四季「ウィキッド」苫田グリンダきたああああああ
グリンダ | 苫田亜沙子 |
エルファバ | 濱田めぐみ |
ネッサローズ | 山本貴永 |
マダム・モリブル | 武 木綿子 |
フィエロ | 李 涛 |
ボック | 伊藤綾祐 |
ディラモンド教授 | 武見 龍磨 |
オズの魔法使い | 栗原英雄 |
男性アンサンブル | 清川 晶、嶋崎孔明、永野亮彦、成田蔵人、脇坂真人、 |
女性アンサンブル | 有美ミシェール、間尾 茜、あべゆき、宇垣あかね、今井美範、 由水 南、石野寛子、柴田桃子、遠藤珠生 |
開幕から半年、ついに第二のグリンダ登場である。
当初の発表にあった佐渡寧子でも、開幕時にパンフレットに名を連ねた西珠美でもなく、クリスティーヌ役で知られる苫田亜沙子だ。2人を追い抜いてグリンダデビューしたのが、実力主義の結果なのか、大人の都合によるものなのかは知るよしもない。しかしこの3人の中でいちばん観たいのは誰かと聞かれれば、自分は間髪入れず苫田と答えるだろう。だから個人的にはこのキャスティングは嬉しい。
それにどうも自分はこのグリンダというキャラクターが心底好きらしく、最近は四季以外の作品を観ても「この女優さんはグリンダできそうだなあ」とかそんなことばかり考えている。だから新グリンダというのはとてつもなく大きな関心事だ。
この情報を知り、さっそく日曜の前日予約を狙うことにしたが、土曜の14時(会員向け前日予約の開始時刻)は、福岡でライオンキングを観ていた。第一幕が終わり、すでに14時25分。大急ぎでロビーから電話すると、幸運にも2階席に飛び込むことができた。
てなわけで福岡の予定を早めに切り上げて電通四季劇場「海」へ。苫田グリンダの出演する可能性は50%だったが、もし沼尾みゆきだったとしても、しばらくグリンダから離れることになるだろうから、それはそれで観ておきたいと思っていた。結果苫田グリンダに会うことができたわけだが、半年も交替なくこの難役を演じきった沼尾には本当にお疲れ様と言いたいところだ。もちろん、またすぐに戻ってきてほしいのも本音ではある。
さて、注目の苫田グリンダはどうだったか。
結論から言うと、申し分のないグリンダである。
歌については、沼尾と同様声楽の出身であり、その実力はオペラ座の怪人で十分すぎるほど立証済みだから心配もしていなかったが、堂々とした歌いっぷりにはベテランのような貫禄が感じられる。明るく、伸びのある声は聞いていて心地良い。
そして演技も、歌と同様に実に堂々としたものだ。沼尾が明らかに無理してキャピキャピしている(でもそこがいい)のに対し、苫田の場合はあの、普通の人より2~3度ぐらい体温が高いと思われるグリンダのテンションが、ごく自然に感じられる。これはやはり実年齢が若いからだろうか?
また、笑いの取り方もサマになっており、間の取り方が絶妙だ。これは大阪出身という遺伝子のなせる業だろうか。思ったことをずけずけと口にしてしまうものの、どこか憎めない、大阪のおばちゃんみたいな雰囲気もある。
見た目に関して言うと、沼尾が愛嬌あるタヌキ顔で実年齢より若く見えるため、あまり若返った感じがしない。むしろ落ち着き払っているために年上のようにも見える。
こう書いていると、歌も演技もいいが、見た目や雰囲気はおばさんっぽい、ということになり、さほど魅力的に思えないかもしれない。しかし実際には、舞台に登場しただけでついつい目が行ってしまい、終演後も、しばらくそのグリンダ姿が頭の中でぐるぐる回転するほど、好きにならずにはいられない素敵なグリンダなのだ。
一体その理由はどこにあるのだろう。
……やはり、アレか。
アレの力なのか?
そのアレについてだが、最大の注目ポイントとして、登場からずっとチェックしていた。久しぶりにオペラグラスも借りた。最低な客である。
冒頭、巨大なシャボン玉に乗って颯爽と登場した苫田グリンダ。ここではアレが強調されるような衣裳ではないので控えめだ。しかし、その後の衣裳チェンジに期待を感じさせるボリューム感である。
続いて入学式のスーツ姿。これもスーツだからアレに目がいくわけではないが、上着がちょっと上に持ち上がっているように見える。期待は高まる一方だ。
そして待ちに待ったダンスホールのシーンで、あのピンクのドレス姿を披露。
うわぁ…。
「後ろを留めてちょうだい!」のポーズが、まるでパイレーツだっちゅーの。いやあ、若いって素晴らしいですね。そこから「ポピュラー」まではグリンダにクギ付けだ。
ほか、アレが強調された衣裳としては、二幕でエルファバがオズのもとへ乗り込んできてはち合わせする時に来ている水色のドレスが、こりゃまたケッコーである。
というわけで、一部の男性ファンには非常にお勧めなのだが、全体的に見ると、もう少しバランスを調整したほうがいいと思えるところもある。グリンダは、自分に絶対の自信を持つ鼻持ちならない面を、間抜けな馬鹿っぷりの可愛さで中和しているようなキャラクターだ。その間抜けさが苫田グリンダからはあまり感じられない。その結果、如才なさが前面に出てしまっている。
そうなると、鼻持ちならなさが文字通りハナについてくるわけで、少し共感しにくいグリンダかもしれない。自分のような観客には、アレの攻撃によってその問題を吹き飛ばしてくれるのだが、その攻撃が一部の限られた嗜好のファンにしか通用しないことは言うまでもない。
もっとも、それは大きな問題ではない。そもそも、まだ四季に入って間もない、そしてこの役を得たばかり、の苫田が、ここまでグリンダを自分のものにしているのは、驚異的なことなのだ。今後、このグリンダがさらにどのような成長を遂げていくのか、興味と期待をこめて、エッチな視線で見守っていきたい。結局そこかよ。
さて、この日は初見キャストが何人か。簡単に感想をまとめておきたい。
・伊藤綾祐ボック
雰囲気は金田暢彦ボックを薄めたような感じだが、それもまたいい。ボックがいい奴なのか悪い奴なのかがあいまいになったことで、ウィキッドという作品が持つ「観客を惑わす」という仕掛けに貢献している。
・武 木綿子モリブル夫人
見た目の美人さが手伝って、より抜け目ない感じのモリブルになった。だが、モリブル夫人もボックと同じ「良い奴なのか悪い奴なのか分からない」キャラクターなので、どこか人の良さ、ちょっと抜けた部分も感じさせてほしいような気がする。
・栗原英雄オズ
これはいい。煙の中からぼわっと出てきたようなインチキおじさん。まさにオズだ。そして彼の武器である「人に愛される」オーラを存分に発揮している。このときにも感じたが、彼がこういう演技をすると、大泉洋に見える。考えればあのとき、すでにビルの中にオズ風味が混じっていたのかもしれない。
ほぼ固定だったキャストがだんだん動いてきた。次に出てくるのは第二のフィエロか、それとも第三のエルファバ、グリンダか。そういえば、マンチキン国の総統もそろそろ換えてあげたほうがいいのでは?
「ウィキッド」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/index.html
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コメント
ヤボオ先生
お待ちしておりましたっ!!
サバンナ、オズの国と立て続けのレポートありがとうございます!!
自分は先週サバンナへ、昨日の夜オズの国へと行ってまいりました!
あれだけのキャストを見せ付けられたらサバンナ行っちゃいますよねー。
サバンナは今まで観た中で1番感動しました。
「作品」はやっぱり・・・。
おっと!これ以上は止めときます。
オズの国では残念ながら、新グリンダ&新ボックを舞台ではお目にかかれませんでしたが、
客席でお見かけしました。
苫田さんはホッとしたご様子でした。
あと、智○ビータのお姿も・・・。
第3のエルファバが登場するとしたら、今のところ自分は智○ビータしかいないんじゃないかなぁ、
と勝手に妄想していたのでちょっとドキッとしました。
そういや貴女、第3のアイーダだったな。。。
お次はフィエロとディラモンド教授ですかね。
パリの方で2人とも交代されたので。
でも個人的には阿久津フィエロが見たいんだけどなぁ。
ま、個人的妄想はこれくらいにしておきます。
また熱いレポートお待ちしております!
投稿: らうる | 2008年1月20日 (日) 22時46分
らうるさんこんにちは。
私も阿久津フィエロ観たいです。トニー役が好評なのですぐには難しいかもしれませんが、トニー役を経たからこそ、いいフィエロになるような気がします。
ひょっとしたら井上グリンダの可能性も?
濱田・井上のアイーダ対決、観てええええええ!
投稿: ヤボオ | 2008年1月21日 (月) 00時37分
ヤボヲさん
感服しました。予想通りアレに着眼してくるとは思いましたが、予想以上でした。だっちゅうのーかぁ、、、いいなぁ~
ところで濱田さんとのバランスはどうでしたか?
投稿: kuffskuffs | 2008年1月21日 (月) 18時55分
kuffskuffsさん、こんにちは。
実はアレばかり見ていたので、エルファバとのバランスがどうであるかなど、肝心なことをちゃんとチェックしていませんでした。
ただ、あまり気にならなかったということは、バランス良かったということだと思います。
バランスというのとは少し違いますが、めぐ様も先輩のあたしがリードして引っ張ってやろう、という感じではなく、このイキのいい後輩の登場を面白がっているように見えました。
まあ、そう見えただけで実際はそれどころじゃないんでしょうが。
投稿: ヤボオ | 2008年1月21日 (月) 22時44分
ヤボオ 様
3度目のカキコミです。
妻がヤボオさんの引きこもりで、心配していた矢先、四季のサイトで村さんがスカーにキャスティングされ、行きたいけど行けない状態。さて、どうしたものかと思っていたら、二人で「ヤボオさんなら福岡に行って、レポしてくれるよね」と勝手に思っておりました。本当にありがとうございました。困ったときは、ヤボオさんですね。
これからも楽しみしております!
PS
苫田さんの「アレ」、二人で笑いました!
お体に気をつけて、これからも楽しいレポを楽しみにしております。
投稿: 宇都宮 | 2008年1月21日 (月) 22時57分
宇都宮さん、こんにちは。
すいません、下品なレポで・・・
村スカーと芝ムファサの対決は、ぜひ東京でも実現してほしいです。キャッツやJCSでも共演している2人ですが、正面からの対決はなかったですからね!ほかの作品でもぶつかってほしいです。
芝バルジャンvs村ジャベールとか。いやいや、なんでも。
投稿: ヤボオ | 2008年1月22日 (火) 23時03分