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2007年12月29日 (土)

四季「ウェストサイド物語」望月ベルナルド&高木マリア

ジェット団(The Jets)

リフ 松島勇気
トニー 鈴木涼太
アクション 西尾健治
A-ラブ 大塚道人
ベイビー・ジョーン 厂原時也
グラジェラ 恒川 愛
エニイ・ボディズ 木村仁美

シャーク団(The Sharks)

マリア 高木美果
アニタ 団 こと葉
ロザリア 鈴木由佳乃
ベルナルド 望月龍平
チノ 玉城 任

おとなたち(The Adults)

ドック 緒方愛香
シュランク 牧野公昭
クラプキ 荒木 勝

「ハムレット」観劇後、秋劇場で「ウェストサイド物語」。どちらも3時間前後の長い作品なのでだいぶ尻は痛くなるものの、「ウェストサイド物語」は古い作品ということもあり、常に観客を巻き込んで圧倒するものではないため、さほど観劇疲れは感じない。

木村花代マリアの登場時に観て以来、足が遠のいていたが、今回ぜひ観たいと思ったのはベルナルド役に望月龍平が起用されたからだ。望月龍平といえば、今年は「エクウス(馬)」だが、印象的なのは例の全裸シーンではなく、登場時の大声でCMソングを歌っているシーンだ。ある意味全裸より恥ずかしいと思えるあの演技を、嬉々としてこなしているように見えたとき、この役者の持っている可能性の大きさを感じた。

また、ある公演で、四季の関係者が大量に見学に来ていたことがあった。まだ入団前か、入団したてと思しき若者たちがロビーで固まっていたが、そこに望月龍平が登場した。運動部よろしくいっせいに望月にあいさつをする後輩たちに、「よっ」と軽く笑顔で応えていたその姿が、超カッコ良かったのを記憶している。

というわけでいつの間にか自分はかなりの望月ファンになっていた。そのベルナルドとなれば、これは観ないわけにはいかない。高木美果のマリアも観たいことだし。

ここから少しばれます。作品自体未見の人、先入観なく新ナルドを観たい人は読まないほうがよいです。

その望月ベルナルドだが、いきなり顔をラッツ&スターのように真っ黒に塗って登場。シャーク団関係者のメイクはそれが基本とはいえ、あそこまで塗らんでも、という気はする。すぐに慣れるけどね。オープニングのダンスを華麗にこなしていた。

ベルナルドである以上、どうしても加藤敬二と比べたくなるのは仕方のないところだ。威厳や存在感という面では、確かに加藤ナルドにはかなわない。望月が今後、内に秘めたカリスマ性をどこまで感じさせることができるかが課題だろう。だが、加藤の場合45歳という年齢もあり、「不良少年」というよりは、モノホンのヤクザに見える。だから「軍事会議」のシーンは、なんだか任侠映画を観ているようなカタルシスがある。「仁義なき戦い・頂上作戦」で、小林旭が梅宮辰夫の本拠地に乗り込み「広島ヤクザは芋かもしれんが、旅の風下に立ったことはいっぺんも無いんで」と言い放ったあの名場面を思い出して欲しい。

一方、望月ナルドは不良グループのリーダーとしての風格を備えつつも、やはりどこか背伸びをした「少年」の顔が垣間見える。グラジェラにからかわれ、何とかオトコの沽券を保とうとするあたりが微笑ましい。マリアへの兄妹愛もひしひしと感じられる(加藤ナルドだと、兄弟愛というより娘を箱入りにしたがっているように見える)。

リフを刺してしまったときの、すべてがすっ飛んでしまい、頭の中が真っ白になったあの表情。地味な演技だが重要なポイントだ。少年ナルドなら、あの場面で出てくる表情はあれしかあるまい。加藤も同じ演技はしているのだが、加藤ナルドは普通に人を殺しそうに見えるので、あまりショックを受けているようには感じられないのだ。

総合的に見ればまだまだ加藤には及ばないものの、一見の価値があるベルナルドだ。少年らしさが出ることで、舞台全体の雰囲気が「若者たちの悲しい青春群像劇」というイメージにぐっとシフトしたように思えた。前回観たときは、加藤の落ち着いた演技により、むしろアメリカ社会の影、移民社会の難しさ、という物語の背景のほうが色濃く感じられたからだ。

そして高木美果のマリア。彼女がクリスティーヌに抜擢されたとき、その歌声とあどけない演技にすっかり魅了され、それ以来ファンになってしまったが、一時期ずっと舞台から遠ざかり、さびしく感じていた。今年久しぶりに四季の舞台に立ち、「ジーザス・クライスト=スーパースター」で、こちらもマリアを好演。ご存知のように木村花代もこの「ウェストサイド物語」のマリアと「ジーザス・クライスト=スーパースター」のマリアを演じており、紛らわしいことこの上ない。

高木美果の声は相変わらず美しく伸び、聴いていてうっとりするほどだ。そして彼女の場合、セリフの声と歌の声がほとんど変わらない。「さあ、歌うぞ!」とスイッチが入って歌うのではなく、セリフがごく自然に、シームレスに歌へと展開していく。これはミュージカル女優として最高の持ち味ではないか。ビジュアル的にも、木村花代マリアや、未見だがプロモーションで見た笠松はるマリアがどちらかというと丸顔なのに対し、細面の美人マリアだ。ちょっと落ち着きすぎていて、もう少しきゃぴっとした感じがあってもいいのではと思ったが、何しろトニーはマリアに一目惚れするわけだから、やっぱり美人でないと説得力に欠ける。阿久津陽一郎のトニーなら、何を考えているか解らないので、誰に一目惚れしようとかえって納得してしまうが、この日のトニーは鈴木涼太だ。

鈴木トニーは、ただの絡みにくいヘンな奴に見えた阿久津トニーに比べると、ずっと普通の人だ。そして、何より歌がうまい。トニーが最初に出てきて、リフとダンスに行くことを約束し、分かれてからひとりで歌う歌は、旋律が微妙で歌いにくそうな歌だ。前回、阿久津トニーで聴いたときはどういう曲なのかサッパリ分からなかった。しかし鈴木トニーの歌で、ようやくその輪郭をつかむことができた。

ついでに言うと、玉城 任のチノもなかなか良かった。「マンマ・ミーア!」ではさほど印象がなかったが、今回の舞台では、チノの「マリアへの思い」「ベルナルドへの思い」「ベルナルドの妹としてのマリアへの思い」がそれぞれ感じられて、心に響いてきた。

この「ウェストサイド物語」で2007年の観劇は終了。この日に、田邊真也に望月龍平というこれからの演劇界を担っていく2人の有望な俳優の演技をそれぞれ新役で見ることができたのはよかった。今年はずっと女優さんを追っかけてきたのに、最後は男優ウォッチになるという意外な展開。異常な観劇姿勢が、新たな異常の扉を開いたということだろうか?それはそれでいいや。

「ウェストサイド物語」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/wss/index.html

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