四季「キャッツ」荒川務キャプテン公演
グリザベラ | 重水由紀 |
ジェリーロラム=グリドルボーン | 遠山さやか |
ジェニエニドッツ | 高島田 薫 |
ランペルティーザ | 磯谷美穂 |
ディミータ | 有永美奈子 |
ボンバルリーナ | 遠藤瑠美子 |
シラバブ | 南 めぐみ |
タントミール | 河西伸子 |
ジェミマ | 王 クン |
ヴィクトリア | 千堂百慧 |
カッサンドラ | 井藤湊香 |
オールドデュトロノミー | 種井静夫 |
アスパラガス=グロールタイガー/バストファージョーンズ | 田島亨祐 |
マンカストラップ | 荒川 務 |
ラム・タム・タガー | 阿久津陽一郎 |
ミストフェリーズ | 金子信弛 |
マンゴジェリー | 武藤 寛 |
スキンブルシャンクス | 岸 佳宏 |
コリコパット | 入江航平 |
ランパスキャット | 高城将一 |
カーバケッティ | 松永隆志 |
ギルバート | 龍澤虎太郎 |
マキャヴィティ | 片山崇志 |
タンブルブルータス | 岩崎晋也 |
この週末は突然キャストが大きく動いた。予告どおり、アイーダに渡辺正登場。おおっ(とりあえず)観てえ!
と思っていたらキャッツで驚天動地のミラクルキャスト変更。なんと荒川務がマンカストラップだ。今週は遠征する余裕もないし、とりあえずこっちを押さえよう!ということで前日予約でキャッツ・シアターへ。
それにしても正真正銘の70年代アイドル・荒川務がリーダー猫のマンカストラップに抜擢されるとは本当におどろきだ。年齢的には、今回の東京公演では恐らく最年長のリーダー誕生だろう。日本国政府同様、首班はやっぱり年長者というのが流行なのか?あのアイドルボイスがどう生かされるのか、大いに期待して開演を待つ。
そして、我々の前にさっそうと登場した荒川マンカストラップ。第一声「生まれたのか?」から、まがうことなき荒川務、あのアイドルボイスのままだ。にもかかわらず、そのセリフ回しや歌い方には、不思議に違和感がない。言葉を一音一音、実に丁寧に、そして力を込めて繰り出しているせいか、説得力がある。言霊がこもっている、と言ってもいい。なるほど、言葉でみんなをまとめるタイプのリーダーなのだな。オスカー・フォン・ロイエンタールは銀河帝国で最も美しく「マイン・カイザー」と発音するそうだが、荒川務はキャッツ史上最も美しく「オールドデュトロノミー」と発音している。
今回の東京公演で現在のところ最高のマンカストラップは、やはり福井晶一だと思う。しかしあらゆる面で、その福井マンカストラップとは対称的だった。
福井のイメージが強いせいか、マンカストラップの顔といえば四角くて大きい(ペヤングじゃない)と勝手に決めつけていたが、荒川マンカストラップは丸くて小顔のすっきりしたハンサム猫だ。一瞬、石丸謙二郎に見えてしまったのは内緒だが。
また、福井のごつごつした男性的な動き(だがそれがいい)にくらべ、荒川はあくまでしなやかで、軽やかな身のこなし。ジェニエニドッツとのタップ競争も、ボビー・チャイルドのようで楽しそうだ。
何といっても、福井が力で部下を屈服させる、近付きがたい武闘派なオーラを身にまとっているのに比べ、荒川のオーラはあくまでやわらかく、自然と部下が寄ってくるような、優しさに満ちている。黒鋼とファイ、ラオウとトキあたりを想像してもらえば解りやすくないとは思うが想像してほしい。
戦闘力は低めだから実戦には向かないが、頼りない感じはしない。マキャビティとの戦いは第一ラウンドはなすすべもなく敗退していたが、第二ラウンドではよく食い下がっていた。その姿を見たら、周りの猫も助太刀せずにはいられない。ちなみに、夜行列車のやくざな奴は、何事か高速で口にしており、やくざというよりクレーマーのようだった。
自分の出番以外でも、常にほかの猫たちの様子に気を配り、他の猫たちに小まめに声をかけたり、肩をぽんと叩いたり、ハイタッチしたり、とコミュニケーションを欠かさない。70年代の青春学園ドラマに出てくる、明るく爽やかな運動部のキャプテンのようだ。
やはり荒川務は荒川務だ。例えはよくないかもしれないけど、加山雄三や郷ひろみのような、年齢とは無関係な、絶対的な若さに満ちあふれている。巨人の原監督もそうだ。落合監督のほうが頭がいいとオーナーに言われたって、俺なら原監督についていく。ベイスターズファンだけど。そんな、皆で支えていきたくなるタイプのリーダー猫の誕生は、またひとつキャッツという作品の懐の深さを見せてくれた。
そればかりか、荒川の強烈な爽やかキャプテンぶりはカンパニー全体に影響を与え、作品全体が和やかで、暖かい雰囲気に仕上がった。終演後には「スウィングガールズ」とかの高校生映画を観た時のような清涼感が残った。かつて福井マンカストラップが芝タガーとともに大暴れしたとき観劇後に残った印象はまさに「仁義なき戦い・頂上作戦(菅原文太vs小林旭)」だったわけで、それとは正反対である。
これほど作品のムードを変えてしまうとは。マンカストラップは魁!男塾における富樫と虎丸のようなただの進行役だと思っていたが、その認識は改めねばなるまい。
そういえば、荒川務マンカストラップ誕生という衝撃の蔭で、しれっと阿久津陽一郎がタガーになっていた。おいおい、君は呼んでないぞ。マンハッタンに縛り付けられていると油断したのがよくなかった。まあ来ちまったものは仕方ない、大人しくしてろよ、と思っていたらこれがますます増長しており、ごむ~~~~ようは、松山千春の「長い夜」かよ、というぐらい引っ張るし、どうもトニー役で身につけたと思われる、顔をクシャッとつぶして九十九一のように笑うヘンな表情を乱発するし、観客を舞台に連れ去りながらろくにリードもせず混乱させるし、スキンブルシャンクスナンバーでは隣りのギルバートにもたれかかり、シラバブだけでなくカッサンドラまで寝室に入れなくしてしまうし、あげくの果てにはタガー締めを通常の3倍ぐらいやっていた。
だが、そんなどうしようもない阿久津タガーも、荒川キャプテンの下ではただのひょうきんな奴、という感じになる。「ちびまる子ちゃん」のハマジみたいなものだ。確かにそういう奴も、学園ドラマには欠かせない存在である。実際のところ、荒川マンカストラップと阿久津タガーの相性はなかなかだ。何かこう、ほっとさせる雰囲気のコンビになっていた。
荒川も寄る年波には勝てないのか、あるいは急な登板で準備不足だったか、激しいダンスのあと、肩で息をしている場面が何度も見られた。やはりキツイ役なのだろうか。だがもしできるのなら、体力的に無理のない範囲で、ときどきマンカストラップを演じてほしい。もう少し役になじんでくると、さらに荒川らしさが出てくることも期待できる。爽やかさだけでなく、明るく優しい上司だけど、実はジェミマと不倫してます、みたいなちょい悪な部分も出てくると、いっそう味わい深くなると思うんだけど、だめかなあ。
大崎駅のイベント「しながわ 夢さん橋2007」に出展されたキャッツボール(28日まで)。中に入り、床に描かれた猫の足あとを踏むと、歴代ラム・タム・タガーの登場時のかけ声が聴ける。というような企画だったら面白かったのだが、どっかで合成したような妙な鳴き声がするだけだった。
「キャッツ」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/cats/index.html
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