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2008年2月 4日 (月)

「HEY!HEY!HEY!」AKB48vsアイドリング!!!

フジテレビの音楽番組、「HEY!HEY!HEY!」でAKB48とアイドリング!!!が共演した。ふだん、テレビの話題はあまりこのブログに書いていないが、ちょうどこのエントリーの続編になるような状況があったので、記録しておく。

アイドリング!!!は、同名の番組に出演している9人のアイドルユニットだが、この番組がアイドル育成番組という内容であり、「夕やけニャンニャン」をかなり意識したつくりになっている。そのため当然彼女らとAKB48は比較の対象になるわけだが、当初の雰囲気ではアイドリングはかなりマイナーな存在であり、同様にマイナーとはいえ、「秋元康プロデュース」というふれこみから、自ずとA級指向のイメージを備えていたAKBよりはずっと格下に見られていた。秋元康に対する拒否反応でAKBからは目をそむけていた自分だったが、アイドリングには早くから注目していた。実はアイドリング1号の加藤沙耶香とは、桜(もも)mint's時代に撮影会やイベントで会っており、握手もしてサインももらっている(プチ自慢、つうか痛いエピソード)。

そのアイドリングが、昨年の春ぐらいから急速に人気を伸ばし、イベントにも多勢の人が押しかけ、最初はネット配信だけだった歌手活動も、7月には正式にCDリリースを果たすに至った。昨年夏頃の段階では、明らかにAKBより勢いのある存在になっていたのである。これには秋元康も焦りを感じたことだろう。

AKBとアイドリングは、どちらもおニャン子クラブに源流があることは言を待たないが、その生い立ち、成立までの文脈は正反対である。AKBは、テレビを知り尽くした秋元康が、あえてテレビ以外の、ネットやライブの力によってアイドルを生み出そうとした野心的なプロジェクトであるのに対し、アイドリングはテレビが持つポテンシャルを最大限に発揮するべく、地上波、CS、ネット、イベントを横断的に組み合わせてアイドルを生みだそうとしたプロジェクトである。彼女らの発言は実にくったくのないものだが、実はそこには放送・通信融合時代におけるテレビ局のビジネスモデルを探ろうとするフジテレビの戦略が垣間見える。

その一見同じようだが全く違う文脈で生まれた2つのアイドルグループが初めて競演する。これはファンとして大いに気になるところだが、気になっていたのは関係者も同じようで、秋元康もスタジオ見学に来ている様子が映し出されていた。

そして結果は…

アイドリングの圧勝だった。

この勝ち負けは、自分の主観的判断ではない。放送されたあとのひまわり組公演で、峯岸みなみが「どう見てもアイドリングのほうが面白かった。くやしーっ!」と発言しているのである。みぃちゃんの言葉は絶対だ。

実際のところ、自分も同じ印象を持った。アイドリングはトークのコーナーでは発言すべてで笑いを取り、視聴者にもっと彼女たちを観ていたい、と思わせた。そして歌においても、あえて現在発売中の「Snow celebration」ではなく、カップリングのややコミカルな曲である「モテ期のうた」を歌い、強烈な印象を残した。

これは、完全にアイドリング側の作戦勝ちである。

トークにおいて、アイドリングは自分たちのアピールポイントを「笑われるアイドル」という自虐的なイメージに絞り込んだ。これは紅白において、AKBが「人数の多さをアピールする」ということに焦点を絞ったのと同じ手法だ。さらに、そのメッセージを伝えるために、完全にAKBをダシにしたのである。「AKBさんは華やかで魅せるアイドルですけど、アイドリングは笑われるアイドルなんですよ」「AKBは3万人から選ばれた48人ですけど、私たちは50人から選ばれた9人なんです」といった具合に。これらによって、視聴者のほとんどはAKBよりもアイドリングに好感を持ったはずだ。

フジテレビがアイドリングのホームグラウンドであることを考えれば、この対戦はやや「中東の笛」気味であり、AKBにとっては気の毒な状況ではあった。

しかし興味深かったのは、この番組で、アイドリングが「テレビの文法」をいかに理解し、体の中に浸透させているかを垣間見せた点だ。

例えば、AKBが自分たちの振り付けについて語っていたとき、司会のダウンタウンが「アイドリングがこーんな顔(苦虫をかみつぶしたような顔)してたで」と言ったところ、アイドリングの全員がいっせいに立ち上がって「違う違う」と突っ込んだ場面。この反応は見事だった。浜田雅功もすかさずそれを拾い「お前ら芸人か!」と突っ込む。これは実にテレビらしいやりとりだった。

一方、AKBの面々はといえば、アイドリングがAKBをややホメ殺し的に持ち上げたとき、謙遜気味に首をヨコに振ることしかできていなかった。彼女らは、劇場の文法は理解していても、テレビの文法は理解できていなかったのだ。ひとつの時間を客席と舞台で共有できる舞台なら、その場で脊髄反射しなくても、全体の流れで盛り上げればいい。しかし編集によって一瞬を切り取られるテレビの世界では、常に全力で、オーバーアクション気味に応じなければ視聴者の目はそれてしまうのだ。

この敗北が、秋元康にとって想定内だったのかどうかは分からない。しかし、紅白でハロー!プロジェクトを完膚無きまでに叩きのめしたAKBが、あっさりとアイドリングにやられてしまう、という状況には、なかなか興味をひかれるものがある。

そこからは、2つのことが予想できる。

ひとつは、今後アイドルを生み出す文脈がさらに多様化を見せるだろう、ということ。テレビに出られなくても、ネットやDVDなど安価なメディアへの出演によって「アイドル」が成立してしまう今日、アイドルと名のつく人間の数は飛躍的に増加している。しかし、今後は「高いメディア」「安いメディア」という活動の場のコストによって単純に分類はできなくなりそうだ。複数のメディアを組み合わせたり、次々に乗り換えたりするケースが増えるものと予想されるからである。

もうひとつは、AKBの今後の活動の変化である。秋葉原48劇場をショールームとして、そこで育ったアイドルをテレビや映画など既存のメディアに出していく、というインキュベーションモデルが恐らく秋元康の戦略だったはずだ。しかし、今回の番組で、テレビで育っていないアイドルは、テレビで育ったアイドルに、少なくともテレビの中では勝てない、ということが明確に示された。基本的な戦略の練り直しを迫られることになっても不思議ではない。

AKB48の次のシングルは、インディーズデビュー曲「桜の花びらたち」のリメイクになる。卒業式シーズンに合わせたうまい作戦だ。そしてこの曲は素直に名曲といえる傑作であり、すでに流れ始めているプロモーションビデオも力の入った作品に仕上がっている。これは、相当なヒットを記録するのではないか、と考えている。

しかし、AKBは「ロマンス、イラネ」でそれまでの制服イメージを捨て、曲でも衣裳でもアイドル王道を歩むことを選択したはずだ。それを考えれば完全に逆コースであり、その戦略にはブレがあると見られても仕方がない。

今回の番組のような事態が続けば、そのブレはさらに大きくなる懸念もある。まだAKB初心者の自分としては、もう少し逡巡して現状を維持してくれたほうが嬉しいのだが、そこは秋元康、矢継ぎ早に次の二手、三手を打ってくるかもしれない。彼がAKBというプロジェクトをどうコントロールしていくのか、見物である。

それにしても、自分たちの状況を客観的かつ冷静な目で分析できる峯岸みなみはさすがだ。こういう人と結婚すると、きっと天下を取れるのだと思う。

アイドリング!!!のホームページ

http://wwwz.fujitv.co.jp/idoling/index2.html

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