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2007年9月 4日 (火)

劇団四季、出演予定者の公表を中止

これはさすがに駄目だろう。

劇団四季が、これまで毎週月曜に行っていた、その週に出演する役者名の発表を一切取りやめた。それも事前通告なしに突然である。

四季サイトによる発表

2年前、四季は発表方式を変更した。それまで、各公演ごとの出演者を毎週月曜に発表していたのを、その週に出演する可能性のある役者をまとめて発表するようにした。実際のところ、キャストの多くは週単位で入れ替わるので、その変更によりファンが受けたダメージは限定的なものにとどまった。だがこの時ですら、ネット上のあちこちで怒りの声が噴出した。相当な苦情も寄せられたと聞く。

自分がその時書いたエントリー。
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2005/08/post_2409.html

そこへ来て、今回の改悪である。

四季のチケットは、出演者名を公表しないで販売する。だからそれを一週間前に発表しようがしまいが関係ないだろう、というかもしれない。しかし、キャスト発表があれば、この役者ではもう観たから、とそのチケットを観劇仲間に譲ることもできるし、定価以下限定のチケット譲渡サイトに出すこともできる。オークションで売るのはほめられた行為ではないかもしれないが、千秋楽などのプレミア公演でなければさほど値上がりはしないし、それで行きたい人が行けて空席が埋まるのなら、多少は目をつぶってもいいだろうと思う。

そして、自分も含めコアなファンは、観たいキャストが登場したら「前日予約システム」を利用してチケットを購入することもできる。この前日予約というのは四季が開発した素晴らしいシステムで、売れ残った席(実際には売れ残りではなく、スポンサーやVIPなどのためにギリギリまで空けておく席。だから人気公演でも多少は出る場合がほとんど)を、普通は当日券として売り出すところ、当日ではなく前日の午後2時に売り出すのである。先の予定が立てにくい仕事をしている人などにとって、これほどありがたい仕組みはなく、ビジネスモデル特許を取ってもいいぐらいだ。

前回の変更時のエントリーに書いたので、もうくどくど言う気はしないが、多くのファンは、四季が役者よりも作品重視だということを理解している。だから、役者が分からなくても何カ月も先のチケットを買う。しかし何回も繰り返して見ていると、「今度はこの役者が演じる○○を観たい」と感じるようになる。それは自然な感情ではないのか。その感情に、前日予約と週初めのキャスト発表が、何とか応えてくれていたのだ。もう、観客は自然な感情を持つことすら許されない。

上場もしていない企業なのだから、勝手にやればいいと意見もあるだろう。しかし、上場していようがしていまいが、法人というのは社会的要請によって擬制された人格である。その存在自体、社会性と無関係ではない。そして、顧客の声に耳を傾けることは、経営を論じる以前の問題だ。

四季は企業だがそれ以前に芸術家の集団だ、言うかもしれない。それもいい。だが芸術を純粋に追求するなら、企業の協賛金だけでまかなえる範囲の活動をするべきだ。毎日数千人から1万円も集めて見せるものは、芸術とは言わない。それはエンターテインメントであり、自分はそう思うからこそ、喜んで1万円を払っている。

前回のエントリーからの繰り返しになるが、作品重視大いに結構。だが演劇という作品を構成しているのは何かをもう一度考えてほしい。脚本は確かに重要だろう。演出もそうだ。しかし役者の演技や音楽、さらに照明や音響や、チケットのもぎりにいたるまでのすべてのスタッフの力が加わって、さらに言えばその日の観客の反応までも含めて、毎回毎回ゼロから作り上げられるのが演劇という「作品」の魅力である。浅利代表が「作品は脚本が8割」と言ったそうだが、それは構わない。役者も「自分の演技がこの作品の全て」というぐらいの気構えで臨んでいるだろうし、スタッフだって「俺がこの作品を支えているんだ」ぐらいの自覚はあるだろう。それらはある意味で芸術的な発想である。その芸術的なものが互いにぶつかりあい、ところどころ妥協したり、デコボコができたりしながら作り上げられるものがエンターテインメントなのだと思う。だからエンターテインメントは芸術よりも完成度は低い。しかしそのぶん面白い。

浅利代表の優れていたのは、芸術家的な発言をしながら(彼が真の芸術家であるか否かはこの際問わない。実際自分も分からない)、最終的にそれを曲げなければエンターテインメントが成立しないことも皮膚感覚で理解していたことだ。つまり、自分の仕事に誇りを持つ芸術家としての顔と、客を喜ばせ、金を集めるマネージャーとしての顔を両立していたところに、この人の真価がある。

今回の一件が、噂されているように浅利代表の「鶴の一声」で決まったというのが真実なら、彼はここへ来てマネージャーとしての顔を捨て、芸術家としてその使命を全うすることを選んだのかもしれない。しかし、それなら顧客対応、ファンサービスというマネージャーの領域には口を出すべきではない。

オペラ座の怪人も言っているではないか。

「芸術家たちは、マネージメントに口を出すな!」

いや、言ってなかったか。

さて問題は今後ファンとしてどう振る舞うかである。不買運動をしようにも、代わりのものがあるわけではない。ミュージカルが観たくなるたびにブロードウェーやウエストエンドに行く財力は自分にはない。

2年前も、最終的にはファンの声は無視された。しかし、ひとつ、当時とは大きく変わった点もあると思う。それはブログコミュニティーの一層の拡大だ。この2年で、演劇やミュージカル、四季をメインテーマにするブログは相当増えた。四季もそれを認めたからこそ、「ブログ記者」を会見や公演にも招待したのだ。

すでにこの騒動が発生して12時間ほどで、多くのブログでエントリーが上がった。自分も書いた。まだ書いていない人の多くは、恐らくそんなことで状況は変わらないと感じているのだろう。しかし、ひとことだけでも書いてエントリーを上げれば、RSSフィードがネット上をかけめぐる。その影響力は決して小さいものではない。今こそブログコミュニティーの力を示すときだ。

ブロガーよ立て!怒りをエントリーに変えて、立てよ!ブロガーよ!

<四季サイトに掲載された告知の全文>

オフィシャルウェブサイト「キャストボックス」コーナー終了のお知らせ  2007-09-03  
このたび、劇団四季オフィシャルウェブサイト内「キャストボックス」コーナーを終了させていただきました。「キャストフォン」ならびに「確定キャストインフォメーション」につきましても終了させていただきましたのでお知らせいたします。

なにとぞご了解くださいますようお願い申し上げます。

(「四季の会」会報誌ラ・アルプ9月号に確定キャストインフォメーションの電話番号が掲載されておりますが、上述の通り終了させていただきました。訂正してお詫び申し上げます。)

ところで、自分は9月は四季の舞台は観ないことにします。無理してもいずれ観に行きたくなってしまうだろうから、無理せず1カ月だけ。不買運動という訳ではないけど、ウェストサイド物語はキャスト確認の上突発しようと思っていたので、しばらくは行こうにも行けないからだ。

でも、これも意外に効果があるかもしれない。最近の検索エンジンは優秀だから。次の観劇予定が1カ月先の人は「ひと月のあいだ、四季は観ません」と宣言。同じく2週間の人は「2週間の間、四季劇場には立ち入りません」。3日先の人は「3日間、四季を絶ちます」。そうブログに書くだけなら、観たい舞台を我慢せずに抗議の姿勢を示すことができる。そんなの軟弱、と言われるかもしれないが、主催者の都合のために客が我慢するなんて、おかしいじゃないですか。我慢せずに、抗議だけしましょう。

ふだん拝見させていただいている皆様のブログにも、続々エントリーが上がっています。リンクを掲載させていただきます。
私はあまりトラックバックを打たないほうですが、フィードを走らせるために今回は打たせていただきます。お気に障ったら申し訳ありません。

「ひとめぼれ日記」
http://hoshiyo.cocolog-nifty.com/hitomebore/2007/09/post_c9b7.html
「NAM-HANA」
http://shinshu.fm/MHz/76.87/archives/0000206392.html
「rokuwakuワクワク」
http://blogs.dion.ne.jp/rokuwakuwakuwaku/
「フタゴ座の怪人」
http://kuidaore-hanako.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_4fa4.html
「今週もやっぱり禁断症状」
http://blog.so-net.ne.jp/jurun/2007-09-03-1

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コメント

リンクありがとうございます。

これからは観に行った方々のレポが残された命綱となりそうですね。
劇場キャスト表も危うしなのでしょうか??
とりあえずトップに詳しい説明の義務は間違いなくあると思います。

投稿: fudoh | 2007年9月 4日 (火) 23時38分

いったい、四季は何様のつもりなのかと憤怒しました。
芝居は、出演者あってこそでしょう。舞台監督だけじゃ成立しません。

好きなキャストを見たいという純粋な思いは受け入れられないのでしょうか?

投稿: ヨシボウ | 2007年9月 5日 (水) 00時19分

こんばんは。
ヤボオさんのブログを読んで勢いづき、私も鼻息荒く200字コメント
から苦情を投稿してきました(自分のブログがないもので…)。
ヤボオさんのコメントは、いちいち頷けるものばかりですが、合間
合間では笑わせていただきました。
ヤボオさんの文章は、本当にセンスがあって大好きです(そんな呑
気な話をしている場合ではありませんが…)。

舞台は芸術だと言ってみたところで(それはそれで間違ってはいな
いと思いますが)、客商売に他ならないと思います。客入りが悪け
れば、某所で上演中の「夏夜街タベルナ」のように早々に打ち切る
しかないわけで…。

その客商売で、ここまで客の意見を真っ向から無視するというのも
凄いものがありますね。某代表、多少モ~ロ●してきているのかと
疑いたくもなります。

一定期間でも、大勢によるリピート観劇休止やブログによる意見・
苦情などがハッキリ数字になって表れ、キャスト発表が復活する
ことを願ってやみません。

投稿: まりも | 2007年9月 5日 (水) 01時19分

fudoh様

少なくとも、「四季の会」会員には説明ぐらいあってしかるべきでしょうね。またこっちのせいになるんかと思うとうんざりですが。

問題はこの後どうなるかです。

四季も「理念の問題」ってイタイことゆっちゃった手前、苦情が来たからハイそうですか、ってわけにはいかないでしょう。

四季の会会員だけはパスワードかなにかで見られるようにする、ってところが落としどころでしょうかねえ。そうすれば、会員は支援団体みたいなものでいわば関係者。その関係者にはある程度情報を出すのは当然。サービスではないから、理念には反しない。という理屈が通ります。

しかし根本的なところが感情論である以上、具体的な対策は意味がない・・・。

四季のキャスト情報・予想サービスをする会社でも立ち上げますか?これがほんとの「会社四季報」。自分で言ってて面白くない。でもそんなの関係ねえ!

投稿: ヤボオ | 2007年9月 5日 (水) 01時43分

ヨシボウ様

どうも「舞台裏の四季」連載あたりから、非常にきな臭い感じがしてましたが、とうとうやっちゃったか、という感じですね。

正直、この騒動の影響はかなり大きいと見ています。すぐには出なくても、数年後、振り返って「ああ、やっぱりあれを境に・・・」とか話している自分が見えるようです。

投稿: ヤボオ | 2007年9月 5日 (水) 01時48分

まりも様

大好きなエーゲ海の物語が、大好きな福岡でロングランできなかったのは、私もショックでした。

代表が意固地になっているのはどうも間違いなさそうですが、それを止めることができずにそのまんま顧客までダイレクトに伝わってしまう、という企業としての弱さがまた悲しいです。

これでは代表が四季を去ったとき、恐らくもっと大きな悲劇が起きるでしょう。私はいま~わか~るのだ~♪って歌ってる場合じゃないんですってば。

投稿: ヤボオ | 2007年9月 5日 (水) 01時56分

通りすがりですが、本当に同感なので
コメントさせていただきます。
観に行ったがキャストシートをもらい忘れた
と言うと、電話で全て教えてくれるようです。
「インターネットで観劇ブログを探して
確認してください」などと言われるより
マシですが、そういう問題でもなく・・・
代表が客の声を聞こうとしてくれる事を
祈りつつ、しばらく毎日200字です。

投稿: raruraru | 2007年9月 6日 (木) 01時30分

raruraru様

こんにちは、はじめまして。
なるほど、それを合言葉にして電話で確認する道は残されてるんですね。妙な約束事です。

しかしいずれ代替策を出さないと、本気で客離れが進むでしょうねえ。

結構この問題大きくなるような気がします。

投稿: ヤボオ | 2007年9月 6日 (木) 04時56分

はじめまして。
いつも的確かつツボにハマる観劇日記を読ませていただいております。

今回のキャスボ廃止で、非常に落ち込んだのですが、
どこかの筆まめのブロガーさんがいらしたら、時々キャストを教えて貰いたいものです。

しばらくは抗議の意味も兼ねて、観劇しないもんね!と息巻いてたんですが、
意志が弱く、明日のオペラ座、前日予約でチケット取っちゃいました。(笑)
個人的には、佐渡クリスが観たいなー。。

初めての書き込みにも関わらず、自分の要望&愚痴になってしましまってスミマセン。。
これからもヤボオさんの観劇日記、楽しみにしております。
では長々と失礼いたしました。

投稿: 桜餅 | 2007年9月11日 (火) 18時35分

こんにちは桜餅さん

観劇しない!とネット上で宣言することが大きな声につながっていくので、それが3日間であれ1週間であれよいのではないかと思います。

確かに現実的にはネットユーザーの集合知で出演者DBを作っていくしかないのかもしれないですが、サービス低下のしわよせをユーザーに押しつけるなんて、やっぱり腑に落ちないですね。

投稿: ヤボオ | 2007年9月11日 (火) 23時59分

ヤボオさん、こんばんは!なんですかこのコメントは!ワタクシも怒りのあまり、30分も費やしてブログのエントリーを書いてしまいました(まとまってないけど)。せっかく四季の舞台に興味が出てきたところなのに、見事に出鼻をくじかれました。ポキッ。

投稿: ぽぽん | 2007年9月17日 (月) 21時41分

ぽぽんさん

ギレン様の呼びかけに応えていただきありがとうございました。ほんとに黒色槍騎兵艦隊でも送り込んでやりたいですよ。

どうにかして「ぎゃふん」と言わせてやりたいですね。いちど本当に「ぎゃふん」と言う人を見てみたいですし!

投稿: ヤボオ | 2007年9月18日 (火) 00時31分

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