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2007年11月24日 (土)

四季「アイーダ」渡辺正ラダメス登場

アイーダ 秋 夢子
アムネリス 江寿多 知恵
ラダメス 渡辺 正
メレブ 有賀光一
ゾーザー 飯野 おさみ
アモナスロ 川原 洋一郎
ファラオ 前田 貞一郎
ネヘブカ 松本 昌子

新キャストのチェック、ということなら、この人のことを忘れるわけにはいくまい。「アイーダ」に登場した渡辺正のラダメス将軍である。

渡辺正はもと東宝ミュージカルの役者で、現在も四季の正式な団員ではなく、別の事務所に属しているが、マンマ・ミーア!大阪公演のほとんどの回でサムを演じ、一躍その名を知られることになった。

彼を初めてみたときには、何の冗談かと思った。どう見てもサムには思えない若さは別にして、表情は乏しいし、セリフは棒読みだし、歌は非常に苦しそうに歌う。何でわざわざこの人をサムに据えたのか全く意図が見えなかったからだ。しかし、繰り返しそのサムを見ているうちに、その存在感に何ともいえない味わいを感じるようになり、だんだんファンになってきてしまった。やっぱり劇団四季って麻薬の製造人じゃないか。

その渡辺が、これまで阿久津陽一郎や福井晶一といった濃いキャラクターが演じてきたラダメスに挑戦するという。やはり見ておきたい、と新名古屋ミュージカル劇場へやってきた。

博物館のシーンで、アイーダに続き現れた渡辺正。第一印象は「あれ、顔違うじゃん」。

どうやら薄味の顔なので、メイクによって全く印象が変わってしまうようだ。その風貌は、エジプトというより中南米な感じで、しかもなんだか使命手配っぽい。まるでサムが警察に追われ海外逃亡し、ベネズエラ国籍を偽装しているような雰囲気である。

だがセリフや歌になるとやっぱり渡辺正。声はこもり、苦しそうだ。表現力も極めて乏しい。しかし妙な存在感は健在で、つい目が行ってしまう。それに見ていてなんだか面白い。

ラダメスとしては、自信たっぷりな阿久津ラダメスとも、自分の職務と生き方に忠実な福井ラダメスとも異なり、何となくゾーザーの七光りで将軍になっちゃったよ、というぼんぼんラダメスだ。だから、「この父親にしてこの息子あり 」で父と子が対立する積木くずしな場面に説得力があった。

表現力が乏しい、と書いたが、最後の最後に、きらりと光る演技を見せている。アイーダと共に石棺に入り、アイーダに語りかけるときの暖かい笑顔はなかなか良かった。自分も死へのカウントダウンが始まっているのに、満面の笑みを浮かべている。この場面、設定上は真っ暗でアイーダからその表情は見えないのだから、その笑顔に嘘はない。ここでは渡辺の年上の余裕というか、サムで父親役を演じてきた影響がいい形に出たといえるだろう。

まあ、ほかのラダメスに比べ影が薄いのは確かで、あまりお奨めできるものではないが、阿久津や福井はもう飽きるほど観たよ、という人は一度ぐらい試してみてもいいかもしれない。

もっとも、個人的には、この「アイーダ」はアイーダとラダメスの物語というより、アイーダとアムネリスの「ふたりの王女」の物語だととらえている。だから、ラダメスは多少影が薄くてもあまり問題はない。

この日はそのアイーダ、アムネリスともに初見キャストだった。

秋夢子のアイーダは、ビジュアル的に最強である。もともと掘りの深い美人顔だが、そこにきりっとしたアイーダのメイクがぴたりとはまり、芸術的に美しい。力強く伸びのある歌声も存分に発揮し、「強く、美しいアイーダ」を創り上げていた。そこに、ふと見せる弱さ、可愛さが加わると、さらに深みのある人物像ができると思う。今後の成長に期待したい。なお、中国出身の秋夢子は、日本語の発音が不安視される向きもあるが、少なくとも歌に関してはほとんど違和感を覚えない。セリフになると、ときどき「あたし」が「あだし」に聞こえるなど、怪しいところもいくつかあるが、許容範囲と思う。

アムネリスの江寿多知恵は、アンサンブルで観たことがあるかもしれないが、これまでノーマークだった。こちらも力強いボーカルが魅力で、秋夢子の声楽的な歌唱に比べるとよりソウルフルな歌い方であり、アムネリスにはぴったりだ。ただ、演技はまだまだ未熟で、生まれながらの王女という高貴さが感じられなかったのは残念だった。

この作品はアイーダ、ラダメス、アムネリスのバランスが全てといっても過言ではないが、この日はまだ3人とも自分の役割をこなすのが精一杯で、そのバランスはあまりしっくり来ていなかった。だから、率直に言ってこの回の出来は良かったとは言い難い。新ラダメスを笑いに来た自分のような不埒な客はいいが、純粋にこのアイーダという作品を観に来た観客には、不満の残るものだったのではないかと懸念する。千秋楽は決まっているが、それまでに大いに奮起を期待したいところだ。

しかし、その「全てといっても過言ではない」部分以外のところで、飯野おさみがさすがの存在感を示し、大いに楽しませてくれた。飯野と渡辺は「マンマ・ミーア!」で同年代の役を演じていたが、ここでは親子。舞台って面白い。そして、有賀光一のメレブがぐっと進化していた。以前観たときは情けなさ全開のヘタレっぷりが良かったが、今回は芯の強さを感じさせ、アモナスロが言うところの「若い作戦参謀」に仕上がっていた。だけどケンカはからっきしだよ、という一休さんなところもきちんと残しており、「私!?」というこの作品最大の笑いを取るセリフでは、ばっちり爆笑を誘っていた。

また、ネヘブカの松本昌子もノーマークだったが、演技・歌とも光っていた。今後の成長が楽しみである。そういえば、以前ネヘブカを演じていた今井美範が現在アイーダも演じている。これも観たいところだ。

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四季「アイーダ」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/aida/index.html

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コメント

はじめまして。

検索から流れ着いて、アイーダの記事を読み、おなかを抱えて
笑ってしまいました。
まだ彼のラダメスは未見ですが、読んだだけで殆んど想像ついちゃいました。

これからもちょくちょく遊びに越させて頂きます。

投稿: らこ♪ | 2007年11月26日 (月) 01時22分

らこ♪さんこんにちは。こんなあほなブログを読んでいただき恐縮です。

渡辺ラダメスは、外見以外ほぼ想像したまんまで、何の期待にも応えてくれないというまさに期待どおりのラダメスでした。

いや、結構好きなんですけどね。

投稿: ヤボオ | 2007年11月27日 (火) 00時03分

1年前のことですが、同じ日に初めてアイーダを見ました。
四季の中でも「大人のラブストーリー」だということ以外、
何の知識もなく見に行きましたが、少なくともわたしは
ラメダスはとってもかっこ良かったと思いました。
しばらく興奮して友人とラメダスいいね〜ってしゃべっちゃってました。
渡辺さんという人は素人目に見ても、何となく四季っぽくないなとは
感じていましたが、よかったと思いますよ。なんか。

お書きになっていたように、最後の処刑のシーンで本当なら暗くて怖くて気が狂いそうな場面にもアイーダに愛を誓うシーンは感動的でした。

投稿: ウーフ | 2008年10月17日 (金) 00時38分

ウーフさんこんにちは。

同じ日にご覧になっていたとは偶然です。

渡邊氏は、現在「マンマ・ミーア!」にも出演中ですので、良かったらぜひ観たってください。ラダメスよりずっと年上の役ですけど、演技はあまり変わってません。

メイクはあんなラッツ&スターのようなメイクではないですが。

投稿: ヤボオ | 2008年10月18日 (土) 16時18分

はじめまして。

今まで四季の公演は何回か観てはいるのに今更ですが、昨日初めてアイーダを観まして、しかも、渡辺正さん(ラダメス)に初めて出会ってしまいまして(苦笑)。

観劇後から今日にいたるまで、ずっと妙なモヤモヤ感を感じていましたが、検索から流れ着いたアイーダの記事及びその他の記事での評で、自分の中の渡辺氏に対するモヤモヤ感が解消されました。ありがとうございます!ほんと、おっしゃる通りだと思います。

個人的には鈴木ほのかさんのアムネリスに一番心を奪われてしまいました。ミス・サイゴン初演以来の再会でしたが、今は四季にも出演されているのですね。

他の記事も、とても楽しく拝見させていただきました。
これからも鋭い評を期待しております。

投稿: momogle | 2010年8月 1日 (日) 21時43分

momogleさんこんにちは。こんなばかばかしいブログを読んでいただき恐れ入ります。

名古屋のときに比べれば、今の渡辺ラダメスはぐっといい味が出ていると思います。まあ本人比ではありますが。

ほのかアムネリスは本当に素敵であります。

投稿: ヤボオ | 2010年8月 2日 (月) 01時02分

初めまして、先日55stepsで初めて渡辺さんをを見たのですが歌に驚愕しつつもツボにはまってしまい、検索でこちらにたどり着きました(笑)

管理人さんのコメントが的確すぎて爆笑してしまいました。ボンボンラダメス、まさにそのとおりなんだろうなぁと思います。
アイーダはまだ見たことがないので大阪で始まったら是非行きたいです。もちろん渡辺ラダメスの時に。

観劇レポートがとっても面白いので是非これからも通わして下さい。

投稿: ぽっぽ | 2010年11月 9日 (火) 12時59分

ぽっぽさんこんにちは。こんなつまらないブログを読んでいただきすみません。

渡辺ラダメスも場数をこなして、ずいぶん変化(≠進歩)しています。

見ていて面白いので個人的には好きな役なんですが。

投稿: ヤボオ | 2010年11月11日 (木) 00時35分

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