ブルーマン東京公演 開幕
待ちに待った「ブルーマングループ IN 東京」が12月1日、新設の「六本木インボイス劇場」で開幕した。運良く抽選による先行発売で初日のチケットを確保できたので、意気揚々と六本木へ向かう。
「私とブルーマン」という題で作文を書き始めると止まらなくなってしまうが、1996年末、自分は初めてニューヨークで何本かの舞台を観た。その中で最も衝撃的だったのがこのブルーマンだ。顔面を真っ青に塗り、言葉を一切話さない3人のブルーマンによる、抱腹絶倒の舞台。そして最高にクールな音楽。まざまざと見せつけられたオフ・ブロードウェーの実力は、自分をエンタテインメントの世界にさらに深くのめりこませるのに十分だった。その後、しばらく間を置いて2005年、そして昨年末にもまた同じ場所で観た。すでにブルーマンは米国各地、そしてヨーロッパでも上演されているが、自分はニューヨークのAstor Place Theatre以外で彼らを目撃したことはない。
さてインボイス劇場は、六本木ヒルズ方面から行くなら、けやき坂を下った突き当たりにある。六本木駅からも麻布十番駅からもそれなりに時間がかかるので、出かけるときは十分に余裕を見たほうがいいだろう。
また、劇場までは階段を4階分も登らなくてはいけない。エレベーターもあるが、基本的にバリアフリー対応と思われるので、ここは元気に階段でどうぞ。
階段を上るとそこに劇場がある。なんとなく、かつての赤坂ACTシアター(もとは四季の赤坂ミュージカル劇場)を思い出させる。その最後の公演が、アルゼンチンのパフォーマンス集団「De La Guarda」による「Villa Villa(ビーシャ・ビーシャ)」だった。ブルーマンとともに、オフ・ブロードウェイのアバンギャルドなパフォーマンスとして人気を博した作品である。まさかブルーマンよりはずっと後発の「Villa Villa」が先に東京に来てしまうとは思いもよらなかった。ブルーマン誕生のいきさつに、日本人プロデューサー出口最一氏(元劇団四季)がかかわっていることもあり、かなり前から日本公演の噂は絶えなかったが、なかなか実現しなかったのである。
つい話がそれてしまうが、劇場の中に入ってもやはりACTシアターっぽいつくりだ。そこそこの広さのあるロビーは、薄暗く、小ぎれいではあるもののどこか怪しさが感じられてなかなかいい雰囲気だ。天井には、もともと公演のタイトルにもなっていた「TUBE」もうねうねと張りめぐらされている。
グッズ売り場を覗くと、あまり魅力的な品揃えではなかった。またパンフレットというか、ブローシャーも1500円で売っているが、これはAstor Place Theatreで売っている、写真と、わずかな文章を配したものと基本的に同じ。和訳がその文章の下に付いているだけだ。
客席に入ると、オール1階席の横に広いタイプの劇場で、なかなか観やすい構造だ。ただ、やはりたった3人のパフォーマンスを観るには、少し広すぎるように感じる。ブルーマンには、自由劇場ぐらいの大きさの空間がふさわしい。そうだ貸してやれ、自由劇場。
というわけでいよいよ開演。ここから先は、だいぶネタバレします。ブルーマンは「意外性」がひとつのカギなので、できれば何の情報も持たず観ることをお勧めします。ですから、今後この東京公演や、NYなど海外でブルーマンを観る予定のある人は、読まないほうがいいでしょう。また、NYで観て、今回の東京公演はいったいどうなるんだろう、とドキドキしている人も、そのドキドキ感は劇場までお持ちになったほうがいいと思います。
そして観るかどうか迷っている人へ。世界トップレベルの破壊力を誇る極上エンタテインメント、それがブルーマンです。そのハイクオリティーを維持したまま、ブルーマングループが日本に乗り込んできて繰り広げる今回の東京公演。見逃す手はありません。自信を持って皆さんにお勧めします。口で説明するのは難しいですが、ぜひ、体験してください!
というわけで、限られた人だけ(もう東京公演観ちゃった人など)続きをどうぞ。
まず、パフォーマンスの基本構成はNYで観たものと同じ。ただ、NYのショーも少しずつ変化、とくに映像コンテンツを使った部分は頻繁に変わっており、今回もそのあたりを中心に新しい内容が盛り込まれている。日本人を意識したギャグも多く、謎のポスターセッションもすべて日本語だ。そのあたりは、新鮮に感じられる。さらに、ブルーマンは肉体を使ったパフォーマンス、というイメージが強いが、実は各種の映像機材やCGなどを駆使した、テクノロジー指向の側面もある。それに関しても、あっと言わせる仕掛けを用意してきた。
それ以外は、NY版と変わりはないので、「あれがなかったら嫌だなあ」という懸念は不要だ。開演前の「字幕パフォーマンス」に始まり、マシュマロ遠投、スナック芸、客いじり、そしてあれも、これも、全部ちゃんとやるから安心してほしい。
ラストのアレも健在。ただ、劇場が横に広いのと、まだ十分にシミュレーションが出来ていないせいか(客席を埋めないとできないだろうから)、巻き取りがやや甘く、「すべての客席からの流れがひとつにまとまっていく」という感覚を明確に表現しきれなかったようだ。今後改善されていくだろう。
もちろん、迫力のドラムパフォーマンス、腹にずしんと来るハードロックなブルーマンサウンドが炸裂していることは言うまでもない。もちろん生演奏だ。ミュージシャンには日本人も起用されている。
客席のノリはというと、この日はコアなファンや関係者がいたせいか、妙にハイテンションな人と、そうでない人とに分かれていたが、明日以降はどうなるのだろう。ただひとつ言えるのは、無理にノリノリにならなくてもいいということ。ブルーマンの芸は「引かせてなんぼ」の部分もある。そして無理して盛り上がらずとも、ちゃんと最後はきっと舞台と客席とが一体となれる。緻密に計算されたブルーマン・グループのエンタテインメントに、安心して身を委ねればいい。
終演後には、初日ということでブルーマン、ミュージシャンに加えオールスタッフが舞台でカーテンコールに応えていた。
そして、終演後のロビーでは、お約束のブルーマンとのコミュニケーションタイム。NYでは、劇場のキャパシティーも小さく、また誰もがブルーマンに寄っていくわけではないので、比較的簡単に一緒に写真を撮ったりできるが、そこは日本、あっという間にもみくちゃにされてしまうためコミュニケーションは至難の業だ。ぜひ一緒に写真を撮りたい、という場合は、2人組であれば、ひとりは撮られる人、ひとりは撮る人、と予め決めておくのがいいだろう。また、写真よりクラウザーさんが言うところの「サイン的なもの」がほしい、という場合は、サイン帳やパンフレットを差し出して、キスマークをつけてもらうといい。時間もかからないのでおすすめだ。
3人のブルーマンは、屋外まで使って分散し、なんとか混乱なくロビーパフォーマンスを続けていたが、明日以降、ちゃんと行われるかどうかは分からない。でもロビーパフォーマンスまでがブルーマン、という気もするので、続けて欲しいものだ。
俺はといえば、ちゃんとカメラ目線もらってきた。アップで。
これ、次のタイトルバナーにしようっと。
ブルーマン東京公演のWEBサイト
http://blueman.jp/
昨年末観たときのエントリー
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2006/12/blue_man_group_9fc7.html
De La Guardaの「Villa Villa」についてはこちらのエントリーで
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2006/12/tarzan_9d21.html
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