四季「赤毛のアン」吉沢梨絵最強伝説
アン・シャーリー | 吉沢梨絵 |
マシュー・カスバート | 日下武史 |
マリラ・カスバート | 木村不時子 |
ステイシー先生/スローン夫人 | 五東由衣 |
ギルバート・ブライス | 望月龍平 |
ダイアナ・バリー | 真家瑠美子 |
レイチェル・リンド夫人 | 都築香弥子 |
バリー夫人 | 大橋伸予 |
スペンサー夫人/パイ夫人 | 倉斗絢子 |
ブルーエット夫人 | 高島田 薫 |
マクファーソン夫人 | 広岡栄子 |
ジョシー・パイ | 長谷川ゆうり |
プリシー | 久居史子 |
ベル | 泉 春花 |
ティリー | 杏奈 |
ルビー | 西田ゆりあ |
フィリップス先生 | 鈴木 周 |
郵便配達アール/チャーリー | 有賀光一 |
農夫セシル | 百々義則 |
牧師/駅長 | 田中廣臣 |
キット | 奥田慎也 |
ジェリー | 松尾 篤 |
ムーディー | 塩地 仁 |
トミー | 北村 毅 |
「赤毛のアン」が開幕。当初まったく観る予定がなかった作品だが、開幕が近付くにつれ「こんどのアンは野村玲子ではないらしい」「どうも吉沢梨絵っぽい」という噂がネットに流れ始めた。
この作品も未見だし、そもそも「赤毛のアン」という小説についても、テレビや映画などを通じて取得した、極めて断片的な情報しか持っていなかった。そんな自分でも、吉沢アンというのはなんだかハマリ役のような予感がする。そこで急いでチケットを確保して自由劇場へ。
その吉沢アン。外れてばかりの自分の予想が今回は当たった。大当たりだ。マシューと初めて出会う駅のシーン、片手で帽子を押さえて走り出す姿はまさに小説の中から飛び出してきたようだ。
120%の元気で笑ったり泣いたり、オーバーアクション気味の演技はもはや吉沢の当たり役となった「夢から醒めた夢」のピコに通じるものがある。アンは孤児であり、幼いながら住む場所を転々とした悲しい運命の子だが、ピコも、以前の演出(2000年の福岡公演よりも前)だと、どこかあの元気さの裏に不幸を隠している雰囲気があった。その旧式ピコを思い出しながら観ていた。
もちろんその旧式ピコは保坂知寿である。今回の吉沢アンを観ていて、もうひとつ保坂とだぶる点がある。それは笑いの間の取り方だ。この「赤毛のアン」で、アンが出ている場面は8割方笑いを伴う。連続して笑いを取らなくてはいけない難役なのだ。しかし吉沢は、客を爆笑させるのも、軽くくすぐるのも自由自在で、アンが舞台にいるだけで、次は何をしてくれるんだろうとわくわくさせてくれる。このコメディエンヌとしてのセンスは、「マンマ・ミーア!」で保坂から学んだものだろう。保坂は、数名いるソフィーの中でも、吉沢に特に目をかけていたと言われる。保坂と吉沢では女優としてのタイプは全く違うが、保坂の遺伝子は確かに吉沢に受け継がれた、と感じた。
全体的に明るく楽しい舞台だが、もちろん笑わせてばかりいるわけではなく、時おり悲しみを隠しきれなくなる演技を見せる。これがまた、ふっと心を奪われそうになるようないい表情だ。そして静かに迎えるエピローグ。マシューとアンとのやりとりは、いい歳した野郎といえども涙がこみあげてくる。「レ・ミゼラブル」のラストシーンにも匹敵する名場面に、吉沢と御大・日下武史の名演技が加わるのだから、それもいたしかたのないことだろう。
吉沢、日下のほか、四季のストレートプレイには欠かせない木村不時子、ニューヨークの不良からカナダの好青年に生まれ変わった望月龍平、ピコ役に抜擢されたがいまだ未見だった真家瑠美子、優しさと稟とした雰囲気を併せ持つステイシー先生に五東由衣、「壁抜け男」の新聞配達から郵便配達へとジョブチェンジした有賀光一、さらに高島田薫に百々義則に田中廣臣に…と何とも粒ぞろいの共演者たちがずらりと並び、作品全体の完成度を高めている。
本当にいい舞台を観た、と素直に満足できる公演だ。会報「ラ・アルプ」でいかにも高井治がマシューを演じるようなことをにおわせてチケット販売にドーピングしたのはどうかと思うが、まずは日下マシューの名人芸を堪能しつつ、パリからカナダへ高井が向かうのを待つとしよう。
それにしても、今回の吉沢は見事に可愛くない。なのに、抱きしめたくなるほど(やったら犯罪)魅力的だ。本当にいい女優になった。次に何を演じるのか今から楽しみである。
四季「赤毛のアン」ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/anne/index.html
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