四季「オペラ座の怪人」木村花代クリスティーヌ登場
オペラ座の怪人 | 佐野正幸 |
クリスティーヌ・ダーエ | 木村花代 |
ラウル・シャニュイ子爵 | 北澤裕輔 |
カルロッタ・ジュディチェルリ | 黒田あきつ |
メグ・ジリー | 宮内麻衣 |
マダム・ジリー | 秋山知子 |
ムッシュー・アンドレ | 寺田真実 |
ムッシュー・フィルマン | 青木 朗 |
ウバルド・ピアンジ | 石井健三 |
ジョセフ・ブケー | 岡 智 |
四季のキャスティングにサプライズが相次いでいる。その極めつけがこの「木村花代クリスティーヌ」だ。ファンとしてはクリスティーヌ役への抜擢は嬉しいことは嬉しいけれど、この時期、ほかにやることがあるような気もする。また、正直キャラ違いのようにも感じる。果たしてあの髪型似合うんだろうか。それにクリスティーヌといえば声楽出身者の牙城ではないのか。大きなお世話かもしれないが、歌いきれるのか不安だ。
とかなんとか言いながら、とりあえず観ずにはいられないのが哀しい(痛い)ファンの性である。マンマ・ミーア!で通った大阪四季劇場へ久しぶりに足を向けた。
運良くかなりの好ポジションを確保。不安と期待が脳内で交錯する中、静かにオークションが始まった。
そして時代が遡り、「ハンニバル」の稽古風景。ほかのダンサー達と一緒に舞台に登場した花代クリスティーヌは……
極めて普通のクリスティーヌだった。あれ?キャラ違いというのは取り越し苦労だったか。
舞台が進んでいっても、ずっとクリスティーヌになりきっており(当たり前だが)、観ているこちらも自然にそれを受け入れている。観劇前に、さぞ違和感や驚きがあるのだろうな、と覚悟していたせいか、いささか拍子抜けでさえある。
ビジュアル的には、あのクリスティーヌの髪型も意外に似合っており、ちゃんとかわいい。マスカレードの衣裳もばっちりだ。スタイルがもろに出るハンニバルのダンサー衣裳のことは脇に置こう。
表情は少し硬い。これはまだこの役に慣れていないというより、クリスティーヌというもともとあまり感情表現の豊かでないキャラクターを、いつもどこか一点を見つめるような表情で演じていたからだろう。
その分、歌でその感情を表現しなくてはいけないわけだが、まだ花代クリスの歌はそこまでに達してないように思う。とはいえ、基本的には歌そのものに全く問題はない。「ウェストサイド物語」では高音が苦しそうな部分がいくつかあったので心配していたが、今回はそれもなく、安心してクリアな花代ボイスに浸るとができた。声量も音大卒のクリスティーヌに負けていない。表現力についても、場数を踏めば変わってくるだろう。
全体的な雰囲気としては、ファントムへの父性欲求が強いわけでも、ラウルとラブラブな感じでもなく、自分の世界を作ってそれを頑なに守っているというようなクリスティーヌだった。「いつも何かを夢見ている」といえば聞こえはいいが、何を考えているか解らない、ちょっと友達にはなりたくない不思議ちゃんタイプである。父に似て、変わり者の娘といったところか。そういえば「美女と野獣」のベルも変わり者と呼ばれてたな。
とにかく、普通にクリスティーヌであり、普通にかわいい。だから全国の花組諸君は、ためらわずに大阪に結集されたい。
さて、それにしてもなぜこのタイミングでクリスティーヌなのか。東でも西でも「マリア」が待っているというのに!その理由をちょっと考えてみよう。
(1)代表の気まぐれ
これが一番可能性が高い。木村花代がいったいいくつの役を経験できるか、面白がっているに違いない。
(2)大阪出身ということでご当地キャスト
これもないわけではないが、ご当地キャストは記者会見などへの出席については重視されているものの、実際に登場するかどうかは分からない。つまり、あまりキャスト選定において重要な要素ではないということだ。そもそも、ご当地キャストでいくなら「マンマ・ミーア!」にソフィ役で出演したはずだ。
(3)そのほかの理由
理由ったって、何の手がかりがあるわけでもないのでただ想像または妄想するしかない。なので、とびきり自分にとって都合のいい妄想をひとつ。
これは「グリンダ役への布石」ではないのか。
「ウィキッド」は、海外スタッフの発言力が強いようだ。キャスティングについても、例えばいちいちプロデューサーのオーディションを経ないと舞台に出してはいかん、というような強行な条件を突きつけているかもしれない。
それでは四季はたまったものではないから、当然、もう少し自由度の高い方法でキャスティングしようと考えるだろう。そのためには、オリジナルのカンパニーに対しこういう交渉をするはずだ。キャスティングする役者についての明確な基準を作成し、それを守るから自由にやらせてくれ、という。
そしてその基準の中には、「過去、○○の役を演じたことがある」という条項が含まれるだろう。当然、その役として最も可能性が高いはクリスティーヌ・ダーエだ。実際、現状でグリンダ役に名前が上がっている女優はみな同役経験者である。
だから、ここで無理にクリスティーヌを演じさせたのではないか……なんてことは、ないだろうなあ。
ところで、自分が観た回で、アクシデントというほどではないが、ひやりとしたシーンがあった。マスカレードのシーンで、華麗にキレのあるダンスを披露する花代クリスティーヌを、北澤ラウルがひょいっとリフトしようとしたところ、バランスをくずしてクリスティーヌが床に倒れてしまった。あっ、と思ったが、ラウルがガードしたこともあり衝撃はあまりなかったようで、その後無事に仮面舞踏会は進んでいった。落ちた直後は、北澤ラウルが「大丈夫?」、花代クリスティーヌが「ごめんなさい」と無声で互いを気遣っているように見えた。舞台中のキスシーンなどはさほどでもないが、このアイコンタクトにはちょっと北澤が羨ましくなった。ファンって馬鹿。というか痛いぞ俺。
四季「オペラ座の怪人」のWEBサイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/operaza/index.html
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