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2007年10月14日 (日)

沢木順「ソロミュージカル・YAKUMO」@大隈講堂

沢木順が2004年から断続的に上演している「YAKUMO」。波乱に満ちた小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの生涯を、一人芝居のミュージカルで描くという野心的な試みだ。

そのYAKUMOを、八雲が最後に教鞭を執った早稲田の、大隈講堂で上演するという。早稲田は沢木順の母校であり、ついでに言えば自分の母校でもある。YAKUMOはいちど観たいと思っていたが、いつも1日限りの公演でなかなかその機会を得られなかった。この機会にと思い、いそいそと出かけていった。

卒業後も、大学にはときどき仕事や遊びで来ていたが、大隈講堂の中に入ったのはたぶん卒業式以来だ。在学中は、ここで映画上映会や、さまざまなイベントに参加したものだ。生稲晃子が歌っていたこともある。そういえば今、生稲晃子はNHK朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」に出演している。教育テレビなどへの地道な貢献が認められたようだ。自慢じゃないが、俺は生稲晃子からファンレターの返事をもらったことがある。

このYAKUMOだが、もちろん出演者は沢木ひとり。演奏はピアノのみ。舞台上には3体の彫像とジョジョに出てくる石仮面のような仮面が配置されているだけだ。ここで、沢木が少年時代から晩年までの八雲と、さまざまな登場人物を変幻自在に演じ分ける。さすがは沢木、四季時代に、「日本でいちばん多くのブロードウェー・ミュージカルに出演した男」と自称し、ラ・アルプ上で別の役者に「どうもその中には『オペラ座の怪人』や『キャッツ』も含まれているらしい」とつっこまれていただけある。アルプにもそんな牧歌的な時代があったのだ。その沢木の、ころころ変わる表情と歌い方を堪能しているうちに、物語はどんどん進んでいく。八雲は常に困難に向き合い、深い悩みを抱えており、基本的には重苦しい内容だが、その重さをテンポの良さと沢木の軽快な持ち味によって相殺し、あっという間の2時間に仕上がっている。

死を間近にして早稲田に赴任し、「親愛なる早稲田の諸君」と学生たちに呼びかけるシーン。実際、この日は客席に多くの学生がおり、一瞬自分も学生時代に戻ったかのような錯覚に陥って強い感動を覚えた。

それにしても、やはり沢木は歌によって演技ができる、得難い役者だ。彼のオペラ座の怪人は、クリスティーヌへの想いがひしひしと伝わってくるかと思えば、震え上がるほどの恐怖を感じさせるという、実に見応えのあるものだった。今の村・高井・佐野というファントム勢も、歌はみな沢木を凌駕しているし、それぞれにいい存在感を持っていて大好きだが、演技のテクニック、という面においてはやはり沢木には二歩も三歩も譲る。退団後、久しぶりに四季への出演となった「アイーダ」のゾーザー役は、短期間の参加にとどまってしまい残念だが、ぜひ一度観たいものだ。

沢木は今年、バレエ公演「くるみ割り人形」にも参加するのだという。年齢を重ねてなお、新しいことに次々チャレンジするその姿勢には本当に頭が下がる。小規模の公演を中心に活動しているが、ぜひときには大舞台にも顔を出してほしい。いずれにしても、今後もその活躍はウォッチしていきたいと思う。

沢木順「公認」ホームページ
http://sawaki.net/

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コメント

こんにちは。

散歩コースの“ご近所”で沢木さんのソロコンサートが公演されていたとは・・・。
早稲田の付近ではいろいろなイベントのポスターを見かけますが、
沢木さんのポスターを見かけませんでした(涙)

沢木さんの演技のはばの広さは、四季時代サントラしか聴いていないモノでも想像ができます。
少年時代から苦悩の大人まで、沢木さんの「醍醐味」が楽しめる舞台ですね。

因みに、昔鎌倉の電気量販に勤めていたとき、
沢木さんがご来店され、ドキドキしながらサインを求めたら、
快く書いてくださり、ファントムのイラストまで描いてくださいました。
オフでも、オーラがムンムンの沢木さんでした。

投稿: こえり | 2007年10月15日 (月) 11時00分

こえりさんこんにちは。

沢木氏はナイスガイですね!
ああいう熱い男は四季のみならず、日本の演劇界には欠かせない存在だと思います。頑張れー

投稿: ヤボオ | 2007年10月16日 (火) 00時23分

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