クラプキ 石原義文

京都で続く「ウェストサイド物語」のロングラン。このまま新キャストもなく終了かと思っていたが、トニー役に福井晶一が登場だ。

自分は女優さん目当てで劇場に通っているが、実は男優も結構好きだ。そういう男性ファンはわりと多いのではないかと思う。別に四季の会にはバイセクシャルが多いというわけではない。男はそもそも男が好きなのだ。だから任侠映画というジャンルが存在する。最近任侠映画がウケないのは、男が素直に男を好きと言えない世の中になっているからだろう。

四季で男に人気のある俳優といえば、芝清道やキムスンラといった名前がまず出てくるだろうが、福井晶一もかなり上位に食い込むのではないかと思う。最近の当たり役といえば何といっても「キャッツ」のマンカストラップだ。ご存知「ジェリクル武闘会」を主催している、硬派度200%のリーダー猫だ。終演後、キャッツでは猫たちが客席をまわって観客と握手をするが、福井マンカストラップとの握手は「ブラック・レイン」のラストシーンで高倉健とマイケル・ダグラスが交わしたような、熱い力のこもった握手だった。

そんな福井が演じるトニーは一体?それを自分の目で確かめるために、京都劇場に向かった。

オープニングの街のシーンが終わり、リフがトニーの職場を訪ねる場面。そこにいたのは、実に大人っぽい感じのトニーだった。声も物腰も落ち着いており、リフに対しても弟のような視線で語りかける。この場面のリフは、仲間達に冷静に指示を出す不良グループのリーダーの顔ではない、どこかトニーに甘えているような仕草を見せるが、このトニーとの組み合わせだとそれが妙にしっくりする。思わずアニキィィィィィ!と叫びたくなるような、ちょっとマンカストラップの入った頼れる兄貴分といった雰囲気だ。

続いてのソロナンバーでは、高いキーがやや苦しそうだったが、艶と張りがある福井ボイスを披露し、女性ファンのみならず、男性ファンも魅了しまくりだ。

そしてきりっとした眉毛が印象に残る、まさしく役者、という端正な顔立ち。うーんいいオトコだ。いろんな意味で気になる髪は地毛を染めて勝負。だからちょっと…いや、なんでもない。

福井トニーは、阿久津陽一郎演じるつかみどころのない変人トニーとも、鈴木涼太演じる青年と少年の間で揺れる危ういトニーとも異なる。うまく言えないが、あえて言えばそれは実に男らしいトニーだ。

その男らしさとは、任侠映画っぽい雰囲気ももちろんだが、それだけではない。自分に訪れる運命から決して逃げることなく、正面から受け止め、あくまで前向きに生きていこうという「生きる姿勢」に大いに男を感じるのだ。

移民の子として生まれたこと、そこから来るいわれなき差別、仲間たち、働くということ、そしてマリアとの出会いと突然の悲劇………。いいことも、悪いことも、楽しいことも、つらいことも、トニーは全て受け入れて生きている。ガッツな純粋さ、とでも言おうか。そんな人間的な魅力を感じさせるのだ。

しかし、それは度量の大きさとイコールではない。もしそうだったらあの悲劇は起きなかった。数々のつらい運命を受け入れてきたと言っても、決してそれを忘れているわけではない。そうした運命への怒りや嘆きも、感じないのではなく、ぐっと呑みこみ、押さえているのだ。それが、リフの死を前にして爆発し、悲劇は起きたのだ。福井の演技を見て、そんなことを考えていた。ほかの2人が演じたトニーでは、このシーンはまさに「衝動」であり、若さゆえの不安定さが悲劇の引き金となっていた。しかし、福井の場合、ほんの一瞬ではあるが体全体から明確な「殺意」が感じられた。トニーの中で眠っていた何かが覚醒したのだ。

ラストで「俺を撃て!」とシャーク団に叫ぶシーンも、ほかのトニーは悲嘆に暮れて、自らの命を投げ出そうとしているように見えるが、福井トニーだと少し異なって見える。このトニーは、マリアに関する誤った情報を得て、それをそのまま受け入れ、その結果、自分がそうするべきだと考えたからこそ敵の前に姿を現しているのだ。それはまるで、「独眼竜政宗」で人質となった輝宗(北大路欣也)が、政宗(渡辺謙)に対し「そうだ、わしを撃てい!」と叫んだときのような、覚悟を決めた一種のすがすがしさえ漂わせていた。

このトニー、千秋楽までの間にどれほど登板するのか分からないが、この後どのように変わっていくのか、あるいは変わらないのか、注目してみたいキャストだ。機会あったらもう一度観たいものである。すでに観る予定のある人は、ぜひ期待して劇場に足を運んでほしい。髪は薄いが演技は濃いぞ!あっ言っちゃった。

マンカストラップのイメージからすると、ぜひ福井のリフも観てみたい気がする。福井リフに阿久津トニーなんて、なんかBLっぽいデンジャラスさだがそれもまたいいだろう。そうだ、いっそリフはスキンヘッドにしてしまったらどうだ。いろいろ気にならないで済むし。ベルナルドに「黙れこのハゲ!」って言われて「これはハゲじゃない。剃ってるんだ!」と言い返したら神なんだが。スキンヘッドにしたら、そのまま「王様と私」とかにも出られそう(退団前提だけど)。ユル・ブリナーのような凛々しい王様になりそうだ。そういえばユル・ブリナーと大葉健二って似てるよな。

「ウェストサイド物語」ウェブサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/wss/index.html

 

 

この日はライトダウン2008の一環で、醜悪な京都タワーのライトアップが消灯されていた。

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AKB48 第二回研究生公演「ただいま恋愛中」

先月22日に、急きょ決まって実施された「研究生公演」。AKBの公演では、正規メンバーが休演のとき、代役として研究生が舞台に立つ。その研究生はすでに20名を越えており、もう1つチームができそうな勢いだ。いっそ研究生だけで公演をしてしまえ、という声はあったが、それを本当にやってしまったわけだ。セットリストはチームAの「ただいま恋愛中」をそのまま利用。しかし評判はすこぶるよかったようで、今月も開催が決まった。まだ「ひまわり組」に出演していなかった研究生の顔と名前が一致していないこともあり、それをインプットする絶好のチャンス、と抽選に応募。FC枠は落選だったが、一般枠で入場することができた。

この日の出演者は以下の通り。

藤江れいな、瓜屋茜、中田ちさと、小原春香、近野莉菜、宮崎美穂、中西優香、藤本紗羅、石田晴香、内田眞由美、北原里英、指原莉乃、冨田麻友、中塚智実、仁藤萌乃、畑山亜梨紗

藤江れいなはすでにチームAに昇格しているが、前回に引き続き研究生公演に参加。ほか、前回出演した大家志津香は今回も参加予定だったらしいが、けがのためお休み。

この中で観たことがあるメンバーを整理してみる。藤江れいなは言うまでもなく。中田ちさと、小原春香、近野莉菜、宮崎美穂はひまわり組で。指原莉乃はチームAの板野友美の代役で。瓜屋茜、中西優香、藤本紗羅、北原里英、冨田麻友はチームKやチームBのバックダンサーで。そうなると本当に初見だったのは石田晴香、内田眞由美、中塚智実、仁藤萌乃、畑山亜梨紗の5人ということになる。

藤江れいなは前田敦子のポジションに入っていた。藤江れいなポジションには藤本紗羅。大家志津香が休みになった影響か、「帰郷」では中田ちさとがいつもの篠田麻里子ポジションではなく、中西里菜ポジションに。篠田ポジションには石田晴香。その石田晴香と内田眞由美はチーム公演では2人で大江朝美のアンダーを務めている。ユニット曲は本来石田の受け持ちだが、「帰郷」へ石田が移ったことで内田が「7時12分の初恋」を歌った。

いつも正規メンバーに囲まれて遠慮がちな研究生がのびのびと歌い踊っており、表情にも充実感と楽しさが表れている。その気持ちが観客にも伝わってくるという、実に素敵な公演だ。

トークも、こなれてはいないが、みなリラックスしていい味を出していた。研究生ながら「AKB0じ59ふん!」に出演し自信をつけてきたか、宮崎美穂がかなり頑張っていたのが印象に残った。

歌を初めて聴いたメンバーでは、石田晴香に注目だ。ユニットの急な代役を果たせる、ということはそれだけ実力があるということだ。小野恵令奈似と言われるルックスも強力だし、すでにかなりの人気らしいが今後の展開が楽しみだ。この日MCで「渚のCHERRY」を歌いたい、と言ったところ、中塚智実(クリステル)に「青のほうだよね!?」と突っ込まれたのには爆笑だったが、ちゃんと「黄色です!」と言い返していた。峯岸みなみが聞いたらカチンと来そうな話だが。

確かに、これで1チーム作ったらそれなりに面白いカラーが出せるかもしれない。ただ、ビジュアル的には同じようなタイプの薄味美人が多いので(最初、指原莉乃と仁藤萌乃が同じような髪型、身長で見分けがつかなかった)もっとキャラクターを前面に出さないとなかなか覚えにくそうだ。

新チームが無理なら、ときどき「パジャマドライブ」や「最終ベルが鳴る」もやってほしいものだ。各チームにもいい刺激になるだろうし、これで入場料が1000円安い2000円というのは、非常にお得感がありファンサービスにもなる。

いずれにしても、次の公演に期待しよう。

AKB48の公式WEBサイト

http://www.akb48.co.jp/

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2008年6月14日 (土)

「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」先行上映

6月21日ロードショーとかいいながら、先行ロードショーという形で実質的に封切られた「インディ・ジョーンズ」最新作。前作から20年の時を経て、待望の復活だ。

何で今さら、という人も多いかもしれないが、自分はこの大好きなシリーズがまた作られたことを素直に喜んでいる。

第一作の「レイダース 失われた聖柩」が1981年末に公開されたとき、自分はまだ中学生。世界的にはヒットを納めたこの映画だが、「超大作」というほどの規模でもなく、日本でもどちらかというと「ジョーズ、未知との遭遇のスピルバーグと、スター・ウォーズのルーカスが組んだ映画」ということで、映画マニアに訴えかけるようなプロモーションを展開していた。その結果、当時自分が住んでいた水戸で一番大きな映画館だった「京王グランド」ではなく、その地下にある小規模の映画館「京王プラザ」で上映されることになった。ちなみにそのとき京王グランドを占有していたのは絶頂期にあったハル・ニーダム監督の「キャノンボール」だった。

そのプロモーションに乗せられ、すでに映画好きを気取っていたヤボオ中学生は、本当は「キャノンボール」を観たかったのだが、ぐっと我慢して地下の映画館に向かったわけだ。しかしこれが無茶苦茶面白い。次々と起こるピンチを知恵と力で乗り越えていく、痛快無比の冒険活劇。映画とはこんなにも面白いものか、と衝撃を受けた記憶がある。

そして第二作「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」が公開された1984年の夏。これはその年の夏休み映画の目玉作品として派手にプロモーションされた。そのためすっかり映画マニア気取りだったヤボオ高校生は「今度は観なくていいか」なんて考えていたが、SFやミステリー、映画に非常に詳しかった2級上の先輩が「あの映像を見る限り、相当に出来のいい作品だと思う」という意見を述べていたのであっさりと折れて、今度はめでたく京王グランドでの上映となったロードショーへ。

そこで再び衝撃を受ける。観客がついていけなくなることもいとわず、ハイスピード、ノンストップで荒唐無稽すぎる冒険シーンを展開するという、元祖ジェットコースター・ムービーと出会った瞬間だ。すごいすごい、映画ってこんなこともできるんだ。娯楽の少ない田舎の高校生にはあまりにも刺激的すぎた作品だった。

そして第三作「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」。自分は大学生になっており、東京で暮らしていたが、帰郷したついでに水戸の映画館で観た。すでに京王グランド、京王プラザともになく、駅前に出来たばかりの西武デパートの中に作られた真新しい映画館だった。

チュニジアでのロケが印象的だった第一作、スタジオの中のシーンをメインに、まさしく遊園地な雰囲気で楽しませてくれた第二作は、いずれもあまり大風呂敷を広げず、小技で魅せる映画だった。しかしこの第三作は、すべてが大がかりなシーンの連続。巨大な客船の間を駆け抜けたり、戦車でカーチェイスを繰り広げたり、ナチスの集会に紛れ込んだり。それがどうも自分の琴線に触れなかったようで、ハリソン・フォードとショーン・コネリーとの掛け合いはステキだったものの、前2作と比べるとやや印象が薄い。

中学時代、高校時代、大学時代にそれぞれ1作ずつ観た作品だ。社会人になったころ新作が出てくるといいな、と思っていたが、それが実現するのがこんなに時間がたってからだったとは。「リストラ時代」になる前に、何とか間に合ってくれた。

その最新作。アカデミー賞を取ってからのスピルバーグは、すっかり馬鹿映画に戻ってきてくれて本当に嬉しい。彼の最高傑作は「1941」だと信じて疑わない身としては、だ。その馬鹿映画監督としての超一流の技が冴えまくる。それをルーカスの提示する、揺るぎのない世界観が包み込む。そこにハリソン・フォードのケレン味あふれる存在感が加わる。もうそれ以上何を望むというのだろう!旧作とのつながりも、明示的、あるいは隠れキャラ的にそこかしこに散りばめられてファン心理をくすぐってくる。

感触としては、第二作と第三作の間ぐらい、という感じだろうか?腰が抜けるほど面白い、というほどでもないが、こんなにも安心して、こんなにも楽しませてくれる映画はそう滅多にお目にかかれるものではない。冒険活劇の「お約束」を全部詰め込み、さらにこのシリーズの隠し味である、ややブラックな笑いもきちんと織り込んである。まがうことなきインディ・ジョーンズの味わいをとくとご賞味あれ。

なんだか旧作の思い出を語っているうちにお腹いっぱいになってしまい、新作についてろくすっぽ考えていないエントリーになっちまったが、余計なことは考えないのがこのシリーズの楽しみ方だ、としておこう。

シリーズの復活をどこで祝おうかと考え、シネコンではなく日劇へ。ロープにぶらさがるジョーンズ教授。

「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」公式WEBサイト(音出ます)
http://www.indianajones.jp/

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2008年6月 8日 (日)

内田けんじ「アフタースクール」

三谷幸喜の「マジックアワー」が封切りになったが、いったんスルーして今週はすこぶる評判のいい「アフタースクール」を観た。

なるほど、こりゃあ面白い。ネタバレがこわいので、今後観る予定のある人は絶対この先読まないでください。観ようかどうしようか迷っている人は迷っていないで劇場へどうぞ。

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2008年6月 1日 (日)

四季「ミュージカル異国の丘」意外に無難?荒川ボチ閣下

石丸幹二も、下村尊則もいない「異国の丘」。過去、この作品で主役を演じていた二人の俳優は相次いで四季の舞台を降りてしまった。四季は退団(事実上の退団も含む)した人間の写真はポスターやパンフレットに使用することをかたくなに拒むため、この公演のポスターは過去の公演写真をPhotoshopか何かで絵画処理したものだし、WEBサイトではその画像の主役の顔のところに文字を重ねてしまうという徹底ぶり。建前としては肖像権だとか何とか言うだろうが、おそらくは単なる嫌がらせだ。まったく大人げない。

それはともかく、果たして誰がこの役を受け継ぐのか。注目を集めていた中、ウワサに上がったのはベテラン・荒川務。てっきり若手にバトンタッチをするものと思っていたから、裏をかかれた感じだ。

その話を聞いても、あまり観ようという気はしなかったためチケットは確保していなかった。しかしながら、初日を迎え、実際に荒川務の名前がキャスト表に載ってくると、やはりちょっと観たくなってきた。つい、ふらふらと前日予約して四季劇場・秋へ。

九重秀隆(ボチ) 荒川 務
宋愛玲 佐渡寧子
吉田 中嶋 徹
神田 深水彰彦
西沢 深見正博
大森 田中廣臣
杉浦 香川大輔
平井 維田修二
宋美齢 中野今日子
李花蓮 岡本結花
劉玄 青山祐士
宋子明 山口嘉三
蒋賢忠 中村 伝
九重菊麿 武見龍磨
アグネス・フォーゲル夫人 武 木綿子
クリストファー・ワトソン 志村 要
メイ総領事 高林幸兵
ナターシャ 西田有希

さて、その荒川ボチ。この作品はシベリア抑留のシーンと、九重の回想シーンを交互に綴っていく。シベリアのシーンはともかく、学生時代を過ごしたニューヨークのシーンはさすがに年齢的に無理があるか……と懸念していたが、そこはさすが永遠の70年代アイドル、顔はちょっと皺が目立つものの、軽やかなダンスで「若いオーラ」を存分に発揮。少なくとも、下村尊則の時ほどの違和感はない。

その“若さ”と、ベテランらしい深みのある演技で観客の心をとらえており、なかなか魅力的だ。そしてあの特徴ある声が、重くなりがちなこの作品にまろやかな味わいをもたらしている。

石丸ボチは実直さが体中から満ちあふれる好青年であり、下村ボチはどこか浮世離れした雰囲気がいかにも名家の出、という雰囲気だった。それぞれ魅力はあるが、この荒川ボチは、ひょうひょうとした中に真の強さを秘めているという、この脚本で描かれた規格どおりの、九重秀隆という感じがする。

そういう意味では、ナイスなキャスティングだと言っていいだろう。ただ、どうも物足りなさが残ってしまうのは、石丸ほど歌声に伸びがないせいでも、あまりに無難すぎて下村ほどインパクトがないせいでもない。やはりこういうときこそ、若手を起用してほしい、という期待感があるからだ。キャストブックを見ると、今回の九重は荒川務のシングルキャストだ。せめてダブルでも「おっ」と思えるキャスティングを見せてほしかった。

ほかのキャストは、まず宋愛玲に佐渡寧子。過去、この作品を2回観たときは両方とも木村花代だったため、佐渡愛玲は初見。これまた非常に無難な感じの愛玲で、全く非の打ちどころはないが、ボチが一瞬で一目惚れするほどの華やかさにはちょっと欠けるように思う。俺だったら、一緒にいたミニスカ花蓮のほうに目が行きそうだ。岡本結花は完全にコスプレ枠になっており、浅利慶太が面白がって「ちょっとチャイナドレスでも着せてみるか」とキャスティングしたのに違いない。あまりチャイナドレス姿を披露する場面はなかったが。武木綿子のアグネス・フォーゲル夫人はいかにも食えない策謀家という雰囲気で非常に良かった。深水彰彦、青山祐士らは前回観たときと同じだが、実にこの役にはまっていると思う。

いわゆる「昭和三部作」は、そんなに観てはいないものの、それなりに評価はしている。戦争をテーマにしつつも、きちんとエンターテインメントとして見せよう、という姿勢があるのがいい。だが、この「異国の丘」や「南十字星」は、脚本や演出が、まだまだ未完成のような気がしている。上演時間も、もう少しコンパクトにしてはどうか。それでは戦争のさまざまな事実を伝えきれない、と言われるかもしれないが、しょせん2時間や3時間で伝えきれることではないのだ。エンターテインメントとして、その歴史に興味を持つきっかけになれば十分だと思う。それこそが「風化させない」ということにつながる。俳優だけでなく、演出も若手にバトンタッチして、フレッシュな感覚で完成度を高めていってほしい。

ひと月ほどの公演だか、木村花代愛玲が登場したらまた行ってしまうかどうか、思案のしどころだ。

「異国の丘」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/ikoku/index.html

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