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2007年11月18日 (日)

三谷幸喜「恐れを知らぬ川上音二郎一座」

少しばれます。おのおのご注意を。

三谷幸喜が商業演劇に初挑戦。これは、裏を返せば商業演劇の代表的存在である東宝が、三谷の抱えるファン層を取り込もうとしているということだ。

そのために東宝は、文字通り最高の檜舞台を美々しく用意した。伝統の「芸術座」を模様替えした「シアタークリエ」のこけら落とし公演、という形で。それに三谷が応え、「劇場」をテーマにした作品を提供したのがこの「恐れを知らぬ川上音二郎一座」である。川上音二郎の米国公演を題材に、全ての話が劇場で展開し、劇中劇もふんだんに盛り込まれるという三谷の最も得意とする手法で創り出された三谷版・商業演劇が誕生した。

出演陣は、斬新さと豪華さを同時に感じさせる実に贅沢なメンバーだ。

川上音二郎 ユースケ・サンタマリア
川上貞 常盤貴子
助川タエ 戸田恵子
伊達実 堺雅人
甲本与之助 堺正章
津田山蔵人 浅野和之
飯尾床音 今井朋彦
伊東カメ 堀内敬子
大野熊吉 阿南健治
小村寿太郎 小林隆
ホイットモア夫人 瀬戸カトリーヌ
野口精一 新納慎也
綿引哲人 小原雅人
ヘンリー・アーヴィング ベーカー・ウィリアム・ヒュー

ユースケ・サンタマリアに常盤貴子という舞台経験の浅い2人を堺正章や“三谷組”の実力者たちが支えるという構図だ。堺正章の偉大な芸を間近で観られただけでも感動なのに、戸田恵子は出てくる、堺雅人は出てくる、極め付けに堀内敬子も出てくる。2列目中央というナイスポジションを確保したこともあり、ついつい作品よりも役者に目が行ってしまう「異常な観劇姿勢」となってしまった。

しかしこの場合、それは異常とは言えない。何しろ商業演劇だ。役者目当てに、あるいは「お芝居を観に行く」というイベント自体が目的になってもいいのだ。三谷もそこを意識し「コンフィダント~絆」で見せたような、三谷の真骨頂とも言える緻密な計算に基づく完成度の高い作品ではなく、気軽に楽しみながらのんびり観られて、役者の魅力や実力が観客にストレートに伝わるような作品を作ってきた。「コンフィダント」のような研ぎ澄まされたものを期待した人は失望したかもしれないが、今回はジャンルが違うのだ。常に新しいことに挑戦するのも三谷の魅力ではあるし、常に三谷作品が傑作佳作というわけではない。三谷だから笑えるだろう、感動できるだろう、という先入観も「異常な観劇姿勢」につながるものだから注意したほうがいい。そのうち三谷幸喜も「私は麻薬の製造人ではありません」とか言い出すかもしれない。

というわけで、俺は十分面白かった。自分の好きな要素が詰め込まれていたということもあるかもしれない。川上音二郎にマダム貞奴、劇中劇に役者が客席に飛び出す参加型の演出、どうしようもない人間に惚れてしまう、どこか、つかこうへい作品を思わせる人物描写……。さらに、あまり三谷作品ではお目にかからない、他の演劇作品のベタなパロディーも入れてきた。まるで劇団☆新感線のように。これは舞台セットを観たとき、ひょっとしたらあるかな、でも三谷がそんなことするかなあ、と思ったらきっちりやってくれた(「犬顔家の一族」のときも同じようなことを書いた記憶がある)。商業演劇だからこういうのもありかな、というサービス精神の現れなのだろう。ヒントは5番ボックス。

川上音二郎の人物像は、大河ドラマ「春の波濤」で中村雅俊が演じてから大いに興味を持って、関連する本なども読んだが、破天荒なその人生はすこぶる面白い。中村雅俊はややお行儀のよい感じもしたが、ユースケ・サンタマリアはそのイメージにピッタリだ。音二郎の、抜群の行動力と不思議に人を引きつける魅力を十分に感じさせてくれる。声も非常に良く出ており、滑舌も全く問題がない。舞台俳優として十分な力を持っていると感じた。

貞奴の常盤貴子は本当に美人。その華やかでありながらきめの細かい女優オーラは、発声の弱さをカバーして余りある。

堺正章は「ちゅらさん」あたりからその芸が神の域に達してきたように思えるが、70年代のNHK「コメディー公園通り」以来、ずっとその笑いの才能は衰えることを知らない。その姿を生で見られて本当に良かった。“前説”でも本人が触れていたように、体力的にはきつい役のようだが、千秋楽まで元気に頑張ってほしい。

戸田恵子、堺雅人、小林隆(今井朋彦、小原雅人も)といったメンバーは、もはや三谷組というより「新選組!」である。堺雅人のあの衣裳は反則技だろう。これも商業演劇ならではのサービスか。

そしてそして、もうすっかり三谷組の堀内敬子だ。今回は、コメディエンヌとしてのハードルをさらに高くされた役に挑戦だ。セリフは全てハードな津軽弁。ほとんど意味が分からない。それでいて笑いを取り、感情を表現し、生き様を感じさせ、観客を納得させなくてはならないという難役だ。しかし堀内はそれをやってのけた。その実力はどうだ!と俺が威張る資格はないが、「美女と野獣」からずっと応援してきた身としては、その成長と評価がことのほか嬉しい。彼女のエッセイが間もなく発売になるらしい。楽しみだ。そして今年一杯で現在の事務所を離れるとのこと。引退ということではないようなのでひと安心だが、いったいどのような新展開になるのか。まさか四季への復帰、ということもあるのか。それはそれで嬉しいが。だってオズの国があなたを待っている!

ところで、この新劇場シアタークリエだが、正直いまひとつという感想である。600席というキャパシティーはほどよいが、後ろのほうの客席はかなり距離感があるし、列の間も狭く感じられ、ロビーは実際狭い。どうも東宝の、顧客サービス軽視の姿勢がにじみ出ているようで嫌だった。

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謎の劇場イメージキャラクター

「恐れを知らぬ川上音二郎一座」ホームページhttp://www.tohostage.com/theatre_crea/otojiro/index.html

「ほりうちけいこ センチメートル」
http://horiuchikeiko.cocolog-nifty.com/keiko/

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コメント

私は来週観劇予定です♪
久々の堀内さんの舞台、楽しみです★

投稿: higashi | 2007年11月20日 (火) 00時04分

higashiさんお久しぶりです。

来週ですか!
考えてみるとこの公演結構長いんですよね。
もう一回ぐらい観ようかとも思っています。

投稿: ヤボオ | 2007年11月20日 (火) 23時55分

こんにちは♪

「コンフィダント」を期待して
途中まで頭の中で「?」が飛び交ってしまったクチです。

堀内敬子ちゃん
三谷さんがあそこまで彼女の事を深く見ていて
更に、俳優として買っているのだとしたら
凄い事だと思いました♪可愛かったですよね。

(高校時代の彼女のエピソードを思い出したり)

四季に関しても
同じように思うことが多く
楽しく拝見させて頂きました。

(ルー語変換は思いつかなかったケド・・・)


トラバ、させて頂きました。
よろしかったウチにもお立ち寄り下さいませ。

投稿: yukko≠yuki | 2007年11月22日 (木) 23時57分

yukko≠yukiさんこんにちは。こんな異常な観劇態度のブログを読んでいただきありがとうございます。

コンフィダントは本当に良かったですね。なかなかあのレベルの舞台にはお目にかかれないと思いますが、演劇というものがここまで完成度を高くできるのかと感動しました。

ブログ拝見させていただきました。私も五東モリブルに一票!

投稿: ヤボオ | 2007年11月23日 (金) 01時28分

再びお邪魔します♪

麻美ちゃんのエルファバ
観るの・・・やっぱり怖いなー。

博多のアイーダでは
何度か痛い目に遭いました。

私も異常な観劇態度かも@11月は17本

お立ち寄り、ありがとうございました。
また伺わせて頂きますー☆

投稿: yukko≠yuki | 2007年11月23日 (金) 01時50分

こんにちは。

わたし樋口アイーダ観てないのですが、そうですか、そんなに・・・

1月に17本とはすごい!ぜひ見習わせてください!

投稿: ヤボオ | 2007年11月24日 (土) 10時20分

こんにちは、またお邪魔します。堀内敬子さんのHPにこの記事がトラックバックされてました。四季時代の堀内さんは歌っているだけでビジュアル的に気に入っていました。四季を退団してからは2回ほどしか舞台は見ていません。HPにトラックバックしてあると言うことは、ヤボオさんの言われるように四季への復帰もあながち非現実的でもないのでは・・・。
わたしは、彼女が退団前にキャスティングされていた「李香蘭」「エビータ」を見てみたいんですが・・・。

投稿: てつ | 2007年11月29日 (木) 12時04分

てつさんこんにちは。

おお!堀内エビータみたいーーーーー!

四季に戻らんでもいいから、作品契約で出演してほしいです!あとコーラスラインのヴァルとか。

とにかく、やはり彼女にはミュージカルで活躍してほしいと思うのです。

投稿: ヤボオ | 2007年11月30日 (金) 00時02分

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なーんだか 11月に入った途端 物凄く体調が悪いのです 今も鼻炎なんだか おニューな風邪なんだか それともイマサラ夏の疲れが出て体が泣いているんだか・・・本人も分からないまま 予定のない日は家で薬を飲んで寝込む日々 あああー 早くおいしくを飲み....... [続きを読む]

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